砂丘クロマツ林内への樹下植栽に供した広葉樹 22 樹種の適性評価

【注意】発行当時の原稿をそのまま掲載しています。農薬についての記載のある場合は、最新の農薬登録内容を確認し、それに基
づいて農薬を使用してください。また、成果情報によっては、その後変更・廃止されたものがありますのでご注意願います。
[成果情報名] 砂丘クロマツ林内への樹下植栽に供した広葉樹 22 樹種の適性評価
[要
約]海砂丘クロマツ林内に常緑広葉樹 5 種、落葉広葉樹 17 種を植栽し、14 成長期経過後
の成長調査を行った。生存率が 50%を超えた樹種が 12 種あったが、ほとんどの個体の樹高はクロ
マツの枝下高に達しておらず、クロマツの樹冠下に生育していた。これらの樹種について樹下植栽
に対する評価を行った。
[部
署]山形県森林研究研修センタ-・森林環境部
[連 絡 先]TEL 0237-84-4301
[成 果 区 分]政
[キーワード]海岸林、広葉樹、クロマツ、砂丘、樹下植栽
-----------------------------------------------------------------------------------------[背景・ねらい]
海岸に造成されてきたクロマツ林は防風、飛砂の防備だけでなく景観上にも重要な役割を果たし
ているが、林分構造が極めて単純で、松くい虫をはじめとする諸被害によって容易に崩壊する危険
性を孕んでいる。そのため今までの施業を見直し、広葉樹等を導入した多様な海岸林造成が検討さ
れているが、その一つとしてクロマツ林内への樹下植栽による混交林化が考えられる。砂丘クロマ
ツ樹下においては、潮風と乾燥の影響は緩和されるが、低い光環境と貧栄養に対しての耐性が必要
とされる。そこで、試験植栽した 22 樹種の広葉樹の中からクロマツ林の樹下植栽に適した樹種を明
らかにする。
[成果の内容・特徴]
・ 植栽試験地は酒田市浜中の県有地内に設定し、汀線から 100mと 200mの地点に 25m×25mの試
験地を各 3 プロット設定した。1 プロットあたりクロマツ及び 22 種類の広葉樹苗木を 5 本ずつ単
木混交に配置して植栽した。植栽時のクロマツは樹齢 48 年、100m地点の本数は、1205±130 本
/ha、樹高 11.8±2.1m、枝下高 8.0±1.0mで、相対照度は 25.1%であり、200m地点は 661±72
本/ha、樹高 15.0±2.7m、枝下高 10.3±1.5mで相対照度は 30.5%であった。
・ 植栽後、試験地内に松枯れが発生し、その伐倒駆除のために一部の植栽木が林内作業車の踏圧に
よる根元折れや支障木として伐採されたため損失した。これらの人為的な要因によって損失した
個体を除外した生存率を図1に示した。その他の被害としては、ウサギの食害がカシワとシナノ
キに多く、コウモリガなどによる虫害がオオヤマザクラ、エゾエノキ、タブノキに発生した。
・ 100m 地点の生存率は 44.6%、200m 地点では 52.9%で、ほとんどの樹種が 200m 地点の方が生存率
が良かった。樹下植栽したクロマツは、植栽 6 年目にすべて枯死した。
・ 14 年成長後に生存していた個体の樹高を、2m未満、クロマツの枝下高の 1/2 未満、クロマツの枝
下高未満と以上に分類し、図 2 に本数を示した。クロマツの枝下高まで成長したのは、アカメガ
シワ以外は数本に過ぎず、全体の 95.5%がクロマツの枝下高に達していなかった。
1. 植栽された広葉樹は、14 年経過してもクロマツと光を競合する状態にはなく、林分の下層空間
をうめる役割を果たしているが、今のところ防風機能等でクロマツの代替となるような成長は見込
まれない。
2.砂丘クロマツ林の樹下植栽に適した樹種を、生存率と樹高から分類して評価した(表 1)。
[成果の活用面・留意点]
・ 海岸林前線部から 100m以上内陸側のクロマツ林における樹下植栽の結果である
・ 植栽木の生存率は、相対照度が低いと大きく低下する可能性が高いため、目標林型に応じて受光
伐を実施し、樹種を選定すること
・ 必要に応じて刈り払いを行い、病虫獣害対策を講じること
【注意】発行当時の原稿をそのまま掲載しています。農薬についての記載のある場合は、最新の農薬登録内容を確認し、それに基
づいて農薬を使用してください。また、成果情報によっては、その後変更・廃止されたものがありますのでご注意願います。
[具体的なデータ]
ミズナラ
ミズナラ
コナラ
コナラ
ケヤキ
ケヤキ
ハルニレ
ハルニレ
イタヤカエデ
イタヤカエデ
ハリギリ
ハリギリ
クリ
クリ
エゾエノキ
エゾエノキ
エノキ
エノキ
シナノキ
シナノキ
※ カスミザクラ
※ カスミザクラ
カシワ
14年目
オオヤマザクラ
10年目
アカメガシワ
5年目
エゴノキ
<2m
<クロマツ枝下高/2
<クロマツ枝下高
クロマツ枝下高≦
カシワ
オオヤマザクラ
アカメガシワ
エゴノキ
ネムノキ
ネムノキ
ヤマグワ
ヤマグワ
クロマツ
クロマツ
タブノキ
タブノキ
シロダモ
シロダモ
ヤブツバキ
ヤブツバキ
モチノキ
モチノキ
トベラ
トベラ
0%
図1
20%
40%
60%
生存率
80%
生存率
図2
※カスミザクラは 14 成長期経過していない
表1
0
100%
5
10
15
本数
20
25
30
14 成長期経過後の樹高分布
※カスミザクラのみ 12 成長期経過後の樹高
砂丘クロマツ林の樹下植栽に適した樹種
区 分
樹 種
基 準
生存率が高く亜高木層を
形成するもの
タブノキ、ネムノキ、エゴノ
キ、アカメガシワ、ケヤキ
生存率≧50%
生存率が高く、中~低木
層を形成するもの
ヤブツバキ、シナノキ、エノ
キ、イタヤカエデ、ハルニ
レ、コナラ、ミズナラ
生存率≧50%
生存率が中ぐらいのもの
モチノキ、シロダモ、カシ
ワ、カスミザクラ、エゾエノ
キ、クリ、ハリギリ
樹下植栽に適さないもの
トベラ、ヤマグワ、オオヤ
マザクラ
備 考
上木クロマツ枝下高の1/2を超える
本数≧50%
上木クロマツ枝下高の1/2を超える
本数<50%
20%≦生存率<50%
植栽密度の検
討が必要
20%>生存率
[その他]
研究課題名:震災後の海岸林再生に向けた広葉樹の津波に対する耐性の評価と海岸林造成方法の提案
予算区分:外部資金共同(三井物産環境基金)
研究期間:平成 24 年度(平成 23~25 年度)
研究担当者:渡部公一・齊藤正一・上野満・須藤泰典・髙内將文
発表論文等: