資 料 - 日本教育会

資
料
(1) 調査研究委員会について
○検討委員会の設置について
日本教育会は,定款第4条(3)に定める「教育に関する意見発表と世論の喚起」の
一環として,調査研究委員会を設置して調査研究を重ね,時代の要請に呼応した提言を
公表してきた。平成 25 年度以降の提言内容については,平成 25 年 2 月開催の第4回理
事会において協議し,「自らを律する心の育成」について調査研究を行うこととした。
○主題設定の理由
人間は一人では生きられない。かけがえのない個人の集まりである社会の一員と
して生きている。そこには,個人の欲求と社会の要求とが調和することが求められ,
節度や思いりやりなど他者に対する心遣いによって暮らしやすい社会が成り立って
いく。
江戸時代に長崎を訪れたドイツ人医師ケンペルは,
「世界のいずれの国にも劣らぬ
ほどに礼儀正しく慇懃な国」と驚嘆を込めて激賞している。また,明治初期に来日
したモースやラフカディオ・ハーンも,正直,清潔,自然に対する愛,挙動の礼儀
正しさ,他人への思いやりなどを日本人の美徳として称えている。
しかしながら,高度経済成長期の都市化や核家族化など社会の急激な変化によっ
て,こうしたよき文化や美徳が崩れてしまい,現在では,公共の場における傍若無
人な振る舞いに眉をひそめることが少なくない。また,果たすべき責任や義務の遂
行をおろそかにしたまま,自由や権利の主張など自分自身を慮ることばかりに熱心
で,不平や不満を抱き,他人への尊敬や感謝を忘れてしまっているような人もいる。
モンスターペアレンツなどクレーマーが行う唖然とするような要求も,近年の市場
原理や「私」意識の浸透によるものと考えられる。
子どもたちは,こうした他や公よりも「私」を優先する大人たちの姿を日常的に
目にして成長している。さらに少子化の中で過保護に育てられ,自分の思いのまま
に行動することが「自分らしさ」であり個性であるかのような錯覚に陥っていたり,
ものごとを快不快や損得のみで判断して行動したりする傾向もみられる。社会問題
となっているいじめ問題の根源にも,こうした子どもたちの徳性の未熟さや歪みが
あると考えられる。
先の東日本大震災の被災地では,過酷な状況下にあって辛抱強く耐え忍ぶ姿,互
いを気遣い,規範を守り,分かち合い譲り合うなど,私心を抑え他者や公を優先す
る行動,惻隠の情に基づく行動など日本人が失いつつある「よさ」が内外の注目を
集めた。そして,東日本大震災という未曽有の体験を通して,日本や日本人を見つ
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め直そうとする機運が高まっている。今であれば,日本や日本人の「よさ」を子ど
もたちに継承し育てていく元気な大人が身近な地域にたくさんいる。子どもたちに
「自らを律する心」を育て,日本人が大事にしてきた「よさ」を継承するために,
この時を逃してはならないと考える。
そこで,平成 25・26 年度の調査研究委員会の研究主題を「自らを律する心を育て
る」とし,いま教育現場において何が求められているか,どのような実践をしてい
ったらよいかを調査研究し,教育関係者に提言する。
○検討期間
平成 25 年 4 月から平成 27 年 3 月まで
○開催状況
平成 25 年 5 月から平成 27 年 3 月まで(8 月を除く),月 1 回の委員会を開催した。
(2) 調査研究委員名簿
辰
野
千
壽
日本教育会名誉会長・ 元上越教育大学学長
◎安
藤
駿
英
元全国連合小学校長会会長・元中央区立京橋築地小学校長
○寺
崎
千
秋
教育調査研究所研究部長・元全国連合小学校長会会長
元練馬区立光和小学校長
井
上
千枝美
元江東区立ちどり幼稚園長・元桜美林大学教授
長
谷
徹
東京家政学院大学教授・元港区立麻布小学校長
山
本
司
小金井市教育委員会教育長・前小金井市立小金井第一中学校長
修
(平成 25 年 5 月~平成 26 年 3 月)
岩
谷
俊
行
白百合女子大学非常勤講師・前杉並区立向陽中学校長
有
賀
康
修
前大妻中野中学校高等学校長・元東京都立墨田川高等学校長
弓
削
愛一郎
聖徳大学 AO 入試研究センター教授・前千葉県立我孫子高等学校長
坂
本
好
一
前東京都立八王子特別支援学校長
金
山
滋
美
八王子市教育委員会委員・東京都公立中学校 PTA 協議会顧問
◎委員長
○副委員長
なお公益社団法人日本教育会事務局からは次の者が事務に当たった。
公益社団法人日本教育会 専務理事
大澤正子
事務局長
滝澤雅彦
前事務局長
酒井晴夫(平成 25 年 4 月~平成 25 年 6 月)
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