pH感受性相互作用の合理設計

P012
pH感受性相互作用の合理設計
渡邊 秀樹、松丸 裕之、大石 郁子、馮 延文、小田原 孝行、本田 真也
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産総研 バイオメディカル研究部門
【研究 内 容 】
pH感受性など環境応答性相互作用の創出は、蛋白質医薬の薬効・薬物動態の質的改変やアフィニティー精製
プロセスの最適化など、バイオ医薬産業の多くの面で有益となり得る。今回pH感受性相互作用の合理設計モデ
ルとして抗体Fc結合蛋白質protein G B1を用い、結合界面に酸性条件でのみ静電反発を誘発させるHis残基の
系統的導入を試みた。結晶構造と変異体試験の情報を基に、残基間距離、対残基側鎖の性質、結合へのエネル
ギー寄与を算出し、導入部位を決定した。速度論、熱力学、X線結晶構造の観点から相互作用機構を解析し、
pH感受性の顕著な改善を確認するとともに以下の結論を得た。(1) pH感受性はHis導入に伴い累積的に向上す
る、(2) Hisによる静電反発は酸性条件下においてのみ結合エンタルピーを正へ増加させており、それによりpH
感受性を高めている、(3) リガンド本来の機能・構造は完全に維持されている、(4) 芳香環残基付近へのHis導
入は近傍での水和水増加とそれに伴う結合エントロピーの増加を誘引し、部分的に感受性の改善を抑制する。以
上の結果を基に、汎用性の高いpH感受性分子の設計手法としてガイドラインを提案したい。