原油安で企業の選別が問われる局面へ - JPモルガン・アセット・マネジメント

原油安で企業の選別が問われる局面へ
2014年12月18日
STRATEGISTS
Anastasia V. Amoroso, CFA
Vice President
Global Market Strategist
J.P. Morgan Funds
Ainsley E. Woolridge
Market Analyst
J.P. Morgan Funds
Akira Kunikyo
Associate
Global Market Strategist
J.P. Morgan Funds
要旨
 原油価格急落の背景は次の3つ
 OPECによる原油需要見通しの引き下げ
 サウジアラビア高官による「減産の必要はない」との発言
 米石油在庫の予想外の増加
 原油安は米国経済にとってあくまでプラスの材料。一定の時間を経て、市
場が落ち着けば、ファンダメンタルズの観点から米国株式は再び上昇に
転じる可能性が高いと見ている
 原油価格下落から生まれる投資機会とリスクは、企業によって大きく異な
る。企業を選別する必要性が高まる
原油価格急落の背景
足元、原油価格は急落し、WTI原油先物価格は1バレル=60ドルを5年ぶりに
下回りました。この急落の背景には3つの理由があると見ています。
第1にOPECによる原油需要見通しの引き下げが挙げられます。12月に発表
された月次レポートによると、OPECは欧州等での経済成長鈍化や米国の燃
料効率の上昇を理由に、今後の原油需要見通しを下方修正しました。一方で、
供給については非OPEC加盟国による供給量見通しを引き上げました。こうし
た外部環境の変化を前提とすると、仮にOPECが現在のペース(1日当たり約
3,000万バレル)で生産を続ける場合、供給量は1日当たり約170万バレルほ
ど需要量を上回ることとなります。こうした過剰供給の環境が続くのではない
かという懸念が、原油価格の下落に繋がっています。
図:WTI原油先物価格の推移(単位:ドル)
データ期間:2014年1月1日から2014年12月16日まで
110
100
90
80
70
60
50
'14/1 '14/2 '14/3 '14/4 '14/5 '14/6 '14/7 '14/8 '14/9 '14/10 '14/11 '14/12
出所: Bloomberg, J.P.Morgan Asset Management
原油安で企業の選別が問われる局面へ
第2にヌアイミ・サウジアラビア石油鉱物資源相が、減産の必要はないと発言
したことが挙げられます。11月末のOPEC総会での減産見送り決定後、ヌアイ
ミ氏は次回のOPEC総会以前(2015年6月)に減産を行う可能性について問
われ、「価格の上下は自然なことであり、減産の必要はない」と強調しました。
過去の原油価格下落の局面において、サウジアラビアが減産を行ってきたこ
とを踏まえると、この対応は驚くべきものです。
第3に米国の石油在庫が増加傾向にあることが挙げられます。10日、米エネ
ルギー情報局は週間石油在庫統計を発表しましたが、市場の予想とは逆に、
在庫の増加を示す内容となりました。
原油価格の下落は米国経済にプラス
足元では「原油安を材料に、米国株式は下落した」との報道があります。しかし
原油安は米国経済にプラスであり、すなわち米国株式にとってもプラスの材料
と弊社では考えています。なぜなら原油価格の低位安定はガソリン価格の下
落を通じ実質所得を押し上げ、米国の消費を刺激する効果があるからです。
弊社では、原油価格が10ドル下落し横ばい推移すると、先進国のGDPを翌年
0.2%程度押し上げる効果があると見ています。
足元の米国株式の下落は、急ピッチでの原油価格下落の影響を市場が計り
かねているためと見ています。2014年にはウクライナ問題、エボラ出血熱、香
港でのデモなど、懸念や不安が株価の大幅下落をもたらした局面がありまし
た。これらはいずれも、実体経済にほぼ影響が出ていない段階でありながら、
まるで最悪の事態が目前に迫ったかのように株価が下落した例です。しかし、
いずれの局面でも、時間を経て米国の実体経済が再評価されると、株価は上
昇に転じています。足元は過度な懸念が市場を覆っているために株価は下落
していますが、原油安は米国経済にプラスです。市場が落ち着けば、ファンダ
メンタルズの観点から米国株式は再び上昇に転じる可能性が高いと考えます。
図:S&P500指数とS&P500エネルギーセクターの推移
データ期間:2013年12月31日から2014年12月16日。2013年12月31日=100として指数化
115
110
105
100
95
90
S&P500指数
85
S&P500エネルギーセクター
80
'14/1 '14/2 '14/3 '14/4 '14/5 '14/6 '14/7 '14/8 '14/9 '14/10 '14/11 '14/12
出所: Bloomberg, J.P.Morgan Asset Management
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原油安で企業の選別が問われる局面へ
エネルギー関連企業では選別が重要に
ただし、エネルギー関連の株式・債券に限定すると、原油価格の低位安定は
逆風となります。エネルギー関連企業の株式は下落が進む一方ですが、上昇
に転じる材料は現在のところ見当たりません。原油価格の下落により、エネル
ギー企業の利益見通しは大幅に引き下げられています。当然のことですが、
原油価格が下落する一方で生産量と生産コストが横ばいであれば、利益率は
低下します。利益の低下は株価の下落に繋がります。
ハイ・イールド企業の債券については、営業キャッシュフローの悪化が財務指
標の悪化をもたらすと考えられるため、更なる売り圧力に晒される恐れがあり
ます。ただし、業績の悪化が株主還元などの原資や利益成長を抑制すること
はあっても、債券の利払いが停止されデフォルトに陥ることはないでしょう。企
業の多くは既に2015年、2016年における販売価格契約を締結しており、利払
い費用については工面できる状況にあります。
しかし、原油価格低下から生まれる投資機会とリスクは企業によって大きく異
なります。投資にあたっては、①売上高に占める原油とガスの割合、②ヘッジ
の割合、③債券の財務条項、④インタレスト・カバレッジ・レシオ(利払いの支
払い能力)、⑤資金調達能力など、企業の財務状態を見極める目がリターン
の成否を大きく分けるでしょう。原油価格が低位で推移すれば、石油開発企業
やサービス企業は深刻な資金不足に陥ると見られます。これは販売価格の契
約が終了する2016年以降、顕在化していくと見ており、このことは、企業を選
別して投資することの重要性が高まっているといえます。
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(アジア)リミテッド、インド:証券取引委員会の監督下にあるJPモルガン・アセット・マネジメント・インディア・プライベート・リミテッド、シンガポール:金融管理局の監
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