インプラント体表面粗さのバイオフィルム形成への影響について

インプラント体表面粗さのバイオフィルム形成への影響について
Evaluation of the effect of implant surface roughness on bacterial biofilm formation
杉澤 満 1),山本酉子 2),荒川真一 3)
Mitsuru Sugisawa1) Yuko Yamamoto 2) Shinichi Arakawa 3)
杉澤歯科医院 1),丸三製薬バイオテック株式会社 2),
東京医科歯科大学大学院・生涯口腔保健衛生学分野 3)
Sugisawa Dental Office1) Marusan Pharma Biotech Corporation 2),Department of Lifetime
Oral Health Care Sciences,Graduate School, Tokyo Medical and Dental University3)
【目的】歯科用インプラントは,骨との結合力を向上させるため,酸エッチング・サンド
ブラスト・プラズマ溶射等の処理が施されている.しかし,当該処理によりインプラント
体表面における細菌の付着・増殖を助長しバイオフィルムの形成を促進するため,インプ
ラント周囲炎などの発症の原因と考えられている.本研究では,表面性状の違いによる細
菌の付着状態を確認し,インプラント体の素材によるバイオフィルム形成および細菌付着
量の違いを検討した.
【材料および方法】試料は,17.0mm×10.0mm×1.0mm のチタン板に,それぞれ①サンドブラ
ストおよび酸エッチング処理(SBA),②マシーンドサーフェス(以下 MS),③スパッタリン
グ HA 処理(RA1.5),④スパッタリング HA 処理(RA3.0:RA1.5 より表面が粗い試料)の 4
種類の表面処理を施したものを用いた.③,④はそれぞれ 1.5μm の厚さでコーティングを
施し,4種類で各 30 枚ずつ作製し実験を行った.
使用菌種は,Streptococcus mutans(JCM5705)と Porphyromonas gingivalis(JCM12257)
の 2 菌株を用いた.培養条件は,S. mutans は BHI 寒天培地 (日水製薬)
,P. gingivalis
はヘミン・メナジオン添加のウマ血液寒天培地(関東化学)および ヘミン・メナジオン添
加 BHI 寒天培地(日水製薬)を使用し,それぞれ上記培地にて 37℃嫌気条件下で培養を実
施した.
液体培地を分注したウェルプレートに菌液を接種後,それぞれに滅菌済の試料を設置し
た.S. mutans を 2 日間,P. gingivalis を 7 日間培養後バイオフィルムの付着を確認し,
滅菌済の生理食塩水にて試料に付着したバイオフィルム以外の菌を除去した.次に,滅菌
生理食塩水(10ml)とガラスビーズを予め加えた試験管に試料を設置し,ボルテックスミ
キサーで 1 分間撹拌後,超音波処置を水中にて 5 分間行った.その後 10 倍希釈を行い,希
釈液を 0.1ml ずつ 2 枚の寒天培地に塗抹し培養後,出現したコロニー数をカウントした.
得られたデータから,各試料に付着した細菌数(CFU)の平均値を求め,インプラントの
素材による細菌付着量について比較・検討を行った.
【結果】P. gingivalis の付着試験を n=1 として実施した.試料表面に付着した細菌数は,
①4.5×107 CFU,②6.9×107 CFU,③8.4×107 CFU,④1.1×108 CFU であった.また,S. mutans
は n=5 で実施し,試料表面に付着した細菌数は,①1.5×107 CFU,②1.5×107 CFU,③3.7×107
CFU,④4.4×107 CFU であった.
【考察および結論】
P. gingivalis に関しては SBA と MS との間に差は認められなかった.一方,SBA と比較
して RA1.5 は 1.8 倍,RA3.0 では SBA2.4 倍の細菌付着量が確認された.また,S. mutans
に関しては,SBA と MS の差は認められなかったが,SBA と比較して RA1.5 は 2.4 倍,RA3.0
では 2.9 倍の細菌付着量が確認された.これらの結果より,細菌付着量はインプラント体
の表面性状や表面粗さの違いにより差が出る可能性が示唆された.