第49回産総研・新技術セミナー 開催案内 主催:国立研究開発法人 産業技術総合研究所 東北センター 仙台青葉サイト 後援:(地独)青森県産業技術センター、一般社団法人 東北経済連合会 拝啓 皆様にはますますご健勝のこととお喜び申し上げます。 さて、地域発イノベーションの創出による地方創生を目指して、東北の企業の技術力強化に結び付く 技術シーズを詳細に紹介する「第49回産総研・新技術セミナー」を開催致します。今回は、近赤外分 光技術を応用し、東北のリーディング産業である食品製造産業を対象に公設試と企業の連携で取り組ん だ食品の非破壊検査装置の開発事例と産総研の脳機能計測技術について話題提供いたします。この機会 にぜひ皆様の研究開発にお役立てください。 敬具 記 日時 平成28年2月16日(火)13時20分~16時00分 会場 産総研 仙台青葉サイト(東北サテライト) 会議室 〒980-0811 仙台市青葉区一番町 4-7-17小田急仙台ビル3階 TEL: 022-726-6030 URL: 技術課題・プログラム http://unit.aist.go.jp/tohoku/asist/ 近赤外分光技術を応用したイノベーション事例の紹介 -①公設試と企業 の連携による食品検査装置の開発、②産総研の脳機能計測技術への応用- 挨拶・趣旨説明:13時20分~13時30分 国立研究開発法人産業技術総合研究所 東北センター 所長 松田宏雄 講演1:13時30分~14時20分 「近赤外分光法による食品の非破壊検査装置の開発」 青森県知的財産支援センター 花松憲光 知財活用マッチングプランナー(元青森県産業技 術センター理事、現㈱カロリアジャパン 取締役会長 兼 研究総括代表) 講演2:14時20分~15時10分 「近赤外脳機能計測装置の高信頼化手法の開発」 産総研 人間情報研究部門 脳機能計測研究グループ 谷川ゆかり 主任研究員 休憩(20分):この間、希望者は名刺交換をお願いします。 相談会:15時30分~16時00分(要予約) 参加費 無料 定員 25名 申込方法 E-mailで(件名:第49回新技術セミナー参加申込)、①参加者名、②所属機関、③役職、 ④電話番号(緊急連絡先として使用しますので、参加者全員の番号を記入ください)、⑤E-mailアドレス を新技術セミナー事務局([email protected])宛てお送り下さい。代表申込者宛て、受付完了メー ルを事務局より差し上げます。受付完了メールが届かない場合は、お手数ですが、022-726-6030(担当 者 大柳)まで電話をお願いいたします。 また、セミナーでは質問しにくいことを個別に講師に質問するなどの簡単な相談をご希望の場合は、 ⑥相談希望(講師名)と明記ください。(先着1~2件。講師の都合によりお受けできない場合もござ います。) 申込先 新技術セミナー事務局 E-mail: [email protected] 申込締切 平成28年2月12日(金)(※定員に達し次第締め切ります。) 趣旨説明 国立研究開発法人産業技術総合研究所は、産業のニーズを踏まえた技術の「橋渡し」を加速するため、 「役立つ技術」の創出を目指した目的基礎研究の強化、企業・産業界の技術ニーズ情報の集約・分析に よる技術マーケティングの強化、地域発イノベーション創出による地方創生を目指した地域の中堅・中 小企業の技術力の強化に取り組んでいます。産総研・東北センターでは、これまで東北地域企業の技術 力の強化に向けた取り組みとして、産総研の技術シーズを紹介する「産総研・新技術セミナー」を開催 してまいりましたが、新たな取り組みとして、地域の産業ニーズに精通し、技術開発のための資源と人 材を有する公設試験研究機関と協働して、東北地域に必要な技術シーズを紹介することにいたしました。 今回は、青森県産業技術センターが地域企業と共同で取り組んだ近赤外分光技術を利用した食品検査装 置の開発事例および産総研の脳機能計測への応用事例と海外展開に重要な国際標準化の取り組みについ て紹介いたします。近赤外分光装置は比較的安価で、空洞化の進行により新事業を模索する東北の電子 部品・デバイス製造業にとって開発に取り組みやすいものと考えます。この機会に開発研究の参考にし ていただければ幸いです。 「近赤外分光法による食品の非破壊検査装置の開発」 近年、近赤外分光法は非破壊的な検査法として、農産物や食品分野等の糖、タンパク等の成分分析、気象観 測や農産物生育状況等のリモートセンシング技術の幅広い分野に応用されています。 私共は青森県内の中小企業のメカトロニクス分野の産業の活性化と人材の育成を目的とする事業の一環と して 1989 年から「食品の近赤外分光法による非破壊検査装置の研究開発」を企業の公募による産学官連携体 制で実施してきました。これまでに、1)リンゴの携帯用糖度計、2)食品のカロリー測定装置、及び3)毛 髪探知装置等に関する研究開発を行い、実用化・商品化に寄与してきました。 これら研究開発に至る背景と目的や実施体制、及び主な要素技術等について紹介します。 1)リンゴの携帯用糖度計の開発1)(1989 年~1998 年:特許 3 件) 1989 年頃、非破壊的な小型のリンゴ糖度計は市販されていなく、生 産者から切望されていました。本装置の分光光学系には駆動部がなく 高速に波長測定が可能な分光方法であるポリクロメータを設計し、光 ファイバーによる反射式近赤外分光で分解能や明るさが十分な性能を 有した非破壊かつ小型の糖度計測装置であることを特徴としています。 1998 年 2 月に東和電機工業㈱(青森県藤崎町)から商品名「アマミー ル」 (図1)を製造・販売しました。 2)食品のカロリー測定装置の開発 2)(1998 年~2005 年:特許 2 件、海外5カ国) 1998 年に「近赤外領域において、食品のカロリーに帰属する波長が 存在する」という仮説を提唱し、近赤外分光法による食品のカロリーに 関する研究を開始しました。カロリー測定のための帰属波長を見出し、 それら帰属波長による回帰式を組み込んだカロリー測定装置を開発し ました。2005 年に食品のカロリーを測定テーブルに置き、ボタン一つ で計測できる装置を㈱ジョイ・ワールド・パシフィック(青森県平川市) 図2.食品のカロリー測定装置 から商品名「カロリーアンサー」(図2)を製造・販売しました。 3)毛髪探知装置の開発3)(2009 年~2014 年:特許 3 件) 食品製造業界において、毛髪等の体毛(毛髪等)の異物混入が課題と なっていますが、有効な装置や技術が開発されていません。本研究開発 は県内ベンチャー企業㈱カロリア・ジャパン(青森県十和田市)の基礎 研究による特許2件を技術シーズとして、平成23年度補正戦略的基盤 技術高度化事業で実用化研究を行ったものです。本装置は、一般的な食 品に含まれていない毛髪類の主成分であるケラチン(シスチン)を近赤 図3.毛髪探知装置 外分光法で検出する方法、光スイッチを応用した多点全方位検出法、及びSVM法の応用による高速・高 精度な判別技術で構成していることを特徴としています。現在は菓子類製造会社に設置し、長期間にわた る耐久性と精度に係る実証試験を実施しています。2018 年の前期に商品化(図3)を予定しています。 参考文献 1)T. Temma, K. Hanamatsu, F. Shinoki : Near Infrared Spectrosc.,10(2002), 77 2)K. Hanamatsu, K. Miura, T. Okayama, M. Hanamatsu, M. Yamahata : The Review of Laser Engineering, 39(2011), 243 3)花松憲光, 小野浩之, 小田桐英夫, 沢 隆裕, 三浦克之:JP Patent 4104075 (2008) 「近赤外脳機能計測装置の高信頼化手法の開発」 近年、非侵襲の脳機能計測法において、核磁気共鳴断層画像撮影装置(MRI)や陽電子放射断 層撮影装置(PET)などの優れた脳機能イメージング装置の出現により、脳機能の研究は飛躍的 に進歩してきています。しかし、これらの計測法は拘束性が高く、長時間のモニタリングが困難 であるなどの問題があります。一方、近赤外光を用いた生体の機能イメージング装置(NIRS 装 置)はこれらの計測法に比べ、空間分解能や脳深部計測などでは劣るものの、特殊な測定室は必 要なく、低い拘束状態で計測可能な非侵襲計測法です。 波長 700~900 nm 程度の近赤外光は、生体に対し比較的高い透過性があります。この波長範 囲で、酸素を多く含むオキシヘモグロビンと酸素の少ないデオキシヘモグロビンの分光スペクト ルが異なることを利用してヘモグロビン濃度変化や酸素飽和度を求めることができます。これが 近赤外分光法(NIRS)の原理です。 NIRS の計測法には、主として、連続光(通常のレーザー光)と光検出器で構成される簡便・ 小型・安価で、長時間リアルタイムで測定ができ、脳内の素早い代謝変化にも追従が可能な連続 光計測法と、パルス光源と高速光検出器を用いて定量的な計測が可能な時間分解計測法の 2 種 類があります。連続光型の装置はこの簡便性を生かし、光トポグラフィーなどの装置が製品化さ れ、脳機能研究や運動計測など各種計測にも応用されています。 生体組織は光を散乱させるため、照射光は生体をまっすぐ透過せず、光源―検出器間距離より もはるかに長い経路を進み、検出器に到達します。連続光型装置で得られた信号は、「ヘモグロ ビン(Hb)濃度」と光が通過した経路の長さ「実効光路長」の積の変化量を示しますが、 「実効 光路長」の計測手段がないため、Hb 濃度の定量測定ができません。さらにこの信号は、光が通 った経路内の変化を全て含んでいます。例えば、脳機能の計測をする際に、顔が紅潮するなど皮 膚表面近くの血流が変化すると、得られた信号には皮膚表面の血流変化も含まれてしまいます。 また、計測中に姿勢が大きく変化すると、光ファイバと皮膚の設置状態が変化して、光が通過す る経路が変わることもあります。 産業技術総合研究所脳機能計測研究グループでは、NIRS 装置による脳機能計測の原理と生理 学的な機序への考察に基づき、様々な外乱に対し安定な計測を可能とする手法の開発を行い、よ り信頼度の高い脳機能計測技術の実現を目指しています。その一環として、皮膚表面の血流変化 の影響を除去する手法の開発や、光ファイバを皮膚に安定に設置させるためのホルダーの開発を 行っています。また、計測装置の安全性および性能を担保するための国際標準の策定にエキスパ ートとして参加、昨年 6 月には国際規格 IEC/ISO80601-2-71 となりました。さらに、NIRS 計 測の定量化を目指し、時間分解計測装置の開発も行っています。本件では、これらの研究につい てご紹介します。
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