前期学位授与式学長式辞 - 立命館大学

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2012 年度前期卒業式式辞
立命館大学長
川口清史
立命館大学での学びを終え、広く世界へと巣立っていく卒業生の皆
さん!
ご卒業おめでとうございます!!
2012 年度前期卒業式において、立命館大学を卒業し、学士の称号
を得る 340 名の皆さん、そして大学院前期課程を修了し修士の学位
を得られる 126 名の皆さんに、大学を代表して心よりお祝いを申し
上げます。
学部を卒業される皆さんの多くは外国への留学や、インターンシ
ップ、あるいは学外のさまざまな活動に没頭し、正規の期間を超え
て在学された方たちでしょう。また、昨今の就職困難な状況の中で
卒業を遅らせた方もいらっしゃることでしょう。その意味でも今日
の卒業は格別の喜びだろうとお察しいたします。在学期間を超えて
卒業するということは、近年では多様な学びの中でのひとつの選択
として、むしろ積極的に位置づけられてきています。ある意味で貴
重な経験を得たわけですから、大いに今後役立てていただきたいと
思います。
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また、大学院前期課程を修了された皆さんの中には JICA・JDS
を始め、アジアの国々から選ばれて本学に留学し、見事、修士学位
を取得された方々もいらっしゃいます。慣れない外国で、英語の授
業と日本語による生活という大変困難な学業を成し遂げられたこと
を高く評価し、心よりお喜びを申し上げます。この修士学位の取得
は、皆さんにとって誇りであると同時に、立命館大学にとっても大
きな誇りであります。
また、本日の卒業式には多くのご両親、ご家族の皆様がご列席く
ださっています。ご両親、ご家族の皆様に御子弟の御卒業、心から
お祝い申し上げます。
日本の成人は法律的には 20 才でありますが、
家族の保護から離れ、
精神的にも経済的にも自立するのは、多くの場合、大学の卒業であ
ります。その意味で、本日の卒業式は皆様におかれては成人式でも
ありましょう、そうした意味でのお祝いも申し上げたいと思います。
昨年 3 月 11 日、東日本大震災、大津波、そして福島第一原子力発
電所の事故、という人類史にも記録される大きく、また新しい質を
伴った災害に見舞われました。あれから、一年半が経ちました。
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この間、日本はこの災害のもたらした日本社会への、地球規模の
人類への意味を深め、幾度も問い直しつつ、鎮魂と復旧、復興の取
り組みを進めてきました。
卒業生の皆さんの中にも、被害を受けられた方、ボランティアや
フィールドワークに参加された方、さまざまな形で支援をされた方、
多くの人々がこの復旧、復興の取り組みに参加されたことだろうと
思います。そこで考えたこと、経験したことをしっかり胸に刻んで、
これからの生き方に活かしてほしいと思います。
この震災、原子力発電所事故が問いかけているもののひとつは、
科学技術に裏付けられた経済成長を第一とする社会のあり方、物質
的豊かさを第一とする暮らしのあり方ではないか、と私は考えてい
ます。
私たちは、科学技術の発展に支えられながらも自然と持続的に共
生し、個々人の個性を生かしながらも人々とつながり手を携えてい
く生き方を模索し始めています。いわば、20 世紀型文明の限界が露
呈され、21 世紀型文明の萌芽があちらこちらに見え始めている、と
いえるでしょう。
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卒業して行く皆さんには、ぜひ、仕事を通じて、あるいは研究を
通じて、今、見え始めている 21 世紀型文明を発見し育てて行く取り
組みに参加してほしいと願っています。そこでは、本当に皆さんが
立命館大学で学んだことが試されることになります。
立命館大学は、全国・全世界からあつまった学生が、仲間として
成長しあう大学です。皆さんには、社会のどこにいても、様々な差
異を乗り越えてつながりあい、個々人の力の総和の数十倍もの共同
の力を創り出してほしい。
立命館大学は、社会の急速な変化にひるむことなく、改革と革新
を続けてきた大学です。
皆さんには、自分の考えと判断に自信を持って、どんな小さなこと
にも常に変革の立場から困難を切り開いていってほしい。
私は皆さんが、社会のさまざまなところで、必ず、何事かを成し遂
げてくれると確信しています。それは、皆さんが、
110 年を超えて営々
と歩んできた、強靭なスピリットを持つ立命館の一員だからです。
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今、立命館は 2020 年を目指して新たな学園作りを進めています。
立命館大学は多様な人々が集い、多様な個性を持つ学びのコミュ
ニティーとして成長していきます。
2015 年には大阪茨木市に新しいキャンパスを開設します。衣笠キ
ャンパス、びわこ・くさつキャンパスをあわせ、それぞれの立地の
個性を活かした多様な教学プログラムを展開し、緑とアメニテあふ
れるキャンパスの創造を進めて行く計画です。
立命館大学は新たな飛躍のときを迎えています。卒業して行く皆
さんも、ぜひ、この飛躍する母校をそれぞれの場から応援してくだ
さい。
アメリカやイギリスの大学では学位授与式は commencement と
呼ばれます。commencement の本来の意味は「開始、はじめ」であ
ります。つまり、学士や修士の学位を授与されることは、学士課程
や修士課程の修了ではありますが、それは同時に新しい学びの始ま
りでもあるのです。その新しい学びを始めてこそ、皆さんは学士あ
るいは修士にふさわしい人物足りえるのです。
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大学を卒業するということは大学での学びを基礎に、新たな学び
のたびへと旅立つことです。大学での学びのもっとも大きな成果は、
学び方を学んだこと、学ぶ喜びを学んだことです。
知識基盤社会と呼ばれる現代社会では、獲得した知識や技術は日
に日に劣化し、風化していきます。働くとは学ぶことに他ならない、
というのが現代の大きな特徴です。
学ぶ、といっても学生時代のように特別の時間をとり、特別の体制
をとって、というわけにはいかないでしょう。学生時代とは違う新
しい学びのスタイルを作ることが重要です。もちろん可能な限り本
を読み、話を聞き、さまざまな講座を受講することも大事です。
しかし、もっとも大事なことは、あらゆる取り組み、あらゆる実
践、さまざまな現実から学び取る力をつけることです。日常の暮ら
しそのものが学びの基盤となり、そして必要に応じてときに最新の
知識や技術を系統的に学び、必要な技能をしっかり身につけるとい
う生き方が、知識基盤社会に生きる大学、大学院を修了した力、学
士力、修士力だと思います。
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私たちは今、先の見えない閉塞感の中にあり、多くの困難の中で
希望を見出せない状況すらあります。それは、現代社会がひとつの
時代が確実に終わりつつある一方で、次の時代が十分に姿を現して
いない、という時代の転換の中にあるからに他なりません。震災、
原子力発電所の事故はまさにそれを白日の下にさらしました。日本
の復興、再生への取り組みこそ、この時代の転換を進めるものです
し、そこに参加することが皆さんを次の時代、21 世紀文明の担い手
として大きく成長させることになるでしょう。
「未来を信じ、未来に生きる」、
”Creating a Future, Beyond Borders!”
卒業生の皆さん!
よりよい未来を生み出す人として世界に羽ばたいてください!
卒業おめでとう!
新しい時代を担う、新たな学びへの旅立ち、おめでとう!
以上をもって 2012 年度前期卒業式への学長式辞といたします。