上田八木短資株式会社

2008.11.4 上田八木短資株式会社 企画部
Ⅰ.金融・経済情勢のポイント
(金融政策)
日銀は、10 月 31 日の金融政策決定会合において、無担保コール翌日物金利の誘導目標を
0.2%引き下げ、0.3%前後とすることを決定した。
同時に日銀は、①補完貸付利率の 0.25%引き下げ(新利率 0.5%)、②補完当座預金制度の
導入=日銀当座預金のうち所要準備額を超える金額について利息を付す措置の導入(11 月積
み期から来年 3 月積み期まで、利率 0.1%)を発表した。
日銀は、日本経済は当面、停滞色の強い状態が続くものと見込まれるとし、先行きについ
ては、景気の下振れリスクが高まっている一方で、物価の上振れリスクは以前に比べ低下し
ているとした。また、世界経済については現在、過去に蓄積された様々な不均衡の調整局面
を迎えており、当分の間、厳しい経済情勢が続く可能性が高く、日本経済の回復に向けた条
件が整うには相応の時間を要するという認識を示した。
これに先立ち、日銀は、G7財務相・中央銀行総裁会議の「アクション・プラン」を受け
て、10 月 14 日に臨時の金融政策決定会合を開き、①国債現先オペ対象国債の拡大、国債補
完供給最低品貸料の引き下げ、②CP 現先オペの積極活用、ABCP の適格要件緩和、③ドル資金
供給オペについて、各国中央銀行同様、「固定金利を提示して、適格担保の範囲内で、供給
総額に制限を設けずにドル資金供給を行う方式」の導入、を柱とする『金融市場の安定確保
のための金融調節面での対応策』を決定・公表した。
(国内経済・景況判断)
国内景気については、8 月の景気動向指数(CI)一致指数(速報値)が 100.7 と前月比 2.8 ポ
イント低下したほか、10 月 20 日発表の政府月例経済報告で、政府は景気の基調判断を前月
より引き下げ、「弱まっている」とした。日銀も同日公表した地域経済報告で、国内全 9 地
域の景気判断を下方修正している。
経済指標では、9 月の鉱工業生産指数(速報)は前月比 1.2%上昇したが、7-9 月期では3
四半期連続で前期比マイナスとなった。9 月の完全失業率は 4.0%と前月比 0.2 ポイント低下
したが、完全失業者数は 271 万人と 6 ヶ月連続で増加した。有効求人倍率は 0.84 倍と前月比
0.02 ポイント低下し、8 ヶ月連続の低下となった。
また、物価については、9 月の企業物価指数(速報値)が前年比 6.8%上昇したが、前月比で
は 0.4%の低下となった。9 月の消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年比 2.3%上昇と日銀の
物価安定の目安「0~2%」を 3 ヶ月連続で上回ったものの、前月比では 0.1 ポイントの低下
となった。
(内外市場動向)
国際金融資本市場においては、米金融安定化法案がようやく可決されたものの、金融機関
に対する信用回復には至らず、各国の景気指標の悪化とともに、「100 年に一度」といわれ
る金融危機、景気後退に対する不安が高まった。これに対して、米欧主要国は FRB、ECB をは
じめとする 6 中銀が 10 月 8 日に 0.5%の協調利下げを行うとともに、
金融機関への資本注入、
銀行間取引の保証、預金保護、異例の流動性供給などの対策を次々に打ち出し、金融システ
ムの安定回復に努めた。
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この結果、LIBOR 金利は 10 月中旬をピークに次第に低下し、金融システム不安は一旦峠を
越したかに見えたが、米欧周辺国での金融危機の発生、ヘッジファンドをはじめとする市場
参加者のリスク資産削減・流動性確保の動き、景気後退への懸念は収まらず、株価の下落、
為替の円高・対円以外でのドル高、中短期国債の金利低下が進んだ。月末にかけて、追加利
下げを示唆する ECB 総裁発言、日銀の利下げ観測報道、さらに FRB の 0.5%追加利下げが実
施されたこともあり、株価、為替の一方的な動きには一旦歯止めがかかった。
国内では、カウンターパーティリスクの回避、流動性確保が優先された結果、コール市場
残高の減少、債券レポレートの高止まり、CP 発行額の減少・発行レートの上昇/銘柄間格差
の拡大が顕著となった。株式市場は、日経平均が月初の 11000 円台から 28 日には一時 7000
円を割り込み、バブル後最安値を更新する下落となったが、月末にかけて急速に値を戻し、
8500 円台で月末を迎えている。債券市場では、10 年国債利回りが月初、一時 1.3%台に低下
したが、中旬には 1.5%台後半まで上昇し、月末にかけて 1.4%台後半へ低下している。
(今後の見通し)
各国当局の各種対策等により、金融システム不安は徐々に鎮静化しつつあるが、リスク資
産の削減、価格下落に伴う損失により市場参加者のリスクテイク能力は確実に低下しており、
年末に向けて円滑な市場環境の回復は望みにくい。
また、今回の金融危機の実体経済への影響は今後本格化することが予想されること、実体
経済の悪化が個別金融機関の健全性、金融システムの安定性に与える影響(負のフィードバッ
ク)には十分注意したい。
Ⅱ.短期金融市場の動向
月初、無担保コールオーバーナイトレートは、邦銀 0.50%近辺、外銀 0.75%近辺での調達
と、レート格差が目立つ状態であったが、月末にかけて、日銀による大量の資金供給オペレ
ーションや外銀の無担保コールオーバーナイトでの調達意欲減退により、レート格差は縮小、
総じて誘導目標水準である 0.50~0.55%程度で取引されることとなった。債券レポ取引はネ
ームによるレート格差が続き、GC 取引で 0.60~0.75%程度と広いレンジで取引された。短期
国債レートは現先・レポレートの高止まりが影響して、3M の FB が 0.7%台で取引される場面
が見られた。CP 市場は、クレジットリスクが意識されレートが高止まり、最上位格の銘柄で
年末を越える 3M が 1%を超えたレートで発行された。なお、29 日以降の日銀利下げ観測報道
で、短期金融市場は利下げを急速に織り込むこととなった。
(今後の見通し)
先行きについては、12 月年末越えが注目点となる。今のところ日銀の年末越えの資金供給
オペは昨年を下回るペースではあるが、今後年末越えの資金供給オペが順調に実施されてく
れば、年末越えの金利は落ち着いたものとなるだろう。
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