セロトニン神経系 - 成和脳神経内科医院

セロトニン神経系
片頭痛を理解するために
Migraine
成和脳神経内科医院
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セロトニン神経系
私達が日中活動している際に、常時活動している神経系がセロトニン神経系
です。このようにエネルギーを常時たくさん使うセロトニン神経系は、ミトコ
ンドリアの働きが悪くなりますと、同時にセロトニン神経系の働きまで悪くな
ってきます。
「セロトニン神経系」は、脳の中心にある「脳幹」の、さらに中央に位置する
「縫線核」という部分にあります。そして、大脳皮質や大脳辺縁系、視床下部、
脳幹、小脳、脊髄など、あらゆる脳神経系と結合し、脳の広い範囲に影響を与
えている神経系です。
セロトニン神経系は、”大脳皮質を覚醒させ、意識のレベルを調節する、自
律神経を調節する、筋肉へ働きかける、痛みの感覚を抑制する、心のバランス
を保つ”などの重要な働きをしているからです。
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このように、健康な生活を送るためには、ミトコンドリアが正常に働き、セ
ロトニン神経系がまともに機能していることが不可欠な要素になっています。
「セロトニン神経系」とは
「セロトニン神経系」とは、セロトニンを含有し、神経伝達物質として”セ
ロトニン”を用いる神経細胞群とその標的細胞の受容体からなります。
神経伝達物質とは、神経細胞の
ニューロン間で、信号をやり取り
するための物質のことです。この
細胞のシナプスからは、特定の神
経伝達物質が放出され、受容体で
受け取られるという仕組みがあり、
この情報伝達が神経へとつながっているのです。
この細胞膜にある特定の受容体は、その器官ごとに受容体が異なっており、
各部位に分布しています。
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ミトコンドリア働きが悪いと、脳の神経細胞の場合、「セロトニン神経」が
選択的に「ミトコンドリアの働き」の影響を受けやすく、セロトニンを産生し
にくく、セロトニンの合成やその合成のための酵素も充分な量を生成できなく
なってしまいます。
セロトニン神経系は、生活習慣の問題により機能が減弱し、その結果、「脳
内セロトニンの不足」が引き起こされてきます。
脳内セロトニンの低下は、「衝動性、過敏性、こだわり、緊張」が強くあら
われ、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚などの五感すべてが過敏になり、わずか
な刺激にも敏感に反応してしまい、さまざま
な自覚症状を訴えるようになります。これが、
脳過敏の原因になってきます。
このように、セロトニン神経系とは、「脳内
セロトニン」を神経伝達物質として情報伝達
を行う神経系のことで、脳内セロトニンは神
経終末で合成され放出されます。
神経伝達物質の種類
最初にお話しておきたいことは、神経伝達物質は、実は 100 種類以上あると
いうことです。そのなかでも主要なものは 10 種類ほどに絞られますが、神経
細胞によって、シナプスから放出される神経伝達物質の種類が決まっています。
そして、その種類によって興奮や抑制など心身に対しての働きが異なります。
代表的な神経伝達物質には、ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニンな
どがあります。それぞれがもたらす効果として、ノルアドレナリンは「意欲」、
ドーパミンは「興奮」、セロトニンは意欲や興奮などの「抑制」と考えられて
います。
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ドーパミンは、体の動きを調整す
る神経の機能と、心の領域として「舞
い上がるような心地よさ」を感じる
「快の情動回路」といわれる神経の
機能とがあります。セロトニンと深
く関わりがあるのは、後者の機能で
す。このドーパミン神経を活性化さ
せるのは「報酬」です。人間社会に
おいて、私たちが「試験で良い点数を取る」「試合で勝つ」「高い給料を取る」
などの目標を持つと、ドーパミン神経は興奮し、私たちに一種の「渇望したス
トレス状態」を作り出します。この状態ではドーパミン神経が活性化している
ので、私たちはちょっとしたストレスでも努力するようになるのです。そして
目標が達成されると「舞い上がるような心地よさ」を感じることができます。
ですからドーパミン神経は、意欲の神経なのです。
達成されないことで一番問題になるのは、ドーパミン神経が暴走し始めるこ
とです。実際に、世の中は上手くいかないことが多いわけですが、上手くいか
ないことが続くと「何が何でも達成するぞ!」と異常行動を起こし始めるので
す。いわゆる依存症で、周囲に迷惑をかけてしまう。これはドーパミン神経の
悪い面です。
ドーパミン神経には興奮した際、良い面と悪い面があるわけですが、このド
ーパミン神経にコントロールをかけることができる神経回路がセロトニン神経
である、ということです。
ノルアドレナリンはストレスに関係する神経になります。不快なストレッサ
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ーが、外部から人間の内部に加わった場合、最初に反応するのがノルアドレナ
リン神経です。わかりやすく言え
ば、脳内の危機管理センターです。
危機を察知すると、体の面では即
座に血圧を上げたり、心の面では
不安を感じさせたりするわけです。
ノルアドレナリン神経も重要な
神経ですが、暴走するとどうなる
かといいますと、大したことでは
ないにもかかわらず、「大変だよ!」と興奮してしまうのです。いわゆる「パ
ニック障害」です。
ドーパミン神経をコントロールするのと同じく、セロトニン神経がコントロー
ルすることができます。ですから、ドーパミン神経の「快」で舞い上がること
と、ノルアドレナリン神経の「不快」で落ち込むこととの両方を抑えるという
点で、セロトニン神経を活性化させることは重要だと言えます。
要約しますと、セロトニンは心の面
では、クールな覚醒、つまり平常心を
保つはたらきをします。セロトニン以
外にも心の状態を演出する神経には、
快感や陶酔感を増幅する「ドーパミン
神経」と、様々なストレスによって覚
醒反応を引き起こす「ノルアドレナリ
ン神経」があります。セロトニン神経
は、この2つの神経に対して抑制作用
を及ぼし、興奮と不安のバランスを図り、心の状態を中庸に保つはたらきをす
るということです。
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セロトニン神経系の働き
セロトニン神経の活動レベルは一日の中で絶えず変化していますが、その活
動が活発であればセロトニンの分泌が多くなり、弱くなれば分泌が少なくなり
ます。
分泌が多ければ、それだけ情報も伝わりやすくなるというわけです。
セロトニン神経が働くのは、おもに覚醒時です。
朝起きてから夜寝るまで、セロトニン神経は休むことなくインパルスを出し
続けています。つまり、起きている間中、セロトニンの分泌は行われています。
そして、睡眠中には、そのインパルス活動が弱くなり、セロトニンはほとん
ど分泌されなくなります。そのため脳内のセロトニンの濃度が下がり、脳全体
を覚醒する作用もなくなります。
セロトニンは、睡眠ホルモンであるメラトニンと相対する性質があります。
セロトニンは脳の覚醒を促し、メラトニンは睡眠に作用します。
メラトニンが分泌している間はセロトニンの分泌は
少なく、逆にセロトニンが多く分泌されている間はメ
ラトニンの分泌は少なくなります。
太陽の光(のような非常に強い光・明かり)を浴び
ると、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌がストッ
プし、代わりに脳の覚醒を促すセロトニンの分泌が活
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発化されるのです。
昼夜逆転の生活をしていたり、日中部屋の中にばかりいると、セロトニンと
メラトニンの分泌のバランスが崩れ、不眠症になったり、片頭痛が起きやすく
してしまうのです。
体内時計とは、私
たち自身のからだ、
臓器や器官がそれぞ
れもっている時計で、
地球の自転(24 時間)
とは 1 時間ずれ、体
内時計は 1 日 25 時間
といわれています。この時間を調整し、地球の自転とあわせてくれているのが
朝陽なのです。ですから、放っておくとリズムが崩れ、生活リズムが乱れてい
きます。そのリズムをもとに戻してくれるのが「朝陽」なのです。また、太陽
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の光は、脳の中にある視交叉上核から松果体を刺激し、セロトニンやメラトニ
ンというホルモンをつくってくれます
このふたつのホルモンは、ミトコンドリアの天敵「活性酸素」を除去する働
きがあります。
メラトニンは睡眠ホルモンとして、セロトニンは心を鍛え、バランスを整え
るホルモンとして、有名ですが、この二つとも、ミトコンドリアにとって天敵
の活性酸素を除去する働きがあります。
活性酸素は、細胞を傷つけたり壊したりする働きがあるので、ミトコンドリ
アだけでなくからだにとっても天敵で、片頭痛の原因でもあるのです。朝陽を
浴びることは、この活性酸素を減らすホルモンをだす効果もあるのです。
「脳内セロトニン」の働き
ここで述べる「脳内セロトニン」の働きとは、
「神経伝達物質」としての作用で、生理活性物質
としての作用とは異なっています。
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1.大脳皮質を覚醒させ、意識のレベルを調節する
2.自律神経調節する
3.筋肉へ働きかける
4.痛みの感覚を抑制する
5.心のバランスを保つ
1.大脳皮質を覚醒させ意識のレベルを調節する
セロトニン神経は、大脳皮質を覚醒させ、意識のレベルを調節する役割をし
ています。
大脳皮質には、意識のレベルを調節すると
いう働きがあります。ここに作用しているの
が、セロトニン神経です。
人は眠っている間意識がなくなりますが、
朝起きると覚醒します。
朝起きて、意識がスッキリして爽快な時も
あれば、ぼんやりしている時もあります。
意識と一口にいっても、「スッキリ」「ぼんやり」「イライラ」などさまざま
なレベル、状態があります。
セロトニン神経が作り出しているのは、起きている時の「スッキリ爽快」な
意識の状態です。
2.自律神経を調節する
「ホメオスターシスの三角形」の一角に「自律神経系」があり、この「自律
神経系」を調節する働きをするもので、最も重要な働きをしています。
セロトニン神経は、自律神経を調節する役割を担っています。
自律神経は心臓機能、血圧、代謝、呼吸などを司っており、交感神経と副交
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感神経という 2 つの神経によって成り立っています。
交感神経は起きて活動しているときの神経で、副交感神経は眠っているとき
の神経です。
朝起きると自律神経のバランスが変わり、副交感神経から交感神経にシフト
します。
シフトしたら、片方の神経の活動
が全くゼロになるわけではありませ
ん。
交感神経と副交感神経は、互いに
シーソーのようにバランスを保ちな
がら、強くなったり弱くなったりを
繰り返しています。
セロトニン神経は自律神経に対
し、このシフトがうまくいくよう働
きかけています。
朝起きると、交感神経の方が優位にならなければなりません
そこで、セロトニン神経は交感神経を適度に緊張させ、体をスタンバイ状態
にします。
しかし、この働きがうまくいかなくなると、寝起きが悪くなったり、自律神
経失調症などになる場合があります。
3.筋肉へ働きかける
セロトニン神経は、筋肉へ働きかける役割を担っています。
セロトニン神経は直接体を動かすのではなく、筋肉を緊張させることで、影
響を与えています。セロトニン神経が働きかけるのは、抗重力筋です。抗重力
筋とは、重力に対して姿勢を保つために働く筋肉のことです。まぶたが開き、
首が立ち、背筋が伸び、歩いたりできるのは、この抗重力筋のおかげです。セ
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ロトニン神経が活性化していると、まっすぐな姿勢や生き生きした表情になる
ことができます。反対にセロトニン神経の働きが弱まると、背中が丸まったり
顔の表情がどんよりしてしまいます。
このため、セロトニンが不足してきますと、「体の歪み」を引き起こしてき
ます。
4.痛みの感覚を抑制します
セロトニン神経は、痛みの感覚を抑制する役割を担っています。
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セロトニン神経が活性化されていると、鎮痛効果が現れます。
痛み自体がなくなるのではなく、セロトニン神経の活性化により痛みの感覚
をコントロールすることで、痛みを感じにくくなります。
反対にセロトニン神経が弱まると、ささいなことで体の痛みを感じるように
なります。
脳内セロトニンが低下すれば、頭痛が出現しやすくなってきます。また片頭
痛におけるアロデイニアと関連しています。
5.心のバランスを保つ
セロトニン神経は、心のバランスを
保つ役割を担っています。
人の心は外側、内側の両方から影響
を受け、絶えず変化しています
嬉しいことがあれば気分も高揚しま
すし、悲しいことがあれば気分が沈み
ます
人の心はそうやってできていますの
で、そういった変化が起こることは決して悪いことではありません。
しかし、その振り幅が大きすぎると問題が生じます。
自分で自分の気持ちがコントロールできなくなり、日常生活に支障をきたし
てしまいます。セロトニン神経は、そういった状態にならないよう心のバラン
スを保ってくれる作用があります。自律神経と同様、セロトニン神経はちょう
どいいバランスをとってくれる効果があるのです。このようにして、ドーパミ
ン、ノルアドレナリン、セロトニンがバランスを取り合っています。これは重
要な点です。
とくに、セロトニン不足は、慢性頭痛とくに緊張型頭痛の発症要因となって
きます。
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セロトニンの2つの側面
セロトニンは”生理活性物質”であり、”神経伝達物質”でもあるのです。
化学構造式から、生理活性物質として考える場合は「インドールアミン」と
呼ばれ、神経伝達物質として考える場合は「モノアミン」と呼ばれる傾向があ
ります。また、その構造式からの名称である 5-ヒドロキシトリプタミンの略字
として 5-HT とも表記されます。
セロトニンは、人体には、10mg 程度存在します。セロトニンの 90 %以上は、
腸(小腸)に存在します。小腸のエンテロクロマフィン細胞(EC 細胞)が産
生して放出したセロトニンを、血小板が、腸の血管内で取り込みます。血小板
(濃染顆粒)には、セロトニンの約8%が存在し、血小板が凝集すると放出さ
れます。消化管のセロトニンは平滑筋を収縮させ消化管運動を亢進させます。
血小板から放出されるセロトニンは血管を収縮させる働きがあります。また、
セロトニンは炎症のときの発痛物質(ブラジキニンなど)による発痛作用(痛
み)を増強させます。血液中のセロトニン(血小板に含まれるセロトニンなど)
は、血液脳関門を通って、脳に移行することはありません。
これが、セロトニンの”生理活性物質”としての役割です。
”生理活性物質”としての「セロトニン」
「片頭痛体質(酸化ストレス・炎症体質)」を
基盤として、ちょっとしたことで(ストレス
など何らかの理由で)「活性酸素」や「遊離脂
肪酸」が過剰に発生することによって血小板
が凝集することによって、血小板から血管外
へ「セロトニン」が放出され、血管を収縮さ
せます。その後、役割を果たした「セロトニン」は減少しやがては枯渇し、今
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度は逆に血管は拡張します。
血管が拡張することによって血管に絡みついた三叉神経が刺激され、頭痛が
起きます。さらに、三叉神経が刺激されると、サブスタンスPやCGRPなど
炎症を起こす物質が放出され、血管を刺激して痛みが出てきます。この二つに
よって、片頭痛が起きてきます。
酸化ストレス・炎症体質を基盤として
↓
(シャワーには 1D)
活性酸素・遊離脂肪酸の発生
↓
三叉神経末梢から、血管拡張性の神経ペプチドを放出
(サブスタンP、CGRP)
血小板凝集
↓
↓
セロトニン放出
→
(血管には 1B)
→
血管透過性の亢進、血漿成分の漏出
神経源性炎症
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このように血管の収縮と拡張に大きく影響しているセロトニンですが、最初
の引き金となる「セロトニン」は”生理活性物質”としての作用です。
片頭痛発作時には、「脳内セロトニン」(神経伝
達物質としての)が不足した状態にあります。ト
リプタンという薬は、脳内セロトニンと同じよう
に、血管には 1B という鍵穴があり、トリプタン
はこの鍵穴に作用して、血管を収縮させ、拡張に
よって三叉神経が刺激されるのを防ぎます。
さらに血管の周囲から「痛み物質」が、シャワ
ーのように血管に降り注いで、血管の拡張と炎症
が起こっており、シャワーには 1D という鍵穴が
あって、トリプタンはこの鍵穴に作用して、「痛
み物質」の放出を止めます。ここでもセロトニンの代わりにトリプタンが三叉
神経に取りつき、サブスタンスPなどの分泌を抑制して痛みが出るのを防ぎま
す。
トリプタン製剤は、あくまでも片頭痛発作時に減少した「脳内セロトニン」
を補填しているに過ぎないことを忘れてはならない点です。
セロトニンは、ストレスが高まると、神経終末からの分泌が増加し、セロト
ニンは中枢神経系にも生体内の 2 %程度と少ないですが存在し、「神経伝達物
質」として他の神経伝達物質のドーパミン(喜び、快楽)、ノルアドレナリン
(恐れ、驚き)の情報を制御し、精神を安定させる、重要な働きをしています。
このように神経伝達物質としてのセロトニンは、不安感情、衝動、性行動、
食欲、体温などを調節を行っていると考えられています。
そして、慢性頭痛とくに片頭痛の発症に重要な位置を占めています。
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以上のように、セロトニンといっても、「生理活性物質」としてのセロトニ
ンと「神経伝達物質」としてのセロトニンは厳然と区別されなくてはなりませ
ん。このことを専門家ですら混同される方もおられることは由々しき問題とさ
れなくてはなりません。
それでは、「生理活性物質」としてのセロトニンについてもう少し詳しく見
てみましょう。
セロトニンの大部分は「腸」で作られる
よく腸内環境は大事といわれていますが、その意味の一つとして「セロトニ
ンの生成が行われているから」ということも考えられます。
脳に存在し、精神を安定させる神経伝達物質、セロトニンの 95 %が腸で作
られることが指摘されています。
なぜ大事にしたいかといいますと、常在細菌もトリプトファンからナイアシ
ン(ビタミン B3)をつくってくれるからです。常在細菌がナイアシンをたくさ
んつくってくれれば、その分を体内でつくる必要がなくなって、脳内セロトニ
ン用の材料となるトリプトファンを余分に確保できるのです。
脳と腸は神経でつながっているので脳にしかないと思われているセロトニン
は腸にも存在します。
腸の状態が悪いとセロトニンもスムーズに分泌されないことが判明していま
す。便秘や暴飲暴食による腸の疲労状態を改善することが、幸せかどうかを感
じることに大きく関係しています。
腸の疲労状態を改善することが、幸せかどうかを感じることに大きく関係し
ています。
しかし、腸で作られたセロトニンが「脳関門」を通過できるのか? という
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疑問が当然湧いてきます。
腸で生成されたセロトニンは、果たしてきちんと脳へと送り届けられるので
しょうか?
中枢神経系においては、セロトニンそのものは血液脳関門を通過できないた
め脳内で合成されなければなりません。基本的に脳で使われるセロトニンは、
脳内で合成されます。
セロトニンのほとんどは腸で作られますが、脳のセロトニンは脳内で作られ、
また腸のセロトニンは脳の中に入れません。
ということは、腸のセロトニンと脳のセロトニン別物として考えなくてはな
りません。
それでは「腸」でセロトニン増やしても無意味ないのではないか、というこ
とになります。
脳に作用できないのであれば精神安定に対して有効に作用できないのでは?
ということになりますが、答えはどうなのでしょうか。
腸の神経細胞は、独立したネットワークで他の消化管と協調して働いている
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ととともに、他の臓器にも直接司
令を出す重要な器官で、脳と同様
に自律神経回路によって、神経細
胞と神経細胞の間に神経伝達物質
を飛ばしながら情報を伝達してい
ます。
つまり、腸は脳とは別に全身の
自律神経を管理しているというこ
とになります。
脳と腸、両者が全身の神経を管
理し合っているということです。
ホルモンのように(”生理活性物質”として)働き、消化器系や気分、睡眠覚
醒周期、心血管系、痛みの認知、食欲などを制御しています。
セロトニンは、脳内だけではなく、”生理活性物質”として、様々な体内機能
に関与していることが分かっています。
例えば、下痢や便秘などの大腸の不調は、自律神経を介して脳のストレスに
なります。
つまり、ストレスの悪循環がおきやすいのです。
セロトニン云々関係なく、腸の状態は脳に反映されやすいので、腸内環境の
良し悪しは情緒の安定に必要不可欠なのです。
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月経周期とセロトニン
Diksic らによれば、健常男性は女性より約 52%脳内セロトニンを産生する能
力が高く、またセロトニンの前駆物質であるトリプトファンが欠乏すると、女
性では脳内セロトニン合成が男性の 4 倍減少する、と言われています。
(Diksic M. et al.,94: 5308-5313, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1997)
月経周期と片頭痛の関連は 1970 年代に報告され、特に性ホルモンとして知
られるエストロゲンの血中濃度の変化と深く関係していることが示唆されまし
た(Somerville, 1971)。エストロゲンはセロトニン合成を促進し、セロトニン
は血管収縮を引き起こすことから、排卵や月経に伴うエストロゲン血中濃度の
急激な低下がセロトニン濃度の低下、ひいては脳血管の拡張を引き起こすとい
う仮説が提唱さ
れました。また、
卵巣切除ラット
を用いた実験で
は、エストロゲ
ンを補充してや
ることでセロト
ニン放出を増加、
あるいは血管径
を収縮させることが出来ることが示され(Pardutz et al., 2002; Mehrotra et al.,
2007)、性ホルモンであるエストロゲンがセロトニンを介し脳血管径に影響を
与え、月経周期に同期した片頭痛発作を誘発している可能性が示唆されました。
セロトニン神経の起始核である縫線核にはエストロゲンの受容体が豊富であ
り、性周期に伴う気分の変動についても、エストロゲン濃度の変動が影響して
いることが考えられます。
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このため、片頭痛は男性より女性に多い頭痛なのです。
そして、季節的に、春は、脳内のセロトニンの変動が大きく、ほぼすべての
片頭痛の方々が一番苦手とする季節であるという事実があります。
セロトニンと姿勢の関係
「セロトニン」には5つの機能がありますが(前述)、このなかで、「よい姿勢
の維持」という機能があります。それは、「抗重力筋」につながる運動神経に
直接刺激を与えることができる為、姿勢がよくなる、ということです。
。
(抗重力筋は立った姿勢を維持する為に使われる筋肉の事。首・お腹・背中
・脚の筋肉など。)
このように、セロトニンと抗重力筋には深い関係があります。抗重力筋と
は、首筋、背骨の周囲、下肢の筋肉、まぶた、顔面の筋肉等です。眠っている
ときはこれらの筋肉は休んでいますが、人が起きているときには、これらの筋
肉は常に働いています。
まぶたや顔面に筋肉は、顔にしまりを与えます。首筋や背骨の筋肉は姿勢
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を正しく保つために大切な役割をしています。
セロトニンは、首筋、背
骨の周囲、下肢の筋肉、ま
ぶた、顔面の筋肉等筋肉に
対し、運動神経のレベルを
上げる働きをしています。
ですから、セロトニンが活
性化されているときには、
背筋がピンとしていて、顔にもハリがあるのです
実は、この「抗重力筋」、ラットを用いた動物実験では、抗重力筋に関わる
脳の部位を電気刺激しますと、 脳内の「セロトニン(5HT)」という精神を安定
させるホルモンの発火を引き起こすことが明らかになっています。
人の脳内のセロトニン量の測定方法に関しましては、まだ一定の手法が確立
しているとはいえませんが、少なくとも動物実験の結果から、「抗重力筋」と
「セロトニン」には密接な関係があると考えられます。
このような理由が直接関係しているかどうかは分かりませんが、実際、うつ
の方には、猫背気味になっている方々が多いように感じます。
うつだから猫背になるのか?または猫背のようにしているから気分がうつ気
味になっていくのか?これはどちらが先に引き起こされる現象かは正確には分
かりませんが・・・、
この点から推測されることは、セロトニン不足により、「体の歪み」が引き
起こされる可能性です。逆に、「体の歪み」のため、セロトニン不足を助長し
ているのかもしれません。
(ニワトリが先か、タマゴが先か、不明ですが・・)
特に、小児期に「体の歪み」が多いことが指摘されていますが、これも「生
まれつき、ミトコンドリアの働きが悪く」このため「セロトニン神経の働きの
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悪さ」による「セロトニン不足」が関与しているのかもしれません。
この場合も、どちらが原因で、どちらが結果なのかは、症例毎に、点検す
る必要があると考えます。
以上のように、片頭痛の方は、生まれつき「ミトコンドリア」の働きが悪く、
このため「セロトニン神経の働き」を悪くし、一寸したことで「痛みを感じや
すくなっており」これを”脳が興奮するといった「脳の過敏性」を持っている
”と表現されておられるようです。
さらに、このため「正しい姿勢」を保持することが困難なため「体の歪み」
を起こしやすくなって来ます。
「体の歪み」については、これが長期間持続することによって「片頭痛の誘発
・増悪因子」となって来ます。
片頭痛発作の時はセロトニンと呼ばれる脳内物質が減少あるいは機能が低下
することが知られています。片頭痛発作の時に、セロトニン様作用をもつトリ
プタン製剤がよく効くのは、機能低下状態に陥っているセロトニンをバックア
ップするためです。
ところが,専門家の間では、中枢神経系でセロトニンが減少する理由につい
てはまだ謎とされています。
しかし、この「脳内セロトニンの低下」は、ミトコンドリアの働きの悪さに
連動した「セロトニン神経系」の機能低下に、生活習慣の問題点によって引き
起こされたものです。
また、片頭痛の共存症としてうつ病、パニック障害、不眠症、冷え性、睡眠
時無呼吸症候群、肥満、等々が挙げられますが、これらはいずれもセロトニン
に関連したものです。
セロトニンの役割
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これまで述べてきたことを、まず簡単にまとめておくことにします。
セロトニンは腸粘膜に存在するものが大部分を占め、そのほかでは血液中の
血小板に8%、脳内の視床下部など中枢神経系に2%ほど存在します。
セロトニンには血管を収縮させる作用のほかに、痛みを調整する作用、脳血
管の収縮活動の調節といった働きがあるほか、睡眠や覚醒といった生体リズム、
体温、呼吸、情緒や気分、食欲、嘔吐、生殖、心臓など、さまざまな重要機能
に密接にかかわっています。
逆にいえば、セロトニンが欠乏するとこれらの活動に支障をきたすわけです。
セロトニンは血液脳関門(血液中の物質が脳に入るのを制限する)を通過し
ませんので、神経伝達物質として脳内で働くセロトニンと、血小板あるいは腸
管に存在して消化管活動に直接かかわるセロトニンとは、生成のメカニズムや
作用がまったく異なります。
ひとくちにセロトニンといっても、脳内と腸内でまったく別々に作られ、ま
ったく異なった役割を担っているのです。
脳に存在するセロトニンは非常に少ないのですが、脳神経の伝達物質として、
人の精神に重要な役割を果たしています。片頭痛にとっては、脳内のセロトニ
ンの欠乏が非常に重要な発生因子となります。
セロトニンは血液脳関門でストップ!
セロトニンの大部分は腸内や.血小板にありますが、脳に入ってこないため、
片頭痛の発生原因となる「脳内のセロトニン欠乏」の解消には役に立だちませ
ん。
脳内のセロトニンがイライラを解消する
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脳内のセロトニン(セロトニン神経)は脳の中心(縫線核)にあり、その数
は数万個と非常に少ないのですが、一個の神経が数万にも枝分かれして脳に広
く分布し、あらゆる脳神経系と結合していますので、脳の広い範囲に影響を与
えるのです。
セロトニン神経は目覚めとともに活発化する交感神経に作用し、目覚めてか
らアクティブな行動をするために体を適度な、スタンバイ状態・にする働きが
あります。また、心の面ではさわやかな目覚めや平常心を保つ働きがあります。
脳神経の伝達回路には、セロトニン神経以外にも、快感や陶酔感を増幅する
「ドーパミン神経」や、さまざまなストレスによって覚醒反応を引き起こす「ノ
ルアドレナリン神経」があります。セロトニン神経はこの2つの神経に対して
抑制作用があり、興奮と不安状態を解消し、心の状態を中庸に保つ作用があり
ます。したがって、セロトニンの働きが弱くなると、不安やイライラが強くな
るというわけです。
脳内のセロトニンは、ビタミンB6の作用により、トリプトファンというア
ミノ酸を原料として作られます。女性は男性より約3分の2と、脳内セロトニ
ンを合成する能力が低く、原料となるトリプトファンが欠乏すると脳内セロト
ニンの合成が男性の4分の1に減少するといわれています。脳内のセロトニン
を増やすには、トリプトファンをいかに脳内(縫線核)に取り込むかが重要と
なってくるわけです。
ところが、セロトニンが増加するとそれを抑制する作用が働きます。増えた
セロトニ
ンを元の状態にまで減少させようとするのです。この働きを「オー
トレセプター」といいます。ですから、もしセロトニンを高める何らかの方法
を実践したとしても、反対の作用も働くため、すぐに効果があらわれることは
ありませんし、むしろマイナスに作用することもあります。こうしたことから、
セロトニン神経の活動レベルを高く維持すること(改善)は、簡単なことでは
ないのです。
しかし、オートレセプターを繰り返し刺激し続けることによって、セロトニ
ン神経の活性を高めることは可能です。オートレセプターが変化するには1~
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2ヵ月を必要としますから、改善は気長に継続することが大切です。
睡眠時無呼吸症候群もセロトニン不足から‥
睡眠中に気道がふさがることから起こる
睡眠時無呼吸症候群。じつはこの原因にも
セロトニン不足がかかわっていると考えら
れます。
セロトニンは寝ているあいたにはあまり
働くことがなく、おもに昼間に活動します。
とはいえ、睡眠とも深いかかわりがありま
す。
セロトニンを分泌する縫線核は、呼吸中
枢にセロトニンを送って呼吸量を調整しています。縫線核は毛細血管中にセン
サーを持っていて、血液中の酸素量などをチェックしているのです。体内の酸
素量が不足したときにはセロトニンの分泌量を増やし、呼吸中枢を刺激します。
したがって、セロトニンが不足すると中枢神経を充分に刺激できなくなりま
す。そうなると酸素不足のままか、より不足した状態におかれることになりま
すので、息苦しくて睡眠が何度も中断し、熟睡できないことになります。
睡眠サイクルにはレム睡眠(夢を見る時期)とノンレム睡眠(深い眠り)が
あります。
セロトニンは一日中分泌されていますが、睡眠中はセロトニン神経の活動は
弱くなっていて、深い眠りを演出し、朝方になるとセロトニン分泌量が増え、
覚醒するというリズムがあります。
しかし、セロトニンが眠りを深く保てるのは、十分なセロトニン量があると
いうことが前提です。つまり、人は眠りについてすぐ、ノンレム睡眠が表れま
すが、セロトニン不足の人たちはいつまでも寝付けず、深い眠りができないの
はこのためです。
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呼吸時の気道支える筋肉は、覚醒時(起きている時)はセロトニン神経を介
して制御されています。
呼吸は一種のリズム運動と考えることが出来、リズムを意識して呼吸をする
ことで、セロトニン神経を活性化させることが出来ると考えられます。
セロトニンと呼吸の関係を意識的に利用する『セロトニン呼吸法』というも
のもあります。
しかし、睡眠中はセロトニン神経の働きが抑制されることから、気道閉塞を
起こしやすくなります。
これが睡眠時無呼吸症候群(SAS)と言う睡眠障害の原因の一つです。
セロトニン神経の活動は睡眠中に弱くなり、深い眠りを演出します。朝方に
なるとセトニンも増えるのです。
セロトニンは朝日を浴びることにより活性化され、日光を浴びてから 14 ~ 15
時間後にメラトニンが活性化を始めます。このことから、セロトニンは午前6
時~午後6時、メラトニンは午後6時~午前6時(分泌のピークはO時~2時)
に活躍するホルモンといわれています。
生活のリズムが乱れ、生体時計が適正にセットできなくなると、これらのホ
ルモンを分泌する規則性が失われ、セロトニンやメラトニンの不足を引き起こ
す原因となります。
片頭痛体質改善のためには、規則正しい生活のリズムを心掛けることも大切
なのです。
低体温症もセロトニンが原因?
集中力が落ちたり、摂食障害を起こしたり、糖尿病の原因となる低体温症や
肥満にも、セロトニン不足が関係しています。
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一日の体温の変化は、朝起きると筋肉や神経の働きを高めるために体温は
高くなり始め、夜に向け体温は上昇していきます。
そして、就寝前に最も体温は高くなり、就寝後の体温は急激に低下し、目覚
めまで緩やかに低下していきます。
この一日の体温の変化はセロトニンの分泌量の一日の変化とほぼ一致してい
るのです。
体温をコントロールしている温熱中枢はセロトニンの刺激により作動してい
ます。
脳中枢(縫線核)でセロトニンは産生され、そこに血液の温度変化を感知
するセンサーがあります。
そして、その感知した情報を温熱中枢に伝えるのがセロトニンの役割です。
ところが、セロトニンが不足していると温熱中枢へ体温が下がっていても正
しく情報が伝わりませんので、一日中体温は低く(低体温症)、冷え性にもな
りやすく、体の機能をいつまでも活発化する事ができなくなるのです。
体を温めても、いつまでも体が温まってこないのはセロトニンが不足してい
るからなのです。
縫線核はセロトニンの産生とともに、血液の温度センサーとしての働きがあ
ります。
セロトニンが少ないと血液の温度を感知しても体温を調整する温熱中枢に充分
な刺激を与えられず、温熱中枢を活性化できなくなります。そのため、セロト
ニンが少ない人は1日中体温が低いままで冷え性になりやすく、体の機能をい
つまでも活性化できないことになります。
人間の体は、暑い時には汗をかいて体温を下げようとしたり、寒い時には毛
穴を閉じて体温を奪われないようにしています。
これは自律神経による体温調節の働きですが、セロトニン神経はこの自律
神経に影響を与える役割を持っています。
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現代社会では、冷房や暖房の普及により室内では一年中快適な気温で生活
できるようになりました。
しかし、これは自律神経にとってはあまりよくない状態で、自律神経はあ
る程度暑さや寒さの刺激があるほうが活性化します。
空調で気温が保たれるようになると、かえって体温調節がうまく働かなく
なってしまいます。
体温は自律神経のバランスによって変化しています。
寝ている時やリラックスしている時は副交感神経が、起きている時には交
感神経が優位になりますが、そのバランスを取ってくれているのがセロトニン
神経です。
冷え性は自律神経のバランスが崩れていることが原因の可能性が大いにあ
ります。
私の知っている片頭痛の人のほぼ全員が低体温症です。セロトニン不足の影
響が大きいと見ています。
~“安らぎ”と“満腹感”の深い関係「セロトニン」~
セロトニンは、脳内の様々な神経伝達物質に作用して「精神を安定させる」
役割を持っていて、鬱病や神経症などの治療に使われることで知られています
が、実は「満腹感」を感じさせ、食欲を抑制する作用も持っているのです。強
いストレスを感じたりイライラする時に甘いものや肉類などを食べたくなった
経験はありませんか?セロトニンは、精神安定作用と食欲コントロール作用を
合わせ持っているので、不足すると「精神的不安定」と「食べたい!」という
欲求がよく連動して現れます。特に甘いものや肉類を食べると一時的にセロト
ニン分泌が増え、一時的でも気持ちが落ち着くのでこうしたものへの欲求が強
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くなると言われています。
実は女性は男性に比べて元々セロトニンの脳内合成が少ないので、ストレス
を感じるような状況におかれると、セロトニンが枯渇状態になって、情緒不安
定になったり甘いものを中心とした過食へと走る行動が男性よりも強く出る傾
向があります(ですから女性はケーキが大好きなんです!)。その上「月経前
の体調不良期(PMS 期)」には、セロトニンの受け取りを阻害する物質が出る
ため、更にその傾向が顕著になるとも言われています。
こうした情緒不安定&食欲亢進状態を落ち着かせて、食べ過ぎを防ぐために
はセロトニン分泌を増やして食欲を抑制することが効果的なのですが、甘いも
のや高カロリーの肉類を食べることで一時的にしのいでいたのでは結局は過食
となり肥満を招いてしまいます。
そうしたものを食べることではなく、日常
的な行動でセロトニン分泌増加に効果的、と言われていることを行う必要があ
ります。食べることで気を紛らわせるのではなく、十分に休息し、ストレス解
消&気分転換を上手に行って気持ちを安定・リラックスさせることがセロトニ
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ン分泌増加につながり、過食を防ぐことになるのです。食欲を上手にコントロ
ールするためには気持ちが安定し、充実していることも大切なのです。
また、セロトニンが不足すると食後の満足感を得ることができませんので、
常に食欲が旺盛な状態となり、食べることにブレーキが利かなくなります。さ
らに血糖のエネルギーヘの代謝までもが阻害されますから、肥満や糖尿病にな
りやすくなるのです。
逆に、脳内のセロトニンが充分にあれば、食後に満足感や充実感を得られま
すから、肥満は解消していくことになります。さらに、セロトニンが増すこと
によって各組織の機能が活発になるため、基礎代謝が上がり、脂肪を効率よく
燃焼させることができるようになります。
一見すると痩せているように見えても、セロトニンが不足していると、内臓
脂肪がたっぷりついてしまうことが起こり得ます。痩せ型で間食が我慢できず、
内臓脂肪率が高く、高脂血症や高コレステロール血症という人は、セロトニン
不足が原因かもしれません。
また、姿勢の悪い人や正しい姿勢を続けられない人も、脊髄を通って背中や
背筋の筋肉を刺激するセロトニンが不足している可能性があります。さらに、
消化管の嬬動運動などを活発化する働きもセロトニンにはあることから、片頭
痛の人は同時に便秘症であることが多くなります。
片頭痛とアロデイニア
「脳内セロトニンの低下」により脳が過敏になり、本来は痛くない刺激を痛み
と感じるアロディニア(異痛症)があります。
片頭痛患者が示す症状の中には、顔に風が当たると痛い、メガネやイヤリン
グが不快、髪を結んでいるのがつらい、くしやブラシが痛くて使えないといっ
たものがありますが、これらは頭部アロディニアと呼ばれています。さらに脳
が過敏になると、頭部だけではなく、手足のしびれや腕時計、ベルトが不快に
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なることもあり、これらは頭蓋外アロディニアに分類されます。
日本では片頭痛の患者さんの 60 ~ 80%ぐらいが、アロディニアを伴うとい
われていますが、発症 5 年以上たたないと、アロディニアは出てこないことが
多いようです。
頭部アロディニア
顔に風が当たると痛い
髪の毛がピリピリする
髪の毛を結んでいるのが辛い
ブラシやくしが痛くて使えない
眼鏡、イヤリングが不快
痛い側が枕に当たると寝ていられない
頭蓋外アロディニア
手足のしびれ感
ピリピリ感
腕時計が不快
ベルトがきつい
布団や毛布が体に触れると不快
顔の知覚を脳に伝える三叉神経が片頭痛によって刺激されると、顔や頭皮な
ど頭部の末梢が過敏に知覚して頭部アロディニアが起こります。この末梢感作
を通過して、片頭痛の情報が視床(中枢神経)に到達すると、感覚神経の痛覚
需要の領域が拡大し、頭痛側と反対側の上肢を中心とした違和感が生じてきま
す。これが頭蓋外アロディニアです。
片頭痛患者の約7割に認められるというアロディニアですが、アロディニア
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が形成されると、トリプタン製剤は効きにくくなると言われています。
Burstein による報告では、アロディニアの有無でトリプタン服薬2時間後の
頭痛消失率を比べたところ、アロディニア
がない患者では 93 %と極めて高い頭痛消失
率が認められました。一方で、アロディニ
アのある患者の頭痛消失率は 15 %であり、
顕著な差が認められました。
片頭痛発症 20 分以内にはアロディニアの
出現はないとされているため、アロディニア発現前の早期の段階でトリプタン
製剤を服用することが勧められます。アロディニアがある患者においては、服
薬タイミングが重要であるされています。
このアロディニア症(異痛症)は、「脳内セロトニンが減少している」ため
”痛みを抑制する事が出来ず”に容易に痛みが出現しやすくなるということを
意味しています。
臨床的には中枢性感作が成立したことを示す徴候として重視されています。
片頭痛患者の 50 ~ 80%にアロディニア症が認められると報告されています。
また、頭頸部にアロディニア症が認められる場合は三叉神経脊髄路核レベル
で、上肢などの頭頸部以外の部位でアロディニア症が観察された場合は視床レ
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ベルでそれぞれ感作が成立したと考えられています。これまで片頭痛患者のア
ロディニア症発生に関連する因子が検討されたり、慢性片頭痛ではアロディニ
ア症の程度が強いといったデータは既に報告されており、アロディニア症が片
頭痛の病態にとって重要な徴候であることは多くの研究結果によって支持され
ています。結局のところ片頭痛慢性化の重要な予知因子と考えられ、「セロト
ニン神経系の働きの悪さ」が示唆され、この面での対策が重要になってきます。
一昨年7月 20 日に行われた「Headache Master School Japan (HMSJ) -Osaka」
のなかで 柴田護(慶應義塾大学 神経内科)先生が「片頭痛の anatomy」を講
演され、アロデイニアの発生機序を解剖学的に提示され、まさしく「セロトニ
ン神経系」の解剖そのものであることを明らかにされました。ただ、残念なが
ら、ここでお示しすることは学会事務局から禁止されており、残念な限りです。
こうした点は、片頭痛そのものと「セロトニン神経系」の関与を証明してい
るものと言えます。
このアロディニア症(異痛症)は、「脳内セロトニンが減少している」ため
”痛みを抑制することが出来ず”に容易に痛みが出現しやすくなるということ
です。
逆に考えれば、アロデイニアがあるということは「脳内セロトニン低下」を
意味します。
こういったことから、アロデイニアが出現してくる以前の段階で対処しなく
てはなりません。このように先手、先手と対処しなくてはならないということ
です。
ということは片頭痛は、あくまでも予防すべき頭痛であるということです。
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