2015年「懐疑の中で育つ」日本株 日経平均2万台回復

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株式会社ジャパンエコノミックパルス
Japan Economic Pulse Co., Ltd.
2015 年「懐疑の中で育つ」日本株
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日経平均 2 万台回復、リスクはヘッジ F マネー縮減
「強気相場は絶望で生まれ、懐疑の中で育ち、楽
観とともに成熟し、幸福感とともに死んでいく」-。
伝説の相場師ジョン・テンプルトン卿の相場格言に
沿えば、2015 年の日本株は「懐疑の中で育ち」2 万
1000 円水準への一段高が期待される。だが、短期的
には NY 市場「サンタクロースラリー」が短命に終わ
りギリシャ政局への警戒感や原油安のリスクオフ相
場に、状況次第で 10 月 31 日 1 万 6533 円「窓埋め」
下押し不安が残る。
日本株の予想 PER は 14 倍で強まる先高感
ある米系証券幹部は「日本株の 15 年度の予想 PER
(株価収益率)は 14 倍程度と先々割安感が台頭、早
晩 1 万 8000 円台への回帰が期待され、1 ドル=120
円台の円安が定着すれば製造業の業績押し上げ効果
が本格化、14 年 10-12 月期の企業業績の上ぶれ期待
に今春にも日本株メガトレンドは 2 万円を目指す」
と予想する。
何より、2015 年は消費税延期による財政デフレ払
拭、
「マサチューセッツ・アベニューモデル」が明示
する円安 3 年目からの輸出拡大など円安・原油安・
異次元緩和の「新トリプルメリット相場」への期待
が強い。
日銀が公表している実質実効円レートは 1973 年
の水準まで円安が進んでいる。1973 年の円相場は 1
ドル=300 円水準にあったが、現在の 120 円水準は
実質実効円レートでみると 1973 年当時に匹敵する。
円安による競争力回復に米国経済の本格回復によ
る輸出拡大期待は、消費税再増税延期の内需成長上
振れ期待に、外需成長の上乗せが想定される。さら
に、読売新聞(5 日付)によれば、パナソニックが
海外で生産し日本に逆輸入している洗濯機やエアコ
ンなど家電製品の大半を今春から順次、国内生産に
切り替えるという。
円安進行や海外の人件費上昇で海外生産メリット
が減退し、家電大手の国内回帰が他社に波及すれば
製造業「空洞化」に歯止めがかかる。パナソニック
の国内家電販売は約 5000 億円前後で、うち 4 割を中
国など海外で生産している。中国で作る縦型洗濯機
の生産を静岡県袋井市の工場に戻し、中国から輸入
する家庭用電子レンジも神戸市に、家庭用エアコン
も滋賀県草津市にそれぞれ切り替える。同社の白物
家電の海外生産の大半は国内向けであり、1 ドル=1
円の円安で年間約 11 億円の減益要因となる。
パナソニックは白物家電中心に 1990 年代以降海
外生産シフトを進めたが、国内回帰はそれ以来とな
る。こうした輸出拡大や原油安による輸入額減少に
2015/1/7
よる貿易赤字減少に加え、外国人観光客の増加によ
るサービス輸出拡大が期待される。
何より、3 年目に入る株高アベノミクス相場は下
値が堅い。昨年 10.31「ハロウィン緩和」で日銀が
決めた ETF(上場投資信託)購入額 3 兆円、同時に
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の株式比
率 25%への引き上げ等、株式需給に直接訴える政策
がサポートする。
地方創生による成長底上げなどマクロ政策が日経
平均の一段高をサポート、
「何より安倍政権の経済優
先路線が、経済の写し鏡である株式市場を支えそう
だ」
(ある政界筋)
。
菅義偉官房長官は 5 日の内閣官房の年頭訓示式で
「引き続き経済最優先で全力取り組み、景気回復の
暖かい風を全国津々浦々まで届ける」と改めて経済
重視を強調。その上で、1 月下旬召集の通常国会で
2015 年度予算の早期成立、安全保障法制の整備など
の意向を示し「謙虚で真摯に政策課題に取り組み、
結果を出していく」と語った。
日本取引所グループ斉藤惇 CEO(最高経営責任者)
は大発会で「投資家、とりわけ海外投資家の日本経
済への期待は依然高く、それに応えなければならな
い」と挨拶、麻生太郎副総理・財務相も同席で、
NISA(少額投資非課税制度)拡充に触れ「投資の裾野
が広がることに期待している」と安倍政権の経済優
先路線に自信を示した。
経団連の榊原定征会長はメディアの念頭インタビ
ューで、2015 年を「デフレからの脱却を確実に実現
する年」とアベノミクス収穫年と強調、日経新聞の
主要企業経営者の日経平均予想によれば、20 人中 17
人が年後半に 2 万円の大台に乗せると予想している。
いずれにせよ、政治と経済は「不即不離」であり、
再増税「延期」と解散・総選挙の苦渋の選択は色褪
せたアベノミクスという「ブランド」が再び輝きを
取り戻し、日本経済の再活性化と共に日経平均は早
晩 1 次安倍内閣(07 年 7 月)1 万 8300 円への上昇が
期待される。
10 月 31 日 1 万 6533 円の「窓埋め」リスク
一方、リスク要因としては、1)ギリシャ政局不安、
2)ギリシャのユーロ離脱懸念、3)ECB(欧州中銀)
QE による円高リスク、4)米 12 月 ISM 製造業景況指
数の 6 ヶ月ぶり下振れなど米経済足踏み―が不安視
される。
投資家のポジションは昨年 11 月から 12 月にかけ
て積み上がった買いに傾いたままギリシャ政局不安
など海外材料に反応、利益確定や手仕舞い売りが膨
らみつつある。
短期的には、9 日発表の米 12 月雇用統計、22 日の
ECB 理事会、25 日ギリシャ総選挙-が注視され、と
りわけ米雇用統計が不調となれば投資家心理が悪化、
ファンドマネーのリスク資産圧縮が懸念される。
ECB 理事会では量的緩和の導入が議論されようが、
導入が見送られれば投資家の一部が失望売りに大挙、
ギリシャ総選挙で緊縮財政反対派が第 1 党となれば、
同国財政やユーロ圏への不安増幅が懸念される。
一方、11 月末以降の原油安のリスクオフ相場の背
景の一つに、米金融規制改革ドット・フランク法の
中核をなすボルカールールの今夏 7 月からの本格稼
働がある。
金融機関の自己勘定による商品先物などの取引を
制限する同ルールにより金融機関が商品事業の縮小
を加速、リスクの受け手減少と流動性低下により米
国株調整と原油安が進みやすい。
原油安の背景については、
「今夏のボルカールール
やバーゼル 3 等の金融規制の本格稼働を前に取引金
融機関がレバレッジレシオ改善でヘッジファンドに
ポジション縮減を要請した」という指摘もある。
事実、あるファンド幹部は、
「今夏 7 月からのボル
カールール本格施行を前に、米 FRB が従来の四半期
ベースのバランスシート報告を年明け 1 月から『毎
月』報告へと厳格化、ヘッジファンドは 3 ヶ月トレ
ードを 1 ヶ月トレードに収斂させることで間違いな
く金融資本市場のボラテリティーが高まる」と警戒
する。
「ボルカールール」や「バーゼル 3」など一連の
金融規制強化が、前倒しでヘッジファンド全盛時代
の「終わりの始まり」を告げようとしている。
折しも、米 FRB は昨年末 12 月 9 日に JP モルガン・
チェースやゴールドマン・サックスなど国内大手銀
8 行に自己資本上乗せ義務付け規則を提案した。FRB
によれば、上乗せはリスク資産の 1.0-4.5%程度、
国際的な新銀行自己資本規制「バーゼルⅢ」基準の
約 1.8 倍になる。米銀行監督当局は、破綻した場合
に金融市場に重大な脅威を及ぼす大手銀行が、業務
に必要な資金調達を借り入れよりも自己資本に依存
する割合を高めてほしいと考えている。同時に、大
手銀がリスクの大きい債務に頼る行動を抑えたい意
向だ。
相場の「逆張り」を強みとするヘッジファンドの
リスクマネー減少は、相場の乱高下を生みやすい。
すでに、年金マネーの受け皿となってきた長期ファ
ンドは収益悪化に伴い商品投資を大幅に減らしつつ
あり、欧州最大のヘッジファンド、ブレバン・ハワ
ードは商品ファンドを清算した。
NY 株式市場の年末・年始「サンタクロースラリー」
が短命に終わり、ギリシャ政局への警戒感や原油安
のリスクオフ相場に日経平均は、状況次第で 10 月
31 日 1 万 6533 円の「窓埋め」不安が残る。
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