有機化学 II

(有機化学Ⅱ・2枚中の1枚目)
[有機化学Ⅱ(専門)
](全2題)
[問題1]
ピロリジジンアルカロイドの一種であるレトロネシン (retronecine) のラセミ体の合成スキー
ムを以下に示した(簡略のため、エナンチオマーについてはその一方しか記していない)
。これ
について以下の設問に答えよ。
COOEt
COOEt
NH
COOEt
ClCOOEt
K 2CO3
COOEt
NCOOEt
1) NaOEt
2) 10% H2 SO4
B
A
HO
OCH2Ph
OCH2Ph
O
C
p-CH3 C6H4SO 3H
H
NCOOEt
(+ opposite enantiomer)
D
1) NaBH4
2) NaH, PhCH2Br
E
C25H31NO4
PhCH2O
1) KOH, 2) HCl
3) PhSCl, 4) K2CO3
H
N
OCH2Ph
SPh
F
HO
1) HCl, 2) m-CPBA
3) 加熱, 4) KOH
G
Li/NH3
H
OH
N
レトロネシン
m-CPBA = m -クロロ過安息香酸
問 A B, E, G にあてはまる構造を示せ。ただし、ここに示した合成例ではラセミ体のレトロネ
シンが得られるが、E, G については、上記のスキーム中、D に示した立体異性体から得
られる構造をその立体構造を含めて記すこと。
問 B A における窒素上の置換基 –COOEt の役割について簡潔に説明せよ。また、上記のスキ
ーム中、これと同様の目的で導入されている置換基を示せ。
問 C B から D への変換は[3,3]シグマトロピー転位を経て進行する。その中間体 C の構造を記
すとともに、C から D に至る反応機構を電子の矢印を用いて示せ。
問 D F を G に変換する際に最初に HCl で処理をしているが、この HCl の役割について簡潔に
説明せよ。
問 E レトロネシンには2つの不斉炭素がある。上記のスキーム中に示したエナンチオマーにお
けるそれぞれの不斉炭素の絶対配置を R/S 標記によって示せ。
(有機化学 II・2枚中の2枚目)
[問題2]
問A
以下の設問に答えよ。
a) 水中におけるメチルアミン類のプロトンに対する塩基性の強さは以下の順である。
(CH3)2NH
>
CH3NH2
>
(CH3)3N
また、気相中においてはプロトンに対する塩基性の強さは以下のような順番になる。
(CH3)3N
>
(CH3)2NH
>
CH3NH2
何故このような順番になるのか、水中と気相中での違いが判るように説明せよ。
b) メチルアミンとアセトアルデヒドとの反応によりアセトアルデヒドメチルイミンが生
成する。この反応は Brønsted 酸によって触媒されるが、酸性が強すぎても、弱すぎて
も反応速度は減少する。その理由を示せ。
CH3NH2
問B
+
CH3CHO
→
CH3CH=NCH3
1,3-ブタジエンと HCl との反応において、主生成物として 1、副生成物として 2 が得ら
れた。
H 2C C C CH2
H H
+ HCl
Cl
CH3 C C CH2
H H
1: 80%
0 °C
CH3 CO2H
+ CH3 C C CH2 Cl
H H
2: 20%
a) この反応の反応機構を示し、1 が主生成物として得られる理由を説明せよ。
b) 1,3-ブタジエンと HCl との反応において、2 を主生成物として得るためにはどのような
条件下で反応を行えばよいか。また、その場合 2 が主生成物となる理由についても説
明せよ。
問C
2-ヨードペンタンを出発物質として 1-ペンテンを主生成物として合成したい。合成法を
ふたつ記せ。
問D
2-クロロシクロヘキサノンの1位と2位の炭素を 14C でラベルした化合物 3 とナトリウ
ムイソペンチルオキシドとを反応させたところ、シクロペンタンカルボン酸イソペン
チルのカルボニル基と 1 位の炭素が 14C でラベルされた化合物 4a とカルボニル基と 2
位の炭素が 14C でラベルされた化合物 4b がほぼ 1:1 の比率で得られた。
O
* * Cl
NaOR
*CO2R
*
*CO2R
+
*
ROH
3
4a
4b
a) この反応の反応機構を電子の矢印を用いて示せ。
b) 以下の反応における主生成物の構造を記せ。
O
Ph
Ph
NaOCH2CH 3
CH3
Cl
CH3 CH2OH
R = -CH2CH2CH(CH 3)2