Title 活性酸素による肝細胞傷害における細胞内

Title
Author(s)
活性酸素による肝細胞傷害における細胞内Ca2+の動態と
その役割
村田, 賢
Citation
Issue Date
Text Version ETD
URL
http://hdl.handle.net/11094/32
DOI
Rights
Osaka University
爪川)
〆 、
・.‘
、
活性酸素による肝細胞傷 害 における細胞内 Ca
2 1
の動態とその役割
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rCalciumi
nSuperoxide-1nducedHepatocyt
1njury
外科系外科学第 二 講座
Dept.o
fSurgery11 , OsakaUniv.Med.School
村田賢
MasaruMurata
( 主 任:森武貞教授)
英文抄録
Themechanisn1so
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2十
KeyWords:I-I epatocyte , Superoxide , C
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ecalcium , Bebformation ,
C
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y.
抄録
ラット培養肝細胞を用いて、活性酸素 (SO) による肝細胞傷害のメカニズムについ
て検討した。特に、細胞の viability、及び細胞膜の形態変化を細胞質内自由 Ca 2 +濃度(
[cf] i) との関連において観察した。 SO はbuffer に flypoxanthine (I-叔)と xanthine
oxidade (XO) をそれぞれ最終濃度が 250μM 、 75rllU /rn1 となる様に添加することに
2
よって発生させた。 [Ca J,は 111tlltiparalneler d
i
g
i
t
i
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drnicroscopy を使用し、 fura-2
十
2
の蛍光画像の比より計算した。1. 271nlvI の Ca + を含むbuffer 中で I-IXと XO を添加すると
1
a
c
t
a
t
edehydrogenase (LDI-I)は添加 1 時間後より buffer 中に放出されはじめ、 5 時
間後にはプラトーに達した。1- IX と XO の添加 18 分後には電顕にて srnall b
1
ebが観察され
るようになったが、 [Ca2+]i はほぼ同時間より上昇し始めた。そして SO 発生 30分後には
[CaH]i は約 700n11 まで上昇し、光顕でも観察できる 1arge b1ebが出現した。 Buffer 中に
Ca + を添加しなければ、 Ca
2
2十
は
SO 発生前の約 200n1rj[にとどまり、 bleb の形成と細胞死
は有意に抑制された。 Buffer 中に EGTA を添加すると [Ca +J j は低下し、 bleb の形成と細
2
胞死はさらに抑制された。 Superoxide disrnutase と catalase 、あるいは nifedipine を
buffer~こ添加すると [Ca2+]i の上昇と細胞傷害とは抑制された。また、 calpeptin (
Ca2
+
依存性中性 protease inhibitor) を buffer に添加すると [Ca2+]i の上昇は抑制されなかっ
たが、細胞傷害は抑制された。以上より、 SO による細胞傷害は細胞外より細胞内に
Ca + が流入することによって始まり、その結果として Ca 2 +依存性の prolease が活性化
2
されbleb の形成と細胞死が進行することが示唆された D
緒言
Ca 2 + は虚血・再潅流傷害において重要な役割を果たしていると考えられている 1 ) 。細
胞毒による肝細胞傷害についても、 Ca 2 + の役割j が種々のモデルで研究されてきた 2) ー 7 ) 。
細胞外に Ca:2 + を添加した場合に細胞傷害が憎強するという観察から
2
"Ca
+
depcndenceo
ft
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cc
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l
ldeath" という概念が提唱された 2 ) 。即ち、細胞膜が傷害を
2
受けると、電気化学的な急な Ca +勾配にそって Ca:2十が細胞内に流入し、これによって傷
害が進行すると考えられた。しかし、逆に細胞外の Ca 十 の存在が保護的に働くという報
2
2
告 3) もあり、肝細胞傷害における Ca + の役割については議論されているところである。
細胞傷害時の [Ca:2つi の変動については、 glycogen phospholylase 活性、 phopholipas e
Aっ活性、 non-lYSoSOlTlal proteinasc 活性、などをモニターすることによる間接的な測
定 8) ー 1 0) が試みられてきた。近年、蛍光プローブである fura-2 を利用することにより
直接的な [Ca +Jj 測定が可能となり、種々の肝細胞傷害モデルにおいても報告がみられる
2
ようになった。 Lelnasters らは cyanide と iodoacetate を用いた chelnical hypoxia のモ
デ、ルにおいて [Ca +J j を測定し、細胞表面に blebが形成される時あるいは細胞傷害が進行
2
する時に [Ca2+]i は変化しないことを示した の 。しかし、相反する結果が他の施設から報
告されている 1 1 ) ー 1 4) ロ今回の研究は、 superoxide による肝細胞傷害における [Ca2+] i
の役割を明らかにすることを目的として行なった。
材料と方法
材料
Hypoxant
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eCl-IX)、 xanthinc o
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uperoxidedismutase 、 catalase は Sigllla Chelniα1 COlnpanyCS t. Luis , 110 , USA) よ
り購入した。 Willliams' Emediu111 は ICN B
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a11esa , CA , USA) より
購入した。 Co l1agenase は和光純薬より、購入した。 Fura-2 と fura-2-A1i は同仁化品
より購入した。 Nifediopine はバイエル薬品より供与された。 Calpeptin は大阪大学第
一 外科の上林純 一 博士より供与を受けた。
ラット肝細胞の分離と培養
肝細胞は体重 180g-220g の vVistar系雄性ラットよりSe glen の方法に準じた
collagenase 潅流法にて分離した 1 5 ) 、 1 6 ) 。分離した肝細胞は 5% fetalcalfscnun 、
1
0
n
1
1dexamethasone 、 100ni\t1 il1sulin を含む vVil1iarns' El1 lediu111 中に 5 X 105
cells/ml となるように調整し、 collagen coat した cover glass 上で 95% a
i
r5%C02 の
条件で 24時間培養した。
2
細胞内 Ca 十 の測定
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1cssenliallnediulll 中で
0
1 時間、 37 C でよ音養し、 fura-2 を負荷した。培養肝細胞を I{re b
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eit-HEPES
2
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fer (Ca+:1. 271n1\1)で 3 回洗浄し、顕微鏡の slage にのせた。 [cd+]i は
1
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y(Argus100 、浜松フォトニクス)で測定した。
培養肝細胞を 5μM の fura-2-ANI を含むEagle's
このシステムでは、励起光による肝細胞の ph o lobleaching と photodarnage を最少
にするため、 COlllpul e r制御によるシャッターを使用した。また n e u t
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も使用した。 Fura-2 を負荷した肝細胞に 340n 1\1
2
(Ca +感受性)と 380n 1\ 1
2
(Ca + 非感
受性)の励起光を照射し、その蛍光像よりそれぞれbackgrouncl を足し引いたものを
pixel ごとに演算して蛍光強度の比を求めた。標準曲線は、 EGT1\ と fura-2 を含む
HEPESbuffe r を用いて求めた l í)。
実験系
肝細胞に fura-2 を負荷した後、回(と XO を添加し、その後 3 分毎に、 [Ca2+J j を測疋
し、同時に光顕にて形態の変化を観察した。さらに 2 %glutaraldehyde と 2%
osmiUll1で固定し、走査電顕(日立製作所)で細胞表面の変化を観察した。
HX と
XO を添加した後の肝細胞の viabilitvは、 buffcr 中 に欣出される LDfI活性で評価した。
LDH 活性は Un ikit
(中外製薬)を用いて酵素的に測定した。 LDH の最大放出 量 は、
肝細胞を 3 回凍結融解した後に遊離された 量 と定義した。各実験での LDI-I活性は、最
大放出量に対するパーセントで示した。 1企〈と XO を混合した時に発生する superoxid
の定 量 は、
cytochromeC 法で測定した 1 8) 。
すなわち、 cytochr0111e C の存在下で
HX とXO を混合した時の 550n 1\1 の吸光度の変化を 1 分間測定し、その勾配より求めた。
2
細胞外 Ca 2 + の影響を調べるために、 Ca + を添加しない K.rebs-Henseleit-HEPES
b
u
f
fer、あるいは、 Ca 2 + を添加せず、0.5n11\1 の EGTA を添加した buffer を使用して同様
の実験を行った。さらに、 supe roxid e dismutase と cat: alase
(各 10 - 1000lT In11) 、
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e (1μM) 、 calpe ptin (細胞膜透過性 Ca +依存性protease i
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h
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2
10-100μM) の効果を調べた。いずれも、 superoxide の発生直前に buffer~ こ加えた。
統計学的処理
各群聞の有意 差検定には分散分析法 (ANOV}-\ ,
a
n
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c
e)を用いた。い
ず、れも有意水準を危険率 5% とした。本文中の数値および図中の表示は、平均±標準偏
差 であらわした。
結果
Superoxide 発~
250μM の IIX と、 25 、 50 、 75 rnU/1nl の XO を混合すると、それぞれ 3.97 、 7.96 、
12.5μ11/1ninute の superoxide が発生した (Fig.1.) 。以下の実験では 75
rnU/1n1 の
XO を使用した。
肝細胞の viabilily、 [Ca 叶 i 、形態変化
HX と XO を添加した時、 bu[[er 仁1 1 に放出される LDH活性は、添加後 0.5 、1. 0 、
5.0 時間でそれぞれO 、 39 、 75 、 95% であった (Fig.2.)
0
[Ca
2
ト
3.0 、
J i の初期値は約
200n 1\1 で、トIX と XO の添加 18 分後よりヒ界しはじめ 30 分後には約 700n 1\ 1 に達した(
Fig.3.) 。走査電顕にて 18 分後には slnall ble b が観察され、 21 分後には 1arge ble b が光
顕上観察された(
F
i
g
.4.
)
0
30 分後には、その大きさも数も増大した。 [Ca 2 +J 1 と細胞
膜に形成された b1eb の間には相関が認められた。 Superoxide 発生 21 分後、 [Ca :2十J i の上
1ーが観察された肝細胞のほとんどに光顕上b1e b が認められた。
Ca2+ 非添加の効果
Ca2+ を添加しなし )buffer を用いると [Ca 2 +J 1 は HX と XC) の添加 3 0 分後まで上昇しな
かった。さらに buffe r に EGTA を添加すると、 [Ca 2+]i は徐々に低下した( F
i
g
.
3
.)。
Buffer 中の Ca 2+ を 1.27m1\1 とすると由C と XO の添加 30 分後に 570~の肝細胞表面に 1arge
b1e bが観察されたのに対し、 Ca 2+ を添加しなしユ buffer 中では、 26 0 ó'の細胞の表面にの
み 1arge b1ebが観察された。さらに bu[fer に EGTA を添加すると、 1arge b1eb の観察され
る肝細胞は 100~ にまで減少した(
F
i
g
.5
.)。細胞外の Ca 2+ の有無に関わらず、 LDH は
由ぐと XO の添加 30 分後まで放出されなかった。 superoxide の発生は Ca 2+ を添加しない
場合でも( 11.6μM/min )、 Ca 2+ を添加せず EGTA を添加した場合でも( 1
1
.
6
μM/min )影響されなかった。
SOD と catalase の効果
SOD と catalase は用 量依存性に LDH の放出を有意に抑制し(対照:
6
1O~、
10
lT
/
r
n
1:
62%、 100 U/
l
n
1:31 ?~、 1000 U/
l
n
1:0 0 ;) 、 1000 U/m1では [Ca 2+J 1 の上昇も抑制さ
れた (
F
i
g
.6
.
)
0
Supe roxidc の発生は 1000 U/1nl の存在下で完全に抑制された(
1
.
7
μNI/min )。
Nifedipine の効果
HX と XO の添加 3 時間後に buffer 中に放出される LD日は、 1 jA1\1 の nifedipine の存在
下で部分的に抑制され(対照: 67 0 ;、 nifedipine :39 0 ム)、また [Ca 2 +] i の上昇も抑制さ
れた( F
i
g
.7
'
)
0 Superoxide の発生はnifcclipine の存在により影響を受けなかった(
11.9μ~1/1nin ) 。
Ca2+依存性 prolease inhibitor の効果
30μM の calpeplin の存化ドで日〈と XO を buffcr に添加すると、 LDI-Iの放 lj l は有怠に
抑制された。しかし 100μM の calpeptin の存伝下では LD 日はさらに上昇した(対照:
53 0 0 、 10 }tÌ\I: 51 0 ム、 30μ 1\ 1
:320~ 、
100μ 1\'1
:75 0ム
)
0Ble b の形成も 30μM の
calpep tin の存在下では抑制された。しかし [Ca :24l i の上昇は抑制されなかった (Fig. 8
.)。
Calpeptin の存在によっても superoxidc の発生は抑制されなかった
(ll.l }t1\l/nün) 。
考案
以前より種々の臓器の虚血 ・ 再潅流傷害において Ca~+ が非常に重要な因子であること
が報告されている 1 ) が、最近、培養細胞の [cd+]i が測定可能となり、その病態をさらに
詳細に検討することができるようになった。培養肝細胞に対して肝毒性を有する薬剤を
添加すると、傷 害 を受けた細胞の [Cap]i は上昇し、これがphos pholipase や Ca 2 +依存性
の protease を活性化し、傷 害 が進行することが示 されている 1 9 ) ー 2 1) 。 虚血・再潅流
傷害においても同様なメカニズムが考えられているが、 Len1aste rs ら 5 ) はI{CN と
iodoacetat e を用いた chenlical hypoxia の 実験系で、肝細胞傷 害 の進行が [Ca2+]i の上」ι
2
なしに起きることを示し、虚血 ・ 再濯流傷害における Ca + の役割に疑問がもたれている。
方、 McCord 22) は虚血・再瀧流傷 害 の原肉として superoxid e の関与を提唱した。す
なわち、 一 定時間の虚血後組織を再港流すると、虚血中に adenin e nucleotides の分解
産物として産生された hypoxanthine(HX) から xanthine oxidaseCXO) によって
superoxide が生じ、これが血管内皮細胞などの細胞を傷害するという機序である。そ
こで、本研究では培養肝細胞に1-IX と XO とを添加し、 superoxide を発生せしめ、虚血 ・
再潅流傷害のモデルとし、その時の肝細胞傷害の進展と [Ca +J i の関係を検討した。
2
培養肝細胞に superoxide を添加すると、
め、細胞死が見られるようになり、
1 時間後より buffer 中に LDH が漏出しはじ
5 時間でほとんど、の細胞がviability を失った。この
2
系で、細胞死が始まる以前、すなわち supcroxide 発生後 30分までの [Ca +J i の変化と細
2十
胞膜の変化を観察すると、 [Ca J i は 18 分頃より上昇を開始し、以後比較的急峻に上昇し、
30 分では 700~800nM となった。 [Ca +J i が上昇し始めると同時に細胞表面に sl11all b
l
eb
2
が走査電顕で検出されるようになり、その後光顕でも観察可能なlarge blebが出現した。
しかし、 superoxid e 発生後 30 分以内では細胞膜が破綻す‘る細胞はなかった。このよう
に、本実験モデルでは細胞膜表面の変化と [Ca2+]i が相関していることが明らかとなった。
ここでは、 [Ca2+]i が上昇してくるまでに 18 分間の時間差がある。現在までに肝細胞の
[Ca 2 J i の変化を測定した報告では、 phenylephrine 、 vas o
p
r
essin 、 hepatocyt
十
g
r
o
v
v
t
hfactorなどを添加した場合、数分以内の [Ca2+] i のヒ昇が示されている 2 3) 、 24) 。
これらはレセプターを介したホルモンの生理的な作用で、反応が急速に起こることも珂
解できる。また lcrl-buLyl hydroperoxide による肝細胞傷害モデルでも [Ca +J j は数分
2
以内に 一 過性に上昇し、その後徐々に上昇し細胞死に至っている。同様な radical による
細胞傷 害 で、これらの差が生じた原因は明らかでないが、 radical の反応性の違いと用い
た肝細胞の倍養時間の走が考えられる。初代収益J] f 細胞は 24 時間以上倍養すると
phen
y
l
ephrine やvasopressin による [cd t]i の反応が低下、することが知られている 2 :3)。
我々のモデルでは肝細胞は 24 時間培養したものを川いたが、
tert-buLyl
hydroperoxide による細胞傷書のモデルでは 1 f
j
i
l
~'J: r~1J倍養したものが用いられた。
2
2
ヒ昇した [Ca +Jj の起源を調べるために細胞外 Ca +環境を変更した。 Buffer に Ca
2
十 を添
2
2
加しない CCa +く 10μ 1\1)と、 [cd+]i は上昇せず、 EGTi\ を添加すると [Ca +J i は徐々に低
2
下した。本実験モデルにおける [Ca J i の上昇は細胞内 organellaからの Ca + の放山も否定
十
2
することはできないが、以 l二 の実験結果よりは、仙の報告同様 2 )、 1 4) 、 1 9) 、 25) 、細胞
2
外より細胞内への Ca + の流入によって上昇する可能性が高い。したがって、
2
superoxide が生じると細胞膜に何らかの傷害を起こし、そこで細胞外より Ca 十が徐々
に流入する結果となる。そして、膜表面には slllall bleb ができる。このときの Ca +流入
2
2
のメカニズムとしては、 Ca +channel あるいはその仙のメカニズムが考えられるが詳細
は不明である。明らかなことは細胞膜が破壊されたものではないといえるであろう。
次に、 L型 Ca + c
hannelblocker として知られている nifεdipine を用いたところ、
2
1μM の nifedipine は [Ca +Jj の上昇と LDH の政出を部分的に抑制した。この現象はCa +
2
2
channel の存在を示唆する結果かもしれないが、現在まで、 BF 細胞ではvoltag
sensitive な Ca 2 + channe1 のイ字在が証明されておらず 2 6) 、
この効果は Ca
2十
channel を
介さない他のメカニズム、例えばantioxidant としての作用、また phophlipase Aつの阻
宝作用などが関与している可能性も考えらる 2 7) 。
2
では、 [Ca +J j が 1二昇した場合、その細胞内で何が起きるか。 Nicotera らは
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lproteases が細胞傷害の進行に重要な役割を果たしていることを報告し
2
た 20)
Ca+dependentprotease の calpain は最適pH が中性で、 Ca 2 + によって制御さ
0
れる non -lysosomalな cysteine protease として知られおり、種々の細胞で proteolytic
な過程において重要な役割を果たすと報告されている 28) 、 2ω 。 IÍIl小板では
calmodu
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nbindingprotein や phospholipase A 2 が αlpain によって崩壊すると報告さ
れている :3 0) 、:3 1) 。さらに actin b
indingprotein などの細胞骨絡も Ca 2 + dependenL
protease の標的になるとされている 3 2) 、 3 3) 。今 回の研究で細胞膜透過性の αlpaül
inhibitor である calpeptin の効果について調べた。 30μM の αlpeptin はbleb の形成と
LDH の放出を有,意に抑制したが、 [Ca2+]i のヒ昇は抑制しなかった。これらの結果と過去
の報告 20) 、 2 1) より、上昇した [Ca 2 J j が calpain を活性化し、細胞骨格を破壊し、細胞
斗
死に至るものと考えられた。高濃度の calpeptin は血小板におけるアラキドン酸代謝な
ど種々の細胞機能に影響を及ぼすと報告されている 2 8) 。今回の実験においても 100片山[
の calpeptin は superoxide による細胞傷害を増強した。
結論
Superoxide による肝細胞傷害時には細胞外より細胞内に Ca +が流入することによっ
2
て [Ca J j が上昇し、その結果 Ca + dependel
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lprotease が活性化され、
2十
2
細胞骨格の構造と機能が傷害されることが示唆された。
謝辞
稿を終わるにあたり本研究の課題を与えていただき、御懇切なる御宿導、御校閲を賜
りました森武貞教授、並びに、研究遂行に際し直接の御指導、御教示を頂きました門 ­
守人助教授、梅下浩司博士に心から深謝致しますとともに、教室員各位に感謝します。
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