2018年を

特集
再点検!
2018年を
見据えた
医療・介護の
経営戦略
2025年を目標に進行中の医療・介護制度改革。診療・介護報酬の同時改定に加え、
医療計画、介護保険事業計画、医療費適正化計画が見直し時期を迎える2018 年
は当面の山場となる。残された時間はわずか。医療・介護現場では、2018年を見
据えた経営戦略の立案・遂行が欠かせない。 (庄子 育子、友吉 由紀子、永井 学)
© amanaimages
ビッグイヤーの2018年を迎えて 2 4
新医療計画・介護保険事業計画が開始目前
医療・介護の現場では明暗がくっきり?
全体動向
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消費増税先送りで強まる歳出削減圧力
医療・介護給付費抑制は避けられず
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NIKKEI Healthcare January 2015
医療提供体制・医療保険制度改革 31
都道府県の役割・権限が大幅拡大
保険者機能の充実・強化も進む
病院・病床の機能分化・連携 31
保険者機能の強化 34
保険給付範囲の見直し 34
介護提供体制・介護保険制度改革 37
2018年までの3年間が「勝負の年」
将来の規制を見越して先手を打つ
January 2015 NIKKEI Healthcare
23
特集 再点検! 2018年を見据えた医療・介護の経営戦略
ビッグイヤーの2018年を迎えて
新医療計画・介護保険事業計画が開始目前
医療・介護の現場では既に明暗がくっきり?
いよいよ2025年の医療・介護提供体制改革に向けた節目となる2018年を迎えた。
新年早々、病院・診療所の院長や介護事業所の経営者の心境は複雑だ。
あちこちで開かれている新年会をのぞいてみると……。
<病医院の院長が集まる新年会>
1
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r
Pa
県の裁量・権限拡大に戦々恐々
ニックに転 換して
正解だったんじゃな
い? お父さんのと
きとは時代が違う
からね。若い医師
が、
どんどん在宅医
「そういえば、救急先生のところは、
療を手掛けるのは
院内に保育施設を作ったんだって?」
良いことだと思うよ。
「急性期病院を維持するには、やはり
うちでも始めようか
マンパワーが重要で、優秀な女性スタッ
と思って……」
1月も半ばを過ぎた日曜日の夕方、I
に力を入れるなどして医師や看護師の
フには産後復帰してもらいたいですか
Uクリニックは、
病院院長の移行早男氏(58 歳)は、市
増員に成功。
「地域医療構想調整会議」
らね。女性医師も利用しています。つ
2014 年に代替わり
いこう はやお
内のホテルの宴会場に向かっていた。
(32ページ参照)において、進路変更を
いでに勤務体制も見直して、育児と両
し、息子の新司氏
医師会主催で、病院や診療所の院長た
求められることなく、
「急性期」の機能を
立できるように、勤務時間の自由度を高
が院長になったの
ちの親睦を深めるための新年会が開か
維持している。平均在院日数も12日で、
めたんです。これが奏功したのかなあ。
をきっかけに、100
れるというので、顔を出してみることに
急性期ではトップレベルだ。
看護師の定着率が良くなったみたいで」
床の急性期病院か
したのだ。何でも、今年4月から第7次
「うちの場合は、急性期はさっさと諦
ら19 床の有床診療
医療計画がスタートするとあって、県知
めて、2014年に7対1病棟の100床を地
所へ転換し、在宅医療に力を入れた。
えたけど、
これからあわてて転換しても
に増やすかが課題ですね。有床先生、
事が挨拶に来るという。
域包括ケア病棟と回復期リハビリ病棟
医師が4人いるので地域包括診療料も
もらえない可能性もある。おっと、いよ
外来患者さんの状況はどうですか」
都道府県は、地域医療構想(31ペー
に転換してケアミックスにしたけど、ま
算定し、外来患者も多く診ている。昨
いよ知事さんの登場だ」
。
「患者さんはまあ多いです。ただ、県
ジ参照)の策定主体だが、
さらに医療費
あ良かったんじゃないかな。今年の診
年には、クリニック近くに高齢者住宅を
会場では、医師会会長らのスピーチ
は、データ分析に基づいて医療費を抑
適正化を進める上で国民健康保険の
療報酬改定では、平均在院日数や重症
開設し、その経営も順調だ。
が続いていたが、次は県知事の登場で、
制するための保健事業(データヘルス、
保険者機能も担うことになり、その裁量
患者の割合とか、要件がかなり厳しく
「在宅は順調です。この地域はまだ
スライドの映写準備が始まった……。
34ページ参照)に力を入れて、患者の
や権限は以前より拡大した。国からの
なるらしいからね。急性期をやめてから
需要が高いので、経営が軌道に乗るの
プレッシャーも大きく、県知事は何とし
は病床稼働率も改善したし、開業医と
はあっという間でしたね。あのまま100
ても病床機能の再編、地域包括ケアシ
もしっかり連携体制を固めたから経営
床の病院を維持するのは難しかったと
県知事の演説は15分にも及び、盛大
ね。患者の受診抑制につながらないか
状況は良くなったよ」
思います。そういえば、噂ですけど、D
な拍手で終了した。
と心配です。また、後発医薬品の使用
病院はまだ急性期にしがみついていて、
「いやあ、知事はすごい意気込みでし
促進にも随分取り組んでいるようで、差
調整会議の合意事項を無視しているら
たね。移行先生、
どう思われました?」
額通知を持ってきて、
『ジェネリックを』
移行氏と救急氏が話し込んでいると、
しいですね。勧告に従わないのでかな
「有床先生、ずいぶん熱心に聞いてい
と言われることが増えました」
そこへUクリニック院長の有床新司氏
りまずいことになっているようで……」
たね。うちの県は『医療費支出目標』
(33
「医療機関を1年間受診しなかった人
移行氏が相づちを打った。
「ちょっと
ページ参照)
を相当オーバーしているか
に現金や商品券を給付する施策とやら
ステムの構築という目標を実現させな
ければならない。県の動向は、医療機
関の経営に影響を及ぼすだけに医療機
関側も目が離せなくなってきている。
医療機能の選択も終えて一段落
病院院長の移行早男氏(58歳)
もともと150 床の急性期病院(7 対 1病棟 100 床、療養
病棟 50 床)だったが、7 対 1の100 床を地域包括ケア
病棟 50 床と回復期リハビリ病棟 50 床へ転換。回復
期と慢性期の病床機能を選択した。早い時期での転
換が奏功し、開業医との連携もうまくいっている。
「いやいや、3年前に後輩の救急専門
勧告に従わないD病院は…
ゆうしょう し ん じ
(38歳)が現れた。
県の医療費抑制の取り組みも強化
複数医療機関の重複受診・頻回受診に
対する指導を強化しているみたいです
移行氏は会場に入ると、
すぐにK病院
医が来てくれたのがラッキーでした。救
「皆さん、お久しぶりです。大勢集まっ
前に、D 病院の名前が公表されていた
ら、知事が躍起になるのも分からないで
が増えてるんだって。いやあ、2025 年
を見つけた。
院長の救急 保 氏(55歳)
急体制を充実させることができたのは
ていますね。県知事が来るというので
ね。昨年から急に在宅医療を始めたら
もない。我々は早々に病床機能を選択
に向けて県知事さんも相当に力が入っ
「やあ救急先生、新年おめでとう。君
彼のおかげです。脳神経外科が専門な
私も参加してみたんです。移行先生、
しいけど、開業医とうまく連携できてな
しておいて良かったね、救急先生」
ているから、これから我々も頑張らない
のところは順調そうだね。やっぱり急性
ので手術室も増やしました。彼の救急
いつもありがとうございます」
いから入院患者を紹介してもらえず、
「本当に。今年はダブル改定もあるし、
といけませんね。じゃあ、私は次がある
期病院はうらやましいな……」
に対する熱意は相当なもので、研修医
「こちらこそ。新司くんが院長になっ
病棟はガラガラだとか。うちは、早めに
急性期病院はアウトカム評価がさらに
のでお先に……」
200 床のK 病院は、労働環境の改善
の応募も増えましたよ」
てすっかり変わったね。思い切ってクリ
回復期機能へ転換したから基金をもら
厳しくなるとか。うちも手術件数をいか
移行氏はパーティー会場を後にした。
きゅうきゅうたもつ
イラスト◎松浪 宜秀
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NIKKEI Healthcare January 2015
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