ギリシャで新政権が誕生 - JPモルガン・アセット・マネジメント

ギリシャで新政権が誕生
ポピュリズムは経済の長期停滞を解決せず
2015年1月28日
Market Insights
グローバル・マーケット・ストラテジスト
重見 吉徳
要旨
 ギリシャのユーロ/EU離脱の可能性は低い一方で、同国が抱える債務の
返済条件は一部緩和される可能性がある
 ポピュリズムの台頭は、経済の長期停滞に対する有権者の(現時点の)
答えと見られるが、そうした停滞の要因はポピュリズムでは解決できない
 ギリシャ新政権によるEUとの緊縮策の再交渉や、5月に英国、12月にス
ペインでそれぞれ予定される総選挙では市場変動の高まりが予想される
ギリシャで新政権が誕生:EUとの再交渉が始まる
ギリシャで26日に、急進左派連合と右派「独立ギリシャ人」が連立政権樹立で
合意し、同日に急進左派連合のチプラス党首が首相に就任しました。両党は、
ギリシャが債務危機以降、受け入れてきた財政緊縮措置や構造改革に反対し
ており、新政権はまもなくこれらについて、EU(欧州連合)と再交渉を始めます。
この再交渉に関して取り沙汰されるギリシャのユーロ/EU離脱の可能性は低
いと見られます。まず、ギリシャの側を考えると、新政権が有権者に対する公
約を(たとえその一部でも)実現させるためには財政収支の均衡を崩す必要が
あり、これはEUによる資金支援なしには成立しません。一方のEUにとってみ
ると、ギリシャのユーロ/EU離脱は、ユーロ圏全体の金融市場に対する影響度
が計り知れないほか、他国で台頭するEU離脱や地域独立を志向する政党・
有権者を刺激する恐れがあります。特に5月には英国で総選挙が予定されて
います。同国では昨年5月に実施された欧州議会選挙で、EUからの離脱を目
指す英国独立党が第1党に立って勢いを保っているほか、キャメロン首相は
2017年にEU残留か離脱かを問う国民投票の実施を表明しています。
ギリシャがユーロ/EUに留まる一方で、同国が抱える債務については、その返
済条件が一部緩和される可能性があり(債務の一部繰り延べや金利の減免な
ど)、その場合には、ギリシャと同様にEUからの支援を受け、12月に総選挙が
予定されるスペインにも影響を与えます。
図:ギリシャおよびドイツの10年国債利回り
データ期間:2000年1月3日から2015年1月27日まで
40%
30%
ギリシャ10年国債利回り
ドイツ10年国債利回り
20%
10%
0%
'00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14 '15
出所: Bloomberg, J.P.Morgan Asset Management
ギリシャで新政権が誕生
ポピュリズムは経済の長期停滞を解決せず
ポピュリズムは、経済の長期停滞に対する有権者の答え
今回の選挙結果を含め、欧州では幅広くポピュリズム(大衆迎合主義)が台頭
しており、1つの大きなトレンドを形成しています。その構図は、経済の長期停
滞を、EUの構造や政策、移民などに帰するものであり、ポピュリズムをベース
とする政党は、それぞれEUからの離脱、財政出動の拡大や所得分配の強化、
移民排斥や自国通貨の復活などを主張し、いずれも支持を拡大しています。
ポピュリズムは、経済の長期停滞に関する、現時点での有権者の答えと見ら
れます。そうした停滞状況が今後も続く場合、ポピュリズムの「復活」は、欧州
の政治や経済の安定にとっての大きな脅威となります。
しかしながら、経済が長期にわたって停滞している要因は、これまでの利益の
追求や経済の成熟化によって、新たな投資機会や成長余力が減っているため
と考えられます。これはグローバルな動きであって一国の問題ではなく、ポピュ
リズム政党が掲げる政策では解決できません。例えば、財政出動の拡大や所
得分配政策は経済の規模(パイ)が拡大しない限り、持続が困難です。また、
移民排斥や自国通貨の復活も、人口の高齢化やグローバル化、市場メカニズ
ムによる調整からは逃れられません。イノベーション(技術革新)が人々の潜
在的な需要や新たな投資意欲を刺激するまで、停滞は続く可能性があります。
Guide to the Markets-Japan 2015年第1四半期版9ページ
(弊社HPよりダウンロード頂けます)
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ギリシャで新政権が誕生
ポピュリズムは経済の長期停滞を解決せず
2015年は欧州が多くの市場変動をもたらす
2015年は欧州に再び焦点が当たります。しかしながら、2010-2012年の債務
危機時とは異なり、政府部門や銀行部門の債務問題は大きく改善しています。
デフレ状態が続く可能性は高いものの、デフレで深刻化する不良債権につい
ては整理が大きく進んでおり、金融危機が再来する可能性は低いと見られま
す。また万が一に備えるための、欧州安定メカニズム(ESM)や銀行同盟、欧
州中央銀行(ECB)によるOMT(重債務国国債の買い取り策)なども整備され
ています。これらは欧州への投資に際しての大きな安心材料です。
ただし、冒頭に述べたように、ギリシャ新政権による緊縮策の再交渉や、英
国・スペインの総選挙は、利益確定やリスク削減のきっかけとなり、市場の変
動が高まる可能性があります。また、ECBを始めとする先進国の中央銀行が
供給する過剰な流動性が生み出す投機や利回り追求の動きにより、市場変動
の大きさは拡大しています。投資家は市場の大きな変動に備え、ポートフォリ
オの分散を図る必要があります。
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