牛枝肉に付着した獣毛及びはく皮前の外皮の大腸菌汚染調査 大分県食肉衛生検査所 1 ○西本清仁 はじめに と畜場のはく皮工程における牛枝肉への大腸菌等の病原微生物の汚染経路としては、獣毛、糞便、 消化管内容物、作業者の手指、器具等が考えられる。枝肉への汚染防止対策としては、外皮に触れ た器具の洗浄消毒、手指の洗浄が、枝肉が汚染された場合の対策としては、汚染部位の完全な切り 取り(以下、 「トリミング」という。)が重要である。今回、と畜場作業従事者にトリミングや器具 の洗浄消毒、手指の洗浄の重要性についてより理解を深めさせるための具体的なデータを得ること を目的とし、枝肉に付着した獣毛(以下、 「獣毛」という。)と獣毛が付着していた直下組織(以下、 「直下組織」という。)の大腸菌汚染状況、並びに作業従事者の器具や手指が直接触れる機会が多 い部位の剥皮前の外皮の大腸菌及び STEC 汚染状況を調査したので報告する。 2 材料及び方法 (1)材料 平成 25 年 11 月から平成 26 年 1 月に、牛枝肉からトリミングされた部位の獣毛 83 検体、83 検 体中直下組織が採材できた 44 検体、外皮 33 検体(胸部7検体、臀部5検体、大腿部 12 検体、背 部9検体)を材料とした。なお、各検体の関連性は無作為に採材したため関連性は不明である。獣 毛は滅菌ピンセットで採取後、拭き取り検査キット ST-25(エルメックス)に入れボルテックスし たものを、直下組織は獣毛除去後、ST-25 で付着部位を数 cm2 単位で拭き取ったものを、外皮は 100 ㎠を ST-25 で拭き取ったものを試料原液とした。 (2)方法 大腸菌数は、獣毛、直下組織の試料原液 1ml を、外皮の試料原液は 10-3 まで段階希釈後、10-1、 10-3 希釈液各1ml をコンパクトドライ EC(ニッスイ)に接種、測定した。と同時に、試料原液を 2倍濃度 XM ブロスに接種し、色調及び蛍光による大腸菌の定性試験を行った。また、大腸菌が定 性試験のみで検出された場合、獣毛、直下組織の菌数は定量試験の検出限界 10CFU/検体未満と判 定した。なお、大腸菌数は、獣毛、直下組織は1検体あたりの CFU、外皮は 1 cm2 単位での CFU とした。STEC は、試料原液を2倍濃度のトリプチケースソイブロス(ベクトンデッキンソン)に 接種、37℃20 時間培養後、アルカリ熱抽出法で DNA を抽出し、Cycleave PCR O-157 Screening Kit Ver.2.0(タカラバイオ)を用いたリアルタイム PCR による志賀毒素(以下、「Stx」という。) 遺伝子検出を行った。 3 成績 獣毛の大腸菌は、83 検体中 55 検体(66.3%) から検出され、その菌数は 41 検体(74.5%)が 102CFU/検体未満であったが、10 検体(18.2%) が 103CFU/検体以上であった(図-1) 。83 検 体のうち獣毛と直下組織が同時に採材できた 44 検体では、獣毛 27 検体(61.4%) 、直下組織
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