黄色ブドウ球菌の産生する Panton-Valentine leukocidin(PVL)検出用試薬, PVL-RPLA「生研」の毒素検出能の評価 ○宮城 郁乃 1),仲宗根 勇 1),山根 誠久 1)2) 1) 琉球大学医学部附属病院検査部,2) 同 大学院医学研究科先進検査医学講座 【目的】Panton-Valentine leukocidin (PVL) 産生 Staphylococcus aureus は,その産生する毒素 に関連して病原性が強いとされ,市中感染型 MRSA で産生株が多いといわれている。現在, PVL 産生株の確認には,PVL 遺伝子 (lukS-PV-lukF-PV) に特異的なプライマーを用いた PCR 法が用いられているが,DNA 増幅と増幅産物の同定を必要とすることから日常的に 汎用できる性状試験とは言い難い。今回,PVL そのものを,特異抗体を用いた逆受身ラテ ックス沈降凝集反応で検出する検査試薬,PVL-RPLA「生研」(デンカ生研, 東京) が開発 されたので,我々が収集した PVL 産生 S. aureus でその毒素検出性能を評価すると共に, 沖縄県における PVL 産生株の頻度を調査したので報告する。 【材料と方法】1. 試験菌株: 本院検査部で収集保管する PVL 産生 S. aureus 30 株,非産生 株 50 株を性能評価に用いた。また,精度管理用菌株として S. aureus ATCC25293 (PVL 産生) を用いた。加えて,2012 年 1 月から同 5 月までの期間,沖縄県の 6 医療施設において分離 同定された S. aureus 559 株 (MRSA 322 株, MSSA 237 株) を試験対象とした。2. 試験方法: すべての菌株について,特異プライマーを用いた PCR 法から PVL 遺伝子の有無を確認し た (参照法)。PVL-RPLA「生研」は使用説明書に従い,brain-heart infusion broth で 1 夜振盪 培養した後,培養 broth を 3,000 rpm 20 分間遠心した上清を試料とした。上清 25 _l の 2 倍 希釈系列を作成し,感作ラテックス試薬 25 _l を添加した後,1 夜室温で静置反応させて各 ウエルの沈降凝集を肉眼判定した。 【結果】PVL-RPLA「生研」と PCR 法との比較では,PVL 産生株,非産生株,すべて一致 する判定結果であった。 PVL 産生株 30 株の培養 broth での陽性判定終末点は 32 倍から 4,096 倍に分布し,最頻値は 1,024 倍希釈であった。沖縄県の 6 医療施設から収集された 559 株 の新鮮分離株の試験では,PCR 法で 13 株 (2.3%),PVL-RPLA「生研」では 11 株 (2.0%) が PVL 産生株と判定され,PVL-RPL「生研」では MRSA,MSSA,各々 1 株ずつの偽陰性が 観察された。陽性件数は低値ではあるが,PVL-RPLA「生研」と PCR 法の判定一致率は 99.6% に算出された。また,沖縄県における PVL 産生株の頻度は,MRSA で 2.8%,MSSA で 1.7% にあり,両群の陽性率には有意差がなかった (p=0.57)。 【考察】S. aureus における PVL 産生能の試験では,特異プライマーを用いた PCR 法が gold standard ではあるが,菌体からの DNA 抽出,PCR,電気泳動など,日常の検査法としては 難点があった。今回検討した PVL-RPLA「生研」は,1 夜振盪培養した broth 中の PVL を 抗原・抗体反応から検出する方法であり,特殊な機器,設備を必要としないことから多く の施設で検査可能な環境が提供される。最小検出感度の限界から,PCR 法と比べ,偽陰性 の判定も観察されたが,今後 PVL 産生のより至適な培養条件を模索することでこの問題を 解消することが期待される。
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