スルホキサフロルの残留基準設定について 意見提出者

スルホキサフロルの残留基準設定について
意見提出者:国際環境 NGO グリーンピース・ジャパン
【意見1】提案されているスルホキサフロルの残留基準設定 の案を撤回し、同農薬のインポートトレ
ランスに基づく申請と国内使用に関する申請は、ともに却下するべきである。
理由1.アメリカでも使用許可が取り消された殺虫剤(農薬)である
スルホキサフロルはアメリカでの裁判で2015年9月、ミツバチへのリスクを適切に検討していないこと
から使用許可を取り消し命令がだされ 1、アメリカ環境保護庁(EPA)が同11月12日に使用許可取り消し
た殺虫剤(農薬)である 2。残留基準値案が設定されている農産物の大半は、アメリカらの輸入を想定
したインポートトレランス申請に基づくものであり、そもそも輸入の可能性がなくなるため、申請の
根拠はなくなる。よって残留基準設定の案を撤回し、インポートトレランスに基づく申請は却下すべ
きである。
なお、アメリカで販売済の同農薬を使った農産物が輸入される可能性については、現在の輸入禁止を
維持すればよい。
理由2.使用許可取り消しの事実を検討・公表しないままパブリックコメントが行われている
スルホキサフロルがアメリカで使用許可取り消しとなったことはパブリックコメントのための思慮に
は一切公表されていない。また、厚生労働省では薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用
医薬品部会が2015年9月10日すなわちアメリカでの使用許可取り消し(2015年11月12日)前に行われた
ため、検討も行われていない。厚生労働省の基準審査課は「現在調査中」としており、調査中である
ならば、まず、パブリックコメントを含め審査を中断すべきである。
理由3.残留基準値案が国際基準( Codex 基準)よりも高いアメリカの基準に合わせられている
今回の基準値案は国際基準(Codex 基準)よりも高いアメリカの基準に基づいている。先に述べたよう
に設定の必要な根拠がなくなっているにもかかわらず、万が一高い基準が設定されれば、国内での使
用も、海外からの輸入も現在の高い残留基準がそのまま適用されることとなる。その場合、 審査も非
常に簡略化され、新たに国民の意見を聞く機会もなくなく、国内でも使用が拡大していくことになる。
1
2
On Petition for Review of an Order of the EPA
http://earthjustice.org/sites/default/files/files/sulfoxaflor-opinion.pdf
Sulfoxaflor - Final Cancellation Order
http://www.epa.gov/sites/production/files/2015-11/documents/final_cancellation_order-sulfoxaflor.pdf
殺虫剤(農薬)の摂取や環境への排出は、なくすことを目指して最小化すべきであり、不必要な高い
基準を設定すべきではない。
理由4. みつばちへの毒性が非常に高い農薬である
ス ル ホ キ サ フ ロ ル は 、 開 発 メ ー カ ー の ダ ウ ・ ア グ ロ サ イ エ ン ス 社 ( ア メ リ カ )が 自
らの研究でも、ミツバチへの毒性が非常に強いことを認めている殺虫剤(農薬)で
ある。
稲やりんごなどについては日本国内での使用許可(登録)申請も出されており、残
留基準値が設定されれば国内での使用も解禁となる。既に使用中のネオニコチノイ
ドとミツバチの大量死の関連は農林水産省の調査でも認められており、あえて、ミ
ツバチへのリスクを高める殺虫剤(農薬)をつぎつぎ解禁すべきではない。
【意見2】農薬の規制緩和ではなく環境保全型農業への 期待や努力を支援すべきである
理由:残留性が高く水を通して広範囲の環境汚染を指摘されているネオニコチノイ
ド農薬が「特別栽培」など環境保全型農業に多く使われている実態は、環境保全と
は 相 い れ な い 。 農 林 水 産 省 の 調 査 3で は 、 環 境 保 全 型 の 農 業 へ の 関 心 は 高 く 、 慣 行 の
半分以上が、条件がととのえば有機農業にしたいと答えており、またグリーンピー
ス の 調 査 で は 7割 以 上 の 幼 稚 園 が 無 農 薬 の 給 食 を 提 供 し た い と 応 え て い る 。 農 薬 の 緩
和ではなく、国レベルでの有機農業の支援制度の充実によって、環境保全と農業を
両立し、健康な食と農を支えるべきである。
【意見3】農薬登録の審査方法を見直すべきである
理由:現在の農薬取締法にもとづく審査体制では、ミツバチなど花粉媒介生物への影響を適切に評価
していない。今回のスルホキサフロルも同様、農薬抄録は公開されておらず、公開の審議もなされて
いない。殺虫剤(農薬)
(農薬)の使用は、自然環境、住環境、ミツバチを始めとする花粉媒介生物へ
の影響も総合して検討されるべきであり、すべてに公開の審議と国民の意見の反映がなければならな
い。
以上
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農林水産情報交流ネットワーク事業 全国アンケート調査有機農業をはじめとする環境保
全型農業に関する意識・意向調査結果
H19 年