アレルギー疾患治療の最前線 大阪大学大学院医学系研究科抗体医薬臨床応用学講座 田中敏郎 基礎免疫の進歩が臨床応用され、嘗て制御が困難であった免疫アレルギー疾患 に対して新たな治療が可能な時代を迎えている。アレルギー性鼻炎、喘息やア トピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の発症臓器においては、様々な炎症細胞 とこれらの細胞から産生されるサイトカイン、ケモカイン、化学伝達物資や IgE などで持続的な炎症性ネットワークが形成されていることが明らかとなり、強 力な抗炎症薬であるステロイド薬を上手に局所で使用することで、患者さんの QOL、ADL は向上している。また、この十数年間で、喘息死数は約 1/3 に減少 し、喘息は主要疾患の中で、最も治療に成功した疾患とも認識されている。難 治性喘息に対する抗 IgE 抗体 omalizumab も認可され、さらにサイトカインを 標的とした生物学的製剤や低分子化合物の開発も進み、また昨年には、スギ花 粉症に対する舌下免疫療法も承認されるに至っている。このように、上下気道 や皮膚アレルギーに対する治療は、パラダイムシフトと言われるように目覚ま しく進歩した。今後、食物アレルギーに対する治療法の開発が大きな課題とな ろう。一方、アレルギー疾患で悩む患者数が増加し、現在、本邦においても国 民の 1/3 以上が罹患しており、その社会的損失は莫大なものとなっている。アレ ルギーを真に克服するためには、有病率の増加の要因を明らかとし、それを抑 える予防法の開発が強く望まれている。 本セミナーでは、アレルギー疾患の発症病態、最新の治療法、今後克服すべ き課題に関して、お話させていただく予定である。
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