テーマ B46: 対数平均 ある事象の平均値を求めるには

埼玉工業大学
テーマ B46:
機械工学学習支援セミナー(小西克享)
対数平均-1/3
対数平均
ある事象の平均値を求めるには,算術平均を利用することが一般的です.たとえば図 1
のように値が A, B, C, D, E の場合,その平均値 M は
A B C  D  E
(1)
M
5
と計算できます.
y
A
B
C
D
E
0
図1
図 2 に示すように事象がグラフで表される場合,平均する区間を等分割して値を求め,
算術平均として平均値を求めることができます.この場合,計算式は(1)式と同じになりま
す.分割数を増やして区間を小さくすればするほど,正確な平均値が得られます.
y
A
B
C
D
E
x
0
図2
図 2 の場合,算術平均の代わりに面積平均を用いることもできます.面積平均とはグラ
フの面積を区間の長さで割って,面積が等価な長方形の高さを求めること意味しています.
グラフを折れ線で近似すると,各区間の面積は台形の面積として計算することができます.
グラフ全体の面積は台形の面積の足し合わせとして求めることができます.図 3 の場合,
グラフの面積 S は
h
 A  B   h B  C   h C  D   h D  E 
S
2
2
2
2
(2)
h
 A  2 B  2C  2D  E 

2
したがって,このグラフの面積平均 M は
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対数平均-2/3
S
1
(2)
  A  2 B  2C  2 D  E 
4h 8
として与えられます.この場合も,分割数を増やした方が正確な値が得られます.
参考:分割数が n のとき,各分割点の値を yi とすると,面積平均値は
1
 y1  2 y2  2 y3    2 yn  yn1  (3)
M
2n
になります.
M
y
A
B
C
D
h
h
h
E
h
x
0
図3
ところで,グラフが指数関数の場合,分割しなくても区間の両端の値がわかれば面積平
均値を簡単に求めることができます.図 4 において,グラフの関数を
(4)
y  Ae  ax
とします.
y
指数曲線
A
面積等価
M
B
x
b
0
指数曲線の描く面積
図4
グラフの面積は
b



b
b
A
1
1

S   ydx  A e ax dx   A e ax    e ab  1  A  Ae ab
0
0
a
a
a
0
となりますが, x  b において,
y  Ae ab  B (5)
とおくと,

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
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対数平均-3/3

1
1
(6)
A  Aeab   A  B 
a
a
となります.次に,面積平均は,グラフの面積 S を底辺の長さ b で割ればよいので,
A B
(7)
M
ab
ですが,(5)式を変形すると
B
e ab 
A
両辺の対数を取ると,
B
ln e ab  ln
A
より
A
ab  ln
B
となるので,(7)式に代入すると,面積平均は
A B
(8)
M
A
ln
B
となり,グラフの区間の両端の値のみで面積平均値を計算できることがわかります.式の
分母に対数(ln)が含まれることから対数平均と呼ばれます.対数平均は,区間を分割す
る必要がなく,誤差のない正確な平均値を得ることができます.
S
注意: 対数平均は,グラフが指数関数で表される場合のみ適用することができます.
適用例:
熱交換器の高温側と低温側の流体の温度差は指数関数となるので,平均値  m は,入り
口温度差を 1 ,出口温度差を  2 とすると
   2
 m  1

ln 1
 2
で表されます.この平均値は,対数平均を用いた流体の温度差の平均であるため,対数平
均温度差と呼ばれます.
http://www.sit.ac.jp/user/konishi/JPN/L_Support/SupportPDF/LogMean.pdf
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