平成 28 年度島根大学入学式学長式辞春たけなわのこの良き日に、島根県副知事・藤原孝行様を始め、各学部同窓会、後援会の役員の方々など、多くの来賓の皆さま、そして、ご家族や関係者の御臨席を賜りまして平成 28 年度の入学式を執り行い、学部 1,234 名、大学院 273 名の新入学生を迎えることができました。入学された皆さま、そして、ご家族の皆さま、島根大学へのご入学おめでとうございます。本学教職員ならびに在学生とともに、皆さまのご入学を心からお祝いいたします。島根大学は長い歴史を重ね、今日では、松江市と出雲市に、計 5 学部 6 研究科を置き、学生総数 6，000 名を超える総合大学です。来年度には新たに心理学、社会福祉学、健康科学に関する教育・研究を目的とした人間科学部を設置する予定で準備を進めています。島根大学は、文科系、理科系、医学系にわたるほとんどすべての学問領域に関する教育・研究を行っており、様々な分野を研究している教員とそれを学ぶ学生が在籍しています。さらに、海外からの留学生も多く在籍しています。我々が生活している社会においては、多様な価値観が存在しています。皆さん、これからの学生生活において、他学部、他学科の学生や留学生等、自らと異なる分野を学んでいる学生、様々な文化的背景を持つ友人や先生方と知り合い、多くを語り合い、多様な考えを知り、確かな思考力や柔軟な感性と発想力を養ってください。また、文科系学部に入学されました皆さんには、理科系の授業科目を、そして、理科系学部にご入学されました皆さんには、文科系の授業科目を積極的、そして、主体的に学び、幅広い視野と教養を身に付けて頂きたいと思います。現代社会が抱える多くの問題は複雑化してきており、単一の学問領域のみでは解決できない事象が増えています。理系マインドを兼ね備えた文系人材、文系マインドを兼ね備えた理系人材に諸問題解決への期待が寄せられています。島根大学は、皆さんのご希望に沿えるように、高度な専門科目はもちろん、共通教養科目、各種の学部横断的な教育プログラムや課外活動等を充実させ、皆さんの学びを支えていきます。皆さんには、幅広い教養と視野を持ち、高度な専門知識と技能、確かな実践力、そして、柔軟な発想力を持って、価値の多様化が進む現代社会において、地域や世界各地で活躍できる能力を身に付けていただきますよう願っています。皆さんは、将来のキャリア形成、また、ご自身の知的好奇心に基づく学びの場として本学を選ばれ、入学されてきました。皆さんが目指すそれぞれの目標に向かって、初心を忘れず、勉学に励んで下さい。大学は学びの場です。「学び」の意味を辞書で調べますと、「まねてする」「ならって行う」「教えを受ける」、そして、「物事を知り、また、それに習熟するために修め究める」との意味があります。これまで、皆さんはご成長されるに伴って様々な学びをされてきました。幼少期には、大人の「まね」をすることにより学び、小学校、中学校、高等学校では、先生から「ならい」「教えを受けて」学んでこられました。さて、大学における「学び」は、授業等で先生方から教えを受ける受身の学びだけではなく、「物事を知り、また、それに習熟するために修め究める」ために、自ら主体的に学ぶことが基本となります。そして、そのためには、これまで以上に授業時間以外において多くの時間をかけ、学習することが求められます。課題の答えはいつもすぐ見つかるわけではありませんし、答えが常にあるとも限りません。また、答えが複数ある場合もあります。安易に解決法を人に請うのではなく、自ら試行錯誤し、悩み、迷いながら考えること、そのこと自体が学びの本質であると思います。入学式を迎えられて、新しい友人との出会いやサークル活動など、大学での生活に対してそれぞれ想いを馳せていることと思います。是非、学生生活を楽しんで頂きたいと思います。しかし、大学は最高学府としての学びの場であることを自覚して下さい。これから、本学において学ぶ皆さんには、学問研究に携わる者として、勉学には真摯にそして正直に取り組まなければなりません。安易な方法に逃げることなく、愚直なまでの謙虚な態度で学問に向き合うことが大切です。学ぶ心構えと覚悟をしっかり持ち、これから始まる学生生活に臨まれることを願っています。さて、皆さんもご存じのように昨年 6 月に公職選挙法等の一部を改正する法律が成立し、今年の 6 月に施行されることになりました。この改正によりまして、今年の参議院選挙には 18 歳以上の方にも選挙権が与えられることになる見込みです。本日ご入学された皆さん全員が投票を行うことにより、直接、政治に関わることになります。選挙における投票は大きな権利の行使であると同時に、重い責任を伴う行為であることを自覚してください。これから、皆さんには、成人としての責任ある行動が強く求められます。確固たる自己を確立し、自らを律する強い精神力を養い、高い倫理観をもって、自らが信ずる正しい行動をすることをしっかり意識して頂きたいと思います。現代社会の特色の一つとして、グローバル化の急速な進展があります。他国の政治、経済の動向が、直ちに私たちの生活に影響を与える時代となりました。このような時代に活躍が期待されます皆さんには、国際感覚、グローバルな感性が強く求められます。島根大学では、コミュニケーション能力の向上を主眼に置いた外国語の授業科目や副専攻プログラムを置くなど、外国語によるコミュニケーション力向上のための教育を強化しています。また、今後、各学部の専門領域における外国人教員を増員するほか、英語による専門授業科目を増加させることにより、学内のグローバル教育の環境を強化していきます。皆さんには、このような学内の取組を積極的に活用して頂き、国際的なコミュニケーション能力を高め、それぞれの専門性を活かした海外留学・研修を経験して下さい。そして、他国の文化や価値観を肌で感じ、実態として理解して、高い専門性に基づき、国際社会で活躍できる国際感覚、グローバルな感性を身に付けて頂く事を願っています。大学の使命として、これまでに培われた文化、技術など普遍的な学問の継承とともに、未知なる対象の解明と新しい知見、技術の創造があります。それとともに、島根大学は島根の地域における文化、知と医療の拠点としての貢献が期待されています。国内各地で地域の創生が大きな課題となっています。島根県は、海士町、飯南町や邑南町等が先進的な取り組みをされる等、地方創生における先進県です。島根大学としましても、県内自治体・産業界等と共同して地域の創生、活性化に資するべく教育・研究の両面において全学的に取組を推進しているところです。皆さんには、卒業後は広く世界に通用する能力をもって島根県を始め、国内各地で地域活性化のリーダーとして活躍して頂きたいと願っています。島根県は、豊かな自然とともに歴史的文化遺産も多数あり、自然や歴史・文化を身近に感じることができる地域です。皆さんは、島根大学における整備された教育・研究環境と、豊かな自然に囲まれ落ち着いた環境の中で、勉学や正課外活動等充実した学生生活を送れるものと確信しています。豊かな自然と歴史、文化の薫るこの島根の地に学びの場を求めた皆さんの前途洋洋たる未来を祈念しまして、入学に際しての式辞といたします。平成 28 年 4 月 5 日島根大学長服部泰直