次世代医療機器に対するガイドラインの策定 -円滑な開発と審査の迅速化のために- Guidelines for Innovative Medical Devices 赤松幹之(産総研)、○本間一弘(産総研)、岡崎義光(産総研)、田口隆久 (産総研)、鎮西清行(産総研)、鷲尾利克(産総研)、山下樹里(産総研)、 竹村文(産総研)、木山亮一(産総研) Motoyuki AKAMATSU, AIST, Namiki1-2-1, Tsukuba, Ibaraki, 305-8564, Kazuhiro Homma, AIST, Yoshimitsu OKAZAKI, AIST, Takahisa TAGUCHI, AIST, Kiyoyuki CHINZEI, AIST, Toshikatsu WASHIO, AIST, Juli YAMASHITA, AIST, Aya TAKEMURA, AIST and Ryoichi KIYAMA, AIST Guidelines for innovative medical devices such as the artificial heart, the artificial materials, equipments for regenerative medicine, DNA-chips for gene analysis, surgical robots and others are discussed and proposed. Those guidelines are terribly useful for industries that would like to propose review process at PMDA (Pharmaceuticals and Medical Devices Agency) for those innovative medical devices, and suggest evaluation methods for safety and performance of the developed medical devices. Those guidelines are related ISO and/or JIS standards are used, and discussed some standard for those medical devices. Proposed guidelines are opened the public through the METI (Ministry of Economy, Trade and Industry) homepage http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/service/iryou_fukushi/index.html. Key Words: guidelines, innovative medical devices, review process, safety, performance 1.緒言 「国民の長寿」と「質の高い生活」を実現するため には、新しい医療機器の医療現場への早期に導入する ための新たな施策が必要な状況にある。有益な医療機 器の開発促進と実社会への迅速な導入は、医療機器産 業を活性化・育成し、国際競争力の増大に大きく寄与 する。 平成17年度から次世代の医療機器の円滑な開発 と審査の迅速化に資するガイドラインの策定を目的 とした経済産業省と厚生労働省の連携事業が開始さ れた。本事業は、経済産業省に「医療機器開発ガイド ライン評価検討委員会」、厚生労働省に「次世代医療 機器評価指標検討会」を設置し、これらが連携して次 世代の医療機器の開発促進および迅速な承認審査に 活用できるガイドラインの策定を進めている(図1)。 本事業は当所と国立医薬品食品衛生研究所が各省か ら受託し、行政、学会、産業界などと連携して、承認 前例のない次世代の医療機器を対象に研究開発から 承認審査までに必要な評価指標を検討した。 2.検討体制 図1に検討体制を示す。医療機器産業の活性化や国 際競争力の強化を図るためには、承認前例がない次世 代の革新的な医療機器開発の促進、効率的な薬事申請 および審査機関における承認審査の迅速化が求めら れている。そのために、合同検討会(医療機器開発ガ イドライン評価検討委員会・次世代医療機器評価指標 検討会)の指示を受けた課題に対して開発ガイドライ ンを策定する。具体的には、学会および工業会を通し て第一線の研究者や開発者によるワーキンググルー プ(WG)を組織し、関連指針や技術動向調査および討 議を行い、評価試験法を検討して機器の製造プロセス、 安全性、有効性、品質管理などに関し、開発者・申請 者の視点に立脚した開発ガイドラインを提案する。 開発ガイドラインを策定する上で重要なことは、現行 の薬事法および薬事申請や薬事審査を熟知していることが不可欠で、 第一線で機器開発する研究者や企業開発者を交えて議論を尽くすこ とが必要である。このため、関連する学会や METIS(医療技術産業戦 略コンソーシアム)などとの連携を図ることが重要である。 図1 ガイドライン策定の全体像 3.策定結果 平成17年度以降、本事業にて以下の成果を得た。 (1)ガイドラインの策定 表 1 に示す開発ガイドラインおよび医療機器評価指標を提案し、経 済産業省および国立医薬品食品衛生研究所のホームページ 1)3)にて、 また、詳細な事業報告は産業技術総合研究所2)、国立医薬品食品衛生 研究所3)にて公開した。 (2)厚労省通知の発出 提案したガイドラインに基づき、高機能人工心臓システム、DNA チップ、骨折整復支援装置、関節手術支援装置、重症心不全細胞治療 用細胞シート、角膜上皮細胞シートに関する評価指標は厚生労働省か ら通知 4),5)として発出された。ガイドラインとして検 討した「高機能人工心臓システム」「DNAチップ」 「骨折整復支援装置」「関節手術支援装置」「重症心 不全細胞治療用細胞シート」「角膜上皮細胞シート」 に関して規定されている。 必要な安全性、性能、製造管理などに関して基準(JISやISO) の策定の必要性を提言する。他方、本事業(開発ガイドライン策定事 業)と併置され、連携する審査WGにより検討した結果は、薬事審査 官のための外ドリアンとして活用されることを目指し、厚生労働省の 通知として発出される。 (3)標準化推進の提言 提案したガイドラインに対して必要と考えられる 標準に関する推進を提言した2)。 (4)コンソーシアムの設立 ガイドライン策定事業に呼応して「バイオチップコ ンソーシアム、JMAC」が設立(平成 19 年 10 月)され た。 4. ガイドラインの主要項目 策定する開発ガイドラインにて規定する主要項目は 対象とする医療機器の用途、使用目的、形状構造など に依存して異なる。策定した開発ガイドラインの例を 以下に示す。 (1)次世代(高機能)人工股関節(平成 19 年度策定) 新材料技術と新設計・製造技術を融合させ、低侵襲 性で骨を可能な限り温存し、より部分的に置換する製 品を有する医療機器で、以下のタイプを検討した。 〇高潤滑機構を有する新材料(高強度・高靭性セラミ ックス等)および形状、新表面処理(MPC 処理等)及び 新摺動機構(金属-金属、セラミックス-セラミックス、 金属-セラミックス等の材料及び形状)を用いたもの。 〇骨を温存し、骨と早期に固定し長期間維持するタイ プ骨と早期に固定し、高い固定力を長期間維持する表 面処理技術、骨形成促進因子を付与する新技術を採用 し、骨切除量の小さい新しいデザイン基づく。 (2)パーソナライズド骨接合材料(平成 21 年度策定) 個人の形状や機能特性に合ったパーソナライズド 骨接合材料を開発する際に有用となる開発指針を示 した。製品の分類、製造可能な条件、製品化のプロセ ス、力学的安全性を検証するために有効な機械的試験 方法および生体親和性の高い材料に変更する場合に 有効な試験方法などを規定した。 5.ガイドラインの効果 図2に本字業の座目指す効果を示す。本事業では次 世代の医療機器に対する開発者のためのガイドライ ンの策定を図ると共に、当該機器の評価や薬事申請に 表1 図2 ガイドライン策定事業の目指す効果 6. まとめ 医療機器の円滑や薬事申請と迅速な臨床導入を目的に、未承認の次 世代医療機器に対する開発ガイドラインの策定を推進した。策定した ガイドラインは、医療機器の開発促進や効率的な薬事申請、審査機関 における審査の迅速化に寄与すると考える。 参考文献 1.医療機器開発ガイドライン:http://www.meti.go.jp/policy/ mono_info_service/service/iryou_fukushi/index.html 2.医療機器ガイドライン策定事業報告書:http://www.aist.go.jp/ aist_j/aistinfo/report/entrust/index.html 3.医療機器評価指標ガイドライン検討事業報告書: http://dmd.nihs.go.jp/jisedai/ 4.通知「次世代医療機器評価指標の公表について」、 薬食機発第 0404002 号、平成 20 年 4 月 4 日 5.通知「次世代医療機器評価指標の公表について」、 薬食機発 0118 第1号、平成 22 年1月 18 日 策定した医療機器開発ガイドラインおよび医療機器評価指標 医療機器開発ガイドライン ・高機能人工心臓システム ・DNAチップ-遺伝子型検定用 DNA チップ・骨折整復支援システム ・脳腫瘍焼灼レーザスキャンシステム ・ナビゲーション医療分野共通 ・次世代(高機能)人工股関節 ・ハイブリッド型人工骨・骨補填材 ・ヒト細胞培養加工装置についての設計(改訂) 医療機器評価指標 ・次世代型高機能人工心臓の臨床評価のための評価指標 ・DNA チップを用いた遺伝子型判定用診断薬に関する評価指標 ・骨折整復支援装置に関する評価指標 ・関節手術支援装置に関する評価指標 ・骨形成因子(BMP)含有人工骨に関する評価指標(案) ・重症心不全細胞治療用細胞シートに関する評価指標 ・角膜上皮細胞シートに関する評価指標 ・角膜内皮細胞シートに関する評価指標(案) ・軟組織に適用するコンピュータ支援手術装置に関する評価指標(案)
© Copyright 2024 ExpyDoc