NITAを吸気 マニホールドに応用

自動車
NITAを吸気
マニホールドに応用
Laz Foley(Fluent Inc.),Mel Cahoon(米国 バージニア州チェサピーク,Volvo
Penta of the Americas)
入口圧(Pa)
今日,CFDは複雑でかつ時に計算負荷が大きい,様々
な非定常流の問題で幅広く利用されています.コンピュー
ターのテクノロジーが格段に進歩している一方,CFDの
アルゴリズムも絶えず発展,精密化されているので,非定
常計算の効率向上が約束されています.
FLUENTの全バージョンでは現在までのところ,分離
ソルバーで反復時間前進
(ITA)
法を利用しています.この
場合,運動量方程式と圧力方程式で
(ならびに他の式でも)
,
グローバルイタレーションが時間きざみ毎に多数回実行さ
れます.FLUENT 6.2のリリース版には,無反復PISO法
[1]
および無反復Fractional Step法
[2]
という,2次の無反復
時間前進(NITA)法が新たに2種類用意されています.こ 吸気マニホールドのジオメトリ
れらのNITAアルゴリズムでは,グローバルイタレーショ
ンを時間きざみ毎に複数回実行しなくてもよく,代わりに
サブイタレーションを個別の方程式で何回も実行すること
で,2次の空間精度を確保しています.グローバルイタレー
ションはサブイタレーションよりも時間がかかる
(それゆ
え負荷の大きい)処理なので,NITAなる新アルゴリズム
の計算全体で見れば,完全な反復時間前進アルゴリズムよ
りもかかるコストが格段に少なくなります.NITAという
手法は反復法よりも数倍実行が高速ですが,中でも無反復
Fractional Stepアルゴリズムの方は,無反復PISO法と比較
して非定常計算の効率をさらに最大20%まで改善できます.
これは,Fractional StepアルゴリズムがSIMPLECなる圧力
と速度の連成修正子を用いているからです.
本新機能の一例として,NASCARレースでよく見かけ
るV8の吸気マニホールドでシミュレーションが実施され
ました.マニホールドには入口が1カ所,出口が8カ所あ
り,入口にはキャブレターが取り付けられており,出口は
エンジン筒の吸気羽根車です.メッシュは155,000セルで,
入口と8カ所の出口のすべてで境界条件が非定常テーブル
にて指定されています.非定常テーブルのデータは質量流
V8吸気マニホ−ルドの静圧分布をFLUENT 6.1(左,反復アルゴリズム)お
束と温度の値からなり,1次元エンジンサイクルのシミュ
よびFLUENT 6.2(右,無反復PISOアルゴリズム)で比較
レーションから取得したものです.
FLUENTの結果からは,マニホールドの流れ場が持つ
性質について,羽根車で生じる全圧力低下や流れの分岐箇
101200
所を始めとして,貴重な知見が得られました.さらに,反
101100
復ソルバーと無反復ソルバーで予測値の類似性も指摘され
ました.静圧分布図を見ると,反復
(FLUENT 6.1)
法およ
101000
び無反復PISO
(FLUENT 6.2)
法で予測される流れ場には軽
100900
微な差(20Pa程度)しかなく,後者の手法の方が前者より
100800
も4倍高速でした.こうした結果は,数値精度をわずかに
100700
妥協すれば,非定常計算の効率が驚くほど向上できること
100600
を物語っています.
FLUENT 6.1(ITA-PISO)
100500
references:
30
1
R.I. Issa, “Solution of the Implicitly Discretized Fluid Flow Equations by
Operator-Splitting,” Journal of Computational Physics 62,
p. 40-65, 1985.
2
J.B. Perot, “An Analysis of the Fractional-Step Method,” Journal of
Computational Physics 108, p. 51-58, 1993.
Fluent NEWS fall 2004
100400
-180
FLUENT 6.2(NITA-PISO)
-90
0
90
180
270
クランク角(atdc)
360
450
540
吸気マニホ−ルド入口における平均静圧対クランク角.ITA-PISOとNITAPISOでアルゴリズムどうしがよく一致している.