第 1 回 計量経済学とは

第 1 回 計量経済学とは
村澤 康友
2014 年 4 月 9 日
目次
1
計量経済学
1
2
経済モデル
1
3
計量経済分析の手順
2
付録 A
指数関数と対数関数
2
A.1
指数法則 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
2
A.2
指数関数 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3
A.3
対数関数 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
4
弾力性
4
付録 B
1 計量経済学
定義 1. 経済を計測する方法論の体系を計量経済学という.
注 1. 具体的には
• 経済変数の推計・予測(経済統計,応用計量経済学),
• 経済理論の妥当性の検証(実証経済学,応用計量経済学),
• 政策シミュレーション(応用計量経済学),
• 以上に関る統計的手法の開発・改善(計量経済理論)
が含まれる.
注 2. 統計学の応用分野として独自に発展している.同様の分野に計量生物学・計量心理学がある.
2 経済モデル
定義 2. 経済変数間の関係を表す数式を経済モデルという.
1
例 1. 出産とその決定要因(出産費用・育児費用・夫の所得・妻の就業状態・学歴・親との同居・託児所の有
無・将来の不安等)の関係.少子化対策を考える上で重要だが真面目に考えるとかなり難しい.
注 3. 経済モデルを y = f (x) と表す.計量経済学では以下の問題を考える.
•(推定)未知の f (.) をデータから推定する.f (.) が判れば x から y を予測できる.
•(検定)経済理論が与える f (.) の妥当性をデータから検証する.否定されれば経済理論の修正が必要と
なる.
例 2. 第 i 企業の資本投入量を ki ,労働投入量を li ,実質付加価値額を yi とする.ミクロのコブ=ダグラス
型生産関数は
yi = Akiα liβ
すなわち
ln yi = ln A + α ln ki + β ln li
この式を企業の横断面データで分析する.
例 3. 第 t 年のマクロの資本投入量を Kt ,労働投入量を Lt ,実質 GDP を Yt とする.マクロのコブ=ダグラ
ス型生産関数は
Yt = AKtα Lβt
すなわち
ln Yt = ln A + α ln Kt + β ln Lt
この式をマクロの時系列データで分析する.
3 計量経済分析の手順
1. 経済理論の提示:x が y を決定するメカニズムを提示する.
2. データの収集:x, y に相当するデータを集める.
3. モデルの定式化:x が y を決める関数形を想定する.
4. モデルの推定:モデルの母数をデータから推定する.
5. 仮説の検定:モデルの母数に関する仮説をデータから検証する.
6. モデルの利用:政策運営などの意思決定にモデルを利用する.
付録 A
指数関数と対数関数
A.1 指数法則
f : R → R とする.
定義 3. f (0) ̸= 0 かつ任意の ∀x, y ∈ R について
f (x + y) = f (x)f (y)
なら f (.) は指数法則を満たす.
2
定理 1. f (.) が指数法則を満たすなら,
1. f (0) = 1,
2. f (1) ≥ 0,
3. f (n) = f (1)n .
証明.
1.
f (0) = f (0 + 0)
= f (0)f (0)
= f (0)2
f (0) ̸= 0 より f (0) = 1.
2.
)
1 1
+
2 2
( ) ( )
1
1
=f
f
2
2
( )2
1
=f
2
≥0
(
f (1) = f
3.
f (n) = f (1 + · · · + 1)
= f (1)n
A.2 指数関数
定義 4. 任意の ∀x ∈ R について
f (x) = ax
なら f (.) は指数関数という.
注 4. 導関数は
ax+h − ax
h→0
h
h
a
−1
= ax lim
h→0
h
f ′ (x) := lim
定義 5. 次式を満たす e をネイピア数という.
eh − 1
=1
h→0
h
lim
3
注 5. すなわち
dex
= ex
dx
定理 2.
ex = 1 + x +
定理 3.
ex = lim
x2
+ ···
2!
(
n→∞
1+
x )n
n
A.3 対数関数
定義 6. 指数関数の逆関数を対数関数という.
注 6. すなわち任意の ∀y ∈ R について
f −1 (y) = ey
注 7. f (x) = ln x と書く.
定理 4.
ln xy = ln x + ln y
証明.
xy = eln x eln y
= eln x+ln y
定理 5.
dln x
1
=
dx
x
証明. y := ln x とすると ey = x.したがって
dy
1
=
dx
dx/ dy
1
= y
e
1
=
x
付録 B
弾力性
y := f (x) とする.ただし f (.) は微分可能.
定義 7. y の x に対する弾力性は
E := lim
∆x→0
4
∆y/y
∆x/x
注 8. x が 1 %変化すると y が何%変化するかを表す.
定理 6.
E=
dln y
dln x
証明. 弾力性は
(f (x + h) − f (x))/f (x)
h/x
f (x + h) − f (x) x
= lim
h→0
h
f (x)
x
′
= f (x)
f (x)
E := lim
h→0
合成関数の微分の公式より
dln y
dln y dy dx
=
dln x
dy dx dln x
1 dy 1
=
y dx 1/x
dy x
=
dx y
5