セロトニン神経系

セロトニン神経系
目次
はじめに
3
「セロトニン神経系」とは
第1章
3
セロトニンの2つの側面
7
神経伝達物質の種類
10
セロトニン神経系の働き
12
第2章
「脳内セロトニン」の働き
15
1.大脳皮質を覚醒させ、意識のレベルを調節する
15
2.自律神経調節する
15
3.筋肉へ働きかける
16
4.痛みの感覚を抑制する
17
5.心のバランスを保つ
18
脳内セロトニンと片頭痛
18
片頭痛とアロデイニア
19
第3章 「脳内セロトニンを増やす」ための6つのポイント
(1.)早寝早起きの規則的な生活を心がける
-1-
21
21
(2.)太陽の光を浴びる
21
(3.)リズミカルな運動をする
23
(4.)食事をする際に、よく噛む
24
(5.)グルーミングという「人とのふれあい」
25
(6.)食事によって増やす
26
「セロトニン生活」の効果が現れるまでは最低3カ月は必要です
毎日30分が基本
第4章
33
35
「脳内セロトニンを低下させる要因
(1)「セロトニン神経系」はどうして衰えてしまうのでしょうか?
37
37
(2)ストレスによる影響
38
(3)疲れなどで、体に乳酸が溜まったとき
40
(4)基礎代謝が低いことや、生活のリズムが乱れ自律神経が乱れること
44
(5)生理周期との関連
47
(6)食事に関連して
48
(7)運動不足
50
第5章
ストレス対策
52
-2-
はじめに
片頭痛はミトコンドリアの機能障害による頭痛です。
私達の体を構成する細胞の中にある”ミトコンドリアは食事から摂取した栄養素から生
きる為に必要なエネルギーを作り出しています。エネルギーを常時たくさん使う細胞であ
るほど、ミトコンドリアの数が多く存在し、ミトコンドリアは、私たちの”活力源”とも
いえるものなのです。
そして、私達が日中活動している際に、常時活動している神経系がセロトニン神経系で
す。このようにエネルギーを常時たくさん使うセロトニン神経系は、ミトコンドリアの働
きが悪くなりますと、同時に「セロトニン神経系の働き」まで悪くなってきます。
このため、「セロトニン神経系」とはどういった神経系なのかを知っておくことが、片
頭痛を理解し改善させるためには必須の知識になってきます。
第1章
「セロトニン神経系」とは
「セロトニン神経系」とは、セロトニンを含有し、神経伝達物質として”セロトニン”
を用いる神経細胞群とその標的細胞の受容体からなります。
-3-
神経伝達物質とは、神経細胞のニュー
ロン間で、信号をやり取りするための物
質のことです。この細胞のシナプスから
は、特定の神経伝達物質が放出され、受
容体で受け取られるという仕組みがあ
り、この情報伝達が神経へとつながって
いるのです。
この細胞膜にある特定の受容体は、そ
の器官ごとに受容体が異なっており、各部位に分布しています。
「セロトニン神経系」は、脳の中心にある「脳幹」の、さらに中央に位置する「縫線核」
という部分にあります。そして、大脳皮質や大脳辺縁系、視床下部、脳幹、小脳、脊髄な
ど、あらゆる脳神経系と結合し、脳の広い範囲に影響を与えている神経系です。
B1
淡蒼縫線核
-4-
延髄縫線核群として、脊髄前角運動ニューロンへ(抗重力筋の増強)、脊髄中間外側核
※ 1 の交感神経節前ニューロンへ(交感神経興奮)
※ 1
胸髄の前角後側方の側角に交感神経節前ニューロンの細胞体の集合である中間外
側核がある。
B2
不確縫線核
B3
大縫線核
脊髄後角へ(下行性抑制による鎮痛)
B4
舌下神経前位核の背側
B5
橋縫線核
B6、B8
正中縫線核
海馬に投射→記憶情報処理
B7
背側縫線核
上行性に投射、大脳皮質(覚醒)、側坐核(衝動的行動)、前脳基底部(覚醒)、視床下
部核群(睡眠、体温調節、摂食、内分泌)に投射
B9
線状核
ミトコンドリア働きが悪いと、脳の神経細胞の場合、
「セロトニン神経」が選択的に「ミ
トコンドリアの働き」の影響を受けやすく、セロトニンを産生しにくく、セロトニンの合
成やその合成のための酵素も充分な量を生成できなくなってしまいます。
-5-
セロトニン神
経系は、生活習慣の問題により機能が減弱し、その結果、「脳内セロトニンの不足」が引
き起こされてきます。
脳内セロトニンの低下は、
「衝動性、過敏性、こだわり、緊張」が強くあらわれ、視覚、
聴覚、嗅覚、味覚、触覚などの五感すべてが過敏になり、わずかな刺激にも敏感に反応し
てしまい、さまざまな自覚症状を訴えるようになります。脳過敏の原因になってきます。
このように、セロトニン神経系とは、「(脳内)
セロトニン」を神経伝達物質として情報伝達を行
う神経系のことで、脳内セロトニンは神経終末で
合成され放出されます。
ここで注意しておくべきことがあります。それ
は「”セロトニン”には2つの側面」があると
-6-
いうことです。ここを”きちんと”理解しておくことが大事ですので・・
セロトニンの2つの側面
セロトニンは”生理活性物質”であり、”神経伝達物質”でもあるのです。
化学構造式から、生理活性物質として考える場合は「インドールアミン」と呼ばれ、
神経伝達物質として考える場合は「モノアミン」と呼ばれる傾向があります。また、そ
の構造式からの名称である 5-ヒドロキシトリプタミンの略字として 5-HT とも表記されま
す。
セロトニンは、人体には、10mg 程度存在します。セロトニンの 90 %以上は、腸(小
腸)に存在します。小腸のエンテロクロマフィン細胞(EC 細胞)が産生して放出したセ
ロトニンを、血小板が、腸の血管内で取り込みます。血小板(濃染顆粒)には、セロト
ニンの約8%が存在し、血小板が凝集すると放出されます。消化管のセロトニンは平滑
筋を収縮させ消化管運動を亢進させます。血小板から放出されるセロトニンは血管を収
縮させる働きがあります。また、セロトニンは炎症のときの発痛物質(ブラジキニンな
ど)による発痛作用(痛み)を増強させます。血液中のセロトニン(血小板に含まれる
セロトニンなど)は、血液脳関門を通って、脳に移行することはありません。
これが、セロトニンの”生理活性物質”としての役割です。
セロトニンは、ストレスが高まると、神経終末からの分泌が増加し、セロトニンは中
枢神経系にも生体内の 2 %程度と少ないですが存在し、「神経伝達物質」として他の神経
伝達物質のドーパミン(喜び、快楽)、ノルアドレナリン(恐れ、驚き)の情報を制御し、
精神を安定させる、重要な働きをしています。このように神経伝達物質としてのセロト
ニンは、不安感情、衝動、性行動、食欲、体温などを調節を行っていると考えられてい
ます。
そして、慢性頭痛とくに片頭痛の発症に重要な位置を占めています。
セロトニンの大部分は「腸」で作られる
-7-
よく腸内環境は大事といわれていますが、その意味の一つとして「セロトニンの生成
が行われているから」ということも考えられます。
脳に存在し、精神を安定させる神経伝達物質、セロトニンの 95 %が腸で作られること
が指摘されています。
なぜ大事にしたいかといいますと、常在細菌もトリプトファンからナイアシン(ビタミ
ン B3)をつくってくれるからです。常在細菌がナイアシンをたくさんつくってくれれば、
その分を体内でつくる必要がなくなって、脳内セロトニン用の材料となるトリプトファン
を余分に確保できるのです。
脳と腸は神経でつながっているので脳にしかないと思われているセロトニンは腸にも
存在します。
腸の状態が悪いとセロトニンもスムーズに分泌されないことが判明しています。便秘
や暴飲暴食による腸の疲労状態を改善することが、幸せかどうかを感じることに大きく
関係しています。
腸の疲労状態を改善することが、幸せかどうかを感じることに大きく関係しています。
しかし、腸で作られたセロトニンが「脳関門」を通過できるのか? という疑問が当然
-8-
湧いてきます。
腸で生成されたセロトニンは、果たしてきちんと脳へと送り届けられるのでしょうか?
中枢神経系においては、セロトニンそのものは血液脳関門を通過できないため脳内で
合成されなければなりません。基本的に脳で使われるセロトニンは、脳内で合成されま
す。
セロトニンのほとんどは腸で作られますが、脳のセロトニンは脳内で作られ、また腸
のセロトニンは脳の中に入れません。
ということは、腸のセロトニンと脳のセロトニン別物として考えなくてはなりません。
それでは「腸」でセロトニン増やしても無意味ないのではないか、ということになり
ます。
脳に作用できないのであれば精神安定に対して有効に作用できないのでは?というこ
とになりますが、答えはどうなのでしょうか。
腸の神経細胞は、独立したネットワ
ークで他の消化管と協調して働いてい
るととともに、他の臓器にも直接司令
を出す重要な器官で、脳と同様に自律
神経回路によって、神経細胞と神経細
胞の間に神経伝達物質を飛ばしながら
情報を伝達しています。
つまり、腸は脳とは別に全身の自律
神経を管理しているということになり
ます。
脳と腸、両者が全身の神経を管理し
合っているということです。
ホルモンのように(”生理活性物質”として)働き、消化器系や気分、睡眠覚醒周期、
心血管系、痛みの認知、食欲などを制御しています。
セロトニンは、脳内だけではなく、”生理活性物質”として、様々な体内機能に関与し
ていることが分かっています。
-9-
例えば、下痢や便秘などの大腸の不調は、自律神経を介して脳のストレスになります。
つまり、ストレスの悪循環がおきやすいのです。
セロトニン云々関係なく、腸の状態は脳に反映されやすいので、腸内環境の良し悪し
は情緒の安定に必要不可欠なのです。。
神経伝達物質の種類
最初にお話しておきたいことは、神経伝達物質は、実は 100
種類以上あるということ
です。そのなかでも主要なものは 10 種類ほどに絞られますが、神経細胞によって、シナ
プスから放出される神経伝達物質の種類が決まっています。そして、その種類によって
興奮や抑制など心身に対しての働きが異なります。
代表的な神経伝達物質には、ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニンなどがあり
ます。それぞれがもたらす効果として、ノルアドレナリンは「意欲」、ドーパミンは「興
奮」、セロトニンは意欲や興奮などの「抑制」と考えられています。
- 10 -
ドーパミンは、体の動きを調整する神
経の機能と、心の領域として「舞い上が
るような心地よさ」を感じる「快の情動
回路」といわれる神経の機能とがありま
す。セロトニンと深く関わりがあるのは、
後者の機能です。このドーパミン神経を
活性化させるのは「報酬」です。人間社
会において、私たちが「試験で良い点数
を取る」「試合で勝つ」「高い給料を取る」などの目標を持つと、ドーパミン神経は興奮
し、私たちに一種の「渇望したストレス状態」を作り出します。この状態ではドーパミン
神経が活性化しているので、私たちはちょっとしたストレスでも努力するようになるので
す。そして目標が達成されると「舞い上がるような心地よさ」を感じることができます。
ですからドーパミン神経は、意欲の神経なのです。
達成されないことで一番問題になるのは、ドーパミン神経が暴走し始めることです。実
際に、世の中は上手くいかないことが多いわけですが、上手くいかないことが続くと「何
が何でも達成するぞ!」と異常行動を起こし始めるのです。いわゆる依存症で、周囲に迷
惑をかけてしまう。これはドーパミン
神経の悪い面です。
ドーパミン神経には興奮した際、良
い面と悪い面があるわけですが、この
ドーパミン神経にコントロールをかけ
ることができる神経回路がセロトニン
神経である、ということです。
ノルアドレナリンはストレスに関係
する神経になります。不快なストレッサーが、外部から人間の内部に加わった場合、最初
に反応するのがノルアドレナリン神経です。わかりやすく言えば、脳内の危機管理センタ
ーです。危機を察知すると、体の面では即座に血圧を上げたり、心の面では不安を感じさ
せたりするわけです。
ノルアドレナリン神経も重要な神経ですが、暴走するとどうなるかといいますと、大し
- 11 -
たことではないにもかかわらず、「大変だよ!」と興奮してしまうのです。いわゆる「パ
ニック障害」です。
ドーパミン神経をコントロールするのと同じく、セロトニン神経がコントロールすること
ができます。ですから、ドーパミン神経の「快」で舞い上がることと、ノルアドレナリン
神経の「不快」で落ち込むこととの両方を抑えるという点で、セロトニン神経を活性化さ
せることは重要だと言えます。
要約しますと、セロトニンは心の面では、
クールな覚醒、つまり平常心を保つはたら
きをします。セロトニン以外にも心の状態
を演出する神経には、快感や陶酔感を増幅
する「ドーパミン神経」と、様々なストレ
スによって覚醒反応を引き起こす「ノルア
ドレナリン神経」があります。セロトニン
神経は、この2つの神経に対して抑制作用
を及ぼし、興奮と不安のバランスを図り、
心の状態を中庸に保つはたらきをするとい
うことです。
セロトニン神経系の働き
セロトニン神経の活動レベルは一日の中で絶えず変化していますが、その活動が活発で
あればセロトニンの分泌が多くなり、弱くなれば分泌が少なくなります。
分泌が多ければ、それだけ情報も伝わりやすくなるというわけです。
セロトニン神経が働くのは、おもに覚醒時です。
朝起きてから夜寝るまで、セロトニン神経は休むことなくインパルスを出し続けていま
す。つまり、起きている間中、セロトニンの分泌は行われています。
そして、睡眠中には、そのインパルス活動が弱くなり、セロトニンはほとんど分泌され
なくなります。そのため脳内のセロトニンの濃度が下がり、脳全体を覚醒する作用もなく
- 12 -
なります。
セロトニンは、睡眠ホルモンであるメラトニンと相対する性質があります。
セロトニンは脳の覚醒を促し、メラトニンは睡眠に作用します。
- 13 -
メラトニンが分泌している間はセ
ロトニンの分泌は少なく、逆にセロ
トニンが多く分泌されている間はメ
ラトニンの分泌は少なくなります。
太陽の光(のような非常に強い光
・明かり)を浴びると、睡眠ホルモ
ンであるメラトニンの分泌がストッ
プし、代わりに脳の覚醒を促すセロ
トニンの分泌が活発化されるのです。
昼夜逆転の生活をしていたり、日
中部屋の中にばかりいると、セロト
ニンとメラトニンの分泌のバランス
が崩れ、不眠症になったり、片頭痛
が起きやすくしてしまうのです。
体内時計とは、私たち自身のからだ、臓器や器官がそれぞれもっている時計で、地球の
自転(24 時間)とは 1 時間ずれ、体内時計は 1 日 25 時間といわれています。この時間を
調整し、地球の自転とあわせてくれているのが朝陽なのです。ですから、放っておくとリ
ズムが崩れ、生活リズムが乱れていきます。そのリズムをもとに戻してくれるのが「朝陽」
なのです。また、太陽の光は、脳の中にある視交叉上核から松果体を刺激し、セロトニン
やメラトニンというホルモンをつくってくれます
このふたつのホルモ
ンは、ミトコンドリア
の天敵「活性酸素」を
除去する働きがありま
す。
メラトニンは睡眠ホ
ルモンとして、セロト
ニンは心を鍛え、バランスを整えるホルモンとして、有名ですが、この二つとも、ミトコ
- 14 -
ンドリアにとって天敵の活性酸素を除去する働きがあります。
活性酸素は、細胞を傷つけたり壊したりする働きがあるので、ミトコンドリアだけでな
くからだにとっても天敵で、片頭痛の原因でもあるのです。朝陽を浴びることは、この活
性酸素を減らすホルモンをだす効果もあるのです。
第2章
「脳内セロトニン」の働き
1.大脳皮質を覚醒させ、意識のレベルを調節する
2.自律神経調節する
3.筋肉へ働きかける
4.痛みの感覚を抑制する
5.心のバランスを保つ
1.大脳皮質を覚醒させ、意識のレベルを調節する
セロトニン神経は、大脳皮質を覚醒させ、意識のレベルを調節する役割をしています。
大脳皮質には、意識のレベルを調節するという
働きがあります。ここに作用しているのが、セロ
トニン神経です。
人は眠っている間意識がなくなりますが、朝起
きると覚醒します。
朝起きて、意識がスッキリして爽快な時もあれ
ば、ぼんやりしている時もあります。
意識と一口にいっても、「スッキリ」「ぼんやり」「イライラ」などさまざまなレベル、
状態があります。
セロトニン神経が作り出しているのは、起きている時の「スッキリ爽快」な意識の状態
です。
2.自律神経を調節する
- 15 -
先程述べた「ホメオスターシスの三角形」の一角に「自律神経系」があり、この「自律
神経系」を調節する働きをするもので、最も重要な働きをしています。
セロトニン神経は、自律神経を調節する役割を担っています。
自律神経は心臓機能、血圧、代謝、呼吸などを司っており、交感神経と副交感神経とい
う 2 つの神経によって成り立っています。
交感神経は起きて活動しているときの神経で、副交感神経は眠っているときの神経です。
朝起きると自律神経のバランスが変わり、副交感神経から交感神経にシフトします。
シフトしたら、片方の神経の活動が全
くゼロになるわけではありません。
交感神経と副交感神経は、互いにシー
ソーのようにバランスを保ちながら、強
くなったり弱くなったりを繰り返してい
ます。
セロトニン神経は自律神経に対し、こ
のシフトがうまくいくよう働きかけてい
ます。
朝起きると、交感神経の方が優位にな
らなければなりません
そこで、セロトニン神経は交感神経を適度に緊張させ、体をスタンバイ状態にします。
しかし、この働きがうまくいかなくなると、寝起きが悪くなったり、自律神経失調症な
どになる場合があります。
3.筋肉へ働きかける
セロトニン神経は、筋肉へ働きかける役割を担っています。
セロトニン神経は直接体を動かすのではなく、筋肉を緊張させることで、影響を与えて
います。セロトニン神経が働きかけるのは、抗重力筋です。抗重力筋とは、重力に対して
姿勢を保つために働く筋肉のことです。まぶたが開き、首が立ち、背筋が伸び、歩いたり
- 16 -
できるのは、この抗重力筋のおかげです。セロトニン神経が活性化していると、まっすぐ
な姿勢や生き生きした表情になることができます。反対にセロトニン神経の働きが弱まる
と、背中が丸まったり顔の表情がどんよりしてしまいます。
このため、セロトニンが不足してきますと、「体の歪み」を引き起こしてきます。
4.痛みの感覚を抑制します
セロトニン神経は、痛みの感覚を抑制する役割を担っています。
セロトニン神経が活性化されていると、鎮痛効果が現れます。
痛み自体がなくなるのではなく、セロトニン神経の活性化により痛みの感覚をコントロ
- 17 -
ールすることで、痛みを感じにくくなります。
反対にセロトニン神経が弱まると、ささいなことで体の痛みを感じるようになります。
脳内セロトニンが低下すれば、頭痛が出現しやすくなってきます。また片頭痛における
アロデイニアと関連しています。
5.心のバランスを保つ
セロトニン神経は、心のバランスを保つ役割を担っています。
人の心は外側、内側の両方から影響を受け、絶えず変化しています
嬉しいことがあれば気分も高揚しますし、悲しいことがあれば気分が沈みます
人の心はそうやってできていますので、
そういった変化が起こることは決して悪い
ことではありません。
しかし、その振り幅が大きすぎると問題
が生じます。
自分で自分の気持ちがコントロールでき
なくなり、日常生活に支障をきたしてしま
います。セロトニン神経は、そういった状
態にならないよう心のバランスを保ってく
れる作用があります。自律神経と同様、セロトニン神経はちょうどいいバランスをとって
くれる効果があるのです。このようにして、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニン
がバランスを取り合っています。これは重要な点です。
とくに、セロトニン不足は、慢性頭痛とくに緊張型頭痛の発症要因となってきます。
このように、脳内セロトニンは片頭痛の病態を理解するために必須の知識になります。
脳内セロトニンと片頭痛
片頭痛発作の時はセロトニンと呼ばれる脳内物質が減少あるいは機能が低下することが
知られています。片頭痛発作の時に、セロトニン様作用をもつトリプタン製剤がよく効く
- 18 -
のは、機能低下状態に陥っているセロトニンをバックアップするためです。
また、片頭痛の共存症としてうつ病、パニック障害、不眠症、冷え性、睡眠時無呼吸症
候群、肥満、等々が挙げられますが、これらはいずれもセロトニンに関連したものです。
「脳内セロトニンの低下」により脳が過敏になり、本来は痛くない刺激を痛みと感じる
アロディニア(異痛症)が、片頭痛発症後5年くらい経過して出現することがあります。
さらに、緊張型頭痛の場合にも、脳内セロトニン低下が関与しています。
このように慢性頭痛とセロトニンには密接な関係があります。
片頭痛とアロデイニア
「脳内セロトニンの低下」により脳が過敏になり、本来は痛くない刺激を痛みと感じる
アロディニア(異痛症)が、あります。
片頭痛患者が示す症状の中には、顔に風が当たると痛い、メガネやイヤリングが不快、
髪を結んでいるのがつらい、くしやブラシが痛くて使えないといったものがありますが、
これらは頭部アロディニアと呼ばれています。さらに脳が過敏になると、頭部だけではな
く、手足のしびれや腕時計、ベルトが不快になることもあり、これらは頭蓋外アロディニ
アに分類されます。
日本では片頭痛の患者さんの 60 ~ 80%ぐらいが、アロディニアを伴うといわれていま
すが、発症 5 年以上たたないと、アロディニアは出てこないことが多いようです。
頭部アロディニア
顔に風が当たると痛い
髪の毛がピリピリする
髪の毛を結んでいるのが辛い
ブラシやくしが痛くて使えない
眼鏡、イヤリングが不快
痛い側が枕に当たると寝ていられない
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頭蓋外アロディニア
手足のしびれ感
ピリピリ感
腕時計が不快
ベルトがきつい
布団や毛布が体に触れると不快
顔の知覚を脳に伝える三叉神経が片頭痛によって刺激されると、顔や頭皮など頭部の末
梢が過敏に知覚して頭部アロディニアが起こります。この末梢感作を通過して、片頭痛の
情報が視床(中枢神経)に到達すると、感覚神経の痛覚需要の領域が拡大し、頭痛側と反
対側の上肢を中心とした違和感が生じてきます。これが頭蓋外アロディニアです。
片頭痛患者の約7割に認められるというアロディニアですが、アロディニアが形成され
ると、トリプタン製剤は効きにくくなると言われています。
Burstein による報告では、アロディニアの有無でトリプタン服薬2時間後の頭痛消失率
を比べたところ、アロディニアがない患者では 93 %と極めて高い頭痛消失率が認められ
ました。一方で、アロディニアのある患者の頭痛消失率は 15 %であり、顕著な差が認め
られました。
片頭痛発症 20 分以内にはアロディニアの出現はないとされているため、アロディニア
発現前の早期の段階でトリプタン製剤を服用することが勧められます。アロディニアがあ
る患者においては、服薬タイミングが重要であるされています。
- 20 -
このアロディニア症(異痛症)は、「脳内セロトニンが減少している」ため”痛みを抑
制することが出来ず”に容易に痛みが出現しやすくなるということです。
逆に考えれば、アロデイニアがあるということは「脳内セロトニン低下」を意味します。
こういったことから、アロデイニアが出現してくる以前の段階で対処しなくてはなりま
せん。このように先手、先手と対処しなくてはならないということです。
ということは片頭痛は、あくまでも予防すべき頭痛であるということです。
第3章
「脳内セロトニンを増やす」ための6つのポイント .
(1.)早寝早起きの規則的な生活を心がける
(2.)太陽の光を浴びる
(3.)リズミカルな運動をする
(4.)食事をする際に、よく噛む
(5.)グルーミングという「人とのふれあい」
(6.)食事によって増やす
以上のような「セロトニン生活」が有田秀穂先生によって提唱されます
「セロトニン神経の活性化」の原則・・セロトニン生活
(1)早寝早起きの規則的な生活を心がける
セロトニンは、太陽の出ている日中に分泌されやすく、睡眠中は日が沈んでからは分泌
が少なくなります。これはメラトニンの働きと関係していますが、人間が本来持っている
生活リズムは『日中に活動し夜は寝る』と言うもので、この原則を守ることがセロトニン
神経の活性化に効果的だと言われています。
(2)太陽の光を浴びる
- 21 -
セロトニンは、睡眠ホルモンであるメ
ラトニンと相対する性質があります。
セロトニンは脳の覚醒を促し、メラト
ニンは睡眠に作用します。
メラトニンが分泌している間はセロト
ニンの分泌は少なく、逆にセロトニンが
多く分泌されている間はメラトニンの分
泌は少なくなります。
太陽の光(のような非常に強い光・明
かり)を浴びると、睡眠ホルモンである
メラトニンの分泌がストップし、代わり
に脳の覚醒を促すセロトニンの分泌が活
発化されるのです。
昼夜逆転の生活をしていたり、日中部屋の中にばかりいると、セロトニンとメラトニン
の分泌のバランスが崩れ、不眠症になったり、片頭痛が起きやすくしてしまうのです。
毎朝日光を浴びる行為は、セロトニンを鍛えるだけで無く、生活リズムを整えることに
もつながります。
できれば、紫外線が強くなる前の時間帯、日の出
から 8 時までの間が良いでしょう。
時間は 5 分~ 15 分ほどで構いません。両手を広
げ、全身で朝陽を浴びてみましょう。
外に出るのが苦手な方は、カーテンを開け、部屋
の中でも構いません。
全身に光を浴びることを意識し、できれば「気持
ちいい~」と言葉に出してみましょう。
そもそも地球上のほとんどの生物は太陽のエネルギーなくては生きていけません。
この自然の恵みを全身に浴びることで、ミトコンドリアの遺伝子のスイッチがオンにな
ると同時に、脳の中では、視交叉上核というところが反応し、体内時計がリセットされま
- 22 -
す。
体内時計とは、私たち自身のから
だ、臓器や器官がそれぞれもってい
る時計で、地球の自転(24 時間)と
は 1 時間ずれ、体内時計は 1 日 25 時
間といわれています。この時間を調
整し、地球の自転とあわせてくれて
いるのが朝陽なのです。ですから、
放っておくとリズムが崩れ、生活リ
ズムが乱れていきます。そのリズム
をもとに戻してくれるのが「朝日」
なのです。また、太陽の光は、脳の
中にある視交叉上核から松果体を刺
激し、セロトニンやメラトニンとい
うホルモンをつくってくれます
このふたつのホルモンは、ミトコ
ンドリアの天敵「活性酸素」を除去する働きがあります。メラトニンは睡眠ホルモンとし
て、セロトニンは心を鍛え、バランスを整えるホルモンとして、有名ですが、この二つと
も、ミトコンドリアにとって天敵の活性酸素を除去する働きがあります。
活性酸素は、細胞を傷つけたり壊したりする働きがあるので、ミトコンドリアだけでな
くからだにとっても天敵で、片頭痛の原因でもあるのです。朝日を浴びることは、この活
性酸素を減らすホルモンをだす効果もあるのです。
(3)リズミカルな運動をする
スクワットや階段の昇り降りなど、一定のリズムを刻む運動を反復して行うとセロトニ
ン神経が活性化されるとされています。
先日国民栄誉賞を受賞された、女優の森光子さんも 70 歳から体力維持の目的でスクワ
ットを始めて、これまでずっと継続して来たそうです。
89 歳でも舞台に立ち続ける彼女の元気の源も、このリズミカルな運動にあるといえる
- 23 -
でしょう。現在はなくなられてしまいましたが・・
同様に活発な活動をされている黒柳徹子さんもスクワットを毎日しているのも知られて
います。
スクワットに限らず、『ウォーキング』や
『深呼吸/腹式呼吸』、最近人気の『フラダ
ンス』など、リズムの良い運動を継続して
続けていくことが、セロトニン神経の活性
化に役立つとされています。
また、こういった運動を 5 分以上行うとさ
らに効果的であると言われています。
リズム運動とは、一定のリズムで筋肉の緊張と弛緩を繰り返す運度であり、この条件を
満たしていれば、何でもいいのです。ウォーキング、ジョギング、自転車、ダンスなどで
す。一番簡単なのは、ウォーキングです。歩くとき心がけることは、できるだけリズミカ
ルに体を動かすことです。リズムに乗って軽快に歩くと、セロトニンの分泌が盛んになっ
てくるのです。
しかし、ウォーキングで気をつけるべきことは、ダイエットを目的とした運動とはぜん
ぜん違うということです。ダイエットを目的とする運動は、いかにエネルギーを消費して
脂肪を燃焼させるかに重点が置かれますが、セロトニン神経を鍛えるのはそんなに激しい
運動でなくてよいのです。
一番ベストなのは、朝晴れている日は外に出て適当に歩くことです。
なぜなら、太陽の光を浴びながら、リズム運動ができるからです。
(4)食事をする際に、よく噛む
食事の際は必ず物を噛みますね。
このものを噛む動作(咀嚼) も、一定のリズムを伴った運動であるといえます。
上述のリズミカルな運動と同じく、セロトニンの活性化に役立ちます。
「運動はちょっと苦手・・・。」と、考えられている方でも、食事は必ず取るでしょう
から、食事の際によく噛んで食べることを心がけてみてはいかがでしょうか。
『ものをよく噛む』と言うことは、栄養の効果的な摂取や、消化を助けることにもつな
- 24 -
がりますし、あごの筋肉の維持など、セロトニンの活性化以外にも様々なメリットがあり
ますし、どなたでも簡単に試せる方法です。
なぜ、唾液=つばを出すのがいいのかという
と、唾液には、アミラーゼと言う酵素が入って
いて、食べたものを消化することを助けてくれ
るほか、成長ホルモンも含まれています。
この成長ホルモンは、傷ついた細胞を修復し
たり、新陳代謝を促し老化防止するなどミトコ
ンドリアを守ってくれる要素があるからです。
すなわち、唾液の量が多いと、それだけミト
コンドリアが守られ、数が減るのを防いでくれると言うことです。また、味蕾の感覚を鋭
敏にするとも言われています。
成人が一日に出す唾液量は、0.5 ℓから 1.5 ℓといわれています。平均値だけ見ても一リ
ットルもの開きがあるのです。この量を増やすだけで、あなたのミトコンドリアは守られ、
若さを保つアンチエイジングの効果もあります。
(5)グルーミングという「人とのふれあい」
グルーミングは、仕事を終えた後の「オフの時の
セロトニン活性」という意味で、太陽の光とリズム
運動とは少し異なります。グルーミングは、「猿の
毛づくろい」としてよく知られていますが、その理
由は動物行動学においては、はっきりしています。
動物行動学では、グルーミングは「ノミ取りの行為
だけではなく、群れ社会のなかで発生するストレス
に対して、緩和を試みている行為」として認識され
つつあります。
それを人間社会にたとえますと「人と人とが近い距離でふれあうこと」が原則になりま
す。具体的には、「仕事後の赤ちょうちん」「おしゃべりをしながらの井戸端会議」「家族
で食事をする」、またそれに近い行為で「お風呂屋さんで一緒にお風呂に入る」というの
- 25 -
もあります。これらの行為の結果として、「疲れが取れてストレス緩和になる」のです。
仲間と一杯やるというのもグルーミングですし、女性のよくやっている井戸端会議もグ
ルーミングの一種なのです。全員が同じ場所にいて、同じ空気を吸いながら、打ち解けて
会話を交わす──これがグルーミングなのです。
親子や恋人同士のスキンシップ、家族や友人とのおしゃべり、マッサージ、髪をすく、
撫でる、などの触れ合いがグルーミングとされ、これらのスキンシップや人との触れ合い
がセロトニンの活性化とストレス耐性の向上に効果があるとされています。
家族や恋人、ペットとのスキンシップも、セロトニンの分泌を増加させます。メールや
電話ではなく、実際に顔を合わせ、表情や仕草を間近に感じながら、笑ったりすれば、き
っとセロトニンがたくさん分泌されます。
(6)食事によって増やす
「脳内セロトニン」の前駆物質であるトリプ
トファンを食物から直接取り入れるのです。
脳内セロトニンを確実に増やすためには、
いろいろな問題がありますので、この点につ
いて詳しく述べていきます。そう単純なもの
ではありませんので・・・
レバーを食べても脳内セロトニンは増えません!
セロトニンは「トリプトファン」というアミノ酸を原料としてカラダのなかでつくられ
ます。しかし、腸や血液に含まれる大部分のセロトニンは、脳に入っていきませんので、
トリプトファンが多く含まれる食品をとることが大事です。でも、そこにはちょっとしだ
工夫”が必要です。腸内や血液中のセロトニンは脳に入っていきませんが、トリプトファ
ンはちゃんと脳に入っていくことができます。ですから、トリプトファンをたくさん取り
込むことができれば、脳内セロトニンも充分につくることが可能になります。
トリプトファンが通る場所(血液脳関門)に問題があり、ここは、ほかの必須アミノ酸
も通っていく場所です。この必須アミノ酸というのは、「フェニルアラニン」とか「口イ
- 26 -
シン」というものですが、食品によっては
トリプトファンよりもこれらの必須アミノ
酸のほうが多く含まれるものがあります。
これらの必須アミノ酸がトリプトファンの
邪魔をするため、トリプトファンが通過し
づらくなっています。その代表的な食べも
のが、肉類や乳・乳製品なのです。つまり、
牛レバーにはトリプトファンよりもほかの
必須アミノ酸が多いため、実際には思った
ほどトリプトファンがとれません。結局、
トリプトファンが多いだけではダメで、そ
れと同時にフェニルアラニンとロイシンの
量が少ないことも大事だということです。
肉類はともかく、乳・乳製品が大好きな女性はきっと多いはず。
お肉を食べるときは、野菜やくだものはもちろんのこと、「いも類」を一緒にとるのが
おススメです。いちばんいいのはしっかりとご飯(米)を食べること。パンやパスタ、ピ
ザなどの小麦製品、牛乳や乳製品中心の食事ばかりでは、いつまで経っても脳内セロトニ
ンは増えることはありません。
- 27 -
- 28 -
人間にとって、とても大事なセロトニンの原料はトリプトファン。それを効率よく取り
込むためには、必須アミノ酸(フェニルアラニン、ロイシン)との含有比率が大切だとい
うことです。
トリプトファンはセロトニンになるだけでなく、セロトニン以外にも「ナイアシン」
(=ビタミン B3)になります。
しかも、トリプトファンからセロトニンがつくられるときと同様、「補酵素」として
「ビタミン B6」が使われます。つまり、トリプトファンは同じ方法で、セロトニンとナ
イアシンになるというわけです。
注目すべきは、ここでもさっきのフェニルアラ
ニンやロイシンの場合と同じようなことが起きる
ということです。つまり、ナイアシンのほうが優
先的につくられ、セロトニンは残念ながら後回し
にされてしまうのです。このため、そもそもナイ
アシンが不足しなければいいのです。つまり、ナ
イアシンたっぷりの食事をとり、あとは補酵素と
して使われるビタミン類やマグネシウム、亜鉛な
んかもしっかりとるように心がければいいのです。
ナイアシンは、糖質・脂質・タンパク質の代謝
に欠かせません。腸内環境が悪化していますとナイアシンが不足してきますので注意が必
要です。
補酵素とは、酵素が体内で十分に働くために必要な成分です。
ビタミンB6
食品・腸内細菌
↓
トリプトファン
⇒
(60個)
⇒
⇒
↓
⇒
⇒
ビタミンB3(ナイアシン)
↓
優先
(1個)
↓
→
→
→
→
↑
ビタミンB6
- 29 -
セロトニン
亜鉛
鉄分
マグネシウム
先程も述べましたように BCAA が多い
環境では脳への取り込みが阻害され、脳内
セロトニンがあまり増えないことがありま
すので注意が必要です。
BACC とは動物性蛋白質に含まれてお
り、食品では牛乳、鶏卵、マグロ、牛肉な
どが挙げられます。食べ物はバランスが大
事なので、極端に摂取を制限すると逆に体
調不良の原因になるので注意です。牛乳、鶏卵、マグロ、牛肉の摂りすぎは「脳内セロト
ニン」不足を招くことに繋がりますので、注意が必要です。
トリプトファン比の高い食品を摂ることと筋
肉を付けることが脳内セロトニンを増やすため
の第一歩なのです。
決して、ダイエットと称して筋肉量を落とし
てはいけません。
また、運動量が少ないにも拘らず、トリプトファンを多く含むからと言って、お肉など
の動物性タンパク質や牛乳・乳製品を摂りすぎてはいけません
運動量の少ない方はトリプトファン比の高い大豆製品などを努めて摂りましょう
トリプトファン比の低い食品と高
い食品
トリプトファンをほとんど含ま
ない食品にはコラーゲン(人の酵
素では消化はしません。悪玉菌の
エサにはなります)、ゼラチン(効
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率はよくありませんが消化はします)、トウモロコシなどがあります。
体にはアミノ酸プール(体内ではタンパク質の分解と合成が常に起こっていますので、
さまざまなアミノ酸がプールされているように考えられています)がありますので、これ
らの食品を食べたからといって直ぐにはトリプトファン不足になる事はありません。
しかし、日常から多くを摂り続けますとセロト
ニン不足以外にもビタミンB3不足などさまざま
な悪影響を生じます。
次にトリプトファン比の小さなものとしては、
小麦、食パン、アーモンド、小豆、牛肉(サーロ
イン)、牛乳、落花生などがあります。
これらの食品の摂りすぎに運動不足が加われば
脳内セロトニン不足の可能性が高まります。
トリプトファン比の高いものとしてはお米があ
ります。サツマイモ、大豆、レバー類、
マグロ(赤身)などもほぼ同じ程度です。
これら食品以上にトリプトファン比の高いもの
には、全粒そば、サトイモ、ゴマ、ココア、ニン
ニクやトリプトファンの量的には少ないですが、
カボチャ、ごぼう、小松菜、春菊、大根葉、ニラ、ブロッコリー、もやし、えのき、しい
たけ、のり、こんぶなどがあります。
果実類でトリプトファンを比較的多く含むものに、バナナやキウイフルーツがあります
が、キウイフルーツのトリプトファン比高いですが、バナナは小麦やお米の中間程度で特
に脳内セロトニンに好ましいと言うアミノ酸組成ではありません。
セロトニン合成にかかわる酵素、補酵素やトリプトファンを原料とするビタミンB3の
不足を起こさない
セロトニンを増やすためは、ビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB6、およびマグ
ネシウム、亜鉛の不足を起こさないことが大切です。
トリプトファンはセロトニンの原料であると同時に、ナイアシンの原料でもあり、ナイ
- 31 -
アシンの合成が優先されます。
そのため、ナイアシンが不足していますと、折角、脳内に取り込まれたトリプトファン
もナイアシンの合成に使われてしまい、セロトニンの合成へはまわってきません。
ナイアシンは魚介類や肉類などの食品に含まれており、腸内細菌により産生もされます
ので、適量の魚介類・肉類を摂食し、腸内細菌を健全に保っている限りにおいて、ナイア
シンの摂取不足を起こすことはありません。
この条件が整った状態で、セロトニンはトリプトファンを原料として、ビタミンB6、
亜鉛、マグネシウムなどを補酵素として合成されます。
ビタミンB6は、ニンニク、唐辛子、マグロ、カツオ、レバーなどに多く含まれています。
亜鉛の多い食品は牡蠣が有名ですが、牛肉にも多く含まれます。
マグネシウムは非常に不足しやすいミネラルですので、ニガリやマグネシウム水溶液か
ら日常的に摂るのが好ましいでしょう。
これらのビタミン剤やミネラルはサプリメントである栄養素を多く摂ったからといって
効果が上がるというものではなく、全ての栄養素の不足を起こさないというのが改善のた
めの基本となります。
一つでも成分が不足しますと、一連の反応は進まなくなります。
特に偏食も無く、平均的な食事をしていても、マグネシウムは最も不足しやすい栄養素
です。
以上から、
「脳内セロトニンを増やすための食事」は以下のようにまとめられます。
○肉類や乳・乳製品など動物性のタンパク質をとり過ぎないようにする
O芋類、野菜類、きのこ類、海藻類を努めてとるようにする
Oコラーゲンなどのゼラチン類をとらない
○パン、パスタ、うどんなどの小麦製品にかたより過ぎない(米飯、そばを適宜とる)
Oトウモロコシやその加工品、種実類(アーモンド、落花生)、小豆(あんこ)をとり
過ぎない
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○トリプトファン比率の高い果実類(キウイフルーツ、柿)、種実類(ゴマ、ココア)、
魚介類(カッオ、しじみ)を努めてとる
○ビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB6、マグネシウム、亜鉛を多く含む食品をと
る
○筋肉を鍛える(筋肉量を増やす、または落とさない)
○腸内環境を健全に保つ
「セロトニン生活」の効果が現れるまでは最低3カ月は必要です
こうした「セロトニン生活」の効果が現れるまでは最低3カ月は必要です。決して焦
らずに行うことが大切で、多くの方々はその効果が出現するまでに諦めているのが実情で
す。
セロトニン神経は各細胞のセロトニン受容体に向けてセロトニンを送るのですが、
自分自身に対してもセロトニンを分泌しています。脳の神経系細胞は末端から軸索
- 33 -
というケーブルを使って他の神経細胞と繋がっており、データの伝達を行います。
この軸索を通して戻ってきたセロトニンを受け取るのがセロトニンの自己受容体で、
受容体の数が多いとセロトニンの放出を抑えようとする働きがあるのです。
もう少し、詳しく言えば、セロトニン神経にはオートレセプター(5-HT1A 自己受
容体)という機構が備わっています。セロトニン神経が興奮すると、オートレセプ
ターを介して自己にネガティブフィードバックをかけ、増えた活動を抑えてしまう
という、やっかいな特性です。このため、簡単にはセロトニン神経の活動レベルは
高く維持し続けられません。
このオートレセプターの数が多いと、普段からセロトニン神経は抑えられる傾向
にあり、逆に、オートレセプターが少なければ、セロトニン神経の活動レベルが高
く維持されることになります。したがって、オートレセプターの数を調整すること
が、セロトニン神経を弱めたり、鍛えたりする時に、大切なポイントとなります。
オートレセプターは一種の蛋白ですから、遺伝子の発現を変えるような持続的な変
化が加わり続ければよいわけです。
どうするのかといえば、オートレセプターを絶えず繰り返し刺激し続けてやると、
やがてオートレセプターの数が適応性に
減少していきます。オートレセプターを
形成する遺伝子の発現にオフの調整がか
かった結果と考えられます。このプロセ
スが完成するには、数週間から数ヶ月を
要します。この点は重要なことです。
このことは、坐禅が一朝一夕には極め
られないこと、また、やり続けなければならないという経験則、すなわち「只管打
坐」に対応します。毎日坐禅を繰り返し実践すれば、セロトニン神経が繰り返し賦
活され、オートレセプターも繰り返し刺激を受け続けます。数週間もすると、オー
トレセプターの数が減少して、セロトニン神経の活動レベルが普段から高いレベル
に安定するということになります。坐禅はただひたすら継続してこそ意味がある、
すなわち、道元のいう「只管打坐」ということは、セロトニン神経の自己抑制回路
によって説明可能なことを示しています。
- 34 -
それでは、坐禅の呼吸法と関連づけて、セロトニン自己受容体の増減を考えてみ
ましょう。坐禅の呼吸法がセロトニン神経を活性化することは、これまで証明され
て来ました。
この活性化を「絶えず」継続していると、セロトニン自己受容体が繰り返し刺激
されることになります。その結果、自己受容体を発現させる遺伝子にフィードバッ
ク制御がかかり、オフの側にスイッチされます。やがて、セロトニン自己受容体の
数が減少し、それは、自己抑制機能の減少につながります。このような構造的な変
化の結果、セロトニン神経の活動レベルが恒常的に高く維持されることになります。
このことを道元は「只管打坐」の仏法として我々に伝えています。ただひたすら
坐禅を毎日継続すること、それだけで良いし、それ以外に最良の道はない、と説い
ています。また、坐禅をやめれば、元の木阿弥ということになってしまいます。こ
の経験的に得られた真理は、セロトニン自己受容体の遺伝子によるオンオフ制御と
きわめてよく対応します。只管打坐はセロトニン自己受容体の遺伝子をオフにし、
自己受容体の数を減少させ、結果として、セロトニン神経の活動レベルを恒常的に
高いレベルに維持させることになります。これが、道元の「只管打坐の仏法」に関
する神経科学的な解釈です。
毎日30分が基本
絶えずセロトニン自己受容体を刺激し続けるということは、二十四時間連続して、
という意味では決してありません。三十分間のリズム運動を毎日、継続することが
必要で、かつそれで十分なのです。継続して刺激し続ければ、必ず、自己受容体に
フィードバックがかかります。それは、興奮を抑制に逆転させますから、むしろ、
期待した効果とは反対になってしまう可能性があります。やりすぎは禁物。頑張り
すぎは疲労によるマイナス効果も招きます。三十分という時間は、呼吸法時の脳波
測定から、セロトニン神経を活性化する最適の時間と判定されました。それ以上で
- 35 -
は、逆に自己抑制のフィードバックが
出現して、反対の効果になると考えら
れます。したがって、早朝にお線香一
本分が燃え尽きる時間、坐禅をすれば
十分なのです。ただし、それを毎日繰
り返すことが、セロトニン神経をきた
えるのには不可欠です。そして、約 100
日継続すれば、やがてセロトニン神経
に構造的な変化が現れ、恒常的に高い
活動レベルが維持されるようになりま
す。
このように、「セロトニン神経を活性
化」させる方法は「座禅」だけではありません。今回は、座禅という方法で説明し
ました。毎日”セロトニン活性の行為”を継続すると、セロトニンの分泌量は徐々に
増えていきます。具体的なイメージとして、初めは「3」であったのが、やがて「5」
や「7」まで増えて維持できるようになります。それには 3 ヶ月ほどの継続が必要と
なります。ですから、継続しないと意味がありません。
以上まとめますと、セロトニンの合成量はオートレセプターといって、ある範囲内にセ
ロトニン量を治める体の仕組みがあり、たとえ急激にトリプトファン量が増えたからとい
っても直ぐにセロトニンの合成量が増えるのではありません。
ですから、トリプトファンのサプリメントを摂ったからといっても、また、血液脳関門
を通過できるセロトニンの中間体(セロトニンを増やすサプリメントとして市販されてい
る)を摂ったからといっても、直ぐに脳内セロトニンが増加するということではありませ
ん。むしろ、一時的にはオートレセプターの逆作用によってセロトニンの合成量が減少し
てしまうことになります。
少し、わかりにくいお話かもしれませんが、要は、脳内セロトニンを増やすというサプ
リメントなどを飲んだからといって、短期間、且つ容易に脳内セロトニンの合成量を増や
すことはできないということなのです。
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焦らないことが肝要とされています。根気強く行っていきましょう。
第4章
「脳内セロトニンを低下させる要因
(1)「セロトニン神経系」はどうして衰えてしまうのでしょうか?
「セロトニン神経」には、歩行、呼吸、咀嚼などの基本的なリズム運動によって活性化
されるという特性があります。毎日の生活の中で、こうしたリズム運動を自然に繰り返し
ていれば、セロトニン神経は正常レベルに保たれます。したがって、こうした運動を極端
に抑えた生活を継続することは、セロ
トニン神経の減弱を招きます。例えば
以下のような生活習慣には要注意です。
日光を浴びることが少ない
朝は出かける直前まで寝ている
昼夜逆転生活になっている
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固いものをあまり食べない
階段を使わずエレベーターやエスカレーターを使う
30 分以上続けて歩くことができない
運動不足である
デスクワークが多い
朝食をとらない
ごはんやパンなどの炭水化物をあまり食べない
魚より肉をよく食べる
ダイエットのため食事制限をしている
また、加齢による身体機能の衰えも運動不足に繋がります。セロトニン神経の活性には
太陽の光も影響しますから、インドア指向の最近の子供たちの生活、とくに連日、息をつ
めてゲームをやり続けるという習慣などは、セロトニン神経が減弱しやすくなるのです。
(2)ストレスによる影響
ストレスを受けると、脳にある視床下部が
それを感知し、副腎から副腎髄質ホルモン(カ
テコールアミン)と副腎皮質ホルモン(コルチ
ゾールなど)の分泌を促します。また間脳の橋
の青斑核にあるノルアドレナリン神経からは
ノルアドレナリンが、交換神経末端からはア
ドレナリンが分泌されます。
さらに、ストレスが続くと交感神経が過敏
となり、アドレナリンやノルアドレナリンの
分泌が高まります。セロトニンは過剰に分泌
されたこれらのホルモンを抑制して、自律神
経のバランスを整える働きも担っています。人間の感情の基本は、"快"と"不快"です。快
を感じた時にはドーパミンが分泌され、不快を感じた時にはノルアドレナリンが分泌され
ます。どちらにしても過剰の分泌は問題ですので、この時、セロトニンが働いて過剰分泌
- 38 -
にブレーキをかけます。
脳の中で”快・不快”を感じるのは大脳辺縁系といわれる場所です。辺縁系には記憶の
中枢である「海馬」や、情動を感じる「扁桃体」があります。扁桃体の刺激は視床下部と
いう場所に伝わり脳内に色々なホルモン物質が出て自律神経を刺激します。幸せな気分は
セロトニンやエンドルフィンが放出され、不快や恐怖ではアドレナリンやノルアドレナリ
ンが放出され交感神経の働きを強めます。
嫌なことを経験しますと、海馬が”嫌な記
憶”を扁桃体に伝えます。扁桃体では不快・
恐怖・緊張といった反応が起こり、この刺激
は視床下部に伝わりアドレナリンやノルアド
レナリンが放出されます。アドレナリンは血
管を収縮させますから肩や頸の筋肉の血流が
減って筋肉の栄養が不足し、筋肉でできた老
廃物を外へ運び出せなくなります。このため筋肉が凝ってしまうのです。これにより、肩
こりが起こり、緊張性頭痛が引き起こされます。
このようにして、体がストレスを受けると、最終的にストレスの影響を緩和するために
副腎皮質ホルモンが分泌されます。
副腎気質ホルモンはセロトニンが神経細胞を伝
わっていく時にセロトニン回収口を塞いでしまい
ます(脳内セロトニンは生成量が少ないので、8
割程度は回収しながら溜まりを作り、一部だけを
神経の伝達に使う仕組みになっています)。
副腎皮質ホルモンが回収口を塞ぐと、一時的に
神経伝達に使われるセロトニンは増えるのですが、ストレスが長く続くと貯まりが少なく
なって、セロトニン不足を起こすことになります。
このようなことが繰り返し起きますと、セロトニンの再回収口は完全に機能を失い、慢
性的なセロトニン不足を招きます。
縫線核に細胞体を持つセロトニン神経系(セロトニンが神経伝達物質)は脊髄後角でシ
ナプス接続して、痛みを抑制します。
- 39 -
以上のことから、慢性的にストレスに晒され
ることによって、「脳内セロトニン不足」を来す
ことによって、痛みを制御ができなくなって、
頭痛を感じやすくなります。
(3)疲れなどで、体に乳酸が溜まったとき
乳酸とセロトニン
疲労状態の時、体内には乳酸が蓄積していま
す。セロトニンの分泌を妨げるのが疲労です。乳酸はセロトニンの分泌を抑制します。
セロトニン神経が神経末端からセロトニンをシプナス間隔に放出しますと、それは標的
細胞のセロトニン受容体に作用して、興奮や抑制を起こします。余ったセロトニンは、再
利用ために、放出側の神経端末に再取り込み
されます。その運搬役がセロトニン・トラン
スポーターです。
この運搬役の働きは、乳酸によって促進さ
れます。再利用のためにせっせとリサイクル
機能を高めてくれるわけで、このこと自体は
けっして悪いことではありません。ところが、
再取り込みだけが、必要量を上回るほど進んでしまうと問題です。セロトニン放出が標的
細胞に十分な影響を与えることなく、直ちにもとの神経端末に戻ってしまいます。セロト
ニン神経のインパルス発射および放出はたとえ正常でも、再取り込みが進みすぎるために、
標的細胞には十分に届かないことになります。
これでは、セロトニンが貯蔵庫に蓄えられるだけで、有効に活用されないことになりま
す。セロトニンのデフレ状態です。
活発化したトランスポーターは必要以上にセロトニンを取り込んでしまい受容体と結
びつく量を減らしてしまうのでセロトニンは役割を果たすことができず、身体はセロトニ
ン不足と同じ状態になってしまいます。
- 40 -
心身の疲労により生産された乳酸が血液に蓄積すると、脳
をはじめ身体の機能が低下してきます。
こうしたことから、「疲労はセロトニン神経の大敵」とされ
ています。
<乳酸と疲労>
疲労を感じるのは、脳の特定の神経回路が関係しています。
運動したり激しく活動すると、筋肉中に乳酸という疲労物質
が溜まり、疲労物質が体内に増えた状態であると、疲れや倦怠感の原因となります。疲労
による倦怠感は、このような体内に蓄積する乳酸の影響である事が多く、乳酸の量を減ら
す事で疲れをとる事ができ、倦怠感も無くなります。乳酸は、入浴によって血液の循環を
促すことで、血中の乳酸が老廃物として回収されて、浄化されるためとされています。
筋肉や血中に乳酸が溜まるほかに、セロトニンという物質も疲れによる倦怠感や、だる
さに影響するとされています。激しい運動をすると、乳酸が増加するのに対し、セロトニ
ンが減少することが解明されています。セロトニンは、自律神経の交感神経と副交感神経
の働きを制御していると考えられており、セロトニンは減少する事で2つの自律神経がバ
ランスが崩れます。この為、交感神経が活性化していると、緊張状態が続く事になります。
緊張した状態が続いて副交感神経に切り替わりにくくなると疲労して倦怠感が引き起こ
され、身体はだるくなって、冷えや肩こり、また腰痛や頭痛といった症状を招きます。疲
労とは、必ずしも肉体的なものでは無く、頭脳労働や精神的な心労も含むと考えます。し
たがって、運動していないのに体がだるい時は乳酸と全く無関係とはいえません。
「乳酸」は疲労物質 !?
乳酸は、実は疲労を引き起こす物質ではなく、むしろ疲労を緩和させるために現れる物
質だということが分かっています。確かに激しい運動や重労働の後に体がへとへとになり、
腕を上げたり歩いたりすることができなかったりしたとき、筋肉中には乳酸が溜まってい
るのは事実です。
筋肉を動かすとき、人の身体は酸素を燃やすことでエネルギーを作り出し、そのエネル
- 41 -
ギーを使います。しかし、その運動が激しすぎると体への酸素の供給が追い付かなくなり
ます。「乳酸が溜まった筋肉はうまく収縮できないため痛みや炎症が起こる」と、長い間
誤解されていたのです。無酸素運動を続けると血液中に乳酸が増えるのは事実ですが、こ
の乳酸のせいで疲労するわけではありません。むしろ乳酸は、“細胞の疲労を保護する”
働きがあり、疲労を回復させるためのエネルギーとして使われているのです。
実際の疲労の原因は、「脳内セロトニン」の不足と、「血中還元型コエンザイム Q10」の
不足なのです。
実は乳酸は疲労回復する
疲労は乳酸の蓄積によるものと言われていますが、実は今では乳酸はむしろ筋肉の疲労
を抑えて脳神経活動のエネルギー源となる疲労回
復物質だという見解があります。
冤罪の乳酸に代わり、疲労の真犯人と見なされ
ているのは「活性酸素」です。ヒトは呼吸し酸素
を炭酸ガスに変える経路で、食事由来の糖からエ
ネルギーを生み出しています。
その過程で毒性
の強い活性酸素が産生されますが、普通は抗酸化
システムが速やかに始末しますので問題にはなりません。ところが、身体活動や脳の酷使
が過ぎますと大量の活性酸素を処理し切れなくなり、細胞や神経細胞がキズつきます。そ
の結果、エネルギー代謝や中枢神経系に異常が生じます。さらに細胞の損傷が引き金とな
り、脳に疲労を伝える「TGFβ」という物質が増加します。気分や判断力に関係する神
経伝達物質のセロトニンやノルアドレナリンの代謝に異常が生じ、脳が「疲れた」と感じ
るのではないか、と推測されています。
疲れの原因物質
TGF-β
肩こりは、筋肉がこわばっている状態を言いますが、この状態の時は血管が圧迫されて
いる状態で、すなわち血行が悪くなっています。血行が悪いと、酸素不足を起こしていま
す。この時、筋繊維の細胞は、グリコーゲンからエネルギーを作る時に通常なら、2%の
- 42 -
活性酸素を発生するところ、酸素不足の状態だと5~10%もの活性酸素を発生します。
この為、細胞がダメージを受けやすく、細胞修復のためにTGFーβなどの免疫物質が
出されます。この為、疲れを感じます。
疲れの原因物質は、TGF―βなどの免疫物質
筋繊維中の細胞では、グリコーゲンがエネルギーに変えられ、その過程で酸素を作り出
しています。しかしそれと同時に活性酸素も作られ、これが細胞にダメージを与えます。
このダメージを修復するために免疫細胞は、多くの免疫細胞を集める合図を出します。
この合図がTGF-βなどの免疫物質で、この合図によって免疫細胞が集まり傷ついた細
胞を修復します。TGF-βなどの免疫物質は、傷を修復している間中出続けます。
しかし、TGF-βなどの免疫物質が疲れの原因物質と言われるのは、合図をするだけ
でなく、脳に影響するところにあります。特に自律神経中枢に影響を及ぼし機能を低下さ
せます。自律神経の機能は、血圧や体温、睡眠、日内リズムを調節する働きをしています。
このため、TGF-βなどの影響を受けるとこれらの副交感神経系のリズムが崩れ体調
の異常が起こります。
脳の自律神経中枢へTGF-βなどが送られる経路は、血流によってあるいは、末梢神
経の神経伝達により脳で感知されると考えられています。TGF-βは、代謝によって消
えるので、血行を良くすることが疲れを解消することにもなります。
疲労の見張り番とセロトニンの効果
脳には、疲れの見張り番がいて、丁度目の奥、眉間の奥辺りの脳幹にあります。これが
疲れを感知すると、脳幹に脳を休ませるよう命令します。脳幹の縫線核は脳のあちこちに
セロトニンを出し、脳をリフレッシュさせます。
しかし、セロトニンは合成量に限界があるため、やがて疲れを感じてもセロトニンが出
なくなります。疲れていても休ませることができずに脳が働き通しになり疲労が解消でき
ません。
また、TGF-βは、セロトニンを阻害する物質でもあります。疲労状態が続けば、
脳をリフレッシュするセロトニンも阻害され、余計に疲労解消ができないことになります。
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(4)基礎代謝が低いことや、生活のリズムが乱れ自律神経が乱れること
一般的に朝起きると筋肉や神経の働きを高めるために体温は高くなり、夜に向けて体温
は上昇し、就寝前にもっとも高くなって就寝後に体温は低下を始めます。この変化は、セ
ロトニンの分泌量変化とほぼ一致しています。
縫線核はセロトニンの産生とともに、血液の温度センサーとしての働きがあります。
セロトニンが少ないと血液の温度を感知しても体温を調整する温熱中枢に充分な刺激を
与えられず、温熱中枢を活性化できなくなります。そ
のため、セロトニンが少ない人は1日中体温が低いま
まで冷え性になりやすく、体の機能をいつまでも活性
化できないことになります。
また、セロトニンが不足すると食後の満足感を得る
ことができませんので、常に食欲が旺盛な状態となり、
食べることにブレーキが利かなくなります。さらに血
糖のエネルギーヘの代謝までもが阻害されますから、
肥満や糖尿病になりやすくなるのです。
逆に、脳内のセロトニンが充分にあれば、食後に満
足感や充実感を得られますから、肥満は解消していくことになります。さらに、セロトニ
ンが増すことによって各組織の機能が活発になるため、基礎代謝が上がり、脂肪を効率よ
く燃焼させることができるようになります。
一見すると痩せているように見えても、セロトニンが不足していると、内臓脂肪がたっ
ぷりついてしまうことが起こり得ます。
慢性的にセロトニンが不足すると、基礎代謝が低下して、脂肪が蓄積しやすくなるとも
言われています。
これはセロトニン不足が体温低下の原因である事と関連しています。
体温が 1 ℃下がると基礎代謝は 12 %減少するからです。
慢性的なストレスを受けていると、ストレスホルモンのコルチゾール が慢性的に高い
状態になってしまい、セロトニン不足を招いたり、 数々の悪影響を通して脂肪蓄積に結
びついてしまいます。
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基礎代謝を上げたいのならば、自律神経の乱れに気をつけましょう!
自律神経が乱れて、朝方に副交感神経が活発なままだと体温が上がりません。体温が上
がらなければ基礎代謝が下がりますので、自律神経を整えて基礎代謝を上げる事を心掛け
ましょう!
近年の研究で「なぜ太るのか?なぜ痩せられないのか?」という問題に対して、脳の問
題が大きく関わっている事が分かってきました。
その鍵となるのが「セロトニン」という物質です。セロトニンは、交感神経のバランス
コントロールする神経伝達物質です。
セロトニンは、映画を観て感動したり、恋人が出来たりして満ち足りた気分になると、
脳内に分泌される神経伝達物質(ホルモン)で、精神を安定させて脳を元気にする働きがあ
ります。
ダイエットをするにあたって、基礎代謝を下げないようにする為には、寝起きの悪さを
改善して基礎代謝を上げる事を心がける事が必要になります。
何故?寝起きが悪いのでしょうか?
結論から言いますと、自律神経が関係しています。寝起きが悪いという方は自律神経が
乱れている可能性があります。
自律神経とは、自分の意思ではコントロール出来ない自動的に働く神経の事を言います。
そして自律神経は更に2種類の神経に分類されます。
1 つめは活動を司る交感神経、2 つめは休息を司る副交感神経です。
睡眠は副交感神経が密接に関係しています。もし、睡眠を心掛けようと意思を働かせて
も、眠れないのは休息を司る副交感神経が上手く働いていないからなのです。
自律神経とは交感神経と副交感神経がバランスよく入れ替わる事で、人間の身体の恒常
性を保っています。
そして、なんらかの要因でこの自律神経に乱れが生じると交感神経と副交感神経がバラ
ンスよく入れ替わる事が出来なくなります。
眠りたくても、眠れないのは交感神経が副交感神経と上手く入れ替わっていないから
です。そして、寝起きが悪いのは副交感神経と交感神経が上手く切り替わってはいないか
らです。
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副交感神経が働いている時は、交感神経が働いている時よりも体温が下がります。
体温が低ければ、基礎代謝も下がりますので、起床したら体温を上げなければなりませ
ん。
その為にも、自律神経の乱れを防ぐ事が必要になります。
基礎代謝を上げる為には、朝方の生活を心掛けましょう!
自律神経のバランスをコントロールしているのは、セロトニンという神経伝達物質が深
く関わっています。このセロトニンが少なくなると自律神経のバランスが崩れる要因にな
ります。
セロトニン不足を防ぐ事が基礎代謝を下げないようにする事にも関係してきます。セロ
トニン不足を防ぐ為には朝日を浴びる事が効果的です。
また、朝日を浴びる事によって、メラトニンというホルモンの分泌をストップさせます。
このメラトニンというホルモンは「天然の睡眠薬」と呼ばれています。
朝日を浴びる事によって、メラトニンの分泌をストップさせて、その時から約 14 時間
後に再分泌され、分泌開始から 2 時間後がピークになります。
ですので、基礎代謝を下げない為にする事として、自律神経を乱れを防ぐセロトニン不
足を避ける為に朝日を浴びる事。それを効率よく行う為にもメラトニンの分泌を正常に働
かせる事が大切になります。
以上を心掛ける事
によって、自律神経
がバランスよく働き、
寝起きでもスグに交
感神経が活発化して、
体温が上がります。
体温が上がれば、
基礎代謝も上ります。
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(5)生理周期との関連
女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)は、
月経周期でその分泌量は大きく変わります。
特にエストロゲン(卵胞ホルモン)が減ると、それに伴って神経伝達物質であるセロト
ニンも急激に減ります。
その時に頭の中の血管が拡張することで片頭痛が起こると考えられています。
このエストロゲンが減少するのが排卵日や生理の初日前後です。
つまり排卵日や生理の初日前後にはエストロゲンが減少するためにセロトニンも減少→
頭の中の血管が拡張して片頭痛が起こりやすいということなのです。
以上のように、だいたいこうした時期は、女性の場合、初潮を迎える 13 歳頃に一致し
ます。こうした年代に女性の場合は、片頭痛を発症してきます。
女性は健常男性より 約 52% 脳内セロトニンを産生する能力が低く、またセロトニンの
前駆物質であるトリプトファンが欠乏すると、女性では脳内セロトニン合成が男性の 4 倍
減少する、と言われています。
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エストロゲンが低下することでセロトニン神経の機能が低下し、脳内セロトニン濃度が
低下すると考えられています。
(6)食事に関連して
1.食事はバランスが大事で、偏食は「脳内セロトニン低下」の原因になります
セロトニンを増やすためは、セロトニン合成にかかわる酵素、補酵素やビタミンB3(ナ
イアシン)、ビタミンB6、およびマグネシウム、亜鉛の不足を起こさないことが大切で
す。
トリプトファンはセロトニンの原料であると同時に、ナイアシンの原料でもあり、ナ
イアシンの合成が優先されます。
そのため、ナイアシンが不足していますと、折角、脳内に取り込まれたトリプトファ
ンもナイアシンの合成に使われてしまい、セロトニンの合成へはまわってきません。
ナイアシンは魚介類や肉類などの食品に含まれており、腸内細菌により産生もされます
ので、適量の魚介類・肉類を摂食し、腸内細菌を健全に保っている限りにおいて、ナイア
シンの摂取不足を起こすことはありません。
この条件が整った状態で、セロトニンはトリプトファンを原料として、ビタミンB6、
亜鉛、マグネシウムなどを補酵素として合成されます。
ビタミンB6は、ニンニク、唐辛子、マグロ、カツオ、レバーなどに多く含まれています。
亜鉛の多い食品は牡蠣が有名ですが、牛肉にも多く含まれます。
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マグネシウムは非常に不足しやすいミネラルですので、ニガリやマグネシウム水溶液か
ら日常的に摂るのが好ましいでしょう。
これらのビタミン剤やミネラルはサプリメントである栄養素を多く摂ったからといって
効果が上がるというものではなく、全ての栄養素の不足を起こさないというのが改善のた
めの基本となります。
一つでも成分が不足しますと、一連の反応は進まなくなります。
特に偏食も無く、平均的な食事をしていても、マグネシウムは最も不足しやすい栄養
素です。
ビタミンB6
食品・腸内細菌
↓
トリプトファン
(60個)
⇒
⇒
⇒
↓
⇒
⇒
ビタミンB3(ナイアシン)
↓
優先
(1個)
↓
→
→
→
→
セロトニン
↑
ビタミンB6
亜鉛
マグネシウム
2.肉・牛乳(乳製品)・卵の摂りすぎは、「脳内セロトニン低下」の原因
「セロトニンを増やすためには、トリプトファンをたくさん含んでる食べものをとればO
K」と思われている人も多いと思われます。
セロトニンは「トリプトファン」というアミノ酸を原料としてカラダのなかでつくられ
ます。腸や血液に含まれる大部分のセロトニンは、脳に入っていきません。つまり、単純
にトリプトファンが多い食べもの、たとえば「牛レバーやバナナをせっせと食べよう」な
んて本や雑誌を見かけることがありますが、実際にそうしたからといって脳内セロトニン
が単純に増えるわけではありません
腸内や血液中のセロトニンは脳に入っていきませんが、トリプトファンはちゃんと脳に
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入っていくことができます。ですから、トリプトファンをたくさん取り込むことができれ
ば、脳内セロトニンも充分につくることが可能になります。
しかし、トリプトファンが通る場所に問題があってここは、ほかの必須アミノ酸も通っ
ていく場所でもあるのです。この必須アミノ酸というのは、
「フェニルアラニン」とか「口
イシン」というものですが、食品によってはトリプトファンよりもこれらの必須アミノ酸
のほうが多く含まれるものがあるのです。これらの必須アミノ酸がトリプトファンの邪魔
をするため、トリプトファンが通過しづらくなってしまうのです。その代表的な食べもの
が、肉類や乳・乳製品なのです。……。
つまり、牛レバーにはトリプトファンよりも
ほかの必須アミノ酸が多いため、実際には思っ
たほどトリプトファンがとれないのです。
私たちのカラダの筋肉や骨などはタンパク質
で出来ていて、このタンパク質を構成している
のは 20 種類のアミノ酸です。そのうち、9 種類
は必須アミノ酸と呼ばれる体内では合成できないアミノ酸。その必須アミノ酸の中でもバ
リン、ロイシン、イソロシンは総称して BCAA と呼ばれる持久系のアミノ酸で、大切な
栄養素です。
この持久系アミノ酸 BCAA は、まぐろの赤身、肉や卵などの食品に含まれているほか、
最高の栄養といわれる母乳にも含まれています。
このように BCAA が多い環境では脳への取り込みが阻害され、脳内セロトニンがあま
り増えないことがありますので注意が必要です。
BACC は動物性蛋白質に含まれており、食品では牛乳、鶏卵、マグロ、牛肉などが挙
げられます。食べ物はバランスが大事なので、極端に摂取を制限すると逆に体調不良の原
因になるので注意です。牛乳、鶏卵、マグロ、牛肉の摂りすぎは逆に「脳内セロトニン」
不足を招くことに繋がりますので、注意が必要です。
(7)運動不足
この脳内セロトニンの低下を来す要因として、運動不足が挙げられています。
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「脳内セロトニン不足」の要因としての「運動不足」のタイプ
固いものをあまり食べない
階段を使わずエレベーターやエスカレーターを使う
30 分以上続けて歩くことができない
運動不足である
デスクワークが多い
セロトニン不足の要因の一つである運動不足タイプは、上記のようなものが挙げられます。
現代人にとって運動不足は大きな問題となっており、セロトニン不足の大きな一因にも
なっています。
一定のリズムで同じ動作を繰り返す「リズム運動」がセロトニン神経を活性化させます。
リズム運動をすると、セロトニン神経が活性化し脳内のセロトニンが増えます。
代表的なリズム運動としては「歩行」「咀嚼(そしゃく)」「呼吸」が挙げられます。
しっかり歩いて、しっかり噛んで食べて、しっかり呼吸をする、基本的なことですが現
代生活ではおろそかになりがちかと思います。
デスクワークが中心の生活の人は、運動する時間を設ける、なるべくエレベーターやエ
スカレーターではなく階段を使う、など工夫して生活の中にリズム運動を積極的に取り入
れて、脳内のセロトニンを増やしましょう。
激しい運動をする必要はありません。
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第5章
ストレス対策
現代社会ではストレスは避けて通れません。しかし、その過剰な蓄積は、胃潰瘍、
高血圧など体への影響だけではなく、鬱(うつ)など心への影響が心配されます。
これにどう対応すればよいのでしょうか。ストレス回避が不可能だとすれば選択
肢は 2 つしかありません。ストレスを解消するか、ストレス耐性を持つことです。
ストレスに強い心と体を作るために非常に重要な神経があります。脳内のセロト
ニン神経です。この神経がストレス耐性を高めるカギを握っています。
セロトニン神経の強化でストレス耐性は高まる
150 億もあると言われている脳の神経細胞の中で、セロトニン神経はわずか数万個
しかありません。にもかかわらず、脳全体に情報を発信しているという点で非常に
珍しい神経なのです
ストレス耐性を高めるためには、セロトニン神経を強化することが大切になりま
す。
「セロトニン神経を活性化するためには、「セロトニン」の章で述べました「セロ
トニン生活」を着実に行うことです。
そして、有酸素運動を行うことによって、ストレス解消を行うことも大切です。
「セロトニン神経の活性化」の原則
(1.)早寝早起きの規則的な生活を心がける
(2.)太陽の光を浴びる
(3.)リズミカルな運動をする
(4.)食事をする際に、よく噛む
(5.)グルーミングという「人とのふれあい」
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「セロトニン生活」の励行
1.早起きの生活習慣
●早起きの生活習慣を身に付けましょう。
休日に昼頃まで寝て、日頃の睡眠不足を解消しようとしている方は注意が必要です。起
床時間がいつもより遅くなるということは、生活リズムも乱れるということであり、逆に
体を疲れさせてしまう結果となります。
朝はまずがんばって起き、昼過ぎに上手に
昼寝を取るようにしましょう。
朝日を浴びることで、時計の時刻合わせが
行われます。ここで多少のズレが修正されま
す。
早起きの生活習慣で、太陽の光を俗びで体
内時計が正常になり、夜もスムーズに寝つく
ことができるようになります。太陽の光を浴
びることには理由があります。
太陽の光を浴びると睡眠ホルモンであるメ
ラトニンの分泌が止まり、セロトニンが分泌されます。セロトニンは神経伝達物質の一種
で精神を安定させます。セロトニンを増やすには、早寝早起きの生活に戻すことから始め
ましょう。セロトニンは太陽の出ている日中に分泌されやすいので、人間の本来の生活習
慣がセロトニンを活性化しやすいのです。
朝はぎりぎりまで寝ている方は、朝日を浴びる習慣がある方に比べて、疲れやすさを感
じてしまうことになります。
そして早起きしてできた朝の時間を、ゆっくり過ごすことを心がけましょう。「早起き
は三文の徳」といいます。夜は早寝をして、朝に早起きの生活習慣を身につけましょう。
●早起きをした起床後、窓際などで約 10 分間過ごしましょう。
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生活習慣を早起きに変えることで、生体リズムが変わります。
光の情報が脳へと伝わり、睡眠・覚醒の生体リズムが調整されます。生体リズムを調整
するために 2500 ルクス以上の光が必要ですが、曇りの日でも約 4000 ルクスありますので
大丈夫です。また、晴れの日 10000 ルクス以上もあります。
深夜に勤務して朝帰る方は、帰宅途中に朝日を浴びると、体内時計が調節されてからだ
が目覚めてしまいます。できれば濃い色のサングラスをかけて帰宅し、帰宅後はすぐに部
屋のカーテンを閉め、照明を薄暗くするようにすれば、日中の睡眠への悪影響が少なくて
すみます。
昼夜交代勤務の方は、朝にかけて勤務した日もそのまま夜まで起きているほうが、生体
リズムを崩ささないですみます。そして、夜は早めに就寝しましょう。
●早起きの生活習慣と朝食の大切さ!
食の偏り、食の乱れなどにより、偏食・朝ごはんの欠食や咀嚼能力の低下などがおこり
ます。中でも毎日の規則的に朝食を軽めに(万能健康ジュースに切り替えることをお勧め
します)食べることが大切です。朝食を良く噛んで食べることによって脳を活性化させる
重要な作用があります。
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イライラしてくると脳からドーパミンが出て、激怒の感情が大きくなります。反動性低
血糖(一過性の低血糖)の場合、激怒すると小脳(平衡調整作用を司どる)のバランスが崩れ
やすいので、特に気をつけなければなりません。
よく咀嚼(噛む)すると唾液とともに、イライラを押さえるパロチンというホルモンが分
泌されます。また、ストレス耐性を高め、気持ちを安定させる脳内伝達物質のセロトニン
がでやすいのです。このように、イライラを抑えると同時に、気持ちを落ち着かせるるリ
ラックス効果と集中力・判断力を培うのです。
2.呼吸法は腹式呼吸
腹式呼吸は健康法として広く知られている呼吸法です。
腹式呼吸は気持ちを落ちすかせ、体をリラッ
クスさせる呼吸法として、古くから行われてき
ました。
就寝前に腹式呼吸を 5 分間程続けて、自律神
経を整え気持ちを落ちつかせましょう。腹式呼
吸は横隔膜の上下運動によって行われるもの
で、深くゆっくりした呼吸です。
健康な人は、日中は胸式呼吸が多い、早く浅い呼吸です。睡眠中は腹式呼吸を無意識の
うち使い分けをしています。
●腹式呼吸法により
肺の血流はもともと不均等で、安静時には肺内の限られた部位しか機能していません。
深い呼吸によって、通常は使われない肺気管支の末端まで、新鮮な空気を送り込むため
のものです。滞っていた毛細血管の血流までもが、生き生きと回復するのです。息を吐い
てお腹を引っ込めることで、横隔膜が上に伸び胸郭が下から持ち上がることでストレッチ
となり、横隔膜にある筋肉センサーが刺激されるマッサージ効果で、血液循環やホルモン
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の分泌も促進されるとともに、自律神経のバランスも調整され自然治癒力も高まります。
ストレスが重なると睡眠中でも、胸式呼吸をしてしまいます。ストレスを感じる時ほど
腹式呼吸でリラックスを心掛けてください。
腹式呼吸を行うと息を吐くときに腹筋の力で横隔膜を上下させ、腹圧が高まり、便の出
も良くなります。こうしたことから、腹式呼吸は、便秘がちの方にはお勧めです。
●脳ストレスをなくす腹式呼吸
東洋医学では、この腹式呼吸が正いものと伝られてきました。別名「丹田呼吸法」と呼
ばれています。おへその下の丹田という部分を意識して行うためにそう呼ばれています。
座禅やヨガのときに教えられるのも、この呼吸法です。
この丹田式呼吸法を行なうことで、セロトニン神経が活性化され、脳内セロトニンが分
泌されることが分かっています。セロトニンが十分に分泌されると、幸せ感や痛みの軽減、
睡眠の質を高める、うつ症状の改善などが挙げられます。
●呼吸法に関連した健康法には、エアロビクスや気功など、さまざまに行われています。
呼吸とは、生命維持に不可欠な酸素を体内こ取り入れることです。人間の体は、60 兆
個ともいわれる細胞で構成されています。
細胞は一定の法則に従って規則正しく整列し、
器官や臓器を形成しています。これらの細胞が、
酸素を使ってエネルギーを発生させ、生命活動を
維持しています。
もし、酸素が不足すると体はどういう状態にな
るでしょうか?
筋肉疲労を起こします。筋肉の硬直による「肩
こり」や、全身の酸素不足による「全身のだるさ」といった現象が現れはじめます。この
ときは、体液は酸性に傾き、老廃物が多い状態です。細胞内に大量に酸素を送り込むこと
で、体液が整い、筋肉がリラックスします。
また、呼吸は生命活動を維持するのと同時に、情緒の安定とも関わっています。ストレ
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スを感じたときなど、大きく深呼吸するだけで何となく気分がさわやかになるのは、経験
的によく知られていることです。
緊張している人に、深呼吸をしたらいいよとアドバイスすることがあります。これは、
ゆっくりと息を吸ったり吐いたりすることで、頭をすっきりさせて緊張を和らげる効果が
あるからです。
このように、心身の健康と呼吸の関係は非常に大きいことがわかります。腹式呼吸でリ
ラックスをこころがけましょう。
●ため息をつくようにお腹から長く息を吐くだけ!
軽く口を開けてため息をつくように「はあ~」と息を吐き、吸うときは口や鼻を意識せ
ず自然に。これを繰り返します。「はあ~」と声を出してもよいのです。
注意することは息を吐くときに意識を集中し、おへその下あたりの丹田に力を込め、体
内の息を吐きることに集中し、目を「閉じない」ことがポイントです。
「息を吐く」呼吸の大切さ、
「息が合う」、
「息が長い」、
「息が弾む」、
「息を飲む」など、
呼吸に関係のある表現は数多くあります。ストレス社会の現代は、「息が詰まる」機会が
多く、心身の健康のためにいかに「息抜き」できるかにかかっています。
「息」という字は自分の心と書きます。つまり、呼吸をコントロールすることで、心身
のリラックスが可能であることを意味しているのです。
3.エネルギーを消費しましょう!
●エネルギー消費とストレス
ストレスを受けると、ステロイドホルモンの上昇、体温低下など、の生体反応が現われ
ます。体を動かすことで血流が良くなり、新陳代謝が上がり温まります。取り入れるエネ
ルギーよりもエネルギー消費が少ないと、余分なエネルギーは体に中性脂肪として蓄積さ
れます。
中性脂肪は貯蓄エネルギーとしては欠かせない脂肪ですが、量が増えすぎると有害な存
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在になってしまいます(片頭痛を誘発する”素”になります)。こうしたことから、何と
いっても、エネルギー消費を増やすことが大切です。日頃から、脂肪消費する習慣を心が
けましょう。中性脂肪は、体温を一定な保ち、善玉コレステロールを作り出す、細胞膜や
ホルモンを作る材料になるなどの生命維持には重要な働きをしています。
その反面、脂肪は過剰な状態が続くと、血管動脈の内側に沈着して酸化することで、血
管を傷つけ動脈硬化の原因を作るなど、片頭痛・生活習慣病の要因になります。
中でも内臓脂肪が、生活習慣病を引き起こす可能性が強いと言われています。
脂っこい食品を控えることや、お酒の適量を守るなど、特にストレスを溜めないように
注意が必要です。
●手軽なウォーキングや体操がおすすめ
ウォーキングなどで、体内のエネルギー消費を増やす
ことで、酸素摂取量や炭酸ガスの排出が増え、それらを
血液が運ぶため、心拍数、呼吸数が増加し肺及び心臓の
機能を鍛えることになります。
エネルギー源を体内のグリコーゲンだけでは、運動量
にみあった量を補給することができないために、脂肪組
織からのエネルギーを利用することになります。
運動すことで、脂肪を燃焼しエネルギー消費を増やす
とともに、自律神経にコントロールされている体内のホ
ルモンの分泌器官が活性されます。
そして汗をかくために失われる、水分やナトリウムなど水分バランスを保つため、副腎
皮質ホルモンや下垂体から抗利尿ホルモンなどが分泌されることになります。
血行不良による倦怠感や肩こり冷えなどが解消する効果があるといえます。
エアロビクスなどの酸素を取り入れながら行う運動は血管の弾力性を高め血液循環にも
良いとされています。
運動を行ってだんだん体カに自信がついてくると、不安や憂うつさが消え、気分が明る
くなり、精神的にもゆとりが出てきますので、肉体面に限らず、運動による効果が精神面
のこころの状態にまで良い影響をもたらします。
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●体を冷やす生活習慣
現代人は、冷たいものを生活の中で、取りすぎてると言われています。
ビールやアイスクリームなど季節に係わらず食べる方が増えているようです。体温が1
℃下がると代謝機能が12%下がると言います。年齢が進むと基礎代謝が落ちますが、食
生活でもエネルギー消費を少なくしてしまっている食習慣があるようです。
●ストレスの多い人
ストレスを受けると、ステロイドホルモンの血中濃度の上昇、体温低下、血液 pH の低
下などの生体反応が同時に現われます。体を動かすことで血流が良くなり、新陳代謝がよ
くなり温まるのです。
大量のステロイドホルモンは、体温を下げ、代謝を下げて免疫系を抑制してしまいます。
ストレスによる胸腺萎縮や末梢の免疫抑制は、ステロイドホルモンによる作用です。
低体温では、たん白合成が低下し、酵素合成なども抑制されてしまいます。
●軽い運動から体を動かす習慣を
筋肉を動かすことで体温が上昇し、からだが活動体制に入るようになります。
ラジオやテレビの体操番組を利用してエネルギー消費を習慣にしましょう。
なお、運動によって上昇した体温は 4 ~ 5 時間かけて徐々に低下するため、タ食前にも
運動すると寝つきがよくなります。また、適度な疲労感も睡眠の質を高めます。ただし、
就寝前の運動は逆に目が冴えるため注意が必要です。
●ウオーキングの健康効果
ウオーキングは 30 分程度でも十分効果があります。10 分× 3 回などのウオーキングが
お勧めです。朝の散歩には「前向きになる」「体内時計が正常になる」効果のほかに、免
疫力が高まる、血行が良くなる、エネルギー消費の脂肪燃焼効果、肺機能アップなど健康
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増進効果の他、季節の変化を知る、様々な視覚的な刺激を受けるなど、こころへの良い刺
激も盛りだくさんです。
●よく歩くことの勧め
骨盤の周りにある深部の筋肉を動かす習慣が脂肪のエネルギー消費として身に付けば、
正しい姿勢が維持でき疲れにくくなります。
そのためには、できるだけ歩いたり、階段を使うようにしましょう。足の裏の全身のツ
ボがあるといわれています。足の裏の刺激は脳へ伝わり、脳の働きを高め全身の血行もよ
くします。
簡単な柔軟体操やラジオ体操から、体を動かす習慣で基礎代謝・エネルギー消費を高め
てください。
4.ストレス解消の生活習慣はセロトニンにあります!
●ストレスはコントロールできる
現代人の持病ともいわれるストレスは残念ながら、ス
トレスをなくすことはできません。しかし、脳内物質セ
ロトニンをコントロールすることが脳ストレス解消につ
ながります。
何らかの刺激が加わると、不快感のようなものを感じ
ることをストレスといいますが、この刺激は肉体と精神
的、つまりこころのものがあることはご存じのとおりです。
最近の脳科学の研究により脳が感じていることが、明らかになってきました。脳が感じ
ているということは脳にストレスを伝える物質があり、また抑える物質があるということ
です。このメカニズムが明らかになれば、精神的ストレスはコントロールできるというこ
とになり、脳ストレス解消になります。
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●脳ストレスに関与する脳内物質
脳内物質ノルアドレナリンは、外部から刺激を強く受けると脳内ではノルアドレナリン
が分泌され過剰に分泌された場合キレやすくなり、うつ病を発生することもあります。
脳内物質ドーパミンは、何かを欲しいと感じ行動するとき、脳内にドーパミンが分泌さ
れ、過剰に分泌されると欲望を押さえられなくなり、買い物依存症や過食症に陥ることも
あります。
脳内物質セロトニンは、ノルアドレナリンとドーパミンをバランスよく整える物質です
が、これらのバランスが崩れると脳がストレスを感じるのです。
●セロトニン神経を活性化させましょう
ストレスは良くないものと捉えられがちですが、実は日々のストレスは生活をメリ・ハ
リをつけてくれているのです。
ノルアドレナリンもドーパミンも適度な分泌であれば、良い刺激となって生きる充実感
へとつながります。すぐに解決できないような問題を抱える状態が長時間続くことになる
と、ドーパミンもノルアドレナリンも分泌が過剰になり身体的な症状となって表れます。
そうなると、ノルアドレナリンとドーパミンのバランスを整えてくれるセロトニンの分
泌量が減り、脳に強い脳ストレスを与える要因となるといわれています。この解決方法は、
セロトトニンの分泌量を増やし脳内物質のバランスを整え脳のなかから脳ストレスを消す
ことです。そのために生活習慣を見直し、セロトニンを増やす方法を身に付けることが必
要です。
セロトニンが増えると、平常心を保てるようになる、良い姿勢、若々しさを維持、毎朝、
気持ちよく目覚める、痛みの軽減、頭がよく働き、すっきりするなど非常にありがたい状
態にしてくれるのです。
●朝日を浴びる生活習慣
遅寝遅起きが生活習慣になっている人や、日中家の中ばかりで過ごす人はきちんと太陽
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の光を浴びていないこともあります。朝型の生活リズムに改めることが必要です。朝日が
差し込む部屋で軽い運動をしたり、朝日を浴びながら洗濯物を干すなど、朝日を有効利用
しましょう。
セロトニン神経は、日中だけ一定のリズムでセロトニンを出し続ける特性があります。
太陽光を浴びることでスイッチが入るのですが、浴びるというよりも、目の網膜に光が
入ることが重要です。強すぎる光も疲労の原因となってしまいます。
●リズム運動をしましょう
一定のリズムで 5 分以上 30 分程度までを目安に、簡単で慣れている、筋肉の緊張と弛
緩を繰り替えす運動をする。ウォーキングやジョギング、ラジオ体操、水泳、ヨガ、など
が向いています。大きく呼吸を繰り返すだけでもリズム運動になるので朗読や座禅も効果
的です。また、食べ物を良く噛むことも、顔や首の筋肉に有効です。
●グルーミング
日常生活のなかでグルーミングつまり、スキンシップをはかりましょう。
人と触れ合う行為でセロトニン分泌が活性化します。夫婦や親子でマッサージや肩もみ
など、握手やハグなどの機会を増やす。直接触れ合わなくても共感するだけでもよいよう
です。
●セロトニンを増やす食材
セロトニン活性のために、セロトニンの原料になるトリプトファン、体内でセロトニン
を合成するために必要なビタミン B6、セロトニンを活性化する炭水化物が含まれている、
食材を意識的に選びましょう。(食事の項目で述べます)
バナナはトリフトファン、ビタミン B6、炭水化物も豊富で、バナナには、セロトニン
を作る3つ成分がすべてを取ることができます。また、よく噛むことが重要です。
●眠くなるのは、体内の睡眠薬メラトニンの働きによります。
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メラトニンが分泌されると、体温を下げ眠気をもたらします。このメラトニンが、身体
的ストレスを癒す質のよい睡眠につながるのです。
メラトニンを正常に分泌させるカギは、セロトニンにあるのです。実際にメラトニンの
原料はセロトニンなのです。質のよい睡眠をとるにはセロトニンを増やすことです。メラ
トニンには免疫を恒常させたり心臓血管系を保護したりする働きもあり、片頭痛・老化の
原因の活性酸素を除去し、若返りの効果もあるといわれています。
5.眠りとお風呂で気分転換を!
眠りにもリズムがあり、約 90 分ごとに浅い眠り(レム睡眠)と深い眠り(ノンレム睡
眠)とを繰り返しています。
昼寝をする場合は、浅い眠りのうちに起きるようにすれば
すっきりと目覚めることができます。時間は 15 分から 20 分
間程度がよいようです。
逆に、長時間の昼寝をとると、眠り・目覚のリズムが崩れ、
目覚めても頭がボーッとして逆効果となります。また、夜の
睡眠の質を低下させてしまいます。
また、15分程度の昼寝の前にコーヒーやお茶を飲んでおき、目覚めたあとに外光を浴
びることによって、リフレッシュ効果が高まり気分転換できるでしょう。
ちなみに、電車の中で居眠りをしたら妙にスッキリしたという経験はありませんか?
これは、座ったまま眠ったために深い眠りに入ることができず、浅い眠りのまま目覚める
ことができるからなのです。
●眠りを誘うハーブティー
おやすみ前のハーブティーはいかがでしょうか?
カモミールには、身体をリラックスさせて気分を落ち着かせる効果があり、眠る前にカ
モミールティーを飲むと安眠できるといわれています。
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お好みでパッションフラワー(鎮静&精神安定作用)、マジョラム(筋肉の緊張緩和)、
リンデン(リラックス作用)、レモンバーム(リラックス作用)などをブレンドしてみる
のも思考を変えて気分転換をしましょう。
●日中の活動にもリズムがある
人間の脳は、覚醒時も 90 ~ 120 分のリズムを持っています。集中カを維持できる時間
もそのくらいであり、多くの大学等では授業時間を 90 分単位としています。10 ~ 15 分
程度の休息をはさみ、また 90 分間集中する、というリズムを効率よく活動して、上手に
気分転換をする秘訣ではないでしょうか。
●上手に気分転換いろいろ!
仕事や人間関係にストレスを感じている人は、「他人は他人、自分は自分」と割り切っ
てみましょう。
また、すべてを自分で処理しようとせず、たまには他人も頼ることも大切です。必ず休
憩時間を取ること、残業時間を区切るなど、上手に気分転換をすることが効果的です。
満員電車にストレスを感じている方は、いつもより 5 分だけ早い電車に乗ってみましょう。
そして、仕事前にお茶やコーヒーなどを一杯飲んでみてください。コンビニや自販機の
ものでも、会社で作ったものでも何でも結構です。
上手に気分転換をするのに、もう少しだけ早起きできる方は、会社の近くにある喫茶店
で気分を変えてみてはいかがですか。
気分転換には気持ちのゆとりを持つことは大切ですね。
5 分というごく短い時間のおかげで、気持ちよく仕事を始められるはずです。
●ぬるめのお風呂で気分転換
赤ちゃんは眠くなると手足が暖かくなりますが、これは、眠りに入ろうとして身体の
中心の温度(深部体温)が下がるため、体温が体の表面に放散されるからです。大人もお風
呂で一度体表面の体温を上げ、その後の下がるのに合わせて眠りにつけば眠りやすくなり
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ます。
気分転換のために時間をかけて、37 ~ 39 度ぐらいのぬるめのお風呂にゆっくりつかる
と、心身ともにリラックスして自然な眠りに入れます。アロマバスや足浴も、血液循環を
よくして心身をリラックスさせるのに効果的です。
体を温めることで自律神経のバランスや免疫力が向上しますので、20 分から 30 分湯船
につかり、お風呂で温める生活習慣をお勧めします。そして湯船につかりつつ、爪もみを
すると、内臓などの働きも良くなります。
入浴法として半身浴がよく取り上げられますが、じっくりと暖めることが大切です。
アロマオイルなど好みの入浴剤を加えることにより、気分転換やリラックス効果が高まり
ます。肌への浸透が始まる 15 分以上(できれば 30 分くらい)は、お風呂に入ってみて下
さい。
寒いと感じるなら、肩にタオルをかけるなどの工夫もよと思います。
入浴前にはコップ 1 杯の水を飲んでおくと発汗が促進されます。
好きな音楽を聞きなが、お風呂にゆっくりつかるバスタイムを楽しんではいかがですか。
●シャワーで済ます人は冷えやすい
身体の冷えは交感神経が優位になりやすく血流障害による、さまざまな病気の原因にな
ることがいわれています。夏場はもとより身体が芯まで冷える冬場でもシャワーだけの方
も増えているようです。
汚れを落とすというだけの目的であればかまいませんが、健やかな毎日を若々しい身体
を保って過ごすために、キチンとお湯を張ったお風呂で心身をリラックスさせ暖めること
で血流を改善し、ストレスを解消することが必要です。お風呂で温まることは、ホルモン
バランスや免疫力に良いのです。
入浴する習慣のある人と無い人の違いをリンパ球の比較で比べてみると、入浴習慣のあ
る人のリンパ球は2240個。シャワーだけの人は1900個前後が多いということです。
(あくまでも平均値です)
リンパ球の理想的な数字は、2200から2800個ですので、入浴習慣のある人のほ
うがリラックス状態にあるといえます。
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6.アロマセラピーの香りでリラックス!
五感の中でも、嗅ぐという感覚は気分転換にはよく使われます。
西洋では、古くからアロマセラピーという、香りを使った療法が積極的に行われていま
す。アロマセラピーは好みの香りをうまく活用して、疲労回復やストレス解消に使われリ
ラックス効果を発揮します。
花の香りを嗅いだとき、自然の中を歩いたときなど、明るい気持ちになったり、安らか
な気持ちになった経験はありませんか?アロマセラピーは、そんな自然の癒しを取り入れ
ているのです。
香りにはこころを静める、疲労を回復させる作用があることが分かっています。
アロマセラピーは、植物から抽出した芳香性の物質である精油(エッセンシャルオイル)
を使ってリラックス効果で、体やこころの健康や美容に役立てる植物療法の 1 つです。
アロマセラピー療法は、香りのもとである精油の小さな分子が鼻の奥の深い空洞(鼻
腔)を通り、鼻の付け根のあたりにある嗅ぐ上皮に着きます。
この嗅ぐ上皮は、親指のつめほどの大きさをした粘膜です。そして、その分子の情報は、
嗅細胞で電気信号に変換され大脳辺縁系へと伝わります。
大脳の中心部にある大脳辺縁系は、人間の食・性・情動などの本能的な部分を司ってい
る部分です。そして、香りの刺激が、大脳辺縁系の周囲にある大脳新皮質にもその刺激が
伝わり、さらに自律神経系や内分泌系、免疫系の働きをコントロールしている視床下部に
も伝わり、最終目的である体とこころに影響を与えるようになります。
例えば、ラベンダーの香りは、神経伝達物質セロトニンの分泌を促すことで、気持ち
を和らげてくれたり眠気を誘ってくれます。なかなか眠れないとき、ラベンダーの香りが
いい、というのは、大脳辺縁系に「心地よい」と感じさせるからです。
●香りによって、リラックスしたりシャキとしたり・‥と香りの影響はさまざまです。
自分の体調や気分に合わせて選んでみましょう。
◇緊張をほぐしたい:イランイラン・ラベンダー・カモミール
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◇イライラしている:ベルガモット・ラベンダー・フランキンセンス
◇不安である:ネロリ・オレンジスウィート・ベルガモット
◇限れない:ラベンダー・マージョラム・クラリセージ
◇気カがない:ローズマリー・レモン・バジル
●日本人のリラックス法
「お香」(日本版アロマセラピー)
お香は、旧約聖書に登場するほど歴史があるものです。もともと樹液のかたまりから作
られた香料だったようです。日本では、室町時代の足利善政、江戸時代の徳川家康など歴
史上で有名な将軍たちにも使われていました。
特に、体やこころを休めることが少なかった時代には、お香(アロマセラピー)でリラッ
クスすることが、大切なことだったのでしょう。
もちろん女性の間でもお香は利用されていました。平安時代の女性たちは、現在のよう
に入浴が頻繁にできないため、不快な体臭を隠すことや、
さらに、こころをリラックスさせるためにも使われていま
した。
江戸時代前後には、香枕という枕に引き出しを付け、香
をたくことのできる枕を使い眠ることで快適な睡眠を得よ
うとしていました。
今と同じように、入浴に用いていることも普通だったそ
うです。今日まで、気持ちを落ち着かせたいときや、人を
おもてなしするときなどに、香りのある暮らしが行われて
きたということは、今も昔も変わらず、香りは大切な存在です。
7.クラッシック音楽とモーツァルトの勧め!
クラッシック音楽のジャンルの中でもモーツァルトの音楽は、、副交感神経を効果的に
刺激し、交感神経優位の状態を改善してくれます。また、モーツァルトの音楽を初めとす
るクラッシック音楽は、免疫細胞のリンパ球を増やすなど免疫力の強化、精神的な不安の
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軽減、痛みの緩和に良い働きがあります。そういうことがストレス解消にも大変よいので
す。家畜にもモーツァルトを聞かせている酪農家もあるとか。・・・
●モーツァルトの音楽を聴くとなぜ癒されるのでしょうか?
ジャンルを問わず好きな音楽を聴くと心身が癒されることは誰でも経験していると思い
ます。クラッシック音楽の中でもモーツァルトの音楽は癒し効果が特に優れているといわ
れています。
その理由は、人の健康を支えている生体機能に刺激を与える高周波を豊富に含んでいる
ので、この高周波音は脊髄から脳にかけての神経系を効果的に刺激し、その結果健康を支
えている生体機能に良い影響を及ぼすのです。
そして、自然の音と同じ一定のリズムを保ちながら変
化のある音のゆらぎに満ちているということです。波の
音、小鳥のさえずりや虫の音、小川のせせらぎのような
自然の音には、ここちよさを生み出すゆらぎが含まれて
います。
モーツァルトの曲には、ヴァイオリンが奏でるビブラ
ートや音が震える部分など、1/f ゆらぎと呼ばれてい
ます。人間の生体リズムも 1/f ゆらぎになっているた
め、1/fゆらぎを感知すると生体リズムと共鳴し、自律神経が整えられるということです。
高いリラックス効果のあるモーツァルトの楽曲は、聴いているだけで心が落ち着いたり、
ストレスが解消されたりと、私たちの心と体を元気にさせてくれるのです。
また、ストレスがかかると、対抗するためにコルチゾールというホルモンが分泌されま
す。闘争本能がむき出しなったときもコルチゾールが多くなっています。体が臨戦態勢に
なっている状態です。
モーツァルトの音楽を聞く前と後では、聞いた後の方がコルチゾールのホルモン量が少
ないことが確かめられています。そんな点からもストレス解消に良いといえるでしょう。
モーツァルトが美しい音を求めたことは、自分自身の脳の中で快感物質を増加させるため
でもあったようです。その音は楽譜の中に記録され人々の感動を与える快感物質になった
ようです。
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●音楽だけでなくスポーツなども、ドーパミンの合成を高めるようです。
脳内のドーパミンは、快感物質で沢山分泌されるほど気持ちが良くなることが知られて
います。脳が創造性を発揮することにもドーパミンが関わっていると考えられています。
こころが嬉しい楽しいと感じる生きていく喜びや意欲の源です。ドーパミンは脳から、
嬉しい楽しい気持ちを呼び出しやすらぎを与える物質です。
スポーツ選手が苦痛を乗り越えた後に来る爽快な気分が病みつきになり、それをもとめ
て苦しいスポーツにのめりこむことは良く知られています。音楽にも同様の効果があるよ
うです。モーツァルトも無意識のうちに音楽活動を通じ爽快感を体感し、心地よい音を求
め、楽譜の中に脳機能活性化させる信号を埋め込んだのでしょうか。
効果的なクラッシック音楽の聴き方は、耳からの情報に集中できるように、部屋を薄暗
くし目をつぶり、大き目のヘッドフォンで聞きながら、1 回 30 分ぐらいを目安に聞くと
よいでしょう。加えて、アロマテラピーやお香で嗅覚にも刺激を与え、始める前にコップ
一杯の水を飲むと血液の流れもよくなります。
聞くという感覚以外でも、毎日の暮らしの中で、あなたはどのくらい五感を使って生活
しているでしょうか。
五感とは、視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚をいいます。この五感は、動物が生きていく
ために外的から身を守るため備わっているものです。
しかし、快適なはずの現代社会は、五感が鈍るような生活環境になっています。五感を
刺激することで自律神経の働きも良くなります。また、泣いたり笑ったり、感動したりす
るとで免疫や代謝も活発になります。
8.爪もみでストレスを解消しましょう!
瓜もみは、手軽に副交感押経刺激ができる家庭療法としてお勧めです。手の指先には神
経が集中しており、親指、人差し指、中指、小指の瓜の生え際を、押しもみすることで、
効果的に自律神経を刺激することができます。
手の指は内臓の働きと密接にかかわっています。親指は肺などの呼吸器、人差し指は胃
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腸などの消化器、小指は心臓や腎臓など、循環器の働きを高めることが期待できます。中
指の効果は具体的にはわかっていません。
●爪もみの指
刺激を与える指は、両手の親指、人差し指、中指、小指です。これらの指の瓜の生え際
をもむと、交感押経の過度な緊張がおさえられて顆粒球の減小とともに副交感神経が優位
となり、血液循環が促進されます。
薬指への刺激は交感押経の緊張を招きやすいので、通常は行わないでください。
●爪もみの場所
瓜の生え際の角です。おおよそ瓜の生え際であれば良いようです。
《爪もみをストレス解消の健康習慣に・・・・》
ストレスが多いと交感神経に傾きやすい状況です。
病気は、交感神経緊張による血流障害などの原因が多いことが言われています。爪もみ
は、交感神経の緊張を抑えてくれます。
薬指を除いてどの指も刺激していいのですが、たとえば胃の病気や調子の悪い方であれ
ば人差し指を、肝臓の調子が気になる方なら親指を、念入りにもむようにすると良いよう
です。
●爪もみのもみ方
瓜の生え際の角は、指の両側にあります。覚えやすいように、親指の外側から1・2(親
指)、3・4(人差し指)、5・6〔中指)、7・8(薬指)、9・10(小指)と番号をつけると分
かりやすいです。
爪もみで刺激する際には、一方の手の親指と人差し指で、もう一方の手の瓜の生え際を
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両側からはさむようにしてつまみ、そのまま押しもみ
します。
他の指と一緒にもんでください。たとえば親指なら 1
・2 を同時に 10 砂ずつ押しもみます。
念入りにもむ
指は、20 抄くらい刺激します。
一回に、両手の親指、人差し指、中指、小指を刺激
し、これを一日に1~3回行い、子供も大人と同様に
行ってかまいません。
●刺激の強さ
爪もみで指を刺激するときは、瓜の生え際にやや痛みを感じるくらいに押しもみます。
軽い刺激では効果がないので、痛いと感じる程度が適しています。
瓜もみは、自律神経のバランスを調整する効果に優れた健康法です。やり方もたいへん
簡単で、病気の予防やご家族の健康増進・ストレス解消にも役立ちます。お風呂に入って
いるとき、寝る前など、行う時間を決めておき、忘れずに続けるようにしましょう。
9.プラス思考で過ごす・喜び感動する!
プラス思考という言葉には、前向きに生きる、意欲や理想を持ち続ける、喜んで感動す
ることが大切だという意味が込められています。こころの持ち方があなたの人生を大きく
変えることは間違いありません。
物事を発展的に受けとめられないときもあることでしょう。自分にとって前向きに捕ら
える習慣付けをしてみたらいかがですか。この前向きな考え思考が、遺伝子の働きに大き
な影響を与えるることが分かっています。
遺伝子の働きは取り巻く環境や外からの刺激によって大きく変わってくるというので
す。眠っていた良い遺伝子を目覚めさせることです。
プラス思考になると、セロトニンやベーターエンドルヒン・サイロキシンなどが集中力
を高めくれます。毎日の生活の中で、喜んで感動していますか?
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●セロトニンとは、「やる気・意欲がでる」に必要な様々な、脳内ホルモンの働きを助け
る脳内部物質です。
前向きな気持ちプラス思考がいかに大切かが、生きるうえで重要なポイントになるでし
ょう。セロトニンは人を愉快にする脳をコントロールする特別な脳内ホルモンです。
・精神を安定させ興奮や不快感を沈める
・姿勢を保つ抗重力筋などの筋肉を刺激する
などの働きがあります。冬になって日照時間が短くなると、いつもよりも、セロトニン
の分泌が減ることが分かっています。
<セロトニンの分泌を促すには>
◆一定のリズム運動を
◆ 5 分以上持続する
◆ 2500 ルクス以上の光を浴びる(太陽光線がよい)
つまり、
「明るい太陽の下でで 5 分以上ウオーキングをする」のが最適ということです。
●成功イメージ
自分の理想とする姿を思え描くとこと、スポーツ界ではオリンピックに表彰台に立って
いるイメージを思い描いて実際に金メダルを取ることが出来た選手・・・・できるできる
とプラス思考をしていれば、やる気ホルモンが湧き出て成功へ近くなるのです。
●セロトニンを誘発させるタッピング
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(マッサージのように、体の特定のポイントを
自分でトントンと叩くだけです)
タッピングの効用としては、セロトニンが注
目されています。セロトニン神経は脳の中心に
ある脳幹のさらに中心部に位置して縫線核とい
う部分にあり、神経伝達物質セロトニンを分泌
することで情報のやり取りをしていて、心理的には平常心を保つ働きをしています。
セロトニン以外にもこころの状態にかかわる神経には、ドーパミン神経(食欲、性欲、
喜び、快楽、陶酔感など)とノルアドレナリン神経(不安、恐れ、驚き、ストレスなど)
があり、これら二つの神経をセロトニン神経は抑制作用を及ぼすのです。
興奮と不安を抑制して心のバランスを保つ働きをしているのです。セロトニンを分泌さ
せる方法は、座禅やヨーガなどが効果的といわれますが、そのような方法は習得までに時
間がかかり、中途挫折するケースが多いようです。そのほかにも、リズミカルに歩く、ガ
ムをかむ、一定のリズムを身体に与えることなどで、セロトニンが分泌されることがわか
っています。
タッピングで十分セロトニンを分泌することができるのです。タッピングの場合なでた
りさするよりも、リズミカルな刺激が効果的のようです。マッサージを受けるとストレス
ホルモンが低下することが知られています。
逆に、ストレスが多いと、アドレナリンなどの興奮ホルモンなどが、不安を増幅させて
る恐怖のホルモン怒りホルモンと呼ばれています。同時に、筋肉も内臓も緊張し血圧や血
糖値が上昇して、ヒステリー状態などになるのです。
◆なんとなく疲れやすくだるい
◆元気がでない、暗い気持ちになる
◆筋肉が哀えて老けた印象になる
◆満腹感がなく甘いものなどを食べ過ぎて太る
・
・・などの状態になります。
軽いうつ状態になる人もいるそうです。
気をつけましょう。
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10.笑いと健康
笑いが交感神経を緩めます。緊張がほぐれるのです。
笑いは、副交感神経の反射によるものです。ストレスにより交感神経が優位になってい
るときこそ、笑うことで血行の促進や筋肉の緊張を緩める副交感神経を優位にすることが
できます。
●笑いはなぜ健康に良いのでしょうか?
笑うことで深い呼吸をする腹式呼吸をしているのです。
いつも自然にしている呼吸よりもさらに深い呼吸をしています。深く呼吸をすることで、
酸素が多く体内へ取り入れられ、血液の循環がよくなります。脳や全身に酸素や栄養がス
ムーズに運ばれ、新陳代謝がよくなり、免疫力も上がるといわれています。
笑う門には福来る、笑いは百薬の長など昔から
知られていますが、海外でも、3回薬を飲むより
1回笑うほうが体に良い、たんと笑ってたんと寝
れば医者は要らないなど、笑いと健康に良いこと
わざが世界中に存在います。
●笑顔でもΝK細胞は活性化されるのです
笑顔を作るだけで免疫力が上がるということが
分かりました。
1 人ずつ個室に入り何もないところで、表情だ
け笑い顔で 2 時間続けてもらいます。
実験の結果、直前と直後にナチュラルキラー(NK)細胞の変化をみてみると、NΚ細
胞の活性が低すぎた人と正常範囲の人は全員上昇しました。
笑いを年齢別にみると、笑いが多い年齢が若い女性で、少ない年齢が高齢者です。これ
は、副交感神経を優位にする白血球のリンパ球が 15 ~ 20 歳をピークに少しずつ減少して
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いくからです。年齢が高くなるにつれリンパ球が減り、副交感神経の反射も起きにくくな
ります。
日頃から笑いの元になるものを探しましょう。 おもしろい本を読んで笑い、落語や漫
才を聞いて笑い、お笑い番組をみることで笑いを健康に活用しましょう。
●大阪で、笑いと健康についての実験
漫才、落語、新喜劇を見て笑った直後、血液検査を行ったところ、18 人中 14 人がリン
パ球のナチュラルキラー細胞の活性値が上昇したのです。さらに、免疫カのバランスを示
す指標値についても、ほとんどの人が正常範囲に近づきました。
また、笑いが交感神経と副交感神経を適度に刺激して、両者がバランス良く働くように
なり、自律神経も活性化するという結果も出たのです。
これは実験結果の一例ですが、他にも笑いと健康の関連性についての研究は、世界中で
行われています。
日本には、「笑う門には福来たる」ということわざもあります。こころと体の健康の保
持・増進のために「一日一笑」、笑いを生活での活用を、まずはお試しになってみてはい
かがでしょうか。笑いの有る生活をこころがけることは、家の中も明るいムードになり、
笑いだけでも癒されるのかもしれません。
本当におもしろくて笑う表情になる仕組みは、面白いという情報が脳→運動神経→筋肉
と伝わります。そして、顔全体の筋肉が大きく働くことで笑っている表情になります。
では、笑顔でいるとどうなるのでしょうか。先に笑顔を作っておくと、目と頬の筋も筋
肉が動いている状態であり、脳に伝わります。
そして、その顔の表情により、脳が笑っているのだと思い込むことで、脳から全身へお
もしろくて自然に笑ったときと同じ作用をもたらしてくれるのです。つまり、作り笑顔で
も顔の筋肉を動かすことによって、脳は自然と楽しくなります。
●笑えば息災
漫才を聞いて笑うと、糖尿病患者の食後の血糖値を引き下げる効果があったと、日経新
聞の記事がありました。肥満のせいで血糖値が血糖値が高くなる糖尿病患者の協力で、漫
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才を 1 時間聞いて笑ってから食後の血糖値を測定すると、普通の講義の後よりも、血糖値
の低下の割合が大きかった、ということです。
また、免疫機能にも良い報告があり、ウイルス感染防止に威力を発揮するナチュラルキ
ラー細胞(NK細胞)の活性が低い人は、笑った直後に活性が上昇するとのことです。
別の研究では、リュウマチの患者に落語を聞かせたところ痛みが軽快したとの報告もあ
り、リュウマチの炎症と密接な関係のある、インターロイキン6(IL6)の血中の値も
低下していたとのことです。
ストレスがたまることで体は緊張状態になりますが、笑うことで、筋肉を柔軟にします。
以上のように日常生活に取り入れて、ストレス対策を行っておくことも、慢性頭痛の予
防のために重要となってきます。
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