清 酒 醸 造 用 酵 母 の 開 発 (第2報) 優良酵母の選択および造成 機能材料担当 岡田 俊樹、白井 伸明、松本 正 1.目的 滋賀県には、約60社の清酒醸造企業があり、現在、差別化、個性化が求められている 時代にあって滋賀県独自の酵母の開発に期待が寄せられている。県内酒造業界の活性化策 の一環で、香りや味に特徴を持たせた清酒造りが可能な酵母の取得を目的に、清酒醸造用 酵母の開発を実施した。 2.内容 もろみ 1 前報 )では、 醪 等から酵母の分離を行い、収集した各株の発酵性、香気生成、酸生成 2 等の特性について調べた。本報では、これら分離酵母を用いてアルコール耐性酵母 )、低 温耐性(発酵)酵母の候補株の選抜および優良清酒酵母の造成をおこなうため、酵母の細 3-8 胞融合用マーカーの付与 )をおこなった。 3.結果 その結果、アルコール耐性酵母と考えられる菌株 10 株、また、低温耐性(発酵)酵母 と考えられる菌株 10 株を得た。これらは、発酵試験を実施してそれぞれの優良株の選抜 をおこなう。また、優良清酒酵母の造成をおこなうため酵母の細胞融合用マーカーの検討 をおこなった。先ず、炭水化合物の資化性で検討したところ、マーカーとして利用できるもの が見つからなかった。次に、栄養要求性で検討したところ、ウラシルおよびリジン要求性の変異 株が取得できた。(Table 1) Table 1 栄養要求性の取得菌株 EMS処理前 EMS処理後 の菌対数 の菌対数 (CFU/ml) (CFU/ml) SYAC-006 1.6×10 SY-051 9.8×10 SYAP-008 8.8×10 SYZ-007 1.8×10 SYCA-019 1.0×10 K-9 2.0×10 K-14 1.2×10 SY-054 2.2×10 8 7 7 8 8 8 8 8 3.2×10 8.5×10 1.8×10 7.3×10 9.5×10 7 6 7 7 6 3.0×10 2.5×10 2.5×10 7 7 7 生存率 FOA生 育 株 数 (%) (株数) ウラシル要求 性 株 数 AA生 育 株 数 リジン要求 性 株 数 (株数) (株数) (株数) 20.0 10 8 10 6 0 8.7 2 1 2 20.5 0 - 4 3 23.9 3 0 5 4 9.5 10 0 0 - 15.0 8 0 7 6 20.8 7 4 7 3 11.4 8 0 6 4 4.今後の課題(今後の方針) 今後は、アルコール耐性酵母、低温耐性(発酵)酵母の選抜株は、それぞれ発酵試験を 実施する予定である。また、酵母同士の融合をおこなうための栄養要求性の付与が可能だ ったため、それぞれ交雑をおこない優良清酒酵母の造成を進める予定である。 参考文献 1)岡田俊樹、白井伸明、松本正:滋賀県工業技術総合 センター研究報告,41-44 (2001) 2)原昌道ら:醸協,71,(4),301-304 (1976) 3)長谷川武治著編:微生物の分類と同定(上),p176-181 (1975) 4)高木正道監訳:酵母の実験技術,p90-96 (1994)) 5)大嶋泰治編著:酵母の分子遺伝学実験法,p67-75 (1996) 6)J.D.BOEKE et al:Mol.Gen.Genet.,197,345(1984) 7)北本勝ひこ:醸協,84,(12),849-853(1989) 8)F.SHERMAN et al:Genetics,93,51(1979)
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