6)管理に問題のある土地の個別検討 (PDF 511KB) - 倉敷市

6)管理に問題のある土地の個別検討
①玉島長尾配水池用地の形状変更と土地払下について
監査期間中の平成 20 年 5 月、倉敷市水道局が管理する玉島長尾配水池周
辺用地を、市が開発業者と売買契約を締結せず造成工事を黙認していたとし
て新聞報道があった(市有地造成黙認問題)。倉敷市水道局が保有する公有
財財産の処分に瑕疵があったとすれば問題であるため、水道総務課から事情
聴取した。
水道総務課から説明を受けた点は以下のとおりである。
1.水道局用地を開発させる理由
・配水池用地と民地との境を開発した場合(水道局用地を開発しない場
合)、高さ 13 メートル、延長 59 メートルの小山が残り、利用不可能区
域が残る。
・法面が残るので維持費用年間約 50 万円がかかり続ける。
・法面の撤去により配水池の維持管理が容易になる。
・利用可能区域が拡大し数戸分は分譲可能となり、固定資産税収入に貢
献する。払下げ用地の大部分(90%相当面積)は、公園・集会所用
地となる。
2.売買契約書が事後となった理由
万が一所有権移転後開発業者が倒産した場合、所有権が他者に移転し
た状態となれば、配水池の管理に重大な影響が生じる。水道局とすれば、
開発後売買契約を締結したほうが確実に工事の履行を担保できる。
3.払下単価の妥当性
購入時の 15 分の 1 という金額であるが、払下単価は倉敷市の基準価格
より高いもので、しかも周辺地域の類似購入単価に批准して決定した。
当該単価について不動産鑑定評価しなかったのは、払下予定地の売却収
入と比較してそれと同額程度の鑑定料となることが想定されたからであ
る。なお、当該造成工事後水道局が得た経済効果は、開発区域面積が拡
大したことによる分譲面積の増加(固定資産税増収)、配水池用地(約2,
500㎡)の土地評価上昇による固定資産の含み益、水道局の年間 50 万
円維持管理費用節約、そのほか、業者負担による残土処理 4,000 万円、
擁壁工 300 万円、舗装工 120 万円、そのほか植栽・ガードパイプ・配水
溝等がある。
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4.受水槽の高低差15メートル未満基準未達に設置許可を与えた理由
高さ基準はあくまでも窓口指導の目安で肝心なことは水圧基準が達成
できているか否かである。当該基準は達成できているため問題はない。
監査の結果及び意見
事後契約について
市有地の払下はあくまでも用途廃止と払下の申請をし官民境界と面積を
確定し登記した上で同意するものであるから、手続きが事後となった点は問
題である。今後は、契約を事後とせず所有権移転時期を含め契約条項を詳細
に記載した契約書を締結すべきである。(指摘事項)
払下単価の低い点が目立つが、これはむしろ購入時点の単価がバブル期で
異常に高かったことに起因する。不動産鑑定評価に基づいて購入したとのこ
となので問題はないが、少なくとも払下単価については、造成工事前に合意
しておく必要がある。払下単価については仮契約なり覚書を締結しておくべ
きであった。(意見)
着手前法面(配水池タンクより北東から望む)
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着手前法面(配水池タンクより南東から望む)
法面撤去後(配水池タンクより北西から望む)
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②監査期間中に判決のあった不法占拠問題
倉敷市玉島黒崎地内の市有地(倉敷市玉島黒崎字宮ノ後 854 番 4 の土地、
2754 番 1 の土地及び 854 番4沿水路。以下「本件土地」
)に無断で放置され
ている船舶等の物件について、倉敷市が平成 19 年 10 月 22 日撤去を求めた
ところ、不法占拠者が本件土地の取得時効を原因とする土地所有権移転登記
手続を求めて提訴した。倉敷市は平成 19 年 12 月 25 日再度物件の撤去を求
めたがこれに応じなかったため、平成 20 年 2 月 29 日船舶等収去土地明け渡
しを求めて、逆に不法占拠者を訴えた。これらの訴訟事件は 7 回の口頭弁論
を経て、平成 20 年 10 月 30 日倉敷市勝訴の判決が下された。
監査の結果及び意見
遊休地であっても適切に管理しないと、このように占有者から不当に時効
取得を主張される場合がある。訴訟合戦は倉敷市に余計な労力投下と訴訟費
用を発生させた。倉敷市は、市有地の定期的な状況把握と適時・適切な処理
の重要性を再認識すべきである。(意見)
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