COPDという病気を知っていますか(PDF)

COPD という病気を知っていますか
看護学科 助教 佐野恵美香
1.COPD ってどんな病気?
COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)とは、慢性閉塞性肺疾患という呼吸
器系の病気のことで、その定義は、以下のようになっています。
定義 (文献 1 より一部抜粋)
タバコ煙を主とする、有害物質を長期に吸入することで、生じた肺の炎症性疾患である。
呼吸機能検査で、正常に復することのない、気流閉塞を示す。
簡単にいうと、タバコなどが原因で、気管支の炎症や、肺ほう(肺はたくさんの肺ほう
という小さな袋でできていて、酸素と二酸化炭素を交換している)が破壊されることから、
呼吸がしづらくなってしまう病気です。
NICE スタディ 2001(文献 2)という全国規模の調査では、全国に 500 万人以上の患者
がいると予測されました。しかし、2008 年の厚生労働省の調査では、その内の 17 万人程
度しか、治療を受けていないということが報告されています(文献 3)。
COPD の症状は、かぜをひいていないのに、せきが続く、たんがでる、呼吸時にゼーゼ
ーやヒューヒューとのどがなるといったことがあります。
他にも、階段を上ったり、物を持ち上げたりした際に、息切れがおこります。ひどくな
ると、歩いただけ、話をしただけで、息が切れます。
そのため、「階段を上る時に、休憩が必要になる」「他の人と同じスピードで歩き続けら
れない」など、今までできていたことができなくなってしまい、生活の質(QOL)が低下
してしまいます。
また、COPD と診断された方が、かぜをひくと、急激に症状や呼吸機能が悪化すること
があります。これを「急性増悪」といい、重症化の大きな原因となります。落語家の桂歌
丸さんが、COPD の急性増悪により入院したことは、記憶に新しいのではないでしょうか。
COPD は肺機能検査を行うことで、
早期発見と早期治療が可能となります。
40 歳以上で、
喫煙歴がある方は、ぜひ一度、肺機能検査を受けてみてください。
2.COPD と診断されたら?
COPD と診断されたら、早期に治療を開始することが大切です。主な治療法は、禁煙、
薬物療法、呼吸リハビリテーション、酸素療法などです。
第一の治療は、禁煙です。COPD は別名たばこ病と言われており、原因の 90%以上は喫
煙です。
肺の機能は、加齢とともに低下します
が、喫煙者は、非喫煙者に比べ、早く機
能が低下します。
図のように禁煙することで、機能が低
下する速度を、緩やかにすることが明ら
かになっています(文献 4 より引用)。
※1 秒量:1 秒間に吐き出せる空気量
(文献 4 より転載)
近年、COPD の方のセルフマネジメントが注目を集めています。これは、COPD になっ
ても、いきいきとした生活をおくるために、禁煙や、安定期や増悪期の管理など、自分で
自分をマネジメントするといったものです。
COPD は慢性的な病気ですので、病気と上手に付き合い、進行を少しでも遅くするよう
に、自分の身体を日常的に管理していくことも大切なことになります。
〈文献〉
1)日本呼吸器学会 COPD ガイドライン第 3 版作成委員会編:COPD 診断と治療のためのガイ
ドライン第 3 版.メディカルレビュー社,東京,2009,pp.5
2)Fukuchi Y , et al : COPD in Japan: the Nippon COPD Epidemiology (NICE) Study.
Respirology 2004 ; 9(4) : 458-65
3) 厚生労働省「平成 20 年
患者調査」
4)植木純(監):一歩進んだ呼吸のセルフマネジメント―慢性呼吸器疾患の患者さんとそのご
家族の方へ―.杏林製薬,東京,2008,pp.10