為替トピックス (PDF/939KB)

ブラジルの経済動向とレアルの見通し
投資情報部
2015年12月
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①ブラジルの経済ファンダメンタルズ
・成長率:実質GDP成長率は2015年が前年比▲3.6%、2016年が同▲1.9%(ブラジル中銀による
予想)、2017年は同+2%台へと改善方向に
⇒理由① 貿易収支は黒字化:実質実効為替レート約4割減価の効果が発現し外需がプラス寄与に。ただし輸出の前年比プラス転換には中国経済
や商品市況の改善が必要
⇒理由② 個人消費は低迷:インフレ率の低下見通しにより2016年の実質所得のマイナス幅は縮小も企業業績は下げ止まり程度であり、雇用・賃金
の回復は後ずれの公算
⇒理由③ 設備投資のマイナス幅は縮小:資源関連企業の利益下げ止まりが寄与
⇒理由④ 公的支出:財政赤字削減圧力から抑制が続く
・インフレ率:干ばつの影響や公共料金値上げの影響がはく落し大幅に低下、16年末に6%台も
・金融政策:来年後半には金融緩和(利下げ)が実施できるようになる可能性
・経常収支:貿易収支、サービス収支、所得収支の改善から経常赤字は縮小へ
・財政収支:景気急減速で税収が悪化、プライマリーバランスも赤字に。改善には時間
・外貨準備:約3550億米ドル、短期対外債務カバー率は約3倍と十分な耐性を有する
・格付け:大手格付会社2社が投機的水準へ引き下げ。残る1社も格下げを検討

国際商品市況の下落にともなう輸出の減少や、レアル安等による国内インフレ圧力の高まり等から企業や消
費者心理が冷え込みブラジル景気は低迷。

ただ、混迷している政治情勢が徐々に安定化し、財政再建が緩やかに進めば、中期的に+2%台の成長ペース
に回帰する見通し。
※ この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する最終決定はご自身の判断でお願いいた します。
また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の
見通しであり今後予告なしに当社の判断で随時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
1
②ブラジルの政治情勢
・レビ財務相の辞任はややサプライズ、財政緊縮に慎重なバルボーザ氏が新財務相に就任
・ルセフ大統領、バルボーザ新財務相もレビ財務相の財政再建スタンスを継承するとしている
・今後の発言や政策内容をみていく必要
・ルセフ大統領弾劾を巡る最近の動き:ブラジル最高裁は下院で上院の弾劾裁判の設置に必要な
議員3分の2以上の賛成を集めても、上院で過半数の賛成が得られれば弾劾審議を打ち切るこ
とができるとの判断を示す(上院はルセフ大統領派が多数とされ、ルセフ大統領に有利な内容)
・汚職疑惑で議員免職を求める声が与野党から挙がっているクーニャ下院議長は大統領弾劾審
議を来年2月まで先延ばししたい意向、しかし本人が辞職に追い込まれれば与党の弾劾賛成派
に打撃
・ブラジル議会は12/23から来年2/1まで夏休みで休会、早ければ2月にも弾劾審議打ち切りも
⇒弾劾請求が下院本会議に送られた場合、本会議での採決は来年3月頃になるとみられている。ただ、現在のところ下院本会議の採決で弾劾に必
要な3分の2の賛成が集まらないとみられており、弾劾には至らない可能性が弾劾に至る可能性を上回っているとされる
・弾劾審議が進行し、ルセフ大統領が離職することになった場合はテメル副大統領が大統領職を
代行、次の大統領選挙は2018年

バルボーザ新財務相の就任は、拡張的財政政策への後戻りを意味するものではない。ただし財政政策が「市
場の信認を回復するためのもの」から「弾劾回避のための適度な緊縮」に変わった可能性には留意。

今後、ペトロブラスの汚職捜査の進展次第でルセフ大統領の弾劾等も含め政局の混迷が続く可能性がある。
ただ、議会には国民が選挙で選出した大統領を弾劾することに抵抗があるともされている。
※ この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する最終決定はご自身の判断でお願いいた します。
また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の
見通しであり今後予告なしに当社の判断で随時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
2
③商品市況とブラジルレアルの見通し
・原油価格は石油輸出国機構(OPEC)の財政状況やシェール業者のコストを考えれば1バレル=30ド
ル割れでは生産者に危機感、ただし経済制裁解除にともなうイラン産原油等の供給圧力は残る
⇒原油価格は30ドル~50ドル台のレンジに
・鉄鉱石価格は供給圧力から1トン=40ドル割れの想定が増加、しかし30ドル台はコスト面を意識する
水準
・ブラジルレアルの実質実効為替レートは過去平均を大きく下回るレアル安に
・購買力平価の理論値は1ドル=3.0レアル台、4.2レアル台は割安シグナルが点灯
・政策金利から消費者物価上昇率の前年比を引いた実質金利は8%台まで上昇する可能性も
・商品市況は低迷も徐々に底値到達感が醸成される可能性
⇒ブラジルレアルも底値圏に達している可能性
・ドル円相場は125円に向け円安方向を見込む
⇒1ドル=4.2レアル、1ドル=120円でクロス円は28.5円割れが下限のめどに
・現地では政治・財政面が好転すれば3.5レアルに上昇、混乱が続けば4.2レアルを試すとの見方

商品市況の調整はかなりの程度進んでおり、一段の下落余地は限られるともいえる。今後は時間をかけて需
給が改善に向かう可能性が高い。

実質実効為替レートは長期平均を下回り、レアルの中期的な割高感が後退している。商品市況の見通しやブ
ラジルのファンダメンタルズ面をふまえれば、レアルも徐々に安定化に向かうとみられる。
※ この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する最終決定はご自身の判断でお願いいた します。
また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の
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参考資料①(実質GDP成長率、貿易、消費、設備投資)
構成比
実質GDP成長率
民間消費
政府消費
総固定資本形成
輸出
輸入
11年
12年
13年
100.0
66.8
3.9
4.8
1.9
3.5
3.0
3.5
18.1
21.7
11.7
15.5
2.3
6.8
4.8
9.7
2.3
0.8
0.5
1.0
1.5
5.8
2.2
7.3
14年
60
15年
16年
▲ 3.5
▲ 3.4
▲ 2.5
▲ 3.0
1.2
0.9
1.2 ▲ 1.6
▲ 4.3 ▲ 12.7
▲ 0.8
5.0
▲ 1.0 ▲ 10.7
▲ 1.0
▲ 7.6
3.5
▲ 2.6
0.6
1.5
3.2
1.5
0.1
1.3
ブラジルの貿易収支
(月次:2007/1~2015/11)
(億ドル)
ブラジルの実質GDP成長率と主要需要項目の推移(前年比、%)
(%)
80
17年
60
40
40
20
20
0
0
▲ 20
▲ 20
(注)構成比は2014年。2015年以降はブルームバーグの予測
出所:ブラジル地理統計院(IBGE)、ブルームバーグのデータ等よりみずほ証券作成
▲ 40
▲ 40
貿易収支(左目盛)
輸出(右目盛)
輸入(右目盛)
▲ 60
消費者マインドと小売売上高
(2005年9月=100) (月次:2006/1~2015/11)
140
▲ 60
07
(%)
20
130
15
120
10
110
5
100
0
08
09
10
11
12
13
14
15
(年)
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
(10億ドル)
国営石油大手の投資計画
220
200
180
160
90
▲5
80
▲ 10
140
120
100
70
▲ 15
07
08
09
10
11
12
13
14
15
(年)
消費者信頼感指数(左目盛)
小売売上高(前年比、右目盛)
(注)小売売上高は物価の影響を除くベース
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
06
80
60
2014~2018年投資計画
2015~2019年投資計画
(注)2015年6月29日発表資料
出所:国営石油大手資料よりみずほ証券作成
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また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の
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4
参考資料②(インフレ、経常収支、財政、外貨準備)
ブラジル政策金利とインフレ率(前年比)
(%)
(%)
(月次:2005/1~2015/11)
20
20
消費者物価指数(11月:10.48%)
インフレターゲット(4.5%)
インフレターゲット下限(2.5%)
インフレターゲット上限(6.5%)
ブラジル政策金利(11月:14.25%)
18
16
14
3
18
2
16
1
14
0
12
12
10
10
8
8
6
6
▲3
4
4
▲4
2
2
▲5
0
0
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
プライマリー収支
▲2
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
(10億ドル)
財政収支
ブラジルの対外債務と外貨準備
(四半期:2003/3~2015/6) (倍)
400
14
350
12
民間部門・長期債務
10
民間部門・短期債務
300
250
8
200
4
100
2
50
(注)地方政府、公営企業含む一般政府ベース、15~16年はみず ほ証券予想 (年)
出所:ブラジル中銀資料よりみずほ証券作成
一般政府・中銀
6
150
↓財政赤字拡大
98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
15
(年)
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
ブラジ ルの財政収支GDP比率
(年次:1998~2016)
利払い
4
3
2
1
0
▲1
▲2
▲3
▲4
▲5
▲6
▲7
▲8
▲9
▲ 10
▲ 11
▲1
(年)
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
(%)
ブラジルの経常収支GDP比(過去12ヵ月累計)
(月次:2000/1~2015/11)
(%)
0
外貨準備
外貨準備/短期対外
債務(右目盛)
0
03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15
出所:CEICデータよりみずほ証券作成
(年)
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参考資料③(大統領弾劾、政治の座標軸、政党別議席数)
ブラジル政治の座標軸
<ブラジルの大統領弾劾を巡る今後のイメージ図>
大統領寄り
ルセフ大統領
(与党PT)
大統領弾劾審議の開始
を下院議長が承認
バルボーザ
新財務相
ルーラ前大統領
(与党PT)
レビ前財務相
(12/18交代発表)
(前計画予算管理相)
下院特別委員会で審議、
大統領を公聴会に招致
承認
大統領が10回程度証
言、2ヵ月程度?
3分の2の賛成で承認
上院における弾劾裁判
開始、弾劾につき投票
3分の2の賛成で承認
大統領失職、副大統領
が昇格
出所:みずほ証券作成
財政再建重視
テメル副大統領 カリェイロス上院議長
(連立与党PMDB) (連立与党PMDB)
メイレレス
元中銀総裁
否決
ルセフ政権が継続
下院において上院におけ
る弾劾裁判の開設の必
要性につき投票
景気重視
(大統領の任期は18年
末ま で)
否決
クーニャ下院議長
(連立与党PMDB)
ネーベス党首
(野党PSDB)
反大統領派
ルセフ政権が継続
出所:ブラジル大統領府、国会等資料よりみずほ証券作成
ブラジル下院の政党別議席分布
大統領は一時的に停
職、副大統領が代行
否決
中立合計 28
ブラジル社会党
(PSB 34
野党系2連合
ルセフ政権が継続
労働者党(PT
70
ブラジル民主運
動党(PMDB
66
社会党(PSD
37
ブラジル民主社
会党(PSDB
54
進歩党(PP
(注)議席分布は流動的
主要政党を記載
与党連合329議席
下院総議席513
与党系
36
出所:ブラジル議会資料より
みずほ証券作成
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参考資料④(実質実効為替レート、購買力平価、対ドル及び対円)
(2010年=100)
ブラジル・レアルと外国人投資ポジション
ブラジルレアルの実質実効為替レート
(1ドル=レアル)
(月次:1994/1~2015/11)
120
110
100
90
80
70
60
50
40
(週次:2008/1/4~2015/12/18)
海外投資家・ID×米ドルスプレッド先物の金利先渡取引ポジション(右逆目盛)
海外投資家・為替先物ポジション(ネット、右逆目盛)
94
96
98
00
02
04
06
08
10
実質実効為替レート
12
14
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
4.5
(年)
94年以降平均
(1ドル=レアル)
4.5
▲ 30
▲ 20
▲ 10
0
10
20
30
40
50
↑レアル高
↑レアル買い(ネット)
08
(注)2010年=100、消費者物価ベース
出所:BIS資料よりみずほ証券作成
(10億ドル)
ブラジル・レアル(左逆目盛)
09
10
11
12
13
14
15
(年)
(注)ID×米ドルスプレッドはブラジル国内でドルの為替ヘッジ等として利用される
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
(1ドル=レアル)
4.5
ブラジルレアル相場の推移(対ドル)
(週次:2001/1/5~2015/12/25)
(1レアル=円)
80
(1レアル=円)
80
ブラジルレアル相場の推移(対円)
(週次:2001/1/5~2015/12/25)
+20%かい離
4.0
4.0
+20%かい離
3.5
3.5
52週移動平均線
3.0
3.0
2.5
2.5
2.0
2.0
1.5
▲20%かい離
1.0
01
02
03
04
05
06
07
08
09
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
10
11
12
13
14
15
70
60
60
50
50
40
40
1.5
30
1.0
20
16
(年)
70
52週移動平均線
30
▲20%かい離
20
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
※ この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する最終決定はご自身の判断でお願いいた します。
また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の
見通しであり今後予告なしに当社の判断で随時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
16
(年)
7
【金融商品取引法に係る重要事項】
 当社取り扱いの商品等(外貨建商品等も含む)にご投資いただく際には、各商品等に所定の手数
料(投資信託の場合は銘柄ごとに設定された販売手数料および信託報酬等の諸費用等)をご負担
いただきます。債券を当社との相対取引によりご購入いただく場合は、購入対価のみをお支払い
いただきます。
 各商品等には価格の変動や発行者の信用状況等の悪化等により損失を生じるおそれがあります。
 なお、債券の利金・償還金の支払いについて、発行者の信用状況等によっては、支払いの遅滞・
不履行が生じるおそれがあります。
 外貨建商品等の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際には、外国為替市場の動向をふまえて
当社が決定した為替レートによるものとします。また、売却時等の為替相場の状況によっては為替
差損が生じ、損失を被るおそれがあります。
 商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目論見
書またはお客さま向け資料等をよくお読みください。
商号等
みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第94号
加入協会
日本証券業協会、 一般社団法人日本投資顧問業協会、
一般社団法人金融先物取引業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会
広告審査番号 : MG5690-151228-10
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見通しであり今後予告なしに当社の判断で随時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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