埼玉工業大学 テーマ C09: 機械工学学習支援セミナー(小西克享) アルキメデスの原理と浮力-1/6 アルキメデスの原理と浮力 1.アルキメデスの原理 浮力は,物体が流体(気体と液体)中にあるとき,物体と流体との密度差によって物体 には上向きの力が作用し,この力を浮力といいます.浮力の大きさ F [N]は,物体が排除し ている流体の重量に等しく,式で表すと(1)式のようになります.これをアルキメデスの原 理といいます. F Vg [N] (1) ここで, :流体の密度 [kg/m3] V:物体の体積 [m3] g:重力加速度 [m/s2] 式の導出 図 1 に示すように,体積 V [m3],底面積 A [m2] の直方体が流体中にあるものとします. 直方体の上面には圧力 p1 [Pa],下面には圧力 p 2 [Pa] が加わるため,物体を下面から押す力 の方が上面より押す力の方が大きいことになります.この力の差が浮力になります.一方, 側面には深さに比例した圧力が加わりますが,反対側の面には対称な圧力が加わるため, 側面の作用する力は互いに打ち消し合うことになります. h p1 H p2 図1 流体の密度を [kg/m3] とすると,物体上面に作用する力は, F1 Ap1 Ahg [N] 物体下面に作用する力は, F2 Ap 2 A h H g [N] 埼玉工業大学 機械工学学習支援セミナー(小西克享) アルキメデスの原理と浮力-2/6 となるため,力の差は F F2 F1 A h H g Ahg AHg Vg [N] となり,上述の(1)式が導出されます 例題 1. 密度 0.900 [kg/m3]の物体を密度 1.20 [kg/m3]の流体に浮かべた場合,水中に沈む部 分の体積は全体の何%となるか? 解答 物体の体積を V1 [m3] とすると,物体の重量は W 0.900V1 g [N] 物体の流体中に沈む部分の体積を V2 [m3] とすると,浮力 F [N] は F 1.10V2 g [N] 物体が流体中に浮かぶためには,浮力 F [N] が物体の重量に等しくなければならないから, 1.20V2 g 0.900V1 g V 0.900 2 0.750 V1 1.20 よって,水中に沈む部分の体積は全体の 75.0%となる. 例題 2. ヘリウムを充填した飛行船を製作したい.飛行船の質量が 100kg とすると,必要 なヘリウムの体積は何 m3 か?ただし,充填されたヘリウムは標準大気圧で 0℃の状態(密 度 0.1786kg/m3)にあるものとする.また,飛行船は標準大気圧 0℃の空気中(密度 1.293kg/m3) を飛行するものとする.飛行船を構成する材料の体積は無視するものとする. 解答 ヘリウムの体積を V [m3] とすると,飛行船とヘリウムの合計の重量は W 100 g 0.1786Vg 100 0.1786V g [N] 飛行船に作用する浮力 F [N] は F 1.293Vg [N] 飛行船が流体中に浮かぶためには,浮力 F [N] が飛行船の重量に等しくなければならない から, 1.293Vg 100 0.1786V g V 100 89.734 ≒ 89.7m 3 1.293 0.1786 よって,必要なヘリウムの体積は 89.7m3 となる. 埼玉工業大学 機械工学学習支援セミナー(小西克享) アルキメデスの原理と浮力-3/6 例題 3. 図 2(a)のように重量計の上に水を入れたビーカーが置いたところ,重量計の指示 値は W1 [N] を示した.以下の問に答えよ.ただし,水の密度を [kg/m3] とする. (1) 体積 V [m3],質量 m [kg] の物体を図 2(b)のように,水中に完全に沈んだ状態でひも につるすものとする.このとき,この物体に作用する浮力の大きさは何 N か? (2) 物体をつるした状態で,ばねばかりの指示値 F2 は何 N になったか? (3) 物体をつるした状態で,重量計の指示値 W2 は何 N になったか? (4) 図 2(c)のように,ひもを切って物体をビーカーの底に沈めた場合,重量計の指示値 W3 は何 N になったか? ばねばかり 重量計 (a) (b) (c) 図2 解答 (1) 浮力の大きさは F Vg [N] となる. (2) ばねばかりに作用する力は浮力の分だけ軽くなるから, F2 mg Vg m V g [N] となる. (3) 作用反作用の法則より,浮力に等しく方向が逆の力が水に作用するため,重量計の指示 値は物体をつるす前より Vg [N] 増加する.よって W2 W1 Vg [N] となる. 埼玉工業大学 機械工学学習支援セミナー(小西克享) アルキメデスの原理と浮力-4/6 (4) ひもを切ったことで,物体の重量はすべて重量計に加わる(浮力と水に作用する力がつ りあう)から W3 W1 mg [N] となる. ばねばかりが引く力 [N] F=Vg F=Vg F=Vg mg つりあう mg F=Vg (a) (b) (c) 図3 2.応用-浮き子式比重計 アルキメデスの原理は,浮き子式比重計として液体の比重を測定する機器に応用されて いる.浮き子式比重計は図 4 に示す構造をしています.液面に一致する目盛りを読むこと で,液体の比重を直読することができます.液体の比重が小さいほど,浮き子が沈むため 液面は目盛りの上部を指し示します. 埼玉工業大学 機械工学学習支援セミナー(小西克享) アルキメデスの原理と浮力-5/6 目盛り 液面 おもり 図4 浮き子式比重計 例題 浮き子式比重計を水とアルコールに浮かべたところ,それぞれ図 5 に示す状態となった. アルコールの比重を 0.789 とする.目盛りのついたステムの直径を d 0.500 cm,比重計の 質量を 2.00g とすると,アルコールに浮かべた場合,ステム上部の位置は水の場合より何 cm 沈むか. 目盛り 水面 h アルコール液面 おもり 目盛り おもり 図 5 浮き子式比重計 解答 比重計を水に浮かべたとき,水面下の体積を V1 [cm3]とすると,比重計の質量は浮力に等 しいから 埼玉工業大学 機械工学学習支援セミナー(小西克享) アルキメデスの原理と浮力-6/6 2.00 g 1.00 Vg よって V1 2.00 [cm3] 次に比重計をアルコールに浮かべたとき,アルコール液面下の体積を V2 [cm3]とすると, 比重計の質量は浮力に等しいから 2.00 g 0.789 V2 g よって 2.00 2.5349 [cm3] 0.789 V2 と V1 の差は,ステムの円柱部が h だけ沈む場合の体積に等しいから V2 V2 V1 4 d 2h より h 4 V2 V1 4 2.5349 2.00 2.7242 ≒ 2.72 cm d2 0.500 2 となる. http://www.sit.ac.jp/user/konishi/JPN/Tech_inform/Pdf/ArchimedesPrinciple.pdf Copyright ⓒ 2014 小西克享, All Rights Reserved. 個人的な学習の目的以外での使用,転載,配布等はできません. お願い: 本資料は,埼玉工業大学在学生の学習を支援することを目的として公開しています.本資 料の内容に関する本学在学生以外からのご質問・ご要望にはお応えできません.
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