[参考事項] 新技術名:葉分析によるリンゴ‘ふじ’の栄養診断基準 −現地リンゴ園の葉中無機成分含量の実態−(平成9年) 研究機関名 担 当 者 果樹試験場 環境部 佐藤善政・船山瑞樹 土壌肥料担当 [ 要 約 ] 横 手 ・ 平 鹿 地 域 の リ ン ゴ 園 に お い て 、‘ ふ じ ’ の 葉 中 無 機 成 分 含 量 の 実 態 を 調 査 し 、 栄養生理障害の発生状況との関係を検討した。生理障害ではビターピット、マグネシウム欠乏症 と推定される症状が一部の園地で認めらる。 [ねらい] リンゴの栄養診断として一般に活用されている葉中無機成分含量の測定による方法(葉分析診断) での基準を‘ふじ’について設定するために、現地リンゴ園49園地(普通台‘ふじ’21園、わい性台 ‘ふじ’28園)の実態を調査し参考資料を得る。 [技術の内容・特徴] 1.8月上旬に新梢中位葉を1樹当たり普通台は20枚、わい性台樹は10枚採取し1サンプルとし た。洗浄乾燥後に粉砕し、硫酸及び過酸化水素で湿式分解して無機成分の分析を行った。 2 . 分 析 は 窒 素 ( N )、 リ ン ( P )、 カ リ ウ ム ( K )、 カ ル シ ウ ム ( C a )、 マ グ ネ シ ウ ム ( M g ) に つ いて行い、Nは蒸留法、Pはバナドモリブデン酸法、Kは炎光法、Ca、Mgは原子吸光法で測定 した。 3.葉中N含量は概ね2.2∼2.8%の範囲に分布し 、‘ ふ じ ’ の 無 袋 栽 培 で の 適 正 基 準 の 範 囲 に あ っ た。Pは0.125∼0.300%の範囲に分布していたが、9割以上の園地が0.150∼0.225%の間にあ った。Kはすべての園地が1.0%以上の範囲に分布し1.6∼2.0%の園地が多かった。 4. Caは1.0∼1.3%の範囲に分布する園地が多かったが、0.9%以下の園地でビターピットが発 生している園地がみられた。Mgは0.20∼0.40%の範囲に分布する園地が多かったが0.24%以 下 の園地では欠乏症が発生している園地が認められた。 5.現地調査による養分含量の実態と養分欠乏症の発生状況、これまでに調査が行われた欠乏事例 などから、N、P、K、Ca、Mgの欠乏域及び適正範囲の目安は表1のとおりと推定される。 [普及対象範囲] リンゴ‘ふじ’について全県 [普及・参考上の留意事項] 葉の採取は7月下旬から8月中旬の間に、樹冠外周の目通りの高さで水平方向からやや上向きの 新梢中位葉を選定して実施する。 - 67 - [具体的なデータ等] 20 20 葉中含量(%) 1.4< ∼1.3 ∼1.2 葉中含量(%) 25 20 P Mg 15 園地数 20 15 10 10 5 5 0.40< ∼0.40 ∼0.36 ∼0.32 ∼0.28 ∼0.24 <0.300 ∼0.300 ∼0.275 ∼0.250 ∼0.225 ∼0.200 ∼0.175 ∼0.150 <0.125 葉中含量(%) ∼0.20 0 0 <0.16 園地数 ∼1.1 <0.8 2.8< ∼2.8 ∼2.7 ∼2.6 ∼2.5 0 ∼2.4 0 ∼2.3 5 ∼2.2 5 ∼1.0 10 ∼0.9 園地数 10 <2.1 園地数 Ca 15 ∼1.4 N 15 葉中含量(%) 20 K 園地数 15 欠乏園、 欠乏園混在、 健全園 普通台ふじ 21園、わい性台ふじ28園 8月上旬新梢中位葉採取分析 10 5 2..2< ∼2.2 ∼2.0 ∼1.8 ∼1.6 ∼1.4 ∼1.2 <1.0 0 図1.現地リンゴ園における葉中成分含量の分布 ( 秋田県横手平鹿地域における平成9年の調査結果) 葉中含量(%) 表1. ‘ふじ’の葉中無機成分含量の目安 要 素 名 欠乏域 適正範囲 N(%) <2.0 2.2 − 2.8 P(%) <0.10 0.15− 0.30 K(%) <1.0 1.2 − 1.9 Ca(%) <0.9 1.0 − 1.5 Mg(%) <0.20 0.25− 0.35 [発表文献等] な し - 68 -
© Copyright 2025 ExpyDoc