【背景】 樹状細胞 (DC) は免疫系において中心的役割 を果たしており, C

A126
肝
臓48巻suppL(1)(2007)
O−89 C型肝硬変患、者のBDCA1陽性樹状細胞
機能に対する細胞外分岐鎖アミノ酸(BCAA)の影響
O−90 急性肝不全時の異常行動を伴う肝性脳症
について
磯部夕美子,寺井崇二,三浦 泉,坂井田功
嘉数英二1,上野義之1,菅野記豊2,福島耕治1,
山口大学大学院医学系研究科消化器病態内科学
モデルでの神経性アミノ酸組織学的変化の検討
山極洋子1,長崎 太1,小暮高之!,井上 淳1,
松田泰徳1,城戸 治1,中込 悠1,木村 修1,
【目的】急性肝不全時における肝性脳症の原因として,
泡渕 賢1,小原範之1,岩崎隆雄1,下瀬川徹1
様々な説が報告されているが,異常行動を伴う肝性脳症
東北大学消化器内科1,岩手県立磐井病院消化器科2
モデルで神経性アミノ酸の変化,脳の組織学的変化を検
討した報告はない.今回,我々は急性肝不全時の異常行
【背景】樹状細胞(DC)は免疫系において中心的役割
動を伴う肝性脳症モデルラットで脳内神経性アミノ酸の
を果たしており,C型慢性肝炎・肝硬変患者において
変化をリァルタイムに測定し,その変化の原因となりう
その機能が低下していることが知られている.我々は
る脳組織の変化について検討した.
C型肝硬変患者の単球由来樹状細胞機能が細胞外の
1方法lWistarラットを用い,以下の4群に分けた.1)
BCAA,特にvaiine濃度を高めることにより回復する
アセトアミノフェン+3メチルコランセン投与群
ことを報告した(第42回肝臓学会総会).今回我々は,
(APAP+MC群),2)アセトアミノフェン単独投与群
circulating myeloid DCの主要なsubsetであるBDCA
(APAP群),3)3一メチルコランセン単独投与群(MC
1陽性DCに対するBCAAの影響について検討した.
群),4)無投与群.急性肝不全の指標として経時的に血
【方法】健常人・C型肝硬変患者末梢血より,MicroBeads
中トランスアミナーゼ,NH3の測定,肝臓の組織学的変
を用いてBDCA1陽性DCを採取した.アミノ酸濃度
化の検討を行った.スクラッチングテストシステムを用
を様々に変更した無血清培地においてGM−CSF,IL4,
いて異常行動の定量化を行った.同時にmicrodialysis
TNFα添加することによりDCを成熟化させその機能
を評価した.また,C型肝硬変患者7例において自家
法を用い,海馬の神経性アミノ酸をリアルタイムに測定
血漿および,100nM/mLのvalineを添加した自家血漿
トロサイトをanti−GFAPAbを用い,ウエスタンブロッ
した.また,神経性アミノ酸の脳内代謝に関与するアス
下においてBDCA1+DCを成熟化させELISAにてサ
イトカイン産生,MLRにてaHostimulatorycapacity
【結果】血中トランスアミナーゼ,NH3はAPAP+MC
を検討した.
群で3時間後から有意な上昇が認められ8時間後は肝臓
【結果】∬ow cytometryを用いた検討では,成熟化した
には広範囲な小葉中心性壊死を起こしていた.APAP+
MDCにおいて健常人・C型肝硬変患者の間でphenotype
MC群はジャンプするといった異常行動が観察され4
ト法,免疫染色法で観察した.
(CD14,CD40,CD80,CD83,CD86,HLA−DR)に
時問から7時間の間で有意に運動量の増加を認めた.海
差を認めなかった.培地中のvalineに濃度勾配(0−800
馬内の神経性アミノ酸は他の群は,ほとんど変化がない
nM/mL)をつけた検討では,健常人と患者いずれにお
いても濃度依存性にCD83の発現が増加した.Child−
のに対し,APAP+MC群は4時間後からからグルタミ
ン酸アスパラギン酸,GABAの有意な上昇を認めた
PughA,B,C各9人の末梢血中のアミノ酸定量を行っ
(7時間後,グルタミン酸は23.9倍,アスパラギン酸は
たところ,ChildB,cでは健常人と比較し有意に末梢
161倍,GABAは7.5倍pく0.05).また組織学的変化と
血中のvaline濃度が低下しており,その差は約100nM/
して,アストロサイトは,ウエスタンブロット法では有
mLであった.DC機能の解析では,7例中全例におい
意な差を認めなかったが,免疫染色ではアストロサイト
てvaline添加群のIL−12の産生増加とallostimulatory
の数の減少は認めないものの細胞の形態変化を認めた.
capacityの増加を認めた.
【考察】APAP+MC群は急性肝不全を起こし,肝性脳
【結論】CirculatingmyeloidDCの成熟化は,細胞外の
症の一症状である興奮行動と類似した異常行動が有意に
BCAA特にvaline濃度により影響を受け,細胞外valine
増加した.また同時に,脳内のグルタミン酸,アスパラ
濃度を高めることによりC型肝硬変患者のDC機能が
ギン酸,GABAの有意な上昇が認められた.神経性ア
高められる事が明らかとなった.これらの結果は,肝
ミノ酸の変化時にアストロサイトの配列の乱れ,細胞の
硬変患者における栄養療法が免疫学的にも意義深いこ
形態変化が認められた.このことから,これら神経性ア
とを示唆している.
ミノ酸の増加,異常行動出現はアストロサイトの形態変
化が関与している可能性が示唆された.