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平成25年度厚生労働科学研究費補助金
新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業
[若手24-26]
抗HTLV-1ヒト免疫グロブリンによる
HTLV-1の革新的感染予防モデルの開発
とその有効性の検討
水上 拓郎
国立感染症研究所
血液・安全性研究部 第4室 室長
成人T細胞白血病(ATL)
定義
臨床疫学的特徴
ATL細胞
HTLV-1感染Tリンパ球が腫瘍化し、クローン性に増殖
した事によって発症する疾患
• 疫学:西南日本に多い
• 発症:家族内発症
平均発症年齢60歳
• 感染:母乳感染・性感染・輸血
• 予後は極めて不良
リンパ節腫大
感染症
皮膚の発疹
骨融解
胃への浸潤
脳への浸潤
HTLV-1総合対策 [2011年度]
発症予防
治療
キャリア全員がATLにはならない(5%前後が発症)なので、ATL発症
高危険群を同定し、発症介入を行う (HTLV-1総合対策2011)
ATL治療法の開発(IFN/AZT治療等), 同種造血幹細胞治療
新規治療法(CCR4抗体),ワクチン
感染防止
輸血感染
性感染
献血者スクリーニング(抗体検査)の導入により完全阻止
水平感染の可能性が高いが、詳細は不明 (避妊具)
母子感染の防止
母乳から人工乳へ
全国一律妊婦抗体検査 (2010年11月より)
感染率は20%
しかし断乳しても3%感染する!
新しい革新的感染予防法の開発が必要!
抗HTLV-1ヒト免疫グロブリン
によるHTLV-1感染予防法の開発-1 (H24年度)
抗体陽性血漿より抗HTLV-1ヒト免疫グロブリンの製造
高力価HTLV-IG
HTLV-IG
佐竹正博先生(西東京日本赤十字血液センター)
田所憲治先生(日本赤十字中央血液研究所)
*ロット差があるので幾つかのロットを作成
高力価HTLV-IGを用いたIn vitro系を用いた感染防止実験
FACS解析
核酸増幅試験
60日
+
ATL細胞株
HTLVキャリア
ATL細胞
+
ー
培養細胞
やhPBMC
HTLV
IG
高力価IG
通常IG
5%,10%,20%
Western
Blotting
培養細胞を用いたin vitro 感染モデルの作成
Mitomycin C処理
(50ug/ml)
37℃1hrs
ATL細胞株
培養細胞
HUT102, MT2
SLB-1, TL-OM1
Jurkat
Molt4
核酸増幅試験
感染抑制の抗体濃度依存性 (for 10days )
各種パラメーター
との相関関係
3.5
3
2
PVL%
PVL% (+)
6.0
PVL% (−)
5.0
1.5
PVL% in test sample
PVL%
2.5
1
0.5
0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
3.5
0.0
抗体陽性献血検体のin vitro感染抑制効果の検討
2.0
PVL% in Jurkat
pep180
3.0
1.4
1.5
1.0
0.5
0.0
pep180 ELISA
PVL%
2.5
2.0
4.0
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
0.00
2.00
PVL% in Jurkat
4.00
抗体によるSyncytiumの抑制
SLB-1
Jurkat
Jurkat/SLB1/NC
Jurkat /SLB1
Jurkat/SLB1/抗体陽性検体
(T65:1%)
シンシチウム形成抑制効果における抗体濃度依存性(T23)
PVL% in Jurkat
4.0
50
46.7
41.3
39.7
40
30.7
30
24.7
20
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
10
0
correlation coefficient: 0.77
3.5
PVL% in Jurkat
シンシチウム個数/ 3視野
60
3.7
control
0.10%
0.30%
0.5
3.7
0.3
0.0
0.50%
1.00%
0.0
LAT-27
NC1
NC2
0.0
NC3
60.00
8.0
pep 180 ELISA
9.0
20.00
0.00
correlation coefficient: -0.27
7.0
6.0
5.0
4.0
3.0
10.00
Jurkat/S…
NC1
NC2
NC3
T22
T54
T49
T91
T26
T13
T15
T21
T79
T86
T83
T84
T31
T52
T74
T73
T51
T90
T87
T23
T57
T99
T20
T53
T47
T33
T65
T46
T35
T50
LAT-27…
Number of syncytia /well
10.0
70.00
30.00
60.0
pep180
抗体陽性献血検体のシンシチウム形成抑制効果
40.00
40.0
syncytium formation
スクリーニング条件としては抗体濃度が0.3%が最適であると考えられた
50.00
20.0
2.0
1.0
0.0
0.0
20.0
40.0
snycytium formation
60.0
(P
V
(P
V
TR
L
L>
4)
L<
4)
C
0
T
The number of Syncytium/ well
1
N
(P
VL
>4
)
2
Se
ru
m
L
(P
VL
<4
)
TR
****P<0.0001
****P=0.006
Se
ru
m
Se
ru
m
Se
ru
m
T
3
C
N
PVL
PVL
Syncytium
****P<0.0001
****P<0.0001
60
****P<0.0001
40
20
0
小括
1. HTLV-1感染細胞株を用いてHTLV-1感染系を構築した。
2. 日赤献血由来、HTLV-1抗体陽性血清でスクリーニングを行った。抗体陽性献
血者のPVL%が高く、env, gagの力価が高い抗体が感染抑制効果が高かった。中
にはPVL%が低いが感染抑制が認められる検体もあった。Pep180力価との相関
は認められなかった。
3. シンシチウム形成を抑制する系を立ち上げた。30種類のHTLV-1陽性血漿を用
いてスクリーニングを行った結果、PVL%が高く、env,gagの力価が高い抗体が
シンシチウム形成抑制効果が高かった。中には、献血者のPVL%が低くても、
シンシチウム形成抑制能が強い検体が認めらた。Pep180力価との相関は認め
られなかった。
4. 高力価グロブリン製剤作製の候補検体は、無症候性キャリアのうち、PVL%が
高い検体を候補とするのがよい。
5. その他に注目する群が存在した。
10
Large Scale生産の可能な保管血漿
Large Scale生産の可能な保管血漿
PVL% in donors
PVL% in donors
2.0
0.0
2.0
0.0
200.0
0.0
100.0
200.0
Inhibitioin % of syncytium
formation
Env gp46 ELISA
1.5
1.5
gp46 ELISA
Jurkat/MT2 感染抑制%
シンシチウム抑制% vs
2.0
vs Env gp46
1.0
0.5
1.0
0.5
0.0
0.0
0.0
0.0
100.0
200.0
PVL inhibition% in Jurkat /MT2
100.0
1.5
vs pep180 ELISA
1.0
0.5
0.0
0.0
100.0
200.0
pep 180 ELISA6 ELISA
LAT-27
NS control
F13
F34
F18
F10
F3
F25
F38
F28
F40
F26
F9
F24
F19
F7
F11
F14
F33
F6
F21
F41
F5
F27
F20
F12
F32
F37
F35
F2
F36
F39
F4
F29
F15
F8
F22
Jurkat/SLB1 シンシチウム形成抑制%
pep 180 ELISA
1.5
1.0
0.5
0.0
0.0
Jurkat/MT2 感染抑制%
1.5
40.0
gag ELISA
1.0
20.0
0.5
LA…
NS…
F13
F34
F18
F10
F3
F25
F38
F28
F40
F26
F9
F24
F19
F7
F11
F14
F33
F6
F21
F41
F5
F27
F20
F12
F32
F37
F35
F2
F36
F39
F4
F29
F15
F8
F22
PVLが高いものが有効性が高い結果が再現
100.0
200.0
Inhibitioin % of syncytium
formation
PVL inhibition% in Jurkat /MT2
60.0
pep180 ELISA
(0.5)
(0.5)
80.0
100.0
200.0
Inhibitioin % of syncytium
formation
シンシチウム抑制% vs
Jurkat/MT2 感染抑制%
20.0
0.0
4.0
Jurkat/MT2 感染抑制%
2.0
40.0
120.0
6.0
PVL inhibition% in Jurkat /MT2
60.0
(20.0)
100.0
donor PVL%
8.0
0.0
80.0
0.0
inihibition %
4.0
pep 180 ELISA
PVL inihibition %
100.0
6.0
0.0
0.0
10.0
20.0
(0.5)
PVL inhibition% in Jurkat /MT2
cells
シンシチウム抑制% vs
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
gag ELISA6 ELISA
120.0
献血者血液のPVL%
シンシチウム抑制% vs
10.0
donor PVL%
8.0
F13
F34
F18
F10
F3
F25
F38
F28
F40
F26
F9
F24
F19
F7
F11
F14
F33
F6
F21
F41
F5
F27
F20
F12
F32
F37
F35
F2
F36
F39
F4
F29
F15
F8
F22
9.0
8.0
7.0
6.0
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
gp46 ELISA
PVL%
Jurkat/MT2 感染抑制vs
10.0
gag ELISA
0.0
100.0
200.0
Inhibitioin % of syncytium
formation
血漿からのグロブリンの精製
Slllグロブリン分画
血漿
3
25
0
0
20
40
min
60
2
1
1
0
0
カラム:G3000SWXL 2本
流速: 0.5ml/min
Buffer: 0.05% NaN3, 0.1M NaSO4,
1/7.5M Phosphate buffer (pH7.0)
mAU
25
2
mAU
50
mAU
50
3
20
40
60
min
実験レベルとしては良質の免疫グロブリンの製造に成功した
抗HTLV-1ヒト免疫グロブリン
によるHTLV-1感染予防法の開発-2 (H25年度)
ヒト化マウスを用いた高力価HTLV-IGの有効性の検討
HTLV-1感染モデル
FACS解析
ATL細胞株/ATL細胞
HTLV1キャリア細胞
ヒトCD34+細胞
ヒト化マウス
ATL発症
核酸増幅試験
ヒトT細胞分化
NOD/SCID/JAK3
HTLV-1感染予防モデルの開発
ヒトCD34+細胞
ATL細胞株/ATL細胞
HTLV1キャリア細胞
????
Western
Blotting
ヒト化マウス
NOD/SCID/JAK3
ヒトT細胞分化
HTLV
IG
HTLV-IG
接種容量・接種法
ヒトCD45細胞
HTLV-1感染モデル
2
101
1.55
2.65
101
102
hCD45
ヒト化マウス
10
4
102
CD3
CD4
1 month
2
103
42.1
100
104
100
0.156
101
102
CD3
103
104
0.0354
2
99.9
10
0.0236
101
4
102
CD3
0.325
104
2.6
2.92%
103
10
103
2
101
95.6
1.62
101
102
CD3
103
9.97
100
10
32.7%
1.12
101
4
102
CD3
10
103
104
0.857
8.3%
60.8
100
6.77
101
102
CD3
103
104
2
100
4
4.48
26.7
33.8%
103
101
101
10
7.36
103
CD8
2
95.9
100
104
22.5
103
CD4
2
0.058%
100
CD8
CD4
2 month
102
hCD45
0.0118
100
2.1
4
100
10
4
104
2.60%
100
3 month
103
0.675
100
ATL発症
10
0.0472
101
101
10
51.8
101
103
CD8a
99.5
103
10
0
101
100
ATL細胞株/ATL細胞
HTLV1キャリア細胞
10
0.12%
2
10
21.2
100
0.0118
57.8
101
100
104
101
10
2
ヒトT細胞
0.484
103
10
103
4
100
ヒト血液細胞分化
10
4
103
101
100
NOGマウス、NSGマウス、NSJマウス
10
0.969
CD19
mCD45
mCD45
10
26
103
100
Intra-Hepatic Transplantation
Intra-Bone Marrow Transplantation
Intravenous Transplantation
10
0.0552
103
1 month
ヒト臍帯血由来CD34+細胞
95.8
ヒトB細胞
4
CD3
10
4
10
2
101
69.9
100
21.9
101
102
CD3
103
104
100
63
100
5.8
101
102
CD45
103
104
MT-2移植ヒト化NOGマウス
12 weeks after MT-2 inoculation
Control
MT-2
Liv
Liv
Spl
Spl
Spleen
Liver
1.8
1.6
0.6
1.4
0.5
1.2
Weight (g)
Weight (g)
P<0.03
0.7
0.4
0.3
1
0.8
0.6
0.2
0.4
0.1
0.2
0
0
Control MT-2
(n=3) (n=4)
Control MT-2
(n=3) (n=4)
12 weeks after MT-2 inoculation
抗HTLV-1免疫グロブリンの投与実験
Human CB
CD34+
1x105 TP (i.v)
MT-2 (Mytomycin+)
FACS解析
Q-PCR
HTLV-1+PBMC
FACS解析
Q-PCR
HTLV-1 IgG or 抗gp46(LAT-27:1mg i.p)
•
•
•
•
•
•
IgG精製度
IgG濃度
接種ルート
接種回数
接種時期
接種間隔
Lat-27の場合、24hrs, -5hrsの2回接
種で抑制可能。1日
後では効果なし。
HAM血清IgGは1日後
でも抑制効果あり。
HTLV-1 IgG or 抗gp46(LAT-27:1mg i.p)
Human CB
CD34+
1x105 TP (i.v)
検討項目
1 lotにつき:
1mg/i.p とする
と、2回投与で
2mg, N=6 (N=3
X2 exp)で12mg
必要。
本研究の意義と期待される成果・厚生行政への貢献
新規感染予防法
ヒト臨床へのTRS
HTLV1感染について、HTLV-IGの感染阻止に関する有効性を示す
ヒト化マウスを用いる事で、ヒト細胞の実際の生体内での感染
予防を確認でき、ヒトへの外挿が可能となる
新薬開発/国際貢献 HTLV-1抗体陽性血漿は日本でしか入手できないため、高品質の
HTLV-IGは日本発で開発・製造可能。世界的には数千万人のキャ
リアがおり、世界的な規模での利用が期待されている。
厚生行政
HTLVワクチン(H23年度 厚生労働科学研究費 長谷川秀樹主任
研究者)が成功すれば、HTLV-IG+Vaccineとの組み合わせでHBV
の母子感染予防のような感染予防策が実施可能となり、新規感染
は抑制可能となる。
献血の有効利用
研究班
代表 水上
分担 浜口
大隈
山口
佐竹
田所
協力 野島
松本
貴重な献血血液の有効利用に繋がる
拓郎
功
和
一成
正博
憲治
清子
千恵子
国立感染症研究所 血液・安全性研究部
国立感染症研究所 血液・安全性研究部
国立感染症研究所 血液・安全性研究部
国立感染症研究所 血液・安全性研究部
西東京日本赤十字血液センター
日本赤十字中央血液研究所
国立感染症研究所 血液・安全性研究部
日本赤十字中央血液研究所
第4室室長
部長
第3室室長
客員研究員
研究員
抗HTLV-1ヒト免疫グロブリン
によるHTLV-1感染予防法の開発-3 (H26年度)
ヒト化マウスを用いた高力価HTLV-IGの有効性の検討
HTLV-1母乳感染モデルの確立
????
Intrahepatic TP
ヒトCD34+細胞
FACS解析
核酸増幅検査
Western Blotting
新生児マウス
ATL細胞株
ATL細胞
HTLV1キャリア細胞
NOD/SCID/JAK3
ミルク
HTLV
IG
HTLV-IG
HTLV-IG製剤開発へ向けた研究
•
•
•
•
•
HTLV-IGの性状・用法・容量の設定
抗HTLV-1ヒト免疫グロブリンの認識抗原の同定
製造工程中のウイルス混入リスク解析(核酸増幅試験)
製造工程中のウイルスクリアランス
国家検定に準じた品質管理試験(安全性・物理化学試験)の実施