尿沈渣から異型細胞が検出された前立腺癌症例

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尿沈渣から異型細胞が検出された前立腺癌症例
◎川口 路実 1)、西 律子 1)、愛甲 佐津紀 1)、小橋 真規子 1)、幸福 知己 1)、川口 正彦 1)、山田 祐也 2)、吉岡 俊昭 3)
一般財団法人 住友病院 臨床検査技術科 1)、臨床検査部 2)、泌尿器科 3)
<はじめに>前立腺癌は生活の欧米化などにより罹患率は
神経内科通院中,検尿で潜血陽性,尿沈渣で均一赤血球を背景
年々増加しており,PSA 健診の普及に伴い早期に治療が開始
に少数ながらも細胞質に脂肪顆粒を含むN/C比のやや高い
される患者数も増えてきた.その解剖学的な位置関係から,無
小型円形細胞の小集塊を散見し,異型細胞を報告.泌尿器科紹
治療例や治療抵抗性となった局所病変の進展による膀胱内
介受診.エコーにて前立腺の膀胱への突出像を指摘.生検にて
浸潤をきたすことも多い.こういった背景から,当院でも尿沈
前立腺癌と診断確定.その後内分泌療法が開始され, PSA値
渣で前立腺由来の異型細胞を見る機会が増加している.
の低下にともなって尿沈渣・細胞診ともに悪性を疑う細胞は
<目的>当院における前立腺由来の異型細胞報告例を検索し,
消失している.
細胞像の特徴や頻度を調査する.その中で一般検尿から前立
<まとめ>当院異型細胞報告例の約 4%に前立腺癌細胞を認
腺癌の診断につながった症例を提示する.
め,これは尿路上皮癌以外の他の腺癌や扁平上皮癌などより
<対象>2009 年 1 月 4 日から 2013 年 5 月 31 日までに尿沈渣
頻度が高かった.また本症例のように,前立腺癌を想定してい
から異型細胞を報告した 489 例.
なかった内科系の患者から異型細胞が検出されることもあ
<結果>前立腺癌もしくは既往があったのは 28 例(5.7%)であ
り,細部に注意して鏡検することで,隠れた病変の存在を検尿
り,そのうち尿路上皮癌と組織診断されたものが 9 例,前立腺
から見つける事が可能である.
癌の浸潤が組織診・臨床診断で確認されたものが 19 例
(3.9%)あった.細胞像は,小型・小集塊で出現,核は偏在傾向で
核縁は薄く,1 個の核小体が目立ち,細胞質には脂肪顆粒を認
める傾向にあった.詳細については発表当日に譲る.
<提示症例>80歳代男性.高血圧・脂質異常症・脳梗塞にて当院
(連絡先)06-6443-1261【内線 6011】