Becker muscular dystrophy severity is linked to the structure of

【Remudyニュースレター第66号】
配信日:2015年05月19日
「ベッカー型筋ジストロフィーの重症度とジストロフィンの構造の関連」
Hum Mol Genet. 2015 Mar 1;24(5):1267-79. doi: 10.1093/hmg/ddu537. Epub 2014 Oct 27.
Becker muscular dystrophy severity is linked to the structure of dystrophin.
Nicolas A, Raguénès-Nicol C, Ben Yaou R, Ameziane-Le Hir S, Chéron A, Vié V, Claustres M, Leturcq F,
Delalande O, Hubert JF, Tuffery-Giraud S, Giudice E, Le Rumeur E; French Network of Clinical Reference
Centres for Neuromuscular Diseases (CORNEMUS).
森まどか先生に教えて頂きましたベッカー型筋ジストロフィーに関する興味深い論文のご紹介です。フランスの神経筋疾患
の臨床リファレンスセンターネットワーク CORNEMUS のデータのまとめが報告されました。
この研究で、著者らはベッカー型筋ジストロフィーを引き起こす in-frame となる変異 dystrophin の分子構造に着目しまし
た。そのなかで頻度が高い特定のエクソンを欠くものとして Δ45-47: n=127, Δ45-48: n=90, Δ45-49: n=31, Δ45-51: n=3 のう
ち、前 3 者の拡張型心筋症(DCM)と車椅子依存について検討されました。
結果は、Δ45-48, Δ45-49 は Δ45-47 と比較して 11-14 年程度 DCM の発症年齢が遅く、Δ45-49, Δ45-47 は Δ45-48 と比
較して車椅子に依存する年齢が早いことが示されました。それぞれの変異のグループで、タンパク質の発現量の傾向に違い
はありませんでした。
観察された臨床症状の違いは dystrophin のセントラル・ロッドドメインの分子構造、すなわち wild-type dystrophin に似
ているか(hybrid repeat: Δ45-48, Δ45-51)と似ていないか(fractional repeat: Δ45-47, Δ45-49)に依存すると考えられ
ます。In silico の解析では、fractional repeat タイプは hybrid repeat タイプと比較して蛋白リフォールディング動態に時間がか
かり、分子表面での疎水性が高いことが予想されています。
考察では、他に、alternative splicing を惹き起こす cis-elements、特にセントラル・ロッドドメインをコードするエクソン上の
アミノ酸変異を伴わない SNPs、microRNA による転写後調節、他の遺伝的修飾因子などが臨床症状のバラツキに影響
を与えている可能性についても指摘しています。
今回の結果から、タンパク質の発現量よりも変異の部位によるタンパク質の高次構造の変化が臨床症状により影響を与
えていると考えられます。N-末ドメインやシステインリッチ・ドメインでは in-frame 変異でも臨床症状が重症化することが報告
されていましたが、セントラル・ロッドドメインの変異によるタンパク質の高次構造と臨床症状の関連性を言及した点で、重要
な報告です。mdx マウスに短縮型 dystrophin を導入した基礎研究でいわれてきた仮説を支持するものであり、エクソンスキ
ッピング薬の開発の方向性に影響を与える重要な情報を提示しています。
その他の参考文献:
van den Bergen JC, et al. (2014) JNNP 85:747-753
Dystrophin levels and clinical severity in Becker muscular dystrophy patinets
Remudy ニュースレター 66 号