1/4 ASIA Indicators 定例経済指標レポート NZ、内需の堅調さを反映して輸入拡大(Asia Weekly (12/21~12/25)) ~輸出は商品市況の悪化により一進一退の展開が続く~ 発表日:2015 年 12 月 25 日(金) 第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 西濵 徹(03-5221-4522) ○経済指標の振り返り 発表日 指標、イベントなど 結果 コンセンサス 前回 ▲6.3% ▲5.3% ▲5.3% +2.4% +2.3% +2.4% 3.84% 3.80% 3.79% 12/23(水) (ニュージーランド)11 月輸出(億 NZ ドル) 40.8 39.0 38.1 11 月輸入(億 NZ ドル) 48.6 47.5 47.2 (マレーシア)11 月消費者物価(前年比) +2.6% +2.3% +2.5% (シンガポール)11 月消費者物価(前年比) ▲0.8% ▲0.7% ▲0.8% (台湾)11 月鉱工業生産(前年比) ▲4.94% ▲5.55% ▲6.33% ▲5.5% ▲3.0% ▲4.7% 12/21(月) (台湾)11 月輸出受注(前年比) (香港)11 月消費者物価(前年比) 12/22(火) (台湾)11 月失業率(季調済) 12/24(木) (シンガポール)11 月鉱工業生産(前年比) (注)コンセンサスは Bloomberg 及び THOMSON REUTERS 調査。灰色で囲んでいる指標は本レポートで解説を行っています。 [ニュージーランド] ~輸出は一進一退の展開が続くなか、堅調な内需を反映して輸入額は大きく拡大~ 23 日に発表された 11 月の輸出額は前年同月比+1.0%となり、前月(同▲4.9%)から2ヶ月ぶりに前年を 上回る伸びに転じた。前月比も+2.9%と前月(同▲0.9%)まで2ヶ月連続で減少したものの、3ヶ月ぶりに 拡大に転じており、依然として一進一退の展開が続いている。主力の乳製品や食肉をはじめとする食料品関連 で輸出額が増加に転じたほか、木製品などの輸出拡大も全体の押し上げに繋がっている。国・地域別では、豪 州向けやEU向けなどを中心に弱含む動きがみられる一方、低迷が続いてきた中国向けに底入れの動きが出た ほか、米国や日本、アジア新興国向けなどの拡大が全体を下支えしている。一方の輸入額は前年同月比+12.4% となり、前月(同▲3.8%)から3ヶ月ぶりに前年を上回る伸びに転じた。前月比も+5.8%と前月(同▲0.9%) まで2ヶ月連続で減少基調が続いたものの、3ヶ月ぶりに拡大に転じている。原油相場の低迷などを背景に原 油及び石油製品関連の輸入額に下押し圧力が掛かったものの、機械製品関連や日用品全般で輸入額が拡大して おり、インフレ圧力の後退や低金利状態の長期化などに伴う内需の堅調さが輸入の押し上げに繋がっている。 結果、貿易収支は▲7.79 億NZドルと前月(▲9.05 億NZドル)から赤字幅がわずかに縮小した。 図 1 NZ 貿易動向の推移 (出所)CEIC より第一生命経済研究所作成 [シンガポール] ~インフレ率は依然マイナス推移が続くなか、外需の弱さは生産の足かせになっている~ 23 日に発表された 11 月の消費者物価は前年同月比▲0.8%と 13 ヶ月連続でマイナスとなり、前月(同▲ 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容 は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 2/4 0.8%)から横這いで推移している。前月比は+0.20%と前月(同▲0.43%)から3ヶ月ぶりに上昇に転じて おり、食料品価格は引き続き安定しているほか、足下の原油安を反映してエネルギー価格も下落するなど生活 必需品を中心に物価は落ち着いている一方、不動産価格の上昇などが全体の押し上げに繋がっている。夏場以 降の国際金融市場の混乱に伴い通貨SGドル安基調が強まったことで、輸入物価に上昇圧力が掛かったことか ら、日用品で全般的に物価上昇圧力が高まったことも影響している。なお、食料品とエネルギーを除いたコア インフレ率は前年同月比+0.17%と前月(同+0.26%)から鈍化するなど、全体的に物価は安定している。 24 日に発表された 11 月の鉱工業生産は前年同月比▲5.5%と 10 ヶ月連続で前年を下回る伸びとなり、前月 (同▲4.7%)からマイナス幅も拡大している。前月比も▲3.58%と前月(同+2.90%)から3ヶ月ぶりに減 少に転じており、月ごとの変動幅が大きい上に生産全体に与える影響が比較的大きいバイオ・医薬品関連が同 ▲13.99%と大幅に減少したことが影響した。一方、バイオ・医薬品を除くベースでも前月比▲1.01%と前月 (同+2.31%)から3ヶ月ぶりに減少に転じており、主力の電子部品をはじめとする電気機器関連で生産が落 ち込んでいるほか、化学製品関連でも生産調整圧力が掛かっており、輸出の弱さが生産の足を引っ張っている。 図 2 SG インフレ率の推移 (出所)CEIC より第一生命経済研究所作成 [マレーシア] 図 3 SG 鉱工業生産の推移 (出所)CEIC より第一生命経済研究所作成 ~景気を巡る不透明感も、リンギ安による輸入物価上昇などでインフレ圧力がくすぶる~ 23 日に発表された 11 月の消費者物価は前年同月比+2.6%となり、前月(同+2.5%)から加速した。前月 比も+0.61%と前月(同+0.44%)から上昇ペースが加速しており、外需を巡る不透明感が景気の足かせにな っているものの、インフレ圧力はくすぶっている。なお、生鮮品を中心とする食料品価格は落ち着いた推移を みせているほか、足下の原油安などを反映してエネルギー価格も安定しており、生活必需品を中心に物価は落 ち着いている。他方、夏場以降の国際金融市場の動揺などに伴い通貨リンギ安基調が強まったことから、輸入 物価に全般的に上昇圧力が掛かっているほか、サービス関連物価も上昇基調を強めており、食料品とエネルギ ーを除いたコアインフレ率も加速している。今後の物価動向については、引き続きリンギ相場の行方が左右す る展開になるものと見込まれる。 図 4 MY インフレ率の推移 (出所)CEIC より第一生命経済研究所作成 [台湾] ~生産は底堅い展開が続くも輸出には不透明感がくすぶり、一進一退の展開が続くと見込まれる~ 21 日に発表された 11 月の輸出受注額は前年同月比▲6.3%と8ヶ月連続で前年を下回る伸びとなり、前月 (同▲5.3%)からマイナス幅も拡大している。季節調整値に基づく前月比も4ヶ月ぶりに減少に転じており、 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容 は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 3/4 過去3ヶ月に亘って拡大基調が続いてきたことで一服感が出たと考えられる。財別では、堅調な推移が続いて きたIT関連をはじめとする電子部品のほか、電気機器関連にも下押し圧力が掛かるなど、主力の輸出財を中 心に鈍化したことが影響している。国・地域別では、中国本土向けは底堅い動きが続いているほか、欧州向け も堅調な推移をみせる一方、米国向けや日本向けなどの鈍化が全体の下押しに繋がったと考えられる。米国の 年末商戦向けに堅調な動きが期待される輸出だが、その後については不透明感が再燃する可能性も予想される。 22 日に発表された 11 月の失業率(季調済)は 3.84%となり、前月(3.79%)から 0.05p 悪化した。雇用者 数は前月比+0.2 万人と拡大基調が続いているものの、前月(同+0.7 万人)からそのペースは鈍化しており、 拡大が続いた雇用に頭打ちの兆候が出ている。一方の失業者数は前月比+0.7 万人と前月(同+0.0 万人)か ら拡大しており、前年比ベースでも増加に転じるなど雇用環境が悪化している様子がうかがえる。なお、労働 参加率は 58.67%と前月(58.67%)から横這いで推移しており、労働力人口は依然として拡大基調が続いて いることが失業率の悪化を招いているものと考えられる。 23 日に発表された 11 月の鉱工業生産は前年同月比▲4.94%と7ヶ月連続で前年を下回る伸びとなったもの の、前月(同▲6.33%)からマイナス幅は縮小している。前月比も+0.09%と前月(同+0.47%)から拡大ペ ースこそ鈍化したものの3ヶ月連続で拡大しており、生産拡大の動きが続いている。分野別では、鉱業部門の 生産が底堅く推移しているほか、建設部門の堅調さも全体を下支えしている一方、製造業部門の生産は輸出の 不透明感を反映して一進一退の展開が続いている。先行きについては、輸出受注の動きに一服感が出ているこ とを勘案すれば、力強さを欠く展開が続く可能性が高いと見込まれる。 図 5 TW 輸出受注額の推移 (出所)CEIC より第一生命経済研究所作成 図 6 TW 雇用環境の推移 (出所)CEIC より第一生命経済研究所作成 図 7 TW 鉱工業生産の推移 (出所)CEIC より第一生命経済研究所作成 [香港] ~食料品価格の安定や原油安に伴うエネルギー価格の落ち着きを受けてインフレ率は低位で安定~ 21 日に発表された 11 月の消費者物価は前年同月比+2.4%となり、前月(同+2.4%)と同じ伸びとなった。 ただし、前月比は+0.24%と前月(同+1.78%)まで2ヶ月連続で高い伸びが続いた状況からは大きく鈍化し ており、これは 2007 年以降断続的に実施されている公営住宅を対象とした賃料減免措置の反動による上昇が 一服したことが影響している。前月に続いて電気料金をはじめとする公共料金の大幅引き上げは物価上昇圧力 となる一方、食料品価格が落ち着いているほか、このところの原油安を背景にエネルギー全般で物価が下落す るなど、生活必需品を中心に物価は安定している。なお、上述の賃料減免措置をはじめとする物価支援策の影 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容 は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 4/4 響を除いたベースでは前年同月比+2.4%と前月(同+2.3%)からわずかに加速しているものの、引き続き落 ち着いた推移が続いている。 図 8 HK インフレ率の推移 (出所)CEIC より第一生命経済研究所作成 以 上 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容 は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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