鮮らけき思いに歌を作らんとペンやノートを新しくする 逗子市 湊 美根子 新たな気持で作歌に対かわんと意気込む若々しい歌。 雑草と言われようともつゆ草は空より青き花を咲かせて 藤沢市 青木寿美子 色彩感覚と相俟って作者の感慨が投影されている。 走り井に大根洗う指先のひび割れ痛し朝な朝なに 純 葉山町 近藤 具体によって冬の朝の寒さがひしひしと感じられる。 道路には藁と泥とが残されぬ稲刈といふ祭りの余韻 城廻 塩田 文子 見上ぐれば雲ひとつなき青空に銀色機体が彼方を目指す 葉山町 近藤美知子 夕近き空より光芒降りそそぎ金色に染むる冬の海原 い そ み 玉縄 篠田 祥子 江ノ島の磯回に倦きて晩秋の忘れ汐の小魚を追う 藤沢市 柳 蒼柳 落葉舞う広町緑地青春の尾瀬しのびつつ木道をゆく 七里ガ浜 及川 泰子 黙したる兵馬俑らの静けさに博物館も重く沈みぬ 大船 小笹岐美子 守宮の子いと愛らしく掌に載せむとするもするり逃げた 山ノ内 鈴木 栄次 り 七里ガ浜 嶋 尚久 木枯しに舞ふ落葉とも老いゆえか記憶の束のほつれゆく なり 冬菜畑房総半島晴れ渡り 藤沢市 宗 とし尾 冬菜畑の緑に広がる房総を一望する風景がさわやか。 廻り道して枯葉踏む音を聴く 玉縄 篠田 祥子 廻り道して枯葉を踏みしめる音を楽しむ作者の詩心。 閉ざされし門扉の横の花八手 大船 添田 洋子 ぴったり閉っている門。花八手がしろじろとみえる。 この先の我が持ち時間冬の星 藤沢市 一色千穗子 大変共鳴出来る句。冬の星が美しさと侘しさと表現。 明日の晴れ信じて八十路寒牡丹 藤沢市 槇野あさ子 上五中七の思いにきっぱり咲く寒牡丹が絶妙な感覚。 牡蠣鍋の湯気の向こうに憶う人 由比ガ浜 古田春枝 作者一○五歳とのこと。下五の憶う人に思いをこめた。 怒りいくつ沈めてゐるや冬の海 材木座 有野 冬花 病よりのがれしいのち葛湯吹く 常盤 片岡 和子 そこばくの蔵書も宝漱石忌 金沢区 岩澤 正春 一木に一果残さる柿の空 七里ガ浜 嶋 尚久 凍鶴の一声統べる北大地 葉山町 近藤 純 凩や負の連鎖なるニュースまた 腰越 松原 薫 母とわれ銀杏並木を歩みし日 腰越 大川 昭子 心中に怒涛渦巻きならい吹く 笛田 上田 満喜 しかと立ち老樹柏槙冬構 腰越 近藤 源司 松本城見上げし空や秋気澄む 栄区 青木 努 藤沢市 伊東 清 野仏のやうに座しをり石蕗の花 (105歳) 第442号 2016年(平成28年)1月1日 1部 108円 (3)
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