ダム改造事業による水質変化について

資料−5
第5回 鹿野川ダム水質検討会
− ダム改造事業による水質変化について−
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1.鹿野川ダム改造事業の概要
【鹿野川ダム改造事業の目的】
(1)河川環境容量の確保による「流水の正常な機能の維持」
(2)洪水調節容量を新たに増やすことによる「洪水流量の低減」
総貯水容量4,820万m3
(常時)
非洪水期
洪水期
(洪水時)
発電容量
1,910万m3
H=61m
発電
総貯水容量4,820万m3
(常時)
洪水期
非洪水期
洪水調節容量 洪水調節容量
650万m3
1,810 万m3
改造
(予備放流
容量580万m3)
発電容量
2,330万m3
EL.91m
洪水調節
容 量
1,650万m3
洪水調節容量 洪水調節容量
650万m3
1,070 万m3
H=61m
ダム天端標高
容量
河川環境
容
量
2,970万m3
(洪水時)
洪水調節
容 量
2,390万m3
(予備放流
容量580万m3)
河川環境
容
量
1,810万m3
河川環境
容
底水容量 640万m
堆砂容量
基礎地盤
量
3
堆砂容量
1,200万m3
1,200万m3
基礎地盤
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【鹿野川ダム改造事業の整備概要】
(1)発電容量の振り替え;洪水調節容量の増強、環境容量の新設
(2)トンネル洪水吐き、ゲート改造;洪水調節機能の増強
(3)選択取水設備設置;正常流量の確保、水温・濁水の改善
(4)曝気装置の設置、底泥除去;貯水池水質改善
トンネル洪水吐
ゲート改造
選択取水設備
水質改善対策(曝気装置)
3
2.想定される水環境の変化・影響
„富栄養化(貯水池内)
出水時に中層(トンネル洪水吐き)から放流することで、現状
(上層放流)よりも上層に栄養などが巻き上がりにくくなり、水
質が改善する可能性がある。
<トンネル洪水吐きがある場合・無い場合の栄養塩挙動>
4
„水温の変化(ダム放流∼下流河川)
夏期の出水時において、ダム下層の冷たい水を突発的に放
流する可能性がある(冷水放流の懸念)。
<トンネル洪水吐きがある場合・無い場合の放流水温>
5
„土砂による水の濁り(ダム放流∼下流河川)
トンネル洪水吐きからの放流の際に、流れと一緒にダムの
底に溜まっている泥が動き、流出する可能性がある。
<トンネル洪水吐き開門時の底泥の巻き込みのイメージ>
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2.鹿野川ダム改造事業の水質予測計算
肱川
貯水池モデル
稲生川
„野村ダムでの予測、河川モデ
ルでの予測を経て、鹿野川ダム
の予測計算を行う。
野村ダム
放流水
富野川
„ダム改造による水質変化の影
響を推定するため、予測計算シ
ミュレーションを実施。
河川モデル
水質予測モデルの構造(鉛直2次元モデル)
←流下方向
黒瀬川
舟戸川
放
流
肱川
流入
貯水池モデル
鹿野川ダム
放流水
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2-1.鹿野川ダム改造後の予測条件設定
【トンネル洪水吐きの概要】
„トンネル洪水吐き呑み口は堰堤より上流約200mの右岸側
に位置し、幅9m、高さ11.5m(EL.53m∼64.5m)である。
„放流時の底泥の巻き込み、冷水放流を低減するため、呑
み口の前面に高さ6mの壁を設置予定である。
<トンネル洪水吐き施設配置概要図>
トンネル洪水吐き呑口
水路擁壁
鹿野川ダム堰堤
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【曝気循環施設の運用条件】
„鹿野川ダムに導入されている曝
気施設(5基)を引き続き運用する。
„1基あたりの最大吐出空気量は
6.4m3/minで、効率的運用(電気
代軽減)のため、空気量を減らし
た運転(80%、90%等)も検討する。
„貯水位が低下しても曝気部分が
地面にあたらないように運用する。
500m
0
500m
1000m
1500m
1号 機
2号 機
3号 機
<曝気施設の概要と目安の曝気水深>
曝気施設
設置位置
湖底標高
1号機
EL.44.9m
2号機
EL.45.9m
3号機
EL.48.9m
4号機
EL.53.4m
5号機
EL.52.4m
目安曝気
標高
目安曝気
水深
EL.50m
30∼33m
EL.55m
25∼31m
EL.60m
20∼26m
4号 機
5号 機
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2-2.鹿野川ダム改造後の水質予測計算(富栄養化)
【富栄養化の検討(鹿野川ダム流入河川;肱川)】
„野村ダムの既設曝気4基の運用により、鹿野川ダムに流入
するクロロフィルa濃度の改善効果が確認される。
„栄養塩は、野村ダムで使用されない分、鹿野川ダムに入る。
<鹿野川ダム流入におけるクロロフィルa、無機態リン予測結果(H18年の例)>
PO4-P(mg/L)
Chl-a(μg/L)
野村ダム曝気無し
野村ダム曝気運用あり
40
30
野村ダム曝気施設の効果で、鹿野川ダムに流入するクロロフィルa濃度低減
20
10
0
H18.1
H18.3
H18.5
H18.7
H18.9
H18.11
0.1
無機態リン濃度( 植物プランクトンの餌)は野村ダムの曝気の効果により、
0.08
鹿野川ダムにそのまま流れてくる。
0.06
0.04
0.02
0
H18.1
H18.3
H18.5
H18.7
H18.9
H18.11
10
【ダム改造後における曝気施設によるアオコ抑制効果】
„野村ダムでの曝気4基運用で、鹿野川ダム貯水池水質も
若干改善するが、それだけではアオコ抑制は困難である。
„現在導入している鹿野川ダムの曝気5基を80%以上の力で
運用すると、改造後もアオコの増殖抑制は可能である。
<曝気5基の出力毎の藍藻由来クロロフィルa濃度予測結果(H9年∼18年)>
10ヶ年最大藍藻
Chla(μg/L)
50
45.2
<【改造後】鹿野川ダム・ダムサイト 藍藻由来Chl-a(7月∼10月)>
44.2
40
27.4
30
アオコ抑制目標値(25μg/L以下)
20
5基を80%以上出力の運用で達成
19.5
16.3
14.2
10
0
野村無対策
野村曝気4基
鹿野5基で70%
鹿野5基で80%
鹿野5基で90%
鹿野5基で100%
※アオコ抑制目標;アオコ発生時期(7月∼10月)で藍藻由来クロロフィルaを25μg/L未満と設定
(第4回鹿野川ダム水質検討会 資料-6参照)
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2-3.鹿野川ダム改造後の水質予測(水温の変化)
„曝気循環施設をトンネル洪水吐きより
深い位置から運用することで、水温が上
昇して冷水の放流を軽減可能である。
曝気循環流
により、洪水
吐きの位置
まで温水化
【出水前の水温分布】
0
5
水温(℃)
10 15 20 25
90
貯水位(EL.m)
„初夏において、出水時にトンネル洪水
吐きから放流すると、中層∼下層に残っ
ている水温の低い水が放流される。
80
トンネル
70 洪水吐き
60
50
40
曝気の
運用
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2-4.鹿野川ダム改造後の水質予測(水の濁り)
【土砂による水の濁りの検討】
„曝気運用はアオコ抑制、冷水放流軽減に効果があるが、出
水時に流入する濁り水を混合し、濁りを長い期間放流する。
【曝気運用の工夫と選択取水の運用による濁り軽減効果】
„出水後の曝気停止、
浅い位置での運用、
選択取水設備による
出水時の高濁度層放
流とその後の表層放
流により、濁水の長期
化を軽減可能である。
表層取水の場合
等水温放流の場合
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【底泥の巻き上げ・流出防止の検討】
„3次元流動シミュレーションにより、トンネル洪水吐き呑み
口部周辺の流速を推定した。
<3次元流動シミュレーションによる流れの予測図>
トンネル洪水吐き呑み口∼
底層部での水の流れの予測図
(1,000m3/s放流時)
„ モデルメッシュサイズ
横断方向;1.5m∼10m
流下方向;1.5m∼22m
鉛直方向;0.5m∼1m
湖底流速は0.5m/s以下
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„呑み口の前面に高さ6mの壁を設置することで、底部での
流速を小さくし、浮泥の巻き上げ・流出を軽減することが可
能と予測される。
<呑み口前面の壁高さごとの湖底の流速予測結果>
1.1
壁高0m
湖底の流速 V (m/s)
1.0
壁高3m
0.9
壁高6m
0.8
壁高10m
壁周辺の湖底流速
を著しく低減
0.7
0.6
0.5
0.4
6m以 上 の 高 さ で よ り
効果が大きい
0.3
0.2
0
壁
5
10
15
20
壁からの距離 L (m)
25
30
左岸へ
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【参考;クレスト放流の場合の湖底流速の確認】
„クレスト放流した場合においても、トンネル洪水吐き呑み口
周辺の湖底流速は0.5m/s以下程度と予測された。
<クレスト放流した場合の流れの予測図>
トンネル洪水吐き呑み口∼
底層部での水の流れの予測図
(クレスト1,000m3/s放流時)
トンネル洪水吐きから
の放流時の湖底流速
は、現況(クレスト放
流)と同程度である。
湖底流速は0.5m/s以下
(トンネル洪水吐き放流時
と大きく変わらない)
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