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別紙資料
局所性アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎は抗原特異的血清 IgE 値の上昇を伴うアトピー型アレルギー性鼻炎と、伴わない非ア
レルギー性鼻炎に分けられます。
近年、
非アレルギー性鼻炎患者の中にも血清 IgE 値は検出されませんが、
鼻粘膜局所で IgE 抗体を検出できるアレルギー性鼻炎(local allergic rhinitis :LAR)が存在することが
報告されています。しかし、わが国では LAR に対する明確な位置づけも、正式な呼び名もありません。こ
こでは、LAR を「局所性アレルギー性鼻炎」と呼ぶことにします。スペインでの調査では、成人の鼻炎患
者のうちアトピー型アレルギー性鼻炎 63%、非アレルギー性鼻炎 11%に対し、局所性アレルギー性鼻炎は
26%と報告されています。わが国では、アレルギー性鼻炎自覚症状者は約 5,500 万人で、毎年新たに約 420
万人が鼻炎症状を発症するとの報告があります(平成 23 年 1 月、アサヒ飲料株式会社:花粉症意識・対策
実態調査)
。
これら多くの自覚症状者の中にはアトピー素因のない人がある年突然鼻炎症状を発症する人も
含まれていると考えられます。
局所性アレルギー性鼻炎はアトピー型アレルギー性鼻炎と同様、アレルゲンに曝露すると鼻炎症状(く
しゃみ、水性鼻漏、鼻閉)と鼻粘膜への好酸球浸潤が認められます。さらに、局所性アレルギー性鼻炎患
者はその後アトピー型アレルギー性鼻炎となり、喘息などを合併することも知られています。そのため早
期の診断と治療が重要です。しかし、局所性アレルギー性鼻炎の病態と発症機序については不明な点が多
く、鼻粘膜局所の IgE 抗体検出以外に有効な診断法もありません。
私たちは、正常 BALB/c マウス(アトピー素因を持たないマウス)にブタクサ花粉 (ragweed pollen; RW)
を連日点鼻することで、次の様な局所性アレルギー性鼻炎モデルマウスを樹立すると共に、その発症機序
を解明しました(PLOS ONE, 2014)。
1. 正常マウスに 7 日間毎日 RW を点鼻すると、点鼻後 10 分間のくしゃみ回数が日と共に増加し、鼻
粘膜への好酸球浸潤と鼻粘膜局所での IgE 産生が認められました。一方、血清中の抗原特異的 IgE
値は検出感度以下でした。以上の結果は、ヒトの局所性アレルギー性鼻炎の病態をよく反影して
います。さらに、
2. 点鼻 3 日目と極めて早い段階で、鼻粘膜には RW 抗原に反応して Th2 サイトカイン
(IL-4,IL-5,IL-13)を産生する CD4+ Th2 細胞が集積し、RW 点鼻を継続すると経時的に Th2 細胞か
らの Th2 サイトカイン産生量は増大しました。特に、
3. 鼻粘膜に浸潤する CD4+ T 細胞は RW 刺激がなくても、IL-2 と共に IL-33 で刺激すると極めて大量
の IL-5 と IL-13 を産生しました(IL-33 刺激では IL-4 の産生が認められないのも特徴です)
。一
方、
4. 正常マウスに 3 週間毎日 RW を点鼻すると、くしゃみ回数は日と共にさらに増加し、鼻粘膜への好
酸球浸潤、鼻粘膜上皮の多列化とムチン産生の亢進を伴い、頸部リンパ節細胞からの Th2 サイト
カイン産生と共に、血清中に抗原特異的 IgE が著明に増加するアトピー型アレルギー性鼻炎に進
行しました。しかし、
5. 3 週間連続点鼻マウスでも RW 点鼻開始後 6 日目から RW 点鼻と共にステロイド剤を点鼻すると、
ア
レルギー性鼻炎患者と同様くしゃみ回数の増加は完全に抑制されました。しかし、抗原特異的血
清 IgE は抑制されません。一方、
6. 3 週間連続点鼻マウスの肺に RW を吸入させると、気道への著明な好酸球浸潤と粘液産生細胞(杯
細胞)の過形成を伴った喘息様症状を発症しました。即ち、局所性アレルギー性鼻炎はアトピー
型アレルギー性鼻炎と喘息を発症する危険因子となりうることが明らかになりました。次に、
2
7. 局所性アレルギー性鼻炎の発症機序を検討する目的で、IgE 受容体欠損マウスに RW を 3 週間連続
点鼻しました。その結果、くしゃみ回数の増加は抑制されましたが、鼻粘膜への好酸球浸潤には
何ら影響されませんでした。一方、
8. T 細胞と B 細胞を欠損する Rag2 欠損マウスに RW を連続点鼻すると、
くしゃみ回数の増加と好酸球
浸潤は共に著明に抑制されました。
本研究から、1)アトピー素因を持たないマウスでも経鼻的にアレルゲンに感作されると鼻粘膜局所にの
み IgE が検出され鼻炎症状を発症すること、さらに、2)アレルゲンへの曝露が持続するとアトピー型アレ
ルギー性鼻炎に進行し、喘息を合併することが明らかになりました。これは局所性アレルギー性鼻炎患者
の病態とその後の臨床経過に極めて似ています。
さらに本研究から、局所性アレルギー性鼻炎モデルマウスの特徴として、まず初めに鼻粘膜局所に Th2
細胞の集積を認め、Th2 細胞が病態形成(くしゃみ、好酸球浸潤)に中心的な役割を果たすことも確認さ
れました。
また,局所性アレルギー性鼻炎の治療としてステロイド点鼻薬は症状(くしゃみ)の抑制には有効でし
たが、根本的なアレルギー状態(Th2 細胞、IgE 産生)の改善には何ら影響しないことが判明しました。こ
の結果は、局所性アレルギー性鼻炎患者に対する対症療法だけでは不十分であり、早期診断によるアレル
ゲン感作の回避がアトピー型アレルギー性鼻炎への進行と他のアトピー疾患への合併を予防するのに重要
であることを意味しています。
以上の結果から、私たちは局所性アレルギー性鼻炎の早期診断法や治療法の確立には鼻粘膜の CD4+ T 細
胞を標的としたアプローチが重要と考えています。この早期診断法として、患者鼻粘膜から採取した CD4+
T 細胞からの IL-33 刺激による Th2 サイトカイン(IL-5,IL-13)産生の測定は、検査室レベルで実施可能で
且つ精度の高い診断法となる可能性を備えています。
私たちのモデルマウスは、局所性アレルギー性鼻炎の発症機序の解明に有用であるだけでなく、発症機
序を基盤としたイノベーティブな診断法と治療・予防技術開発への応用に非常に重要なモデルマウスだと
考えています。
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