イオンクロマトグラフィーによる リチウムイオン電池中のイオン成分の測定

Application Note IC14003
イオンクロマトグラフィーによる
リチウムイオン電池中のイオン成分の測定
サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社
キーワード
表 2:陽イオン分析条件
イオンクロマトグラフィー
(IC )
、
リチウム電池、
ヘキサフルオロりん酸リチウム、
過塩素酸リ
IC 装置
Dionex ICS-2100
チウム、
四ほう酸リチウム、
リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)
イミド
カラム
Dionex IonPac CG12A(4 x 50 mm)
Dionex IonPac CS12A(4 x 250 mm)
カラム温度
35 ℃
溶離液
20 mmol/L メタンスルホン酸(溶離液ジェネレー
はじめに
流量
1.0 mL/min
リチウムイオン電池の電解液には、有機溶媒にリチウム塩を溶解
検出器
電気伝導度検出器(サプレッサー使用)
したものが使用されています。塩としては、一般的にヘキサフル
試料注入量
20 μL
タ使用)
オロりん酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、四ほう
酸リチウム(LiBF
F4)や、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホ
模擬試料の調製
ニル)イミド(Li(CF3 SO2)
のようなイオン液体などが使
が 用さ
2 N)
模擬試料を表 3 の濃度になるよう、調製しました。
れています。これらの塩中の陰イオンの測定には、イオンクロマト
グラフィー
(IC )が適しています。
表3:模擬試料中の塩濃度
リチウムイオン電池の陽極には、マンガンやニッケル、コバルト
クロマトグラム
成分
濃度 mg/L
調製液
ベースの素材が使用されています。マンガンベースの電池は環境
図1.A
BF
F4
10.8
3種混合溶媒 *1
に優しく、低コストで生産できますが、
が 他の電極素材に比べて寿
B
ClO4
10.7
3種混合溶媒 *1
命が短いというデメリットがあります。放電と充電のサイクル中
C
PF6
10.5
3種混合溶媒 *1
に陽極から電解液にマンガンが溶け出すことが原因の一つと考
えられています。電解液に溶け出したマンガンの分析にも ICは
使用できます。
分析条件
今回分析に用いた条件を表 1、2に示します。
表1:陰イオン分析条件
IC 装置
カラム
Thermo Scientific ™ Dionex ™ ICS-2100
Thermo Scientific Dionex IonPac ™ AG20
(4 x 50 mm)
Dionex IonPac AS20(4 x 250 mm)
カラム温度
35 ℃
溶離液
、濃度はクロマト
K H(溶離液ジェネレータ使用)
KO
グラム参照
流量
クロマトグラム参照
検出器
電気伝導度検出器(サプレッサー使用)
、炭酸除
去デバ
デ イス Dionex CRD-200 使用
試料注入量
10 μL
図2
図3
成分と濃度は下記参照
Mn
0.1
アセトニトリル
3種混合溶媒 *2
成 分と 濃 度(mg/L)BF
F4 : 10、CF3SO3 : 125、ClO4 : 100、
(CF3SO2)2N : 100
PF6 : 125、
ン 炭酸ジエチル、炭酸プロピレンをそれぞれ 1:1:
*1:炭酸エチレン、
1 で混合
ン 炭酸エチルメチル、炭酸ビニレンをそれぞれ 20:
*2:炭酸エチレン、
20:1 で混合
Application Note IC14003
分析結果
. BF
F42. ClO
O43. PF6-
陰イオンのうち、BF
F4 -、ClO4 -、PF6 -(表 3 の試料 A、B、C )を分析
した 例を 図 1に 示します。それぞれの n=5の 再 現 性は RSDで
0.62、0.74
7 、0.30 %でした。また、2 mg/Lを添加したときの回収
率は、88 .5、106、85 %でした。
図 2には、BF
F4 -、ClO4 -、PF6 -の他に、CF3 SO3 -や(CF3 SO2)
2N
のイオンを含む模擬試料の分析例を示します。各成分が十分に
分離できていることが分
が かります。
(CF3 SO2)
2 N は保持が強いた
め分析時間が長くなっていますが、
が 条件を変えてこの成分だけを
分析することも可能です。
す
Mn2+を陽イオン分析条件(表2)で分析した例を図3に示します。
図1:BF4 -、ClO4 -、PF6 -(表3の試料 A、B、C )の分析例
本条件における Mn2+ の直線性は、
0.1 ∼ 15 mg/Lの範囲では決
陰イオン分析条件:表 1参照
定係数(r 2)で 0 .9997で、ピー
ピ ク形状も良好でした。n=5の再現
Time(min)
グラジエント KO
K H(mM)
Curve
0
10
15
5
13
26
性は相対標準偏差(RSD )で 0 .15 %でした。また、0.1 mg/Lを
添加したときの回収率は103 %でした。
15
80
80
5
4
5
1.2 mL/min
流量
1.
2.
3.
4.
5.
6.
1. Mn2+
FBF
F4CF3SO3ClO4PF6(CF3SO2)2N-
図3:Mn2 + の分析例
まとめ
図2:BF4 -、CF3 SO3 -、ClO4 -、PF6 -(
、CF3 SO2)
2N
溶媒マトリクスが存在するリチウムイオン電池の電解液に含まれ
の分析例
る陰イオンとマンガンの分析には、イオンクロマトグラフィーを用
陰イオン分析条件:表 1参照
いることができます。また、電解液に使用される塩(陰イオン)の
Time(min)
0
20
24
25
70
濃度変化、電極からのマンガン溶出濃度をモニターすることもで
グラジエント KO
K H(mM)
10
10
30
80
80
きます。
5
5
4
5
―
Curve
1.2 mL/min
流量
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