環境感応性高分子材料の開発研究

環境感応性高分子材料の開発研究
−樹脂劣化検知材料の開発研究(3)−
繊維・有機環境材料担当
宮川
栄一
1.目的
太陽光などの外部環境によるポリエチレン(PE)材料の光劣化の進行を検知できる機能を持つ
ような,環境に感応する高付加価値材料を開発・創製することによって,安全性と信頼性を大幅
に向上させ,地球資源の有効利用を図ることを目的としている。
2.内容
本年度は,樹脂劣化検知材料の実用化を目標に,①技術移転を希望する企業の募集(アンケー
トの実施)と,②製品としての実用化に向けた検知時期の制御と検知機能の高性能化を検討した。
さらに,ポリエチレンのリサイクル性を評価するために,③再製フィルムの機械的特性への影響
および非晶鎖切断材料の劣化挙動についても調べた。
3.結果
(1)検知時期の制御
複数顔料混練法は,劣化による色変化
が明確で検知時期の制御に効果的であ
る。
この混練材料を用いた退色変化層の厚
みを調整することにより,劣化促進剤を
添加しなくても,劣化による色変化時期
を光照射 2 ∼ 16 日まで任意に変えるこ
とが可能と分かった。
従って,劣化が始まる直前から,劣化
後の範囲において,色変化による劣化検
知が可能と分かった。
(2)酸化チタンによる退色速度への影響
有機物を酸化分解する機能を利用し,
易退色性有機性顔料をどれくらい分解・
退色させられるか確認した。
同じ厚みの無添加のフィルムに比べ,
約 4 日程度色変化を早める効果を示し,
検知時期を早くする添加剤として有効と
分かった。
(3)再製フィルムの機械的特性への影響
材料のリサイクル化が要求される中, PE 成型品を再利用する場合,溶融再製後の機械的
特性の把握は重要である。そこで,劣化が再製フィルムの機械的特性(降伏挙動)や分子量
分布に与える影響を検討し,熱処理など結晶化条件に大きく影響されることが分かった。
(4)発煙硝酸を用いたエッチングの影響
結晶性であるポリエチレンの非晶分子を選択的に切断分解除去し,ラメラ結晶のみが得ら
れる発煙硝酸処理を施した試料の構造変化と機械的特性の変化について検討した。非晶鎖が
切断され,カルボン酸が大量に生成し,機械的物性が大きく低下した。
4.今後の課題
樹脂劣化検知材料の具体的な技術移転ターゲットとなる製品を決め,劣化検知機能を発揮する
ための最適な構造および成形方法を選択する必要がある。