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最優秀賞
一般の部
湖西市
ワッシッシッ
ますだ
みずほ
﹁むしバイキンなんてこわくない﹂
ウッシッシッシッ
はたらけ
まってるぞ
はたらけ
おいしいごちそう
ワッシッシッ
ごちそうだ
ウッシッシッシッ
ごちそうだ
ここは、むし歯のバイキンたちが住む、む
うです。
おもて
﹁ み な の も の 、 面 を あ げ ー っ 。﹂
む し ば キ ン グ が 言 う と 、む し バ イ キ ン た ち は 、
﹁ ハ ハ ッ ー 。﹂
と、いっせいに顔をあげ、むしばキングを見
上げました。
﹁いよいよ今夜決行する。標的は、三丁目の
さとなるものぞ。忍キン、調べはついておる
の だ な 。﹂
※忍キンとは、人間界でいう忍者のことであ
る※
忍キンは、ササッーとどこからともなく姿を
みせ、むしばキングの前に小走りで近づき、
ひざまづいて、身をかがめました。
﹁おそれながら申しあげます。今夜さとるな
んのむしバイキンたちが、いそがしそうに、
い ま し た 。 口 の 中 は 宝 の 山 で ご ざ い ま す 。﹂
チップスを食 べて、歯をみがかずに寝てしま
じょう
せかせかとはたらいています。歯をほるスコ
むしばキングはウンウンとうなずき、忍キン
るもの、寝る前にキャンディをなめ、ポテト
ッ プ や 、や り を や す り で と い で い る バ イ キ ン 。
に言いました。
し バ イ キ ン 城 。お 城 の 中 の 工 場 で は 、た く さ
歯をとかしてしまうあま∼いみつを、ぐつぐ
﹁よーし。よくぞ調べたな。そのほうに、ほ
しずまれー。
あ り が た き し あ わ せ 。﹂
た る で な い ぞ 。﹂
﹁ み な の も の 、今 夜
時 決 行 だ 。任 務 を お こ
むしばキングが大声をはりあげます。
とどこかへ消えていきました。
忍キンはそう言うと、また小走りにササッー
﹁ハハッ
う び を つ か わ す ぞ 。﹂
つとにているバイキン。みんなおいしいごち
そうにありつこうと、いっしょうけんめいに
はたらいています。
しずまれ
そこへ突然、工場長が大きな声をあげまし
た。
﹁みなのもの
むしばキング様のおでましなるぞー。
ひ か え お ろ ー 。﹂
﹁ ハ ハ ッ ー 。﹂
ずがたかい。
工場の最上階のステージに、まっくろなマン
むしバイキンたちは、いっせいに頭をさげま
えーい
トをはおり、ピカピカ光る金色のかんむりを
した。
りとあらわれました。むしバイキンたちは、
﹁ む し ば キ ン グ さ ま だ 。﹂
クーカ、クーカとのんきに小さな寝息をたて
ているとは夢にも思っていません。口をあけ
﹁ひかえろ
ています。
﹁ む し ば キ ン グ さ ま だ ぞ 。﹂
と口々に言って、その場にひざまづき、頭を
ゴーン
時 の か ね と と も に 、さ と る の ベ ッ ド の ま わ
ゴーン
さげました。ステージの上に立ったむしばキ
ングは、マントをはおった両うでを大きくひ
り に 、む し バ イ キ ン の 大 軍 が あ ら わ れ ま し た 。
ひ か え ろ 。﹂
さてさて、さとるは、自分にまの手がのび
つけたむしばキングが、ゆっくりと、のっし
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ろげました。まるでまっくろなこうもりのよ
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コップや、やりを高くふりあげます。
むしバイキンたちは、それぞれ手にもったス
﹁ オ ー ッ 。﹂
﹁ 準 備 は い い か ー っ 。﹂
しバイキンたちに声をかけます。
さとるのおでこに乗ったむしばキングが、む
が、さとるの口ぐせでした。でも今は、いた
﹁ 虫 歯 な ん か こ わ く な い も ん 。﹂
と、いつも言われるたびに、
﹁ 歯 を み が き な さ い 。 虫 歯 に な る わ よ 。﹂
です。
ことをきかないで、歯をみがかなかったから
くていたくて、そんなこと言っていられませ
エ イ エ イ オ ー 。﹂
﹁エイ エイオー
﹁ 今 日 、 歯 医 者 さ ん に 行 こ う ね 。﹂
ん。
か か れ ー 。﹂
むしばキングがさけびました。
﹁みなのもの
とお母さんが言いました。さとるは泣きなが
わあわあ、
むしバイキンたちは、やあやあ
ら、うなずくのがせいいっぱいでした。
そう心にちかったさとるは、毎日、食 べたあ
言 わ な い ぞ 。﹂
もう虫歯なんかこわくないなんて、ぜったい
﹁虫歯があんなにいたいなんて知らなかった。
ました。
数日もすると、いたみがとれて、元気になり
歯医者さんで治療してもらったさとるは、
さとるの口の中にはいりました。はいったと
たん、むしバイキンたちのかんせいがわきあ
がります。みんなうれしくて、はしゃぎまく
い た だ こ う ぜ 。﹂
こ ん な 宝 の 山 は 久 し ぶ り だ ぜ 。﹂
っています。
﹁やー
﹁がっぽり
ワッシッシッ
ごちそうだ
みたことない
はたらけ
ウッシッシッシッ
はたらけ
こんなごちそう
スコップでほって、やりでつついて、歯にこ
デンタルフロスで最後のしあげまでします。
み が き を す る よ う に な り ま し た 。寝 る 前 に は 、
とにフッ素いりのはみがきこをつかって、歯
びりついてなかなかとれないキャンディは、
でも、さとるはおかしが大好き。おかしのな
ワッシッシッ
歯をとかしてしまうあまーいみつを、たっぷ
い毎日なんて考えられません。そこで、お母
ウッシッシッシッ
り た ら し て 、と け た と こ ろ で 、び ん に つ め て 。
そしてお母さんの、みがきのこしチェック。
を食 べたあとには、はみがきシュッシュッ。
キシリトールいりのガムにしました。おかし
さんと相談して、ガムを食 べたいときには、
びんできた。
ウッヒャッヒャ
はい、ひとびん。はい、ふたびん。あっとい
うまに
ッ
こうして毎日やっているうちに、さとるは、
歯みがきしないでは口の中がきもちわるくて、
ごちそうだ
やがて宝を全 てとりつく すと、むしばキング
寝られないようになってきました。
﹁ み な の も の 、宝 を か つ げ ー 。城 へ 帰 る ぞ ー 。﹂
さーて。さとるが改心したことはつゆ知ら
・
・
・
・
・
・
むしバイキンのお城では。
むしバイキンたちは、働きもせず、宝の山に
よく 朝、さとるは歯がいたくて目が覚めま
した。
しかし、ひと月もすると、ごちそうはすっ
そびほうけています。
す。忍キンまで、忍びの任務をおこたり、あ
しの
よいしれておりました。毎日が パー ティー で
とるにはわかっていました。お母さんの言う
ません。どうして歯がいたくなったのか、さ
さ とるは、 歯がいたく て朝ごはんも食 べ られ
お 母 さ ん 、 歯 が い た い よ ー 。﹂
﹁いたい、いたい、いたいよー
ず
が大声で言いました。
お宝だ
ウッヒャッヒャッヒャッ
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かりなくなってしまいました。ある時、むし
を見たよ。もうむしバイキンなんてこわくな
﹁ぼくね、むしバイキンたちをやっつけた夢
われないように、これからも歯みがきがんば
ばキングが忍キンを呼びよせました。
﹁ハハッ
ろうね。それにね、さとる。白い歯ってかっ
い よ 。﹂
て い る 様 子 に ご ざ い ま す 。﹂
こ い い よ 。﹂
﹁さとるなるもの、その後の調べはどうなっ
忍キンは、あそびほうけていて、仕事なんて
お母さんは、さとるの顔をなでながら、やさ
﹁そう、よかったわね。むしバイキンにねら
していません。さとるの最近のことなんて、
し く 言 い ま し た 。さ と る は﹁ う ん 。﹂と 大 き く
て お る の だ 。﹂
知っているはずもありません。むしばキング
うなずきました。
あいかわらず、歯もみがかずに寝
におこられるのがこわくてウソをついたので
す。
﹁オーッ﹂とむしバイキンたちは、いせいよ
か る で な い ぞ 。﹂
忍キンは、修行の旅にだされ、むしバイキン
あのあとね。むしばキングのいかりにふれ、
うなったかって?
にげかえったむしバイキンたちがその後ど
く言ったものの、ずっと働いていませんでし
たちは、昼も夜もなく、せいをだして働いて
時 決 行 だ 。ぬ
たから、スコップもやりもさびついてボロボ
いるそうですよ。次のお宝にありつこうとみ
﹁ よ ー し 、み な の も の 、今 夜
ロ。みつをにるおなべのそこには穴があいて
んな必至なんです。
おしまい
・
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・
そこの君かもよ。
きみ
い ま す 。そ れ で も ま た 、お 宝 に あ り つ こ う と 、
きょう
強 れつ
歯みがきがきらいな
そうそう。むしバイキンたちの次の標的は、
てています。
﹁みなのもの
した。
﹁なんだ
言いました。
よく朝、目が覚めたさとるは、お母さんに
退散していきました。
む し バ イ キ ン た ち は 、ヨ タ ヨ タ と に げ ま ど い 、
デンタルフロスの効果があらわれたのです。
ア で お お わ れ て い ま し た 。毎 日 の 歯 み が き と 、
ッとまぶしい光線がはなたれ、フッ素のバリ
さとるの口の中は、歯と歯の間から、ピカー
む し バ イ キ ン た い じ パ ワ ー は な ん だ ー 。﹂
な ん だ ー 。こ の も う れ つ
げ、青い顔をして口の中からとびだしてきま
にはいりました。すると、とたんに悲鳴をあ
バイキンたちは、いっせいにさとるの口の中
むしばキングが大声をはりあげました。むし
か か れ ー 。﹂
そうに口をあけ、クーカ、クーカと寝息をた
わりにあつまりました。さとるはきもちよさ
ボロボロの道具を手に、さとるのベッドのま
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