尿所見のススメ 平素より当院の診療にご協力、ご理解をいただき深 く感謝申し上げます。 一雨毎に寒さが増しており、冬の気配を感じます。 「腎臓診療の上で何が大事か?」という質問を頂き ますが、「尿所見を取ってください」とお返事を申し 上げております。 下記のグラフは2014年6月に当院においてCrを採血 した際、同時に尿検査を実施した比率を示したもので す。病棟は2割、外来は5割程度であり少ないのが現状 です。 60% 50% 尿検査検体数/Cr測定数 内科部長代理 長澤 将(たすく) (平成15年東北大卒) ・医学博士 ・腎臓専門医 ・透析専門医(来年度見込み) ・総合内科専門医・指導医 ・プライマリケア連合会 認定医・指導医 40% 30% 20% 10% 0% 病棟 外来 尿検査は簡便であり、侵襲性を伴いません。(そして安い、たった26点です) 腎臓内科の問診で非常に大事なことは「いつから尿所見が出始めたか?」です。 たとえば糖尿病性腎症の場合、一昨年から尿タンパクが+、去年は2+、今年は 3+になって浮腫んできたというのは自然な経過です。また、去年まで尿所見が ない人が、今年になり突然3+になった場合には、腎生検の適応があります。 いずれも尿タンパク3+という表現型ですが病歴が全く異なります。 「尿所見がない」ということも非常に大事な所見ですので、現在尿所見がない 方でも、一年に一回は検尿を取っていただければと思います。 そして、尿所見が出た場合には遠慮なくご紹介ください。 検尿を採る際「早朝尿が良いですか?」や「蓄尿までした方が良いですか?」 と聞かれることがよくありますが、全く気にせず随時尿で結構です。 しかし、蛋白尿陽性の場合の尿タンパクは、尿の濃さに依存しなくなるため尿タ ンパク/尿クレアチニンの比で取っていただくのが良いと考えております。 ここからは専門的な話となりますが、私の外来では尿検査で尿中窒素、尿中 Na,尿中Kも測っております。尿中窒素が高い場合は肉をたくさん食べていること がわかります。塩分摂取が多い人は尿中Naが高くなりますが、減塩に成功すると 下がります。そして、尿中Kが多いと果物や野菜を食べていて、低い場合はその 逆となります。これらから生活習慣を把握し、きめ細かな指導が可能になりま す。是非ご参考にしていただければ幸いです。 2014年11月 Vol.02
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