粘膜寛容と免疫機能性食品の研究開発 江伯倫( ) 教授兼所 江伯倫(Chiang, Bor-Luen) 教授兼所長 国立台湾大学医学院免疫学研究所 国立台湾大学医学院免疫学研究所 【要旨】 ここ数年、アレルギー性疾患は増加傾向が続いている。アレルギー性喘息、アレルギ ー性鼻炎、そしてアトピー性皮膚炎の全てが増加傾向にあり、減少する傾向はみられ そうもない。現在アレルギー性疾患は主に Th2 細胞によって引き起こされることが知られ てる。Th2 細胞が分泌するインターロイキン-4(IL-4)は B 細胞による IgE 抗体産生を 促進する。IgE 抗体は肥満細胞(mast cells)上に付着し、アレルゲンと接触すると肥 満細胞を活性化し、脱顆粒を起こす。これらの放出された顆粒中には主にヒスタミン、 プロスタグランジン及びロイコトリエンなどの炎症性物質が含まれており、さらに気管の 收縮、粘液の分泌と血管の拡張を起こし、それぞれ気管支喘息、アレルギー性鼻炎 及びアトピー性皮膚炎を引き起こす。このほか、Th1 細胞と Th2 細胞の作用はちょうど 互いに制御し合っているため、体内で Th1 細胞の活性が低下すると、Th2 細胞の活 性が相対的に高まり、アレルギー性疾患を引き起こす。 以 前 の 研 究 か ら 、 樹 状 細 胞 な ど の 抗 原 提 示 細 胞 が イ ン タ ー ロ イ キ ン -12 (IL-12)を分泌すると、T 細胞の Th1 細胞への発育を促進するのに有利に働くことが 知られている。そこで、我々の研究室では、数年前に樹状細胞のプラットフォームを確 立し、有効成分のスクリーニングを行っている。1000 種あまりの異なる成分をスクリーニ ングした後、周宏農教授により提供されたタニウシケノリのフィコシアニンが非常に効果 的に樹状細胞の IL-12 分泌を促進し、また樹状細胞を活性化する能力をもつことを発 見した。そこで、さらに精製したフィコシアニンを用い、そしてさらに動物実験を行って、フィコ シアニンは確かに喘息の動物モデルにおいてアレルゲン特異的 IgE を減少させ、気道 抵抗と炎症細胞の浸潤を改善させることができると発見した。これらの研究結果はフィコ シアニンが高い効果をもつ成分であることを明確に示すものであり、将来さらなる研究開 発を行うことが必要である。 現在全ての機能性食品は経口的に服用する方法で与えられている。しかし、腸管 から入れることの問題点は、腸管粘膜の免疫反応がいわゆる「寛容」を誘発する可能 性があることであり、腸管から入る物質に対する免疫反応をむしろ低下させうる。我々は 以前の研究で、ヤケヒョウヒダニの遺伝子導入植物を確立して、アレルギー性喘息の 疾病において応用し、高い治療効果を得られることを発見した。 今後我々は機能性食品のアレルギー性疾患における効能についての研究と機能 性食品の開発を継続する。しかし、粘膜免疫システムは免疫寛容を誘発する特性をも 有している。よってこれらの機能性食品を食した後、どのような効能が現われるのかは、さ らに粘膜免疫システムについてのより明確な理解が必要となり、そうしてはじめてさらに効 果的な機能食品を開発することができ、真に実用的な効果をもつことだろう。これらにつ いては、今後の努力が待たれる。
© Copyright 2024 ExpyDoc