国道 112 号 月山道路 鷹匠橋床版応急補修について 酒田河川国道事務所 月山国道維持出張所 出張所長 田村 正樹 技術係長 ○小曽根 晃 1. はじめに 平成 20 年 9 月の道路巡視時に国道 112 号鷹匠橋の橋面舗装部(第 1 径間 G2 桁付 近)に急速な変状、また床版部にひび割れや漏水が見られ、点検の結果床版陥没が懸 念された。このため、応急的に床版打換補修を実施し、一般交通の事故の未然防止、 通行止め等による影響の回避を図った。 補修においては、床版の損傷原因を把握し、損傷原因に基づいて補修方法・範囲 について検討し実施した。また、高速道路接続路線でもあることから、工事交通規 制の抑制にも配慮した補修方法により、早期に交通解放を図ることで、工事中の一 般交通への影響を低減したものである。 <鷹匠橋の概要> 3径間連続鋼鈑桁橋(曲線橋) 昭和51年(32年経過) 昭和54年(29年経過) L=112m (34.2m+42.8m+34.2m) W=1.5m+7.0m+1.0m=9.5m 諸元 形式 竣工 供用 橋長 幅員 線形 最小曲線R=150m 道路縦断勾配 5.0% 道路横断勾配 6.0% 交通量 H17 8,429台/日 側面全景 <橋梁補修の経緯> 実施時期 補修内容 H10 橋台補修 H12 地覆、高欄、伸縮装置補修 H18.10 橋梁点検(床版ひび割れ、漏水・遊離石灰) 耐震補強工事(橋脚RC巻立、落橋防止装置) H18.10 床版部分補修(ジェットモルタル打換) H18.11 路面凍結対策(グルービング+ゴムチップ充填) 第1径間G2桁付近でポットホール H20.7 →パッチングで応急処理 H20.9 H20.7の補修箇所にて舗装流動、空洞音確認 2.舗装及び床版の劣化状況 ①道路巡視での異常を確認 ②床版下状況を緊急点検 漏水 (コンクリート濡れ) ひび割れ 及び 遊離石灰 (打音では浮きなし) ポットホール 舗装の流動 ・橋上より打音確認の結果、鈍い音有り ・コンクリートが擦れた白い粉を橋面に確認 G2桁 ・橋梁全体で曲線が最も小さい区間(R=150) の内カーブ側(G2 桁付近)に劣化が集中 3.床版の損傷進行の原因 <損傷進行の原因(考えられる影響)> 項 目 原 因 ①橋梁構造 ・前回点検(H18)から、特に特定の範囲(小曲線部)で損傷が進行 ※乾燥収縮、活荷重(疲労)の他、曲線橋の特性が影響している可能性 ②部分補修 ・コンクリート床版の部分補修(ジェットモルタルによる施工,床版上面5cm程度打換) (H18施工) ・鉄筋の防錆処理、打換部分の端部すりつけ等に配慮不足 →既設床版との一体性に課題有り ③橋面防水 ・橋面防水の未整備 ・部分補修時の橋面防水の施工範囲不足 (ジェットモルタル打換端部と防水層端部が部分的に一致~施工後の水の侵入) ④橋面舗装 ・舗装の摩耗(前回舗装H8)※H20時点でt=50→最小20mmまで摩耗 ・橋面のグルービング(溝切り) <舗装撤去時の床版状況> H18補修箇所は床版と一体とな らず ひび割れ、浮きが発生 →雨水が内部に侵入し、損傷範囲拡大 4.床版の損傷判定 H18 橋梁点検時は損傷ランクⅢ RC床版の損傷度分類 <損傷進行に伴う構造系の変化と対策工法に応じた分類> →今回、格子状の漏水を伴い、常時濡れた OK ・ Ⅳ ・ ・ Ⅲ ・ ・ Ⅱ ・ ・ ・ Ⅰ ・ ・ ・ 状態にある事から、損傷ランクⅡ~Ⅰ相当。 所見なし 下面のクラック、舗装面のひび割れ、漏水いずれも無し 所見有り( 損傷と判定せず) ジャンカ等拡大しない施工不良 乾燥クラック(漏水無しの場合) 損傷と確認( 時期を見て補修必要、交通規制不要) 格子を形成した下面クラック(下面からの曲げ補強工法) 乾燥クラックからの漏水・遊離石灰(舗装打換え時に防水対策) 進行した損傷( 要補修、猶予無し、交通規制必要) 密度の高い格子状下面クラック(上面増厚併用の曲げ補強) クラックの角落ちはせん断補強挙動の証拠 格子状の漏水を伴うと進行は早い 危険な状態( 要危機管理体制) 漏水で常時濡れた状態→いつ抜けてもおかしくない状況 全面・部分打換え、下から構造的に支える工法 第3者被害への対応が必要 損傷の進行状況から床版の部分打換えを計 画。 上り線 片側交互通行 5.補修内容の検討 前回の補修方法では短期間で損傷したこと、残 った床版もひび割れ、漏水など劣化が進行してい た事から、劣化部分は全厚打換えとした。 第3、第4格間 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 打ち換え範囲の現場確認 床版下面調査 ハンマ打音調査 ② 床版一次はつり ③ ハンマ打音確認 ④ 床版全厚取り壊し ⑤ 仕上げ確認 鉄筋 橋面防水 床版取壊し ● ● ● ● ● ● ● 桁下面劣化部 G2 桁 ・既設床版の常時漏水箇所(ひび割れ、遊離石灰) ・上記及び周辺を打音確認(床版上下面) →異音範囲をもとに打ち換え対象とした ①範囲の床版コンクリート上面を厚7~8cm程度除去 ②の後、更に打音確認(床版上下面) →異音範囲は全厚除去し、打ち換え 床版コンクリート全厚取り壊し 取り壊し部分全体を荒仕上げ後、ハンマ打音確認 コンクリート浮き等は更に除去、再確認後に仕上げ 使用材料、施工 コンクリート C 第4格間、中間横桁付近 桁下面劣化部 ① L 赤ハッチ部が打ち換え箇所 超早硬コンクリート を採用 (※終日片側通行規制日を短縮) 発錆部分は錆を落とし、錆止め塗装 断面欠損部分は補強鉄筋を追加 コンクリート打ち換え範囲+1m程度の範囲に設置 コンクリート打設 <施工フロー> 橋面舗装撤去 1日づつ繰り返し (今回 計2回) コンクリート状況確認 損傷部位のコンクリート取壊し 腐食鉄筋の防錆処理 断面欠損鉄筋への補強 型枠・支保工 コンクリート打設・養生 床版防水 橋面舗装 橋面防水工 橋面舗装復旧 上記フローの施工に於いて、5日間の終日 片側交互通行にて完了することができた。 ・コンクリート V=2.6m3 ・橋面防水・舗装面積A=122m2 6.補修後の状況 床版打換え補修後、道路巡視時に定期的に桁下足場からの近接目視点検を実施。 (床版部分打ち換え 1 ヶ月経過後の状況 ) ※H20.12(施工2ヶ月後・足場解体直前の近接確認)では、打換え箇所の新たなひび割れ、漏 水等は見られていない。 また現在 H21.6 時点で舗装面、床版下面(橋下遠望目視)での変化は見られない。 (道路巡視計画に組込み、定期的に目視調査中。) ※鷹匠橋の今回補修部分の挙動を把握する為、打換箇所及びその周辺にてコンクリート動的ひ ずみ計測を実施。その結果、打ち換えた付近のコンクリートには特異なひずみ(応力集中等) は発生していなかった。 7.終わりに 今回の応急補修をもとに、橋梁の維持管理として今後必要な点について述べる。 ○損傷原因の除去・低減による延命化 ①防水層の未設置橋梁に対する計画的な整備 ※月山管内の鋼橋数 27 橋のうち、床版防水層の未設置橋梁は 15 橋であり、設置 率が半数に至っていない状況にある。 (このままでは、床版ひび割れ、鋼材の腐食が発生し、加速的に進行する恐れ有り) →優先順位を整理し、計画的に防水工を設置していくものとする。 ②現状の鷹匠橋 RC 床版の補強等について ・現行基準における床版厚の不足 →現行の道路橋示方書で考えた場合、必要な最小床版厚は 240mm であり、現 在の版厚の 200mm は、40mm 程不足している。 今後、床版修繕を実施する場合は考慮する必要有り ・床版防水層の未設置部からの損傷の進行 →防水層が部分的な対応であり、その脇から損傷進行することが考えられる ため、今後の工事で防水層の全面実施を行う。 ○橋梁の予防保全に向けた維持管理 今後、更に高齢化する月山道路の橋梁群を維持管理していくなかで、定期的に 構造物の状況を点検管理し、補修結果も含め適切に情報を整理・引継ぎする。 また、その情報を基に、日頃から道路巡視等で損傷の状況を把握し、進行が確 認された損傷に対しては、早い段階で原因に対処した適切な補修・予防対策を行 い、構造物の延命化と安全確保に努めることが重要と考える。
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