観察・判断力 - 新潟大学医学部

第 6 回医療の質・安全学会学術集会
演題名
新人看護師の‘観察・判断力’を育てる教育プログラムの開発(2)
−視線運動測定結果からの気づきの分析−
共著者
○定方美恵子1)、中澤紀代子2)、西方真弓1)、西原亜矢子 1)、井越寿美子3)、笠井美香子3)、佐藤富
貴子3)、牧岡諒太4)、坂本 信1)、広川佐代子3)
1)
新潟大学医学部保健学科、2)新潟大学大学院保健学研究科前期課程、3)新潟大学医歯学総合病院
看護部、4)新潟大学自然科学系
【目的】看護師が臨床で観察を行い判断するプロセスで何に注意を払い観察を行っているのかを視
線運動測定により可視化し、自分自身で客観視することや振り返る機会を作ることで、観察・判断
力を育てる教育プログラムにつながり、事故防止対策にも役立つのではないかと考えた。本事業は
視線運動データを基に段階的に進める教育プログラムの開発を目指すものであり、本研究では視線
運動測定結果をもとに実施した入職後 6 か月後の教育的支援から、新人看護師にどのような気づき
が得られているかを考察した。
【方法】対象は A 病院に入職した新人看護師 18 名である。入職後 3 ヵ月後・6 か月後にモニター
に映した模擬病室画像を観察し、その際に注目する箇所を視線運動解析システム(Talk eye Ⅱ、竹
井機器社製)により視線運動計測を行い、
「注視時間」
「視線の軌跡」の結果を画像上で提示できる
資料を作成した。6 か月後実施の教育的支援では、
「3 か月後と 6 か月後の視線運動データ(視線の
軌跡と注視場所)
」と「ベテラン看護師の視線運動データ」を資料として提示しながら、自らの観察
や判断力の傾向に気づけるように、D.ショーンのリフレクションの考え方を活用した共同注視的関
わりによる教育的支援を実施した。視線運動の測定は関わりの経過を録音後に逐語録を作成し、新
人看護師と教育的者双方の会話を意味のある文脈ごとにまとめ、双方からコード化した。これらの
分析過程は質的研究経験がある共同研究者で進め妥当性を確保した。本研究は新潟大学医学部倫理
委員会の承諾を得て実施した。
【結果】前回との視線の違いを自覚し、変化を具体的に捉える、<視線の変化を客観的に評価する
>気づきがなされていた。臨床での経験を重ねた自分自身の変化を<日常業務と関連づけて変化の
理由を分析する>気づきや、<日常業務を関連づけて成長を確認する><変化を語ることで意味づ
ける>という自分の成長を認知する気づきを得ていた。日常業務での指摘を再起した<注意すべき
ことを再確認する>気づきの一方で、注射箋を見る意識や見る意味を捉えていなかったことなど、
<できていなかった自分を語る>気づきへの振り返りがなされていた。
【考察】
「注視時間」
「視線の軌跡」の画像提示をしながら視線の可視化と看護場面での観察を行う
自分を振り返る関わりの結果、客観化や分析、肯定や不足への気づきの表出の機会となると考えら
れた。
【謝辞】本事業は文部科学省「看護職キャリアシステム構築プラン」採択事業(‘気づく’を育て伸ば
す臨床キャリア開発)の一部である。