平成24年度大船渡市派遣レポート 第4回 (住宅公園課勤務)小松 智志 1.はじめに 1月には、大船渡新春四大マラソン大会が今年も開催されました。雪の降る厳しいコンディション でしたが、1,800 名を超える参加選手と多くの沿道応援者により熱気ある大会となっていました。ま た、2月には、大震災直後に2度にわたって支援物資を運んだり、船内を開放し食事や入浴サービ スの提供を行ったりした客船“ふじ丸”が、「世界青年の船」事業の一環で大船渡港に寄港しまし た。6月に引退予定のため、これが最後の寄航となり、記念イベントが行われました。 駅伝一般男子のスタート 6 月には引退予定のふじ丸 交通機関では、3月2日から、震災で不通となっていたJR大船渡線気仙沼駅―盛駅間について、 仮復旧としてバス高速輸送システム(BRT)の運行が始まりました。また、4月3日から、三陸鉄道南 リアス線は盛駅−吉浜駅間(大船渡市内)が完全復旧となる予定で、クウェート支援による新型車両 も加えて試験運転が行われていました。徐々にではありますが交通機関も復旧し、交通弱者の足も 確保されてきました。今後は、これら交通機関を存続していくための利用協力も重要になりそうです。 JR 大船渡駅旧ホームとバス専用レーン JR線のバスレーン工事の進む盛駅 バスレーン化の進むJR線と営業再開を待つ三陸鉄道新型車両 2.大震災以降の変化について 東日本大震災から2年が経過し、さまざまなNPOやボランティア団体等が徐々に支援活動を終え て被災地から撤退するケースが増えているようです。 理由としては、応急復旧の目処が立ったとか、支援資金面で目標値に達したとか、あるいは地元 住民の自立を促すためのベース作りが出来たといったもののようです。これまでは、どちらかというと 生活するために必要な物資面の支援が主流でしたが、いつまでも支援に頼るだけではなく住民自 身が主体的に活動していくために必要な支援を行う方向に変化していきつつあるようです。 しかし、被災のショックと長引く仮設生活で体調を崩される方もいることから、継続した支援が必要 なケースも残されています。 また、現在は被災された方向けに住宅再建等様々な支援・補助金制度がありますが、いつまでも 継続されるわけではないと、先々の不安を感じている方も多くいるようです。 住まいに関する変化としては、大船渡市内外に住む場所を確保して応急仮設住宅から退去する ケースが増えつつあることです。一方で震災以降に家族構成が変わったため、応急仮設住宅の部 屋の追加希望や、民間の賃貸住宅等のみなし仮設住宅から退去を余儀なくされて、やむを得ず仮 設住宅への入居を希望されて相談に訪れるといった事案も増えています。 いよいよ3月末から、災害公営住宅新築第1号と復旧した市営住宅の入居募集が始まり、4月末 からの入居予定となっています。災害公営住宅については、今年度造成工事を行った箇所を含め て市内各所で建築工事が行われ、順次入居開始となる予定です。 大船渡市災害公営住宅新築第 1 号の落成式 3.工事を実施していくうえでの課題 今後復興事業(工事)を進めていくうえで、より顕著になると思われる課題をいくつか紹介してみ たいと思います。 ①発注工事数が地元業者で対応できる量を超えている 復興事業により工事発注量が民間・公共ともに圧倒的に増加しています。一方、受注できる 地元業者数は震災前後で変化がないため、入札が成立しない工事も多くなっています。震災 以前は民間・公共事業が一段落し、建設業者数は減少傾向にあったことも拍車をかけている ようです。しかしながら、一時的に需要が増加していると考えられるだけに、業者としては事業 拡大には慎重なようです。 この影響は個人で住宅・宅地を再建しようとする方にも出ています。契約は出来ても工事が 進まない状況で、住宅等再建補助金の申請を来年度やり直さなければならない事案が何件も 発生しました。 ②復興支援に来た工事等関係者の住居が市内に無い ①の課題を解消するために人員を集めたとしても、寝泊りする場所(アパートなど)が無い状 態で、現在でも平日の市内宿泊施設は、ほぼ満室の状態にあります。応急仮設住宅への入 居についても問合せが多数寄せられていますが、災害公営住宅が確保できていない現時点 では、その性質上、一般向けには利用できない状況にあります。 ③工事集中による資材不足と材料単価の値上がり 大震災直後の交通網と物流がマヒしていた時期ほど極端ではないようですが、今年から防波 堤などの港湾施設整備事業を始め、区画整理事業や高台移転事業も本格的に動き出すため、 資材の供給が追い付かず、砕石や生コンクリートなどを中心に資材不足と単価の値上がりが 始まっているようです。 ④土砂運搬の要である大型ダンプ等運搬車両の不足 今年度実施した災害公営住宅の敷地造成工事において、工事を請負う業者の皆さんから情 報が寄せられました。三陸沿岸では同時に類似工事が行われているため大型ダンプが不足し ており、確保するために通常よりはるかに経費がかさむとのことでした。また、この影響で遅れ を発生している工事も多数あるようでした。 ⑤発生する土砂の運搬と処理先の確保 特に防災集団移転事業(高台移転)を行うエリアでは、山を切り開いて工事を行うため、不要 な土砂が大量に発生します。一方、地盤沈下や津波による浸水があった場所で区画整理事 業等を行うエリアでは、地盤を上げるための土が大量に必要になります。この2つの事業が同 時期かつ条件を満たすような土が得られれば、それほど問題ではありませんが、時期を合わせ ることが困難な場合もあることから、仮置き場の確保や隣接県市町村などとの調整も必要に なってきます。また、運搬作業に伴い大型ダンプの往来も激しくなり、近隣住民への影響も心 配されます。 いずれも復興事業の推進に妨げとなり得る要因ですが、その影響は最小限になってほしいも のです。 赤崎町 三陸町吉浜 三陸町越喜来 大船渡市内各所にある過去の大津波に関する石碑 4.おわりに 沿岸ばかりに目を向けてしまいがちですが、一関市など内陸部においては津波の被害はなかっ たものの大地震の被害をうけ、不便な生活を続けている方がいることも報告に付け加えておきたい と思います。 昨年4月から1年間、大船渡市への長期派遣という機会を得て東日本大震災の復興事業に従事 させていただきました。この間、大変な状況にもかかわらず交流のあった皆さんからは暖かいおもて なしを受け、逆に元気をもらったように思います。震災から2年が経過したものの目に見えた変化が ないという話も聞かれる状況ではありますが、職員や市民を含めて同じ目標に向かっている姿は大 変印象的でした。 当然のことながら、大船渡市内には直接被災されていない市民の方もいるため、市役所等関係 機関では復興事業と並行して通常業務も行われています。そのため引き続き多くの応援の手が必 要だと思われます。 復興計画全体から見れば始まったばかりの一瞬の期間でしたが、復興事業に直接携わることが でき、被災地の状況変化や岩手県・大船渡市の気候風土の体験や全国から来ている応援職員と の交流など、多くの経験ができたことに大変感謝しております。今後も引き続き、できる協力をして いきたいと思います。これからも定期的に訪れて、携わった現場の状況や街全体の変化を直接確 認していきたいと思います。 加茂神社から大船渡湾野々田埠頭を望む 〔2012.6(上)→2012.10(中)→2013.3(下)〕 少しずつですが、まちなみは変化しています。現在計画されている高さ約7mの防 潮堤が埠頭と街を隔てるように造られると上の写真の風景は一変すると思われます。
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