脳性麻痺神経学の会「浜名湖セミナー」

脳性麻痺神経学の会「浜名湖セミナー」
1.会
期
平成 26 年 12 月 6 日(土)7 日(日)
2.会
場
ホテルコンコルド浜松
静岡県浜松市中区元城町 109-18
TEL:053-457-1111
FAX:053-455-4614
http://concorde.co.jp/
3. 運
営
代表幹事
横地健治
聖隷三方原病院
幹
事
荒井
森之宮病院
幹
事
奥村彰久
愛知医科大学
幹
事
沢石由記夫
秋田県立医療療育センター
幹
事
萩野谷和裕
宮城県拓桃医療療育センター
幹
事
丸山幸一
愛知県心身障害者コロニー中央病院
洋
4. 事務局
聖隷三方原病院
聖隷おおぞら療育センター
静岡県浜松市北区三方原町 3453
E-mail
TEL:053-437-1467
[email protected]
5.参加費
参加費
6,000 円
懇親会費 8,000 円
宿泊費
7,000 円
※ 会場受付において現金にてお支払いください。
6.交通のご案内
ホテルコンコルド浜松
■車
浜松駅より車で 5 分
東名高速道路
浜松 IC より車で 25 分
浜松西 IC より車で 25 分
ホテル併設立体駐車場
200 台収容可能
7.プログラム
第一日目(12 月 6 日)
12:30 受付
12:55 開会挨拶
「脳性麻痺神経学の会」代表幹事
横地健治
13:00-17:10
1 題 30 分。プレゼンテーション時間は症例検討では 10 分~15 分、研究演題では 15~20 分。
第Ⅰセッション
座長
沢石由記夫(秋田県立医療療育センター)
13:00-13:30 演題 1 小頭症、脳性麻痺と診断されていた 2 歳女児(事後報告)
石山昭彦(国立精神・神経医療研究センター病院)
13:30-14:00 演題 2 生下時より呼吸不全と甲状腺機能低下症を認め、次第に舞踏運動が出
現した女児例
戸澤雄紀(綾部市立病院)
14:00-14:30 演題 3
transient dystonia が疑われる 1 例
丸山幸一(愛知県心身障害者コロニー中央病院)
14:30-15:00 演題 4
Prader-Will 症候群の運動症候
横地健治(聖隷三方原病院)
15:00-15:10 休憩
第Ⅱセッション
座長
丸山幸一(愛知県心身障害者コロニー中央病院)
15:10-15:40 演題 5 超早産小脳性運動障害の 1 例における運動発達経過
横地健治(聖隷三方原病院)
15:40-16:10 演題 6 脳室周囲白質軟化(PVL)の小脳性痙性両麻痺の運動症候-重症例-
横地健治(聖隷三方原病院)
16:10-16:40 演題 7 脳室周囲白質軟化(PVL)の小脳性痙性両麻痺の運動症候-軽症例-
横地健治(聖隷三方原病院)
16:40-17:10 演題 8 脳室周囲白質軟化(PVL)歩行例 2 例における一側尖足に至る経過
横地健治(聖隷三方原病院)
17:10-17:30 チェックイン・休憩・会場移動
イブニングセッション
座長
奥村彰久(愛知医科大学)
17:30-18:15 特別講演
小脳性失調における立位バランスのとり方
AACPDM 報告
荒井
洋(森之宮病院)
18:15-18:30 総合討論
18:30
懇親会
20:00 二次会(ホテルコンコルド浜松内)
司会
荒井
洋(森之宮病院)
第二日目(12 月 7 日)
8:30-11:45
第Ⅲセッション
座長
荒井 洋(森之宮病院)
8:30- 9:00 演題 9 成熟児核黄疸 4 例の運動症候
横地健治(聖隷三方原病院)
9:00- 9:30 演題 10 軽症の視床・被殻型低酸素性虚血性脳障害(脳性麻痺のいわゆるアテ
トーゼ)の 1 例の運動症候
横地健治(聖隷三方原病院)
9:30-10:00 演題 11 遺伝子変異(CASK、SCN8A)を伴う小脳低形成の 2 例 の神経症候
元重京子(聖隷三方原病院)
10:00-10:15 休憩
第Ⅳセッション
座長
萩野谷和裕(宮城県拓桃医療療育センター)
10:15-10:45 演題 12 急性脳症後に歩行障害を呈している 1 例
深沢達也(安城更生病院)
10:45-11:15 演題 13
進行性の脊柱側彎症を呈する低酸素性虚血性脳症後遺症の 2 歳男児例
奥野慈雨(長野県立こども病院)
11:15-11:45 演題 14 「持続的筋収縮状態」に対する薬物療法
沢石由記夫(秋田県立医療療育センター)
11:45 閉会
抄録
第一日目
演題 1.
小頭症、脳性麻痺と診断されていた 2 歳女児(事後報告)
国立精神・神経医療研究センター病院 小児神経科
石山昭彦
安藤亜希 2)、馬場信平 1)、齋藤貴志 1)、小牧宏文 1)、
中川栄二 1)、須貝研司 1)、後藤雄一 1), 3)、佐々木征行 1)
1) 国立精神・神経医療研究センター病院 小児神経科
2) 心身障害児総合医療療育センター 小児科
3) 国立精神・神経医療研究センター神経研究所 疾病研究第2部
満期産で仮死なく出生し、小頭、痙性四肢麻痺、精神運動発達遅滞を認め、脳室周囲白質軟化症
と診断されていた 2 歳女児。リハビリ目的で前医入院した際、乳酸高値を認め精査目的で紹介受診。
膝蓋腱反射の軽度亢進あるも、病的反射なく、右上肢痙性、足関節可動域制限を認めていた。乳酸
高値、頭部 MRI で脳室内隔壁所見から、ピルビン酸脱水素酵素複合体(PDHC)欠損症を疑い、筋生検
実施し、遺伝子解析により確定診断を行った。本児の運動症候と頭部画像について再考する。
演題 2.
生下時より呼吸不全と甲状腺機能低下症を認め、次第に舞踏運動が出現した女児例
綾部市立病院 小児科
戸澤雄紀
在胎 38 週 0 日、体重 3,022g、仮死なく他院で出生。母方に甲状腺機能低下症の家族歴あり。生
後 3 日で呼吸不全、人工呼吸管理、甲状腺機能低下を認めチラージン開始、呼吸器の離脱にステロ
イドを要し生後 1 か月で抜管され生後 2 か月で退院。転居のため 1 歳時に当科へ紹介、運動発達遅
滞あり近隣の療育施設を紹介し失調型脳性麻痺と診断されリハビリを開始した。1 歳 6 か月で伝い
歩き、2 歳で独歩獲得も 2 歳ぐらいから chorea が目立つようになる。
演題 3.
transient dystonia が疑われる 1 例
愛知県心身障害者コロニー中央病院 小児神経科
丸山幸一
初診時 1 歳 0 カ月の男児。妊娠 34 週から切迫早産で 2 週間入院。在胎 37 週、体重 2,624g で仮
死なく出生。定頚 3 か月、寝返り 7 か月、座位 9 か月。仰臥位は下肢を伸展して身体を反らせ尻を
浮かせる動作が多い。腹臥位は身体を反らせて四肢を浮かせる姿勢が多く、肘を使ってズリ這いす
る。抱っこでは肩が引けてしがみついてこない。2 か月後の時点ではつかまり立ちが可能となり、
反りやつっぱりは減ってきているが、肩の引けは残っている。MRI で淡蒼球に淡い T2 高信号を認め
る。
演題 4.
Prader-Will 症候群の運動症候
聖隷三方原病院 小児神経科
横地健治
Prader-Will 症候群は、新生児期筋緊張低下が目立ち、以後運動発達は遅れるが、歩行獲得後の
運動異常は軽微であるとして、その運動障害は注目されていない。聖隷三方原病院小児リハビリ部
門では、同病の 10 例についてビデオ記録が残っている。歩行獲得年齢は 1 歳 6 ヵ月から 4 歳 5 ヵ
月にわたっている。乳児期では、いずれも、股関節屈曲外転優位が目立っていた。以後、股関節伸
展内転の下肢荷重は不十分であった。これは、演者が提唱する小脳性運動障害の特徴に合致すると
考えられる。
演題 5.
超早産小脳性運動障害の 1 例における運動発達経過
聖隷三方原病院 小児神経科
横地健治
在胎 27 週以下の早産児の運動障害の主体は PVL ではない。演者は、それを小脳性運動障害と解
している。その代表例を提示する。在胎 25 週、出生体重 422g。乳児期、股関節は外転屈曲優位で
あった。その後も、股内転伸展荷重に制限があり、過剰の股屈曲がみられた。超早産非 PLL 運動障
害は股内転伸展荷重であると考えられた。
演題 6.
脳室周囲白質軟化(PVL)の小脳性痙性両麻痺の運動症候 -重症例-
聖隷三方原病院 小児神経科
横地健治
脳室周囲白質軟化(PVL)の多数は、痙性両麻痺の運動症候をとる。股関節屈曲内転、膝関節屈
曲優位が併存するが一般的である。知的障害はないか軽度であり、視覚認知に制限がある。対人関
係は良好であり、自閉的特徴はまったくない。これに合致しない少数例が存在する。運動症候とし
ては、両側とも股関節屈曲外転が優位であり、膝関節屈曲が目立たないのが、特徴である。このう
ち重症例は、独歩は不能だが、座位はとれることも多い。知的障害は重度である。聖隷三方原病院
小児リハビリ部門では、同類型重症の 3 例の訓練を行っている。在胎週数は 27~31 週、出生体重
は 1,058~1,870g であった。その運動症候について報告する。その病態は、小脳性運動障害と PVL
痙性両麻痺の合併と考える。
演題 7.
脳室周囲白質軟化(PVL)の小脳性痙性両麻痺の運動症候 -軽症例-
聖隷三方原病院 小児神経科
横地健治
脳室周囲白質軟化(PVL)の小脳性痙性両麻痺の軽症例では、独歩は可能であり、自閉症となっ
ている。聖隷三方原病院小児リハビリ部門では 3 例の経験がある。脳室内出血・出血後水頭症(シ
ャント術施行)は除く。在胎週数は 27~32 週、出生体重は 1,114~2,110g であった。その運動症
候について報告する。その病態は、小脳性運動障害と PVL 痙性両麻痺の合併と考える。
演題 8.
脳室周囲白質軟化(PVL)歩行例 2 例における一側尖足に至る経過
聖隷三方原病院 小児神経科
横地健治
脳室周囲白質軟化(PVL)の多数は、痙性両麻痺の運動症候をとる。その立位は、股関節屈曲内
転、膝関節屈曲優位(crouch)が通常であり、足底屈をとるのは軽症例に限られる。足底屈が尖足
として伸展する経過を、2 例を代表例として提示する。症例 1 は、在胎 32 週、出生体重 1,985g で、
1 歳後半で独歩となる。右側が尖足として進展する。乳児期、右股関節は内転屈曲優位であった。
その後、股伸展荷重の進展に伴って、足底屈・尖足に至った。なお、膝関節は屈曲優位であった。
症例 2 は、在胎 32 週、出生体重 1,742g で、1 歳後半で独歩となる。左側が尖足として進展する。
乳児期、左股関節は外転屈曲優位であった。その後、股伸展荷重の進展に伴って、足底屈・尖足に
至った。なお、膝関節の屈曲優位は認めなった。左下肢については、小脳性運動障害の共存が考え
られた。PVL の尖足は、股伸展荷重の進展に伴うと考えられた。
イブニングセッション/特別講演
小脳性失調における立位バランスのとり方
森之宮病院
小児神経科
荒井
洋
「小脳性失調では代償的に股関節を屈曲し固定してバランスをとる」のは本当だろうか?立位バ
ランスの主役は足と足関節にあり、それを補うために股関節が動員される。我々は、短下肢装具を
用いた伝統的な治療が失調患者の ankle strategy の上達をかえって阻害し、代償固定を強めてい
た症例を複数経験した。小脳性失調患者のビデオを見直し、立位での足の使い方と股関節の代償と
の関係性を調べ、治療方針について検討してみた。
第二日目
演題 9.
成熟児核黄疸 4 例の運動症候
聖隷三方原病院 小児神経科
横地健治
近年、核黄疸は早産児に散発的にみられるのみであり、核黄疸の運動症候の詳細は十分解明され
ているとは言いがたい。そのため、成熟児核黄疸の症候を整理しておく必要はあると思われる。自
験例 4 例の成熟児核黄疸について、その運動症候をみた。持続的 co-contraction が特徴的であっ
た。
演題 10.
軽症の視床・被殻型低酸素性虚血性脳障害(脳性麻痺のいわゆるアテトーゼ)の 1 例の運動症候
聖隷三方原病院 小児神経科
横地健治
視床・被殻型低酸素性虚血性脳障害(脳性麻痺のいわゆるアテトーゼ)は多彩な病巣が共存して
いる。被殻を中心に、淡蒼球・尾状核の錐体外路性病巣を持ち、視床では、後索(内側毛帯)系と
小脳遠心系の亜核がそれぞれ侵される。大脳では、中心溝部を中心とした皮質に病巣を持ち、錐体
路も侵される。そのため、その運動障害も均一ではないので、その類型化が課題である。今回は、
有意な知的障害はなく、上肢機能・下肢機能障害は軽症であり、構音障害が目立つ症例の運動症候
の発達的変容を報告する。症例は、24 歳、男性。MRI では、視床・被殻に T2 高信号あり。3 歳 2
ヵ月独歩可となる。股屈曲優位と肩のひけ優位が軽度みられる co-contraction が特徴的であった。
演題 11.
遺伝子変異(CASK、SCN8A)を伴う小脳低形成の 2 例 の神経症候
聖隷三方原病院 小児科
元重京子、野村武雅、木部哲也、横地健治
聖隷浜松病院 小児科
横田卓也
遺伝子異常を伴う小脳低形成の 2 例について、新生児期から幼児期にかけての神経症候を報告す
る。症例 1(4 歳、男)。胎生期より小脳低形成を指摘されていた。41 週、3,038g で出生。Fallot
四徴症あり。生後の頭部 MRI で、橋小脳低形成が認められた。新生児期より現在まで、自発運動は
わずかで、全身がビクンとする動き、四肢をわずかにくねらせる動きがみられるのみである。知的
発達も重度に遅滞する。CASK 遺伝子変異を認めた。症例 2(3 歳、男)。40 週、2,918g で出生。新
生児仮死で蘇生を要した。生後 10 時間から無呼吸を伴う発作が頻発する。この管理に難渋する。
MRI で小脳虫部の萎縮を認めた。現在まで、常時、浅い多呼吸を認める。自発運動はわずかである。
SCN8A 遺伝子変異を認めた。
演題 12.
急性脳症後に歩行障害を呈している 1 例
安城更生病院 小児科
深沢達也、久保田哲夫
症例は 6 歳男児。周生期の異常はなし。生後 2 か月で原因不明の急性脳症に罹患した。急性期の
拡散強調像では大脳白質・皮質広範と視床・基底核に高信号域を認めた。慢性期の画像では白質容
量の減少と脳室拡大に加え、視床枕周辺の信号変化を認めている。診察上痙性は認められない。1
歳 9 か月で独歩が可能になったが、歩行時に足関節が不安定でつま先を引きずる様子が見られ、腰
の引けも目立ち、長距離の歩行ができない。(本児の運動障害の解釈と原因病巣に関してご意見がい
ただきたいです。
)
演題 13.
進行性の脊柱側彎症を呈する低酸素性虚血性脳症後遺症の 2 歳男児例
長野県立こども病院 神経小児科
奥野慈雨
武居裕子 1)、福山哲広 1)、笛木 昇 2)、平林伸一 1)
長野県立こども病院 神経小児科 1)、リハビリテーション科 2)
正期産、重症新生児仮死による低酸素性虚血性脳症後遺症の 2 歳男児。痙性四肢麻痺、嚥下障害、
胃食道逆流症、知的障害を認め、現在は GMFCS Ⅴで経管栄養依存。呼吸は比較的安定し口腔内吸引
を適宜行う程度。生後 2 カ月より痙性とジストニアによる体幹捩れを認め、脊柱側彎症を発症。筋
緊張緩和薬内服、ポジショニング、ボトックス治療などを行っているが、側彎症と変形の進行を予
防するための手段、ITB の適応などをご相談したい。
演題 14.
「持続的筋収縮状態」に対する薬物療法
秋田県立医療療育センター 小児科
沢石由記夫、豊野美幸
重症児に認め得る、全身の緊張が長時間持続する状態を、横地は「持続的筋収縮状態」と呼んだ。
丸山らはその状態に当てはまる 66 例の臨床的特徴をまとめ、治療の困難さを報告した(脳と発達
2014)。演者らは、呼吸困難を伴う激しい反り返り姿勢を繰り返す 1 歳の重度仮死出生例を経験し、
既知の抗痙縮薬が無効で、最終的に L-dopa 大量療法が有効であった。他の類似症例にも同じ治療
法が有効であったので、報告する。