迎 春 2016

鮮らけき思いに歌を作らんとペンやノートを新しくする
逗子市 湊 美根子
新たな気持で作歌に対かわんと意気込む若々しい歌。
雑草と言われようともつゆ草は空より青き花を咲かせて
藤沢市 青木寿美子
色彩感覚と相俟って作者の感慨が投影されている。
走り井に大根洗う指先のひび割れ痛し朝な朝なに
純
葉山町 近藤
具体によって冬の朝の寒さがひしひしと感じられる。
道路には藁と泥とが残されぬ稲刈といふ祭りの余韻
城廻 塩田 文子
見上ぐれば雲ひとつなき青空に銀色機体が彼方を目指す
葉山町 近藤美知子
夕近き空より光芒降りそそぎ金色に染むる冬の海原
い そ
み
玉縄 篠田 祥子
江ノ島の磯回に倦きて晩秋の忘れ汐の小魚を追う
藤沢市 柳
蒼柳
落葉舞う広町緑地青春の尾瀬しのびつつ木道をゆく
七里ガ浜 及川 泰子
黙したる兵馬俑らの静けさに博物館も重く沈みぬ
大船 小笹岐美子
守宮の子いと愛らしく掌に載せむとするもするり逃げた
山ノ内 鈴木 栄次
り
七里ガ浜 嶋
尚久
木枯しに舞ふ落葉とも老いゆえか記憶の束のほつれゆく
なり
冬菜畑房総半島晴れ渡り
藤沢市 宗 とし尾
冬菜畑の緑に広がる房総を一望する風景がさわやか。
廻り道して枯葉踏む音を聴く
玉縄 篠田 祥子
廻り道して枯葉を踏みしめる音を楽しむ作者の詩心。
閉ざされし門扉の横の花八手
大船 添田 洋子
ぴったり閉っている門。花八手がしろじろとみえる。
この先の我が持ち時間冬の星
藤沢市 一色千穗子
大変共鳴出来る句。冬の星が美しさと侘しさと表現。
明日の晴れ信じて八十路寒牡丹
藤沢市 槇野あさ子
上五中七の思いにきっぱり咲く寒牡丹が絶妙な感覚。
牡蠣鍋の湯気の向こうに憶う人 由比ガ浜 古田春枝
作者一○五歳とのこと。下五の憶う人に思いをこめた。
怒りいくつ沈めてゐるや冬の海
材木座 有野 冬花
病よりのがれしいのち葛湯吹く
常盤 片岡 和子
そこばくの蔵書も宝漱石忌
金沢区 岩澤 正春
一木に一果残さる柿の空
七里ガ浜 嶋
尚久
凍鶴の一声統べる北大地
葉山町 近藤
純
凩や負の連鎖なるニュースまた
腰越 松原
薫
母とわれ銀杏並木を歩みし日
腰越 大川 昭子
心中に怒涛渦巻きならい吹く
笛田 上田 満喜
しかと立ち老樹柏槙冬構
腰越 近藤 源司
松本城見上げし空や秋気澄む
栄区 青木
努
藤沢市 伊東
清
野仏のやうに座しをり石蕗の花
(105歳)
第442号
2016年(平成28年)1月1日
1部 108円
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