加速器中性子による医学用RI製造 JAEA11月5日 永井泰樹 (JAEA) 内容 • 核医学診断・治療 • 新RI製造法 • 医薬品開発 • 今後 Association of Imaging Producers & Equipment Suppliers (EU) RIを用いた核医学診断と治療 ► 核医学診断 RI含有医薬品を生体に注射 ガンマカメラで撮像 臓器の働き具合(機能) ► CT, MRI, 超音波検査 不具合箇所の場所・形・大きさ ► PET (ポジトロン断層法) ブドウ糖代謝を映像化 する18F(FDG) ► FDG (フロロデオキシグルコース) ➪ 脳血流量・酸素消費量 脳動脈硬化が原因 99Tcを用いたSPECT診断(単一光子放射断層撮影) • 半減期: 6時間 • γ線エネルギー: 141 keV(ガンマカメラ) • 235U核分裂: 多量・無担体 ⇒医学診断の80%以上.世界 3000万件/年 ⇒日本 100万件/年(37000 GBq/週):全輸入 市場規模:450億円 ガンマカメラ 無担体 生成RI(量)/標的(量) ≈ 10-6∼ 10-8 生体注入: 標的除去 99Mo/99Tcジェネレーター発見 (Brookhaven NL) FUJI FILM ◆ 99Mo の製造 : 高濃縮(36~93%) 235U の核分裂反応 ◎ 比放射能 高い. ◎ 多量に生成 × 余剰RIの処置・保管. × 核不拡散に抵触 × 運転期限(2011年カナダ) × 故障頻発(高齢化) 99Mo/99Tc 将来展望: 現実的具体案: 世界に無い 99Mo/99Tc 次期計画挫折 源河次雄氏(資料) 99Mo/99Tc ジェネレーター 問題解決に向けて ◆ 原子炉: (IAEA) ► 低濃縮235U (20% 以下) 核分裂製造: {Australia (OPAL)} 5倍の238U試料: 余剰RI 5倍, 25倍の239Pu製造 ► 98Mo(n,γ)99Mo: 余剰RI極少. 比放射能低い. {JMTR:国内需要20%} ◆ 加速器: ► 安定稼動への期待 ► 陽子: 100Mo(p,pn)99Mo, 98Mo(p,γ)99mTc 100Mo(p,2n)99mTc: → 有効で無い ! 0.3 GBq/(μA hr) at 7<Ep<17 MeV, 100Mo厚: 0.52 g/cm2 カナダ: 24 MeV cyclotron (国内需要: 8台必要) ► ガンマ線(40 MeV LINAC) 100Mo( γ,n)99Mo:970GBq/(350μA×23hr×14.4g) at Ee=40 MeV, Idaho Univ. ► 高エネルギー中性子 (加速器): 未検討 100Mo(n,2n)99Mo JENDL3.3(資料) ◎ (n,2n) 14 MeV 断面積最大 {(n,γ)断面積の10倍} ◎ 競合反応断面積: <1/500 余剰RI: 極めて少 ◎ 核不拡散に抵触せず ◎ 試料: ∼ 1 モル ◎ 試料: 大気中に置く. 固体・液体・気体試料 ◎ アクセス容易 ◎ 安定供給 △ 比放射能低い Y.Nagai and Y.Hatsukawa: J. Phys. Soc. Japan, 78 (2009) 033201 14 MeV 中性子: 100Mo(n,2n)99Mo 生成量 ➪ 99Mo 生成量 100Mo(n,2n)99Mo ⇔ γ)99Mo 98Mo(n, 断面積 (10-24cm2) 1.4 0.14 中性子束(n/{cm2 s}) 1013 1014 生成量(GBq/{g週}) 70 70 Y.Nagai and Y.Hatsukawa: J. Phys. Soc. Japan, 78 (2009) 033201 70 GBq/(g週) から ➪ 100Mo 使用量 : 37000 GBq/週 へ (要求量): ∼ 50 g 3.5 TBq/週 ⇔ 37 TBq/週 要求量 ➪ 加速器 10台(∼100億円): ∼35 TBq/週 一点集中 → 拠点分散 仮定: ◆ 中性子束: 1013 n/{cm2 s} [米国のリバモアー研, FNS 1012n/{cm2 s}] ◆ 100Mo: 100 % 高濃縮(天然 9.6%) {100Mo: 再利用} 14 MeV 中性子生成: 3H + d → n + 4He {Ed ∼ 0.35 MeV} FNS (核融合中性子工学用中性子源施設) 稼動開始: 30年 安定稼動中 1012 n/{cm2s} 電源 1億円, イオン源 0.1億円 {小栗氏(J-PARC)} Energy spectrum from 3H(d,n)4He Akkus et al.: Ann. Nucl. Energy (2001) 準単色性重要 今野力氏(資料) G.J.Beyer CERN (2002) 原子炉で製造される医学用RI 山林尚道氏 資料 235U核分裂 ➪ 90Sr, 99Mo, 131I, 133Xe (n,γ) 反応 89Sr, 90Y, 117mSn, 153Sm, 169Er, 177Lu, 186Re & 188Re 核医学用RI: 満たすべき条件 ➪ 診断 (治療) ► 半減期: 数10 分 ∼ 数日 (標識化合物精製, 生体注射・効果) ► 50 keV以上のγ線放出: 撮像 ► 標識化合物精製可能 ► 無担体(標的元素: ×):生体への異物混入: × (RI数)/(標的元素数) ≈ 10-6 ∼ 10-8 ➪ 無担体を得る RI: 標的と異なる原子番号 ← イオン交換等で分離可能 ► ベータ崩壊によるRI: ► 原子番号変化反応によるRI: 標的 + n → RI + p (4He) 14MeV 高速中性子の魅力 ➪ 中性子反応 高いエネルギー状態 2n n 4He p n( 熱) A(Z,N-1) A(Z-1,N+1) A(Z,N) RI A(Z-2,N-1) RI 標的 A(Z,N+1) ➪ RIと製造法 原子番号 高速中性子 変化有 熱中性子 変化無 半減期 短 数日以上 種類 多い 限定 標的量 多い 中 安定供給 高い 定期点検(停止) RI RIを用いた癌治療薬(ゼバリン) ♦90Y 癌治療薬(ゼバリン): 90Sr/90Y ★ 111Inと併用 (診断用) Cyclotronで製造 ジェネレーター 2282 keV β-線: 癌細胞破壊 InとY生体内分布 不一致? ⇒ 90Y制動輻射 ➪ 90Y 製造: 加速器 90Zr+n → 90Y+p 90Y(基底状態): 90Y 90mY活用: 750GBq/{50g 2.7 d} 石岡グループ (励起状態):400GBq/{50g 2.7 d} Y.Nagai, O.Iwamoto, N.Iwamoto. T.Kin, M.Segawa, Y.Hatsukawa, and H.Harada: J. Phys. Soc. Japan, (2009) in press PET 用RI ➪ PET用RI: 18F(半減期1.8時間) ► 長半減期 RI: 64Cu (12 時間) : 世界が効率的製法開発中! 64Ni(p,n)64Cu 存在比(%) 0.9 生成量(GBq) 22 64Zn(n,p)64Cu 49 120/30g (0.055g, 95%濃縮, 45μA) 現状FNS: 12 GBq/30g 全原子核 + 14 (20, 30 MeV) 中性子RI生成量評価: 論文執筆中 岩本修氏、岩本信之氏 医薬品開発とマイクロドーズ 医薬品開発 ◆ 新薬を世に送出すための道程: 動物を用いた前臨床試験と人での臨床試験→安全性と有効性の確認 ◆ 現在の問題点: 1) 経費莫大: 1個の医薬品開発費 → 2000億円 2) 開発期間: 平均12年 ◆ わずか8% → 治験最初の段階「第1相試験」に入った物質で医薬品になる割合 第1相試験: 被検薬を動物実験後人に最初に行う段階 薬:体内をどの様に巡るか ? → 新薬開発頓挫、発売後副作用 ◆ マイクロドーズの導入→ 臨床試験の効率化 動物実験後 治験開始前に行う (通常薬1服/100以下か100μg以下の候補医薬品は生体に注射可) → 経費・開発期間縮小を目指す. (2003年EU, 2006年USA, 2008年日本) 医薬品開発とマイクロドーズ ➪ マイクロドーズ臨床試験の流れ ◆ 微量試薬の効果: 高感度検出法が不可欠. 1) AMS (質量分析器) 2) PET : 代謝反応 ( 短寿命RI) 3) SPECT (単光子検出法): 抗体反応検査に長寿命の多様なRIが不可欠 高速中性子による長寿命RI:マイクロドーズでも真価発揮 軽元素RI ◆ 人の血漿中の金属イオン濃度 軽金属元素の無担体RI: 殆ど生成されていない 金属無しでは生きられない 桜井弘(書籍) バイオ工学で多用されるRI ➪ 32P, 33P, 35Sの製造 RI T1/2 Target (abund) 32S React Yield (GBq/30g) 32P 14d (95) 35Cl (76) (n,p) (n,α) 300 150 33P 25d 33S (n,p) 156 35S 87d 35Cl (n,p) 27 (0.8) (76) 年間輸入量: 32P (308 GBq), 33P (47GBq), 35S (170 GBq) メスバワー線源 ➪ 57Coの製造: 58Ni(p,2p)57Co 57Co (物質研究、教育) Ep=22 MeV 500μA 11kW 水 Ni (50μ) 陽子 ➪ 58Ni(p,2p)57Co 断面積 (b) 58Ni(n,np)57Co 0.6 0.6 粒子束 1015 1013 Ni重量(g) 0.2 mg 28 g FNS (JAEA) 施設・実験 ◆ 断面積測定: 放射化法. 2009年1月, 9月 ➪ 断面積高精度測定 ➪ 加速器安定. ➪ FNS自作のトリチウム標的性能発揮 高速中性子によるRI国産化に向けて (医学・創薬・産業) 既存のRI 交流 基礎科学研究者 RI利用者 (医学・薬学・産業) 提言 新薬への道 新産業利用 適切なRI・新RI 開発 標的濃縮 化学精製 国内新産業 加速器等 高速中性子によるRI国産化に向けて (医学・創薬) 石岡グループ(高崎), 遠藤 (群馬大医) RI国産化に向けて : 我々の道 1) 現在のFNSで可能な事を実行 99Mo/99Tcジェネレーター製造試験(千代田テクノル参画) 90Y, 64Cu等 (石岡グループ, 企業への働きかけ) 2) 高強度中性子化 ➪ 中性子強度増強 → 1013 n/{cm2 s} 3) 化学精製法開発 4) 核反応データ収集 5) 標的濃縮法開発 6) 新RI活用法研究 7) その他 1) 予算獲得 FNS: 空調関係老朽化 2) 研究開発グループ 中性子高強度化 1) 3H(d,n)4He 大山幸夫氏 (資料提供) ◆ 3Hターゲット開発 ⇒ 3×1014 n/{cm2 s} D.B. Tuckerman, UCID-20040 2) 12C(d,n)13N: 40 MeV d, 5 mA ◆ SPIRAL-2 (GANIL) : 建設決定 (2005) ⇒ ∼1015 n/s. 1.1×1014 {cm2 s} 99Mo/99Tc : 世界の計画 ◆ 加速器: ► カナダ: 1) 100Mo(p,2n)99mTc: 99Tc: 2) 238U( 24 MeV cyclotron. 0.3 GBq/(μA hr). 100Mo厚: 0.52 g/cm2 半減期6時間 γ,fission)99Mo: TRIUMPF 要技術開発 ► 米国: 1) 100Mo(γ,n)99Mo: 970GBq/(350μA×23hr×14.4g) at Ee=40 MeV, Idaho Univ. 99Mo専用 {6000GBq/6日. (γ,n)} ⇔ {3500GBq/6日. (n,2n)} まとめ ◆ RIの国内製造: RIを用いた学術研究・応用研究に不可欠 ◆ 高速中性子を用いたRI製造: 重要且つ魅力的 ◆ 新RIの具体的活用: ★ 薬学・医学・画像技術 (一例) ★ バイオ・工業・農業・食物・学術研究での活用:数多 ◆ FNS (JAEA): 世界に先駆けて開発研究を遂行できる環境 関心ある方: 是非一緒にやりましょう! ご清聴ありがとうございました 協同研究者 初川雄一、原田秀郎、金政浩、瀬川麻里子、岩本修、岩本信之、 橋本雅史、高倉耕祐、落合謙太郎、今野力 謝辞(敬称略) JAEA:大島真澄、小川徹、秋本肇、岡嶋成晃、湊和生 、木村貴海、山西敏彦、 大山幸夫、横溝英明、岡田漱平、藤井保彦、籏野嘉彦、柴田徳思、 柴田恵一、橋本和幸、石岡典子、並木 伸爾 KEK:片山一郎 東工大:細谷暁夫 京大:谷森達、佐治英郎 群馬大:遠藤啓吾 千代田テクノル:竹内宣博 、山林尚道 住友重機:熊田幸生
© Copyright 2024 ExpyDoc