核融合研究開発 9-4 核融合炉条件を作り出す強力中性子源の建設に向けて -リチウム施設の工学実証研究と工学設計の構築- 工学実証研究 遠隔操作系 ・日本は一体型ターゲットアセンブリ 交換方式 ・欧州は背面壁のみ交換方式 EVEDA Li 試験ループ 建設・運転・試験 損耗・腐食 (1)各種機器の機能性試験(2)真空下での 自由表面を持つ高速流動試験(3)長時間試験 (EU 側は欧州機器による試験) ノズル ・欧州の小型 Li ループによる1000∼ 8000 h 試験(F82H, Eurofer 97) 図 9 - 10 IFMIF の Li 施設の工学実証と工学設計活動の内容 Li 施設の工学実証としてプロトタイプの Li 試験ループの建設 と運転及び試験などの実証試験を実施し、これを基に IFMIF の中間工学設計書を作成しました。 計測系 Li 取扱い安全 ・高速 Li 流の波高計測 ・阪大 Li ループで計測適用性評価等 ・Li 取扱技術,消火試験等 ・水試験ループによる補助解析 Li 流れ ターゲット アセンブリ Li 純化系 レーザヘッド ・Li 中の不純物除去,不純物モニター Arガス ノズル 電磁ポンプ N ダンプタンク H 工学設計 不純物 コールド 不純物モニター トラップ トラップ(O,Be 等) (H, N, O, C 等) (単位:mm) Li 流入口 0 65 φ1 357.64 200 観測窓 300 610 背面壁 (流路) 出口管 15 m/s 30 390 2段ノズル 図 9 - 12 ファイバーレーザによる溶接と切断の実証 大阪大学接合研との協力下で、ファイバーレーザによる溶 接の実証試験を実施した様子です。この時のレーザの出力 は 5 kW で、溶接速度は毎分 3 m で制御しました。 0 250 149 整流器 100 SUS316 鋼 (厚さ 2 mm) の円板を 2 枚重ねている 552 図 9-11 自由表面を持つ高速 Li 流 (左)と流路(右) Li 試験ループの最重要な実証試験として 1/2.6 スケール (横幅 100 mm,厚み 25 mm)の安定した高速 Li 流を 示したものです。(真空中(約 370 Pa)で 250 ℃) 核融合炉では、核融合反応(D-T 反応)により生成 した 14 MeV 中性子によって材料中では弾き出し損傷 や核変換生成物(H や He 等)により、材料の照射硬化 や照射脆化などの現象が生じます。現在、建設が進めら れている国際熱核融合実験炉(ITER)による材料への 中性子照射量は原型炉目標の数 % 以下のため、原型炉 の材料開発の評価には十分ではありません。このため、 核融合原型炉の材料開発には、国際核融合材料照射施設 (IFMIF)のような高強度の 14 MeV 中性子相当の照射 環境場で、材料やコンポーネント等の照射量依存性評価 が不可欠です。 IFMIF では 40 MeV,125 mA の 2 本の重陽子ビーム (形状: 横幅 200 mm,縦幅 50 mm)を、真空中(約 10-3 Pa)で自由表面を持つ 250 ℃の液体リチウム (Li) ターゲット (横幅 260 mm, 厚み 25 mm) に入射させ、中 性子を発生させるシステムです。現在、IFMIF の工学 実証・工学設計活動 (EVEDA) が、日欧協力のもと幅広 いアプローチ活動のひとつとして実施されています。 私たちは、図 9-10 に示すような IFMIF の Li 施設の 工学実証試験の課題評価とその工学設計を実施していま す。この中で IFMIF の Li 施設のプロトタイプである 世界最大の流量(3000 ℓ/min)を持つ EVEDA Li 試 験ループを建設・運転し、IFMIF の建設などの判断に 必要になる Li 施設の工学実証試験データの取得を積み 重ねているところです。この高速 Li 流の評価において は、図 9-11 に示すようなビデオカメラによる高速観察 法や、開発を進めてきた非接触型のレーザー波高計測器 による計測によって正圧だけでなく、負圧においても安 定した流れを形成することが分かりました。また、遠隔 操作系技術の工学実証試験として、Li 施設の構成要素 であるターゲットアセンブリと呼ばれる機器の交換方法 に対して、ファイバーレーザを利用した切断と溶接の適 用性試験(図 9-12)を実施し、 良好な結果を得ています。 そして、これらの工学実証試験を基にして、IFMIF 施 設全体として約 6500 ページにも及ぶ中間工学設計書を 2013 年度に作成しました。 ●参考文献 Wakai, E. et al., Engineering Validation and Engineering Design of Lithium Target Facility in IFMIF/EVEDA Project, Fusion Science and Technology, vol.66, no.1, 2014, p.46-56. 原子力機構の研究開発成果 2014 113
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