看護師 野中・鎌田 - 池田バスキュラーアクセス・透析・内科クリニック

当院における導入期指導の現状評価
池田バスキュラーアクセス透析・内科クリニック
○野中福美 鎌田紗貴子 前田さゆり
飯田輝昭 米田奈美江 安田透 池田潔
【背景】
2013年の当学会にて当院外来導入群(以下外来群)と
他院入院導入群(以下入院群)間で導入期データを評
価し、外来透析導入が可能であることを報告した。
当院導入及び、当院転入後の患者に対し導入期指導を
チーム(看護師、臨床工学技士、栄養士)で分担して
行っている。
【目的】
透析導入期指導による患者データの推移を、外来群と入
院群で比較検討し、指導内容の評価を行う。
対象
平成23年1月~平成25年6月
外来群:14名(男女比11:3) 平均年齢67歳±7
糖尿病性腎症5名 慢性糸球体腎炎5名 腎硬化症1名
高血圧性腎硬化症2名 多発性嚢胞腎1名
入院群:14名(男女比11:3) 平均年齢61歳±12
平均入院期間:39日
糖尿病性腎症8名 慢性糸球体腎炎5名 腎硬化症1名
方法
①体重増加率②心胸比③採血検査(Alb・K・IP・Hb)を、
透析導入時・3ヵ月・6ヶ月で比較し、t検定を用いて有意差を検討した。
【結果】
①体重増加率
(kg)
(kg)
1日間隔
3.5
3.5
3.0
3.0
2.5
2.5
2.0
2.0
1.5
1.5
1.0
1.0
外来群
0.5
入院群
0.0
1
2
3
4
5
2日間隔
6
外来群
0.5
(ヶ月) 0.0
1
2
3
4
入院群
5
6
(ヶ月)
②心胸比
(%)
50
49
48
:外来群
:入院群
47
46
45
(ヶ月)
44
0
3
6
③採血結果
図1(Alb)
図2(K)
(mEq/dl)
(mg/dl)
外来群
4
3.9
3.8
3.7
3.6
3.5
3.4
3.3
3.2
3.1
3
2.9
0
3
6
入院群
(ヶ月)
外来群
4.8
4.7
4.6
4.5
4.4
4.3
4.2
4.1
4
0
3
入院群
6
(mg/d)
図3(IP)
6
外来群
入院群
図4(Hb)
(g/dl)
12
外来群
入院群
11.5
5
11
10.5
4
10
9.5
3
9
8.5
2
8
0
3
6
0
3
6
導入期指導例
【症例】 K氏 60歳、男性 原疾患:IgA腎症 (51歳時診断)
【家族背景】市役所職員。妻、長女、長男との4人暮らし。妻が
栄養管理
【病歴】
・他院でIgA腎症診断後ステロイド療法はおこなわれず、降圧剤
のみでフォローされた。
・2010年 56歳 9月 当院外来受診し、1/MのCKD外来フォロー
開始となる。
・2011年 57歳 CKDステージ4となる。
「透析導入を定年退職の60歳まで、後3年持たせたい。」と強
い意志と明確な人生設計を持っており,そのため自己管理に
ついても前向きな姿勢である。
看護計画
問題:♯1.治療計画管理促進準備状態:目標達成の意欲はあるが知識が不足している
看護目標:自己管理上の問題点に気付き、解決方法を見出せる
O-P:①バイタルサイン
②検査データ(CR.BUN.UA. 尿蛋白.尿潜血.体重増加.BX-P)
③腎性貧血の症状の有無
④服薬状況
⑤支援状況と指導に対する理解度
T-P:①自宅血圧の変動を把握する
②食事状況を把握し、採決データと比較する
E‐P:①食事療法の意義と重要性について
②自己管理票の継続的な記録の必要性について説明する
③患者の理解の程度や習得状況に合わせて指導を行う
④ステージ4の栄養指導:タンパク質制限にいついて
CKDステージ4:月1回の受診時に検査データ、自覚症状をアセスメントし指導を行う
CKDステージ5:週2回の受診時検査データ、胸部レントゲン、自覚症状をアセスメントし
指導を行う
・2012年 58歳 Cr6.7と上昇にて、外来で管理栄養士による栄養指導の実施
・2013年 59歳10ヵ月 Cr8.9 6月4日左AVF作製となる。その後1/W受診される。
・2014年 59歳11ヵ月 7月1日透析導入となる。
【申し送り風景】
透析室看護師
外来看護師
外来看護師から透析室看護師へ・・・
1:生活状況、家族背景、キーパーソン
2:電子カルテを用いての指導内容や理解度、検
査データの確認
3:シャント作成時期の確認
4:透析治療の受け入れ状況
5:注意事項などの申し送り
臨床工学技士
指導項目
指導日
(時間)
指導内容・患者の反応
①心胸比
7/1
(3分)
現在心胸比:44.5%と良好。
胸部症状なし。
②VAアクセス
7/3
左前腕AVF 聴診器購入予定。
(10分)
③DW
7/1
(3分)
下肢浮腫(+)にて今後DW下
げていく方針を説明する。
④血流量
7/1
(3分)
理解されていた様子。
⑤除水量
7/1
(5分)
食事、水分管理はきちんと
行っているとのこと。現在体重
増加量問題なし。
管理栄養士
指導項目
指導日
指導内容・患者の反応
(時間)
①カリウム
7/3
再度茹でこぼしの説明を
(5分) 行う。
②リン
7/3
全体的に理解あり。
(3分)
③塩分
特に塩分水分には気を
7/8
つけており、味噌汁も具
(5分) だけ食べて汁は飲んで
ない。
④導入直前後指導
7/3
全体的に理解あり。
(5分)
中性脂肪上昇傾向に
⑤採血データについ 7/3
あったため、資料にて説
て
(10分)
明行う。
看護師
【看護計画立案】
問題:治療計画管理促進準備状態:目標達
成の意欲はあるが知識が不足している
目標:自己管理に必要な知識を習得でき、
治療が継続できる
O-P:1.検査データ
2.水納管理・食事摂取状況と内容
3.血圧、内服状況
4.活動状況・社会背景の把握
T-P:1.患者の理解の程度や習得状況に
合わせて指 導を行う
E-P:1.指導項目①~⑥の指導を行う。
2.①~⑥の指導項目以外の不明な
点を確認し、指導を行っていく。
指導項目
指導日
(時間)
指導内容・患者の反応
①ヘモグロ
ビン
7/3 貧血状態確認すると、ふらつき・め
(5分) まいは自覚あり。注意するよう説明。
②尿と汗
水分管理については日々の体重増
7/8
加を見ると指導必要。その都度説
(7分)
明していく。
③PTH
7/5 Ca・IPについて説明。栄養士よりCa
(5分) の摂取について指導されたとの事。
④運動
7/8
無理な運動はしないよう説明する。
(3分)
⑤足病
7/8 足のしびれの訴えなし。定期的な
(5分) フットチェックを行っていく。
⑥血圧
7/8
理解されていた様子。
(5分)
【考察】
#1 外来群のHb値は、CKD外来での適正なESA製剤
(平均エポエチンアルファ6000IU/1ml/週)の投与
により、CKDガイドラインの目標数値内である
10~12g/dlでの導入に至ったと考える。
#2 入院群のHb値は、3ヶ月後に11.5g/dlとなり、
導入期指導が有効だったと思われる。
#3 体重増加率は、2群ともに同様の指導を実施する
事で、推移に変化は見られなかった。
#4 外来群はCKD外来からの関わりにより、透析導入
時から検査データ(が正常範囲内であった。
【まとめ】
・チームによる導入期指導は両群間の
Hb、Alb等の栄養状態における差異を
改善した。
・当院外来群はCKD外来から透析室への
情報の共有が円滑に行われ、良好な指導
につながった。
ご清聴ありがとうございました。